NECグリーンロケッツ東葛(D1 カンファレンスB)

「あわよくば」から始まった物語は150キャップへ。積み上げてきた「全力を尽くす」は変わらない

NECグリーンロケッツ東葛の瀧澤直選手。今節、出場すればGR東葛での150キャップに

3月26日、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は、柏の葉公園総合競技場で東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)と対戦する。瀧澤直にとっては、出場すればGR東葛での150キャップに到達する試合となる。

瀧澤は2010年に早稲田大学を卒業したあと、一般企業に就職した。しかし、サラリーマンとしてラグビーから離れる環境に身を置いたことは、瀧澤自身にあらためてラグビーの素晴らしさと、プレーできることが当たり前でないということを強く感じさせた。「再びラグビーがしたい」という思いに駆られた瀧澤は、NECグリーンロケッツ(当時)でプレーする大学時代の先輩、権丈太郎(現GR東葛コーチ)に「チャンスはないですかね」と連絡を入れた。このとき「きっとダメに決まっている。NECがダメならラグビーはあきらめよう」と内心は思っていたという。ただ、チームは快く瀧澤を迎え入れてくれた。

「半年以上ラグビーをやっていなかった人間が、簡単に試合に出られるとは思っていなかったんですけど、それでも何試合か出られればいい。あわよくば30歳までラグビーができたら自分を褒めよう。そうして、『ありがとうございました』と言ってチームを離れられると、入部したころは思っていました」

2010年のジャパンラグビー トップリーグの豊田自動織機シャトルズ戦でデビューを飾って以来、瀧澤がGR東葛で積み上げてきたキャップ数は、前節のコベルコ神戸スティーラーズ戦で149に達した。「あわよくば30歳まで」と言っていた年齢も大きく超え、36歳になった。「まさか十何年もやっているとは思わなかった」と笑みを見せ、そして「僕はこのチームに拾ってもらった」と謙虚に言葉を紡ぐ。そんな瀧澤だからこそ、GR東葛への愛情は人一番強いのではないか。それを問いかけてみた。

「これまで戦力外という形でラグビーを辞めていった先輩、後輩が大勢います。その中で新しい選手もたくさん入ってきました。多くの人と関係を築けて、自分はすごく良い経験をさせてもらい、ポジティブなものをいただきました。そのぶん、このチームには還元しなければいけない責任があると思っています。愛情というか……責任ですね」

瀧澤がデビュー以来、貫いてきたもの。それは「常に試合に出られる準備をしておき、試合では常に全力を尽くす」ということ。それは150キャップの懸かる今節も変わらない。GR東葛への愛情と責任感を抱き、瀧澤は東京SG戦へ向けていまもなお準備を進めている。

(鈴木潤)

東京サントリーサンゴリアス(D1 カンファレンスB)

次は自分たちの番。侍ジャパンに刺激を受け、
日の丸戦士たちはこの舞台から世界を見据える

東京サントリーサンゴリアスの中村亮土選手。ワールドベースボールクラシックではラーズ・ヌートバー選手に刺激を受けたという

2年目のNTTジャパンラグビー リーグワンも、レギュラーシーズンは残り4節。4チームだけに許されるプレーオフトーナメント進出を懸け、現在3位の東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)は3月26日、ビジターでのNECグリーンロケッツ東葛戦に挑む。

世間はいま、まさに野球日本代表『侍ジャパン』の劇的な世界一に沸いている。その余波を受け、今度はラグビー界も盛り上がる番だ。秋にはラグビーワールドカップも控える中、『世界に挑む日本代表選手』を数多く擁する東京SGでも、「侍ジャパンに刺激を受けた」と話す選手は多い。

「吉田正尚選手みたいに勝負強い選手はやっぱりすごい。僕らも期待に応えたいです」

こう答えてくれたのは日本代表の松島幸太朗。一方、同じ日本代表でも、東京ドームで侍ジャパンの戦いぶりを生観戦するほど熱を入れていたのは中村亮土だ。

「好きな選手はたっちゃん!ラーズ・ヌートバー選手です。気迫あふれるプレーで日本を引っ張っていく姿に刺激を受けました。海外から来て日本のために戦ってくれる…。ラグビーでは普通かもしれないけど、うれしく思いましたね」

ラグビー界では、条件を満たせば国籍を問わず代表入りができるだけに、他競技以上に外国籍選手との融合が必要不可欠だ。中村亮土自身は東京SGで、そして、日本代表でどのように文化の違う選手との融合を図っているのか?そんな疑問に対して返ってきたのは「リスペクトし合うこと」だった。

「今回のラーズ・ヌートバー選手にしても、日本のことをすごくリスペクトしていて、チームに馴染もうとしていた。お互いのカルチャーを知って理解し合うこと、リスペクトし合うことが大事だと思います」

もちろん、同じ日の丸を着けて戦う者として、世間の期待というプレッシャーの重さも重々承知。不振が続き、それでも克服した村上宗隆のように、重圧を乗り越える方策へも思いを巡らせていた。

「いかに自分を信じることができるか。自信を持って強気にプレーすることの重要性をあらためて感じましたね。自分もラグビーワールドカップに向け、もう一度自分を見つめ直して、フィジカルも、プレーの質も、普段のゲームの中で成長していきたいです」

目標は世界へ。そのための軸となるのが普段のリーグワン…。ブレない男の戦いぶりから目が離せない。

(オグマナオト)

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