2023.03.12NTTリーグワン2022-23 D1 第11節レポート(東京SG 29-41 埼玉WK)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第11節
2023年3月11日(土)14:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東京サントリーサンゴリアス 29-41 埼玉パナソニックワイルドナイツ

スポーツを享受できる満足感にあふれた一戦。
「こういう試合を待っていた」

優勝候補同士の対戦とあって、秩父宮ラグビー場は1万9,079人の観客で埋まった

2季連続優勝の埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)と、2季連続2位の東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1第11節は、その両チームが激突した大一番だった。

スコアだけを見れば、41対29で首位・埼玉WKの完勝。ただ、前半は東京SGが17対3とリードを広げ、東京SGファンも歓喜。対して後半は、埼玉WKが怒とうの5トライで一気に逆転。ジェットコースターのような試合展開に、秩父宮ラグビー場にはノーサイドの瞬間まで確かな満足感が広がっていた。それは選手目線でも、ファン目線でも。言葉に表すならば……、「こういう試合を待っていた」。

試合後、この言葉を実際に語ったのは埼玉WKのキャプテン、坂手淳史だ。

「こういうゲームが自分たちには必要で、自分たちは自分たちの仕事をする。そして、それを楽しみたい。こういう試合を待っていました」

王者を王者たらしめるのは、彼らを本気で倒そうと挑んでくるチャレンジャーの存在。司令塔の松田力也も、坂手と同じ趣旨でこんな言葉を残した。

「クロスゲームでどう勝つかというのは僕自身もすごく楽しみですし、こういう試合をどんどん経験していくことが次へのステップにつながってくる。この試合を乗り越えたということは、チームとしてもレベルアップしているわけですから」

「こういう試合を待っていた」……それはファンの心の声でもある。この日、秩父宮ラグビー場に駆けつけたファンは今季リーグ最多の1万9,079人。コロナ禍で始まったジャパンラグビー リーグワンでも声出し応援がようやく解禁され、やっとラグビーが楽しめる日常に。これほど応援しがいのある戦いはそうないだろう。

そして、試合のあった3月11日は、東日本大震災からちょうど12年。震災が起きた14時46分を前にキックオフとなった一戦で、試合前には両チーム、そして観客も起立しての黙とうが行われた。

だからこそあらためて実感する、スポーツを享受できる満足感。そのことを当たり前にせず、「こういう試合を待っていた」としみじみ思えることが重要ではないだろうか。

松田は、そんな「3.11」にラグビーができることをこう語る。

「本当に微力かもしれないですけど、僕たちの頑張りやいい試合で、みなさんに少しでも元気、笑顔、希望というのを届けられたらいいなと思っています」

(オグマナオト)

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアス(D1 カンファレンスB)の田中澄憲監督(右)、堀越康介 共同キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督

「たくさんのファンに来ていただき、素晴らしい環境の中でやれたことに感謝です。ゲームは『悔しい』の一言に尽きますが、先週とは違ったパフォーマンスを選手たちはしてくれたと思います。連敗はしましたが先週の負けとは違います。選手たちはアタッキングマインドで勇敢に戦ってくれましたし、前半に関してはシナリオどおりというか、完璧に近いゲーム運びでした。

ただ、後半20分は埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんの強い部分が出て、今日の結果になってしまった。ゲームには『肝』の部分がありますが、ゲームの主導権、モメンタム(勢い)という部分をどちらが握るかというところで、小さなミスやペナルティが出てしまった点が要因であったと思います。もう一度、われわれは埼玉WKさんに対してチャレンジしたいと思っていますので、まずは一戦一戦、そこに辿り着くために詰めていきたいと思います」

──開幕から前節までずっと齋藤直人選手を先発に起用してきた中で、今日は流大選手が先発に。この起用の意図は?

「もともとは決めていませんでした。先週のパフォーマンスの部分と、埼玉WK相手にリードされてしまうと、さらに相手のやりたいようにやられてしまうので、最初の60分、自分たちが先手を打っていくことが大事になる。流はそのへんのマネジメントが素晴らしい。そういう理由で流を先発に決めました」

──その狙いどおり、前半18分の時点で14点をリード。しかし、その次の得点が奪えず、逆に後半は立て続けにトライを許しました。14点を取ったあとの全体のマネジメントが狙いどおりにいかなかったのはどのような要因があるでしょうか?

「マネジメントというか、ペナルティやミスが原因だと思います。もちろんそれをしないというマネジメントもあるかもしれませんが、それでも埼玉WKさんは対応してくると思いますし、プレッシャーの掛け方もやはり上手だったと思います。その中でも、自分たちのスキルやアタックをしっかりと遂行できるかどうか。これはトレーニングでそういう状況でやっていくしかないと思います」

──埼玉WKに再戦して勝つために選手たちに求めることは?

「本当に細かいこと。今日やってみて通用する部分はたくさんあったし、相手の対応力に負けず、しっかりそこでも落ち着いてプレーしていくことは出場したメンバーも感じていると思います。その部分をこれからのトレーニングでしっかりコミュニケーションをとってやっていく。セットピースはしっかりと『こうなったときにどうするか』ということもBプラン、Cプラン、そういうところまでやる必要も考えられると思います」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介 共同キャプテン

「前半、僕たちが埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんにやっていたことを逆に後半、相手にやられたというか……。プレッシャーの掛かる中でのプレーもそうですし、小さなミスを一気に突かれて立て直すことができなかったことが敗因だと思います。

ただ、前節の試合から成長した部分も多いですし、まだリーグは続くので、最後の最後にしっかりやり返すことができるように、来週から一戦一戦、チームとして踏ん張りどころだと思うので頑張っていきたいです」

──後半の終盤に向けて仲間のエナジーはどう感じましたか?

「もちろん体はみんな疲れていますけど、練習中の雰囲気やエナジーはみんな同じ絵を見てトレーニングできていてすごくよくなっていますし、いい準備ができていると思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1 カンファレンスA)のロビー・ディーンズ監督(左)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「歴史的な2チームでこのような試合展開ができたこと、本当に特別な試合だと感じていました。選手たちがハードワークしたからこその結果です。ワークし続けなければならない苦しい展開を耐え、勝機を逃さなかった。レジリエンス(困難な状況も乗り越え対処していく忍耐力)の部分でも、プレッシャーに対してどのように立ち向かったのかが感じられたので、その点が非常にうれしかったです」

──今日は東京サントリーサンゴリアスのスピーディーな展開に対し、何度もブレイクされたり、タックルミスがあるなど、埼玉パナソニックワイルドナイツらしからぬ部分があったように感じました。その点をどのように見ていましたか?

「確かにストレスの掛かるアタックをされたと感じています。その部分でどうやって自分たちのマネジメントをしていくか。ただ、ストレスが掛かることは予測していましたし、ハーフタイムでもチームにその部分を伝え、いい対応ができたと考えています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「1万9千人の観客の前でこのような素晴らしいゲームができたこと、すごくよかったと思います。埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)の良さも出たし、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんの良さも出た、本当に素晴らしいゲームでした。

東京SGさんはすごく気合いも入っていたし、いいアタック、いいディフェンスをしていました。ただ、どこかで足が止まるかなとハーフタイムでも話していました。そこでの全員の意思統一がうまくいったと思います。

ゲームの内容的にはしんどい時間帯もありましたし、自分たちの流れの部分もありました。結果的に勝利でゲームを締めくくれたのは、埼玉WKの選手一人ひとりの役割をしっかり果たした結果だと思うのでうれしく思います」

──前半、いつもの埼玉WKならショットを狙う場面でもフェーズを重ねていました。どのような狙いがありましたか?

「確かに、14点離れていたのでショットでまずは3点を取ったほうがいいという意見、コーナーに蹴って時間を自分たちで使い切る意見、両方がありました。最後の判断は僕がしたんですが、フォワードが8人しっかりといたので、時間を使いながら、トライを狙いながら相手にプレッシャーを掛けることにフォーカスしていました。

トライに至らなかったのは僕たちのワークが足りない部分もありましたし、東京SGさんのプレッシャーもすごかったです。結果的にだいぶ時間を使ったこともあり、そこから3点に切り替えました。

キックもうまく使いたい部分もあったんですが、『しつこく、執拗に』という僕たちのテーマがあったので、相手にプレッシャーを掛けながら、その場面ごとの判断を尊重しました。今日のゲームでいうと、9番(小山大輝)、10番(松田力也)、15番(山沢拓也)、その3人がしっかりゲームをコントロールしてくれました」

──東京SGもリーグワンのなかでは相当鍛えているチームです。その相手でも我慢比べになったら自分たちが負けないと思える根拠は?

「僕たちももちろんしんどかったです。それでも、そのしんどい場面でスターティングの15人は戦い続けないと相手の脚は止まりません。厳しいとき、しんどいときにみんなで動くことは意識してやっていました。

また、僕らは『マッド』と呼んでいますが、ほかのチームとの違いを見せてくれる16~23番の選手がいる。その部分での信頼もありますし、だからこそ、スターティングの15人はエンジン全開で100%最初からいけると思っています」

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