2023.05.07NTTリーグワン2022-23 D1/D2入替戦 第1戦レポート(S愛知 21-59 相模原DB)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン 1/ディビジョン 2 入替戦 第1戦
2023年5月6日(土)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 21-59 三菱重工相模原ダイナボアーズ

ラガーマンとしてどうあるべきか。誰のためにラグビーをやっているのか。双方が出した同じ答え

敗れた豊田自動織機シャトルズ愛知の選手らに対して、三菱重工相模原ダイナボアーズのファンからも温かい拍手が送られた

雨の予報が続いていた愛知県だったが、試合終了時まで天気はなんとか持ちこたえた。曇り空の下で行われた試合は、三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)が豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)を59対21で下し、入替戦第1戦で勝ち点5を奪取。この上ない形で試合を終えた。

立ち上がりから主導権を掌握した相模原DBは、素早いテンポでのアタックを繰り返し、S愛知のスキを鋭く突く。スクラムやラインアウトモールなど、フォワードを生かした攻撃を繰り出すS愛知に苦戦する場面も見られたが、合計9トライを奪う猛攻を見せた。

観客数は、S愛知のホストゲームでは今季最多となる2,266人。ゴールデンウィーク中ということもあり、相模原DBのファンも多く駆け付け、声援を送っていた。相模原DBとしてはそれに応えた形で、次週はより多くの声援を背に、大逆転劇を起こしにくるS愛知を迎え撃つことになる。

試合後の両チームの選手が語ったのは、ラグビー選手の存在意義についてだった。

「人としてどうあるべきか、ラガーマンとしてどうあるべきかをしっかり考え、次週勝ち切ってディビジョン1に上がりたい」(S愛知/山口知貴)

「ラグビーをとおして、やらないといけない“使命”を果たさないといけない」(S愛知/渡邊友哉)

「次戦もファンのために、すべてを懸けて戦いたい」(S愛知/ティアン・トーマスウィーラー)

「(グレン・ディレーニー)ヘッドコーチから話があり、“誰のためにラグビーをやっているのか”というのをあらためて考えた。ファンだったり、家族だったり、そういった方たちのためにラグビーをするというのを再確認できた」(相模原DB/岩村昂太)

S愛知は先日発表された不祥事の件を受けて、チームが一丸となり、何のためにラグビーをしているのかをあらためて考えた。相模原DBも、なかなか結果がついてこないレギュラーシーズン終盤戦を受けて、自分たちが今季貫きとおしてきたことを思い返した。S愛知も相模原DBも、入り口は違うが、出口は同じだった。

応援してくれるファンのために。

今季の集大成となる、入替戦第2戦に向かう両者。感謝を胸に刻み、24番目の選手とともに戦いながら、勝利をつかみにいく。

(齋藤弦)

豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(左)、ジェームズ・ガスケル ゲームキャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「入替戦の開幕がホストゲームということで、われわれとしては何とか勝ち点を獲得するということにフォーカスを置いて準備してきました。ただ、結果的には三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)さんの圧力を受けて、点差を大きく離されたということで、この結果につきましては、非常に残念に思っています。たくさんの豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)ファンの方々、相模原DBのファンの方々が、このグラウンド環境を作ってくれたということで、この場に立てたのはチームとして本当に幸せに感じています。ありがとうございました」

──ディビジョン1のチームの強度をどう感じましたか?

「特に驚いたことはなくて、もともと、相模原DBさんはこの入替戦には出ていますが、レギュラーシーズンでも前半戦はしっかり勝ち点を積み上げていましたので、これぐらいインテンシティー(強度)が高かったのは想定どおりだったかなと思います。ゲームを80分とおして見ますと、ゲームキャプテンのジェームズ・ガスケルが言ったとおり、前半の20分ぐらいまで、なかなかテリトリーのバトルで劣勢に立たされたということ。ボールを保持する機会がなかったことで、一気に流れをつかまれたなというところです。うまくゲームをコントロールされて、相手の強みを引き出すような試合になった印象です」

──次戦に向けて。

「次の試合はわれわれが38点という点差で、非常に難しい状況にあるとは思いますが、この勝負を捨てるつもりもさらさらなくて、本当にこの点差の中でどうわれわれがディビジョン1に行くのかというところを考えています。ネガティブというか、非常に難しい壁を乗り越える機会をいただけたということで、私個人としては非常にわくわくした、エキサイティングな1週間になると思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル ゲームキャプテン

「徳野さん(徳野洋一ヘッドコーチ)がおっしゃったように、今日はたくさんのファンの方が来てくださって、本当にありがとうございます。ただ、結果については残念で勝つところをお見せできませんでした。前半20分までのところ、少し簡単にやられてしまった部分もあるので、そのあたりはすごく残念に思っています。来週に向けて良い準備をしていきたいと思っていますし、後半に関しては、トライを取れるチャンスもあったと思います。次に向けて良い準備をして、来週のゲームで結果を残せるようにやっていきたいです」

──スクラムやラインアウトモールでは優位に立ちました。

「特にフロントローのみなさん、チームメートが本当によく頑張ってくれたというところで、ハーフタイムに入る前も1、2回ペナルティを奪って、本当にフロントローがよく頑張ってくれたと感じています。来週についてもわくわくしていますし、エキサイトしています。良い準備をして、良い試合結果を残せるようにしていきたいというふうに思っています」

三菱重工相模原ダイナボアーズ(D1)

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(右)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「(日本語で)すごく良い試合だったと思います。相手はモールからたくさん良いトライをしていました」

──勝利の最大の要因は?

「一番は、自分たちがポジティブに、前向きにプレーできていたところです。テンポよくプレーして、みなさんが見たいような、良いラグビーを見せたいというところはありました。その向上心を今日見せることができたので、こういう結果につながったと思います」

──シーズン終盤は結果がついてこない状況でしたが、今日は三菱重工相模原ダイナボアーズの良さが出ました。

「ディビジョン1の強度を今日は見せていたと思うので、今季の最後のほうは結果がついてこなかったかもしれませんが、1年をとおして、自分たちもその強度でプレーはできるというところは見せたと思います。特にシーズンの入り、初めて勝った相手も何チームかありましたし、そこも自分たちが良いテンポ、良い強度でプレーできていたと思います。それを今日も見せたいというのが自分たちの目標だったので、それはできたと思います」

──プレーヤー・オブ・ザ・マッチには坂本侑翼選手が選ばれました。

「シーズンをとおして、素晴らしいプレーを見せてくれた選手ですけど、こんなに早くディビジョン1の強度に慣れた選手はほぼ見たことがないくらいです。そのディテールのところも本当に素晴らしい。ラックへの判断のところもそうですし、タックルのスキルも素晴らしいので、今日もプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは、自分もすごくうれしいですし、みんながそれを認めてくれているという証拠だと思います。赤と白のジャージーを着るような選手になれると思うので、代表のメンバーになれるような選手に成長していってほしいですね」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「(グレン・ディレーニー)ヘッドコーチからもあったように、モールやスクラムでプレッシャーを掛けられた部分もありましたが、自分たちのアタックや、そのほかのディフェンスでは崩されることはあまりなかったので、そういった面ではすごくポジティブでした。シーズンをとおして、徐々にそういったところで成長していると感じます」

──多くの三菱重工相模原ダイナボアーズのファンが駆け付けました。

「グラウンドに出た瞬間から、いつもどおりのダイナメイトの方たちが、われわれを応援してくださいました。先週から今週にかけて、ヘッドコーチから話があり、『誰のためにラグビーをやっているのか』というのをあらためて考えました。ファンだったり、家族だったり、そういった方たちのためにラグビーをするというのを再確認できた週でもありました。そういったものをグラウンドであらためて体感できて、より気合いが入ったというか、『ちゃんとやらなきゃいけないな』という気持ちになりました」

──試合前にチームに掛けた言葉は?

「シーズンをとおして、われわれは相手どうこうというよりは、まずは自分たちのラグビーをしっかりグラウンド上で遂行すること。そして、一人ひとりが一瞬一瞬の仕事を考えて、それを遂行して、15人がまとまることで、最高の結果が得られるというのは、レギュラーシーズンをとおして、ずっとやってきました。そこは入替戦でも、まったく変わらずにやり続けようという話は1週間してきました。われわれはディビジョン1のチームですけど、ロッカールームの中でもチャレンジャーという姿勢で、シーズンとおしてやってきたことは変わらないことを伝えて、相手どうこうというよりは、『自分の仕事をやるということにチャレンジしよう』と、みんなに伝えていました」

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