東京サントリーサンゴリアス(D1 カンファレンスB)
30歳にして今なお成長中
日本最強スクラムハーフが“決戦”で今季初先発へ
東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)、捲土重来を期す戦いへ──。
昨季、一昨季と2年連続で埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)相手にプレーオフトーナメント決勝戦で敗れ、シーズンを2位で終えた東京SG。3月11日、秩父宮ラグビー場で行われるNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1第11節は、そんな王者・埼玉WKに挑む今季ファーストラウンドだ。
前節はトヨタヴェルブリッツに敗れ、連勝が8でストップ。しかも、今節は相手の試合間隔よりも短い中5日……。東京SGにとって懸念点も少なくない。だが、チームが苦しいときにこそ、確かな戦術眼とリーダーシップで状況を打開する男がいる。今季、全試合で後半から登場する流大だ。
2019年のラグビーワールドカップでは日本代表不動の“9番”として活躍した流。ただ、今季の東京SGでは「試合後半に戦術的な幅を持たせたい」という田中澄憲監督の意向のもと、ここまで全試合で“21番”をつけ、後半からの登場だった。
そんなチームのキーマンが今節、満を持して今季初の先発出場。そこに東京SGの覚悟のほどがうかがえる。ただ、流本人は決して気負わず、淡々と準備を重ねるだけ。その中で繰り返し語っていたのは「遂行力」というフレーズだ。
「自分たちのスタイルをもう一度見つめ直し、それを遂行する。相手のディフェンスをスキャニングして、前に出るオプションを選択するのが僕の仕事。経験の中で、それを判断していく」
「チャンスは多くないと思います。でも、絶対にチャンスは作れます。そのチャンスが来たときに、しっかりと遂行力をもってアタックする。僕はそれを引っ張るだけです」
田中監督も、そんな流の「遂行力」を高く評価する。
「流は対応力が非常に高いので、どんな状況で試合に出てもやりたいことを遂行できる選手。やっぱり、経験値がモノを言うなと感じます。それに、(代表でもチームでもスクラムハーフのポジションを争う)齋藤直人の存在が刺激になっているんでしょうね。流はプレーが良くなっています。ディフェンスタックルをするようになりましたし、テンポは前よりも速くなっている。GPSで計測するとハイスピードランニングの数値がすごく高いですから」
30歳にして今なお成長中の日本最強スクラムハーフがどんなプレーを見せてくれるのか。決戦は11日、14時キックオフだ。
(オグマナオト)
埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1 カンファレンスA)
ライバル連続撃破の先に見える連覇
埼玉WKの「変わってはいけないもの」
埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が3月11日に秩父宮ラグビー場で開催されるビジターゲームの交流戦で東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)と対戦する。
埼玉WKは昨季のプレーオフトーナメント決勝戦で東京SGに18対12で勝利して初代王者に輝いた。今季は第10節を終えた時点で10戦全勝の首位。一方の東京SGは8勝2敗で3位につける。1位・埼玉WKと3位・東京SGの対戦は、今季の優勝争いを左右する正真正銘の天王山だ。
埼玉WKは前節で2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)に30対15で勝利し、無敗記録を更新した。前半終了時は10対12のスコアだったが、後半に山沢拓也、長田智希がトライを決めて逆転。守備では、重量級フォワードをそろえるS東京ベイをノートライに抑えた。ライバルを倒したことでチームは、また強くなった。
今節の相手である東京SGは、日本代表の松島幸太朗らを擁しアグレッシブ・アタッキングラグビーを展開する。それに対して埼玉WKは、小山大輝、松田力也、山沢拓也をスターティングメンバーに並べる。中でもポイントは、野口竜司のウイング起用だ。
野口は主にフルバックでプレーしてきたが、この大一番ではウイングに入った。埼玉WKは自陣のスペースを埋めて網を作った上で相手の攻撃を受け止めていく。その際、野口らバックス陣の献身的なプレーが目立つ。
野口は「ディフェンスにはプライドを持ってプレーしている、80分間を通じてスイッチがオンになっている」と守備について説明する。
各国の代表クラスのスター選手がそろうチームでの競争は熾烈。ロビー・ディーンズ監督は試合ごとにポジションに変化を加えて、勝利の策を選手に託す。東京SG戦では、前節でスタンドオフだった山沢がフルバックに移り、フルバックの野口がウイングに入った。
「埼玉WKは、誰が出ても変わらないし、変わってはいけない。その中でクオリティーを高めていかなければ試合には出られない。リーグ終盤、大事な試合が続くが、自分たちが積み上げてきたものを発揮して勝ち進んでいきたい」(野口)
野口は試合前日に、湯船に長めにつかって試合への集中を高めるという。大一番の東京SG戦では、粘り強く守り抜いた上で、自慢のキックから敵陣へ飛び出していく。ラインブレイクのイメージはできた。あとは勝利へ向かって突き進むだけだ。東京SG撃破の先にリーグ連覇が見えてくる。
(伊藤寿学)