三重ホンダヒート(D2)
三重Hのヘッドコーチが求める「100%の理解」
今季のリーグ戦最後となる、三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 サッカー・ラグビー場でのホストゲーム。チームを率いて2シーズン目の上田泰平ヘッドコーチは、対戦する清水建設江東ブルーシャークスについて「規律高く一人ひとりが体を張れるチーム。大隈隆明監督、麻田一平ヘッドコーチも良い人たち」と称賛する。だからこそ「そういう素晴らしいチームよりも良いチームとなり、スコアで上回りたい」と闘志を燃やす。
上田がヘッドコーチとなって重要視しているのは、物事の解像度を高める作業。ラグビー界における頻出用語として『セイムページ(ビジョンの共有)』があるが、『セイムページ』に至るまでの過程に、より気を配るようになった。
「ラグビーって、なんとなくできてしまうスポーツなんです。いくら決めごとがあったとしても、状況は絶対に変わる。その中でプレーをしなければならないので、実際に決めごとを100%理解していなくても、ラグビーはできてしまうんですよね。だからこそ、100%理解しているかどうかが細部につながるのもまたラグビー。勝負を分ける大事な要素になるんです」
分からないことを分からないと言わないほうが、より難しい状況を招くということをヘッドコーチとなり学んだ。
「人間誰しも恥ずかしいんです、分からないって言うことは。だけど情報を伝える側からすると、分からないと言ってもらわないと困る。だからまずは僕自身が『分からない』と言うようになりました」
上田ヘッドコーチにとって、三重ホンダヒート(以下、三重H)とは「仲間と一緒に居られる場所」。たくさんあるラグビーチームのうち、三重Hのラグビースタイルや価値観を好む仲間が集まったこの場所を尊いものとして認識する。
「人の役に立ちたい。そして自分も幸せになりたい」。自分の知識がほかの誰かのためになるのであれば、それを喜んで伝えたい、と微笑んだ。
大切にしている『Be Challenge』という言葉には、前向きな心意気が込められている。「とりあえずまずは、気軽に挑戦してみる。新しいことに取り組むのは、成功するためではなく、まずはアクションをすること。何かが変わるきっかけになるかもしれない」
まずは今週末、ラスト鈴鹿で、チームとしてよりチャレンジした姿を見せる。
清水建設江東ブルーシャークス(D2)
「できることを全力でやるだけ」。江東BSは“攻撃的なディフェンス”で初勝利を目指す
開幕からここまで実施された試合での勝利がない清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)。前節は江東区夢の島競技場で首位・浦安D-Rocks(以下、浦安DR)と対戦し、江東BSの強みである“攻撃的なディフェンス”で相手のオフェンス力を抑えたが、後半に力の差を見せつけられ、無得点での敗戦となった。課題を修正し、切り替えて臨む今節は3月12日(日)、三重ホンダヒート(以下、三重H)とのビジターゲームとなる。
三重Hとの前回対戦(第4節)で先制トライを決めたのは、チームの中心選手でもある野田涼太。第3節にもトライを決めており、2戦連続のトライでチームに勢いをつけた。
野田に三重H戦への意気込みを聞くと、「できることを全力でやるだけです。特にディフェンスで体を張っていきたいと思います」ときっぱり。今季の江東BSは、“速いボール展開”と“攻撃的なディフェンス”をチームとして掲げている。前節では、「『ダブルタックルに入ること』をチームのテーマとして掲げ、そのテーマを選手たちは表現してくれた」と大隈隆明監督は話している。その一方で、規律の部分で乱れが出て、80分間でイエローカード2枚、ペナルティは18個。リズムに乗れないまま、浦安DRの力に圧倒されて敗北を喫した。三重H戦に向けては、規律の部分の立て直しが求められる。大隈監督も「意識一つで変えられる」とチームに働きかけているようだ。
江東BSの選手たちは平日フルタイムで働き、終業後に練習しているため、チームとしてはいかに時間を効率的に使うかを重視している。朝の通勤の移動時間や休憩の時間を活用し、映像やミーティング内容の確認を行っているという。今節も“仕事とラグビーの両立”を遂行しながら課題を共有し、三重Hに挑む。
(山村燿)