2023.04.10NTTリーグワン2022-23 D1 第14節レポート(S東京ベイ 55-17 花園L)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第14節 カンファレンスB
2023年4月8日(土)12:00 スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場) (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 55-17 花園近鉄ライナーズ

リーグワン初、チーム名を冠したスタジアムでの快勝。頼れる男たちが示したダイナミックラグビー

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのホストスタジアムの江戸川区陸上競技場は、「スピアーズえどりくフィールド」となった

スタジアムは、この日も雨に濡れていた。「くもり一時雨」の、その「一時」がちょうどキックオフの直後に訪れ、スタンド席がオレンジ色のポンチョでゆっくりと彩られていく。3試合連続で雨天での戦いを強いられたクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)。ホストスタジアムに花園近鉄ライナーズを迎えての第14節は、雨足が急に強くなったかと思えば小雨になる、どうもすっきりとしない天候の下で行われた。

既報のとおり、S東京ベイは江戸川区とネーミングライツパートナー契約を締結。ホストスタジアムの江戸川区陸上競技場は、この春より名称を「スピアーズえどりくフィールド」に。NTT ジャパンラグビー リーグワンで初めて、チーム名を冠したスタジアムが誕生するに至った。

その初戦となったこの試合。S東京ベイは前節までとはひと味違う布陣で戦いに臨んだ。同チーム最年長日本人選手の杉本博昭が今季初先発。ロックの青木祐樹がフランカーで先発出場し、ゲームキャプテンも担当。ゲラード・ファンデンヒーファーが急きょ欠場となり、代わって島田悠平がフルバックに。ベンチには、これがリーグワン公式戦で初のメンバー入りとなる岡田一平が控える。立川理道もマルコム・マークスもピーター・ラピース・ラブスカフニもいない中、“いざというときに頼れる男たち”が顔をそろえた。

試合開始4分、スピアーズえどりくフィールドにおける記念すべき第1号のトライを決めたのは、プロップの海士広大だった。第3節の同対戦では、オペティ・ヘルからのパスを受けてインゴールまでボールを運んだものの、オペティ・ヘルがタッチラインを踏んでいたためキャンセルに。まるでそのリベンジを果たすかのように、自身にとってもトップリーグ&リーグワンをとおしてリーグ戦初めてとなるトライを決めてみせた。

そのあとには今季の新人王を狙う木田晴斗がトライを量産し、この日は4トライをマーク。後半、ピッチに入った押川敦治は華麗な足技でチームに貢献。岡田も、ノックオンがあったため得点は認められなかったが、敵の背後からロケットのように飛び出すジャンプダッシュでトライを狙い、その存在感を大いに印象づけた。

これまで戦い続けてきたメンバーたちと頼れる男たちが織り成した、ダイナミックなラグビー。結果は55対17で快勝。試合後、フラン・ルディケ ヘッドコーチは「非常にハッピー」と目を細めた。これでS東京ベイはプレーオフトーナメント進出が決定。リーグ戦も残り2戦。リーグ下位から時間を掛けてはい上がってきたオレンジの戦士たちは、足元を見つめながら頂上を目指す。

(藤本かずまさ)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(左)、青木祐樹ゲームキャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「コンニチワ! 結果については非常にハッピーです。序盤からいいスタートが切れ、基本的なことをしっかりと遂行でき、試合もエンジョイできたと思います。また、後半も若手選手たちがしっかりと仕事をしてくれて、けが人が出ているという現状の中で、スコッドの層も厚くなったと思います。彼らもいいパフォーマンスをしてくれました。

ただ、勝った試合にも必ず『学び』はあるものです。チームとして、これからも引き続き成長していきたいです。特に花園近鉄ライナーズさんで賞賛したいところは、スクラムがかなり良かったことです。私たちも学びを得たので、次の試合に向けて改善、修正していきたいと思います」

──今季のプレーオフトーナメント進出を決めたことについて。

「ご質問ありがとうございます。ただ、私たちにとって大事なのは、ハードワークをして、しっかりとベーシックなことを実践していくことです。その中でエンジョイできる部分はエンジョイし、まずは試合ごとにフォーカスしていき、その上でリーグ戦をいい形で終えることができればと思っています」

──3シーズン連続でトップ4に入ったことについて。

「まず大事なことはパフォーマンスの一貫性だと思います。振り返ってみれば、それがしっかりとできているからこそトップ4に入れたということが言えるかと思います。ただ、先ほど申し上げたとおり、これもまずはエンジョイできる部分はエンジョイし、そして先々のことを考え過ぎずに、毎週の試合にフォーカスしていく。毎週毎週、小さなことを確実に遂行していくことが重要です。リーグ戦はまだ残り2試合あります。これからも、改善できる点を良くしていけたらと思っています」

──ホストスタジアムのスピアーズえどりくフィールドで16連勝となりました。なぜホストゲームで強いのでしょうか。また、スタジアムの名称に「スピアーズ」のチーム名が入ったことについて。

「これはその二つの質問に対しての答えになるかもしれませんが、まず私たちはプロセスという部分で“クボタウェイ”を築いてきました。さらに前の週よりも向上したい、またスタンダードのレベルを毎週、確実に上げていきたい。そういった、以前よりももっと良くなりたいという願望があるからこそ、できていることだと思います。そうしたマインドセットの部分が大きいと思います。どういったところにフォーカスすれば、パフォーマンスが向上するのか。そういったことが過去数年間うまくできているので、それが“クボタウェイ”の成長につながっているのだと思います。

また、『スピアーズえどりくフィールド』というホストスタジアムができたことも大きいです。ファンの方々にしても、エキサイティングなラグビーを見られる場所ができました。これは、私たちの努力だけではなく、地元の地域の方々や、江戸川区の斉藤猛区長など、そういった方々のおかげだと思います。ネーミングライツについてもそうです。私たちはこの場所で、エキサイティングなラグビーを見せていきたいと思います」

──残り2試合にフォーカスするということですが、プレーオフトーナメントの試合につなげるために、残りの2試合をどのように戦うのか。

「ご質問ありがとうございます。これは失礼な答えになってしまうかもしれませんが、まず自分たちがフォーカスすべきは次のNECグリーンロケッツ東葛との試合です。プレーオフの試合については、その週にフォーカスすることです。そこに至るまでに、まだ私たちには2週間、成長できる機会があると考えています」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
青木祐樹ゲームキャプテン

「まずは今日のこの結果、勝つことができてうれしく思います。前節から少しメンバーも変わりましたが、自分たちがやることというのは変わりません。常に自分たちの仕事にしっかりとフォーカスしてやっていこうと言い続けてきたことが、今日の結果につながったと思います。

長い時間アタックすることがあったと思うのですが、途中、雨のコンディションもあり、ミスをして、そこからスコアにつなげられたのは反省点だと思います。ですが、長い時間アタックできたのは良かった点だと思います。リーグ戦は残り2試合ありますが、来週からも先を見ずに、まずは目の前の来週のNECグリーンロケッツ東葛戦にフォーカスしてやっていきたいと思います」

──スピアーズえどりくフィールドで16連勝となりました。なぜホストゲームで強いのでしょうか。また、スタジアムの名称に「スピアーズ」のチーム名が入ったことについて。

「一つ目の質問に関してはフラン(・ルディケ)ヘッドコーチが言ったことと似ている部分があるのですが、ホストであろうがビジターであろうが、そういった意識はあまりしておらず、チームとしては今週自分たちが何をすべきかということに常にフォーカスしています。その結果、勝ち続けることにつながっていると思っています。

二つ目の質問に関しては、今日初めてスコアボードのところが新しくなっていて、選手としてグラウンドに立って、『スピアーズ』の名前が入ったオレンジ色のボードがあると、気持ちも上がってきます。ああいったものがグラウンド内に増えていくと、選手としてもうれしいです」

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの水間良武ヘッドコーチ(左)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ

「フィジカルの部分で最初にターンオーバーを取られて、やはりフィジカルで前に出られると寄せられてしまい、そこが余ってしまう、コネクションが切れてしまうところがいくつかありました。ただ、チームとしては、しっかりと体を当てる、前に上がっていくということをこの1週間やってきて、それが試合に出た部分もありました。次の試合に生かせる良い点があったので、そこはプラスの部分として捉え、自信に変えられるよう、来週また準備をして臨んでいきたいと思います」

──具体的にはどういったところが良い部分で、それがこの先の戦いにどのようにつながっていくと思いますか?

「試合全体としてはスクラムです。スクラムは非常に優位に進められていたので、そこは良かったところです。ディフェンスに関しても、これまでは芯で捉えるということが少なかったのですが、芯で捉え始めているので、その部分は今後につながっていくと思います」

──スクラムハーフのウィル・ゲニア選手にアグレッシブで元気な印象を受けました。あらためて評価は?

「おっしゃるとおり元気ですし、しっかりとフィールド全体を見ていいところにキックを蹴られる選別と、そのスキルを持っている素晴らしい選手です」

──シオサイア・フィフィタ選手が前々節から負傷で欠場しています。復帰の見通しは?

「次はいけるのではないかと思っています」

──80分フルに出場した三竹康太選手の評価について。

「スクラムが良かったですね。相手にプレッシャーを掛けて、ペナルティを取っていました。これは素晴らしい強さです。ただ、まだ80分を出られるだけの体力はありません。いまのフロントローはだいたい50分・30分、60分・20分で交代する感じなのですが、今日は前半の最後のほうに菅原(貴人)が脳震とうになったということで村田(毅)が入って、あとは日本人のバック5(スラムのフロントロー以外の5人)がいなかったので、ラタ・タンギマナを今日復帰したサナイラ・ワクァと代えることになったので、三竹が80分間出ることになりました」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「ヘッドコーチが言ったことに付随して、上がろうという意識は随所で出すことができたと思います。ただ、そのあと、相手に大きな選手が多い中で、やはりファーストタックルで倒し切れないところを、僕たちはもう1枚(1人)かけて、2枚(2人)で入るということをやりたかったのですが、その入りがうまく機能せずに、ファーストタックルでのミスや、ファーストタックルは入れていたけれどボールを自由にさせていて、オフロードパスでつながれて失点するということがありました。今回の学びをしっかりと次につなげて、次のコベルコ神戸スティーラーズ戦で修正できるように、来週1週間取り組んでいこうと思います」

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