花園近鉄ライナーズ(D1カンファレンスB)

連勝へ。チームを誰よりも信じていたクウェイド・クーパーが、ついにピッチへ帰ってくる

昨年8月の左アキレス腱断裂という大けがから、ようやく復帰する花園近鉄ライナーズのクウェイド・クーパー選手

花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)がクラブ理念として掲げる言葉である「感動」。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1で前節、コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)相手に劇的な逆転勝ちを収め、今季初勝利を手にした戦いぶりは東大阪市花園ラグビー場を文字どおり、感動の渦に巻き込んだ。

勝利し、ボーナスポイントまで獲得できれば、最下位から抜け出せるNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)戦は、まさに大一番となる。それでも水間良武ヘッドコーチはこれまでどおり、自然体の姿勢を崩さずにこう言い切った。

「勝ったあとというのは大事になってくるけど、変わらず、自分たちのスタンダードを上げていくことが大事」

ただ、GR東葛戦に向けて確かに変わるものがある。昨年8月、オーストラリア代表の一員として臨んだアルゼンチン代表戦で左アキレス腱を断裂。ピッチから遠ざかっていたスタンドオフのクウェイド・クーパーが、ついにピッチに帰って来るのだ。

「3年間努力してようやくディビジョン1に上がった。でもディビジョン1に上がった途端に自分はけがをして試合に出られない状態が続いた」と悔しい胸の内を明かしたクウェイド・クーパーだが、3月末に再来日すると別メニューで調整しながら、日々の練習ではピッチに姿を見せ、チームメートにアドバイスを送り続けてきた。

「花園Lが大事にしていることを彼の口から選手に伝えてくれているし、スタンダードをリマインドしてくれている」と感謝の言葉を口にするのは水間ヘッドコーチ。そして、クウェイド・クーパーは勝てない日々にも、いつか長いトンネルを抜け出す日が来ることを信じていた。

「チームに帰って来てからは、『プロセスにフォーカスしていこう。いまの努力を続けていれば、いずれ結果に表れる』という話はしていたが、結果が出てうれしかった」

神戸S戦はスーツに身を包み、観客席から勝利を見届けたが、GR東葛戦では愛するチームのジャージーに身を包んで、キックオフの笛を聞く。しかも、この試合では地元の小学生らがデザインし、多数寄せられたジャージーのデザインの中からグランプリに輝いた作品を、選手が着用して試合に挑む。地域密着にも力を入れる花園Lらしい取り組みによるジャージーはクウェイド・クーパーだけでなく、チーム全員の力になるはずだ。

「楽しみです。でも、自分にとって試合は特別大きなものではなくて、自分のフォーカスは、日々の練習にあって、日々どれだけ頑張れるかどうか」

リーグ戦に出場することで入替戦の出場資格も得られるが、世界的スターの帰還が連勝を目指す花園Lの勢いを加速させるのは間違いない。

(下薗昌記)


NECグリーンロケッツ東葛(D1 カンファレンスB)

最終節もラストゲームにあらず。
規律を守り、“1527日ぶり勝利”の再現を

NECグリーンロケッツ東葛の金井大雪選手。「勢いをつけて、良い形で(入替戦へ)つなげられるように、リーグ戦を締めくくりたいと思います」

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1のリーグ戦は最終節を迎える。ただ、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)と花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)にとっては、これがシーズンのラストゲームではない。すでに入替戦に回ることが決定している両チーム。お互いに勝って、良い状態で入替戦へ向かうためにも、4月22日に東大阪市花園ラグビー場で行われる試合は激戦が予想される。

直近の5試合、GR東葛のスタンドオフは吉村紘と前田土芽が務めてきたが、今回の花園L戦では、金井大雪が第10節・リコーブラックラムズ東京戦以来6試合ぶりに10番を務める。

金井は「出ていない期間は悔しい思いをしました」と心情を語る一方で、「外から見ていて分かる部分もありました。そういうところを次の試合ではうまく出したい」と話すとおり、メンバー外という一歩引いた目線で試合を見たからこそ感じるものがあった。具体的にそのイメージを語る。

「僕の持ち味はスペースにボールを運ぶことだったり、裏のスペースを見るところだったりで、そこでチームがうまくいっていない場面がありました。僕は自分で突破をしたり、トライを何本も取ったりするタイプではないですが、GR東葛には力のある選手がいるので、うまくチームをコントロールして、その力を引き出したい。花園Lは前節勝って勢いに乗っているチームだと思う。接点の部分で受けに回ると苦しい展開になるので、そこは絶対に引かない」

花園Lとは開幕戦で対戦し、GR東葛はジャパンラグビー トップリーグ時代と合わせて1527日ぶりの勝利を飾った。接点で絶対に引かない、それが発揮された試合であり、あの勝利を手繰り寄せた要因に金井はチームの規律を挙げた。

「開幕戦では、最後のディフェンスの場面で30フェーズ以上を守り切りました。チームとしてのまとまりや、規律を守る部分では崩れなかった。リーグ最終戦も難しい戦いになると思いますが、規律を守ることが重要になる。入替戦の相手がどこになるかはまだ考えていませんが、両チームにとって今回の試合は入替戦へ向けて軽い試合ではない。勢いをつけて、良い形で(入替戦へ)つなげられるように、リーグ戦を締めくくりたいと思います」

開幕戦では、金井がスタンドオフとしてスタメンフル出場を果たした。6試合ぶりに出場機会が回ってきたこの大事な試合でもチームをコントロールし、あの開幕戦勝利の再現を狙う。

(鈴木潤)

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