釜石シーウェイブスRFC(D2)

ホストゲーム初勝利もかかる入替戦。「勝利の“釜石コール”」をスタジアムに響かせろ

「相手に左右されず、緊張もほとんどしたことがない」という沖縄の宮古島出身、釜石シーウェイブスRFCの石垣航平選手

釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)は5月6日、ディビジョン2残留を懸けて、クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)とのNTT ジャパンラグビー リーグワン 2022-23入替戦第1戦に臨む。今季いまだ勝ちがないホストスタジアムの釜石鵜住居復興スタジアムで「勝利の“釜石コール”」が響く情景を思い浮かべ、選手たちも練習に熱が入る。

「フィジカリティ!ハードキャリー!」。気合いの入った声と激しく体をぶつけあう音で練習場は活気に満ちていた。「あの“釜石コール”の中プレーできたことに感動したし誇りに思った」。前の試合、ビジターの会場を包み込んだ力強い“釜石コール”が選手たちを奮い立たせている。

須田康夫ヘッドコーチは入替戦のポイントに「スクラムの安定」を挙げている。稲田壮一郎と束田涼太の両プロップは、「とにかく8人がまとまって組むことが大事。試合中は熱くなりがちなので、冷静にきれいなスクラムを組みたい」と、前回の順位決定戦でつかんだ感覚を生かし、チームの強みであるアタックにつなげる構えだ。

一方、バックスで存在感を強めているのが22年に加入した石垣航平だ。183cm/98kgの体格で、まるで重戦車のように前進していく姿が見る人の目を引き付ける。前回はウイング起用でトライも決めた。「力強く前に出ていくことが自分に求められていること。しっかりアタックを引っ張っていきたい」と意気込む。

沖縄県宮古島市出身の石垣は、ダイナミックなプレーとは裏腹に受け答えの口調はゆったり、さらに普段からマイペースで「沖縄タイム」の言葉がぴったりだ。「相手に左右されず、緊張もほとんどしたことがない。いつも自分のペースで試合に臨めている」と、リーグ戦とは少し違う緊張感が漂う入替戦でも心強い存在になりそうだ。

その石垣は帝京大学卒業後、立て続けに所属チームの廃部を経験。最初の廃部後、釜石SWからのオファーがあったものの、地元を遠く離れた地を当時は選ぶことができなかった。しかし昨年、釜石SWがいち早く声をかけてくれたとき、「自分を必要としてくれているところで頑張りたいと強く感じた」と釜石での挑戦を決断。覚悟を胸に東北の寒い冬も乗り越え成長を続けてきた。

「ピリピリした雰囲気も自分たちで楽しむことができればうまくいく。受け身にならずチャレンジャーの気持ちで1戦目から自分たちの力を出し切る」(石垣)

「残留」に「ホストゲーム今季初勝利へのラストチャンス」。プレッシャーが重なるときこそベクトルは自分自身に。この試合にすべてをぶつけていく。

(佐々木成美)


クリタウォーターガッシュ昭島(D3)

本音をぶつけ、正念場を乗り越えた4月。
そしていざ、入替戦へ

クリタウォーターガッシュ昭島の石井洋介キャプテン。「若い選手が増えたこともあり、マインドセットの部分のところは大きく変わってきた」

NTTジャパンラグビーリーグワン2022-23 ディビジョン2/ディビジョン3入替戦第1戦。クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)は、釜石鵜住居復興スタジアムで釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)に挑む。公式戦での両チームの対戦は、今季から指揮を執るワイクリフ・パールー ヘッドコーチの現役引退試合となったトップチャレンジリーグ2021シーズン順位決定戦以来のこと。その試合では釜石SWに敗れたものの、直近の対戦となる昨年秋のプレシーズンマッチでは50対45とWG昭島が勝利しているだけに、いいイメージを持って入替戦に臨めそうだ。

リーグ戦を終えて、キャプテンの石井洋介が振り返る。ターニングポイントとなった試合は、第12節のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪戦(20対32)だった。「この試合後にメンバーと本音で話をしました。この試合をきっかけにみんなの意識が変わったと思います」。その後の練習では以前より積極的にコミュニケーションを図る選手の姿が見られ、正念場となるその後の4月のホストゲーム2戦で連勝し、入替戦へと駒を進めた。

「(2020年に)入社したころのチームは負けに慣れている感じでしたが、いまはラグビーに対して真剣になったと思います。若い選手が増えたこともあり、マインドセットの部分のところは大きく変わってきたかなと。特に(江本)洸志は負けん気が強くて、ラグビーに懸ける思いも強い。僕が見ていないところでも発言してくれて、チームにとてもいい影響を与えてくれています」

その石井自身も「ラグビー人生で初めて」けがをせずにシーズンを終えることができた。「中学1年からこれまで、シーズンをとおしてけがなくプレーできたことがなかった。以前は練習から常に100%で自分を追い込み過ぎてけがをして、ピッチでのパフォーマンスにつながらない、という悪循環。いまは(自分のコンディションと相談しながら)強度を落とすことによって、うまく調整できるようになりました」と、今季の個人的な目標として掲げた“全試合出場”を達成した。

次は、チームとして掲げる目標のディビジョン2昇格へ。ピッチに立ち続けるキャプテンが入替戦でも目標達成なるか。注目のファーストラウンド、いよいよキックオフの笛が鳴る。

(匂坂俊之/Rugby Cafe)

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