2023.05.10NTTリーグワン2022-23 D1/D2入替戦 第1戦レポート(浦安DR 14-36 花園L)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン 1/ディビジョン 2 入替戦 第1戦
2023年5月7日(日)12:00 ユアテックスタジアム仙台 (宮城県)
浦安D-Rocks 14-36 花園近鉄ライナーズ

何かが宿る入替戦。
勝負を分けたカギは、スキルとマインドセット

花園近鉄ライナーズのクウェイド・クーパー選手。「勝ち点とか関係なく、ゼロに戻って、日々成長することだけに集中したい」

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1/ディビジョン2入替戦第1戦。浦安D-Rocks(以下、浦安DR)が、セカンダリーホストエリアである仙台市のユアテックスタジアム仙台に、花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)を迎えた一戦は、14対36で花園Lが勝利した。

リーグ戦、順位決定戦をとおして無敗という圧倒的な強さでディビジョン2を勝ち抜けた浦安DRと、リーグ戦を1勝15敗と大きく負け越し、ディビジョン1の最下位に沈んだ花園L。対照的なシーズンを過ごした両チームの対戦は、下馬評では浦安DR優勢だったのかもしれない。だが、やはり、入替戦には別の何かが宿っている。

雨の中の試合、グラウンドコンディション、滑りやすいボール、スクラム、ラインアウト、レフリング……。ピッチ上でのプレーに影響を与える要因はさまざまに挙げられるが、同じ条件の中で試合をする以上、それは“スキル”の問題にとどまる。入替戦という特殊な試合で、本当に試されるのは“マインドセット”だ。

浦安DRのキャプテン飯沼蓮は、リードされた展開でハーフタイムを迎え、「いつもどおりにやろう」と、選手たちに声を掛ける。今季限りでの現役引退を表明したグレイグ・レイドローは、「個人的な理由でエモーショナルになることはない。Team comes first.(チームが第一)」と、普段どおりに試合に入っていく。「いつもどおり」の難しさ、と言えばいいか。

一方の花園Lからは少し角度の違う言葉が出る。樫本敦はスクラムでの優位性を問われて、「これまで毎試合、毎試合、少しずつ積み重ねてきて、それがこの試合で実った」と答え、実質的な復帰試合となったクウェイド・クーパーは、試合に向けての心構えを、「試合の日よりも、日々の過ごし方のほうが大事。月、火、水、木、金とトレーニングを積み重ねること。人生と同じく、一日一日を一生懸命に過ごすこと」と、諭すように言葉を発する。

花園Lはボーナスポイントも加えて勝ち点5、得失点差22のアドバンテージを持って、大阪に帰る。第2戦が現役引退の試合となる樫本は、「僕のことはどうでもいいんで」と笑いながら、「最後に大仕事をして、勝利に貢献できるようにがんばります」と続けた。そして、「Preparation is the best thing you can do.(準備が何より大事)。勝ち点とか関係なく、ゼロに戻って、日々成長することだけに集中したい」と、クウェイド・クーパーは気を引き締めた。

厳しい戦いに臨む浦安DRは、「Keep fighting.(戦い続ける)」(ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ)ことができるか。「過去は変えられない。次、23点取って、勝てばいいだけですから」と、この試合の負けを振り払うかのような飯沼の言葉が、チームを前へ動かすことができるか。試合前のマインドセットが結果に大きく影響することは間違いない。

下馬評を覆す結果となるか、それとも評判どおりの結果となるか。入替戦の大注目の組み合わせは、1週間後にいよいよ決着のときを迎える。

(平野有希/Rugby Cafe)

浦安D-Rocks(D2)

浦安D-Rocksのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ(右)、飯沼蓮キャプテン

浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

「残念な結果でした。前半の序盤にいいスタートを切ることができて、得点も取れました。ただ、そこから花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)がテリトリーをうまく取るような戦い方をしてきて、それに対して自分たちはイエローカードが2枚と、プレッシャーが掛かってしまった。そこをうまく花園Lさんが突いてきたという試合でした。セットピースでも苦しんだ部分がありました。自分たちのボールのバウンドの方向だとか、細かいところでの判断だとか、うまくいかないときもありましたが、そういう状況でも最後までファイトして、チームのために戦い続けてくれた選手たちに感謝しています。あとは自分たちのやってきたことを信じて、また先に進むだけだと思います」

──今日もペナルティが多かった。ペナルティの多さはシーズンの課題だったが、どのように分析しているのか。

「今日もペナルティに関しては苦しみましたが、ほとんどがスクラムでのペナルティでした。スクラムのペナルティというのはかなり意見が分かれるところだと思います。例えば、スクラムコーチが3人いて、レフリーが10人いたとしたら、その判定はそれぞれでかなり意見が分かれるものです。ですから、今日の判定についてはしっかりレビューしなければいけません。それから(イエローカードが出た)ラインアウトでのコンテストは、かなり懸念ではあります。自分たちに非があるペナルティに関しては自分たちが責任を取らなければなりませんが、マッチオフィシャルも判定には責任を持っていただきたいというのはあります。ペナルティはもちろんチームとしての課題ですので、そこが修正できない限りはラグビーの試合にならないと思います」

浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン

「ヨハン(・アッカーマン ヘッドコーチ)も言ったとおり、前半はいいスタートが切れて、そこからうまくいかない時間帯が続いて、ほとんどがエリアから脱出するだけのプレーになってしまった。自分たちのラグビーもできていないし、みんながパニックになってしまっているとも感じていました。でも、結果は結果。次の試合で23点以上取って勝てばいい。ヨハン(・アッカーマン ヘッドコーチ)もよく言っていますが、『過去は変えられない、未来にチャレンジする』だけです。今日の試合で、リードされたときにチームがパニックになる、という経験もできたので、そういうところは声を掛けながら、次の試合までの5日間、準備していきたいと思います」

──今季初めて、ビハインドで後半を迎えることになった。後半に向けて選手たちにどんな言葉を掛けたのか。

「前半でリードされたケースも事前にしっかり予想して準備していました。前半の流れはほとんど花園近鉄ライナーズでしたが、『結果としてはまだ2トライ差でしかない、いつもどおりプレーしよう』と、シンプルなことを伝えました」

──来週の試合に向けて、残された時間をどういう「態度」で過ごしたいと思っていますか。

「たぶん、いまはみんな気持ちが落ちていると思いますが、まだ(最後の)結果が出たわけではない。あと5日間、どれだけ準備できるかで、自分たちの未来が変わると思っています。まずは、落ち込んでいる人がいたらポジティブにさせないといけないし、最高の準備をするために、いま自分が為すべきことをする。その雰囲気を作っていきたいです」

花園近鉄ライナーズ(D1)

花園近鉄ライナーズの水間良武ヘッドコーチ(左)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ

「入替戦という非常に難しい試合の中で、選手は思い切ったプレーをしてくれて、スコアにつなげることができました。ディフェンスも粘り強くできて、相手を2トライに抑えることができました。アタックについても、スコアできる自信がある局面で、きちんとスコアできているのは素晴らしかったです。今日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた田中健太もそうですが、フォワードがみんな、よく押して、よく走って、体を張ってくれた。そしてバックスは、それに応えて、走る、タックルする。非常にいい試合、いい結果になりました。来週はホストスタジアムの東大阪市花園ラグビー場に帰れるとことになりますので、非常にうれしく思っています」

──スクラムの強化について。どのようなプロセスで今日の結果にたどり着いたと考えているか。

「昨季はコロナでスクラムの練習がほとんどできなかったのですが、今季は早い段階からフロントローの練習を始めました。また、(フォワード)ユニットの練習でも、週の中で1時間半はスクラムを組むことにして、練習を積み重ねてきました。太田春樹フォワードコーチ、豊田大樹アシスタントコーチ、この二人がフォワード全体はもちろん、フロントローの一人ひとりを丁寧にコーチングして、この試合の前日にも、メンバー外の『しまかぜ』メンバーのスクラムの強化のために時間を費やしてくれて、そういうプロセスがようやく実りだしたということだと思います」

──クウェイド・クーパー選手のパフォーマンスについての評価は。

「しっかりとゲームをコントロールしてくれました。チームがやろうとしていた戦術をしっかり遂行してくれて、前半をリードして折り返せた。後半につながる、非常にいい働きをしてくれました」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「自分がフォワードということもありまして、今週は『フォワードで試合を決め切るぞ』、と。ユニットトレーニングのときから話をしていましたが、本当にその言葉どおりの試合になったと思います。雨という条件もあって、大きくボールを動かす“ライナーズアタック”というよりは、少し地味なラグビーとなってしまいましたが、こういうフォワードバトルも“ライナーズスタイル”の一部ではあるかなと。シーズン前に強化ポイントとして挙げていたスクラムだったので、コーチと、特にフロントローが積み重ねてきた努力がこういう結果として実ったことがとてもうれしいです」

──今日はフォワードで圧倒できたシーンが多かった。ディビジョン1と2の違いを感じたか。

「正直、違いというのはそんなに感じられませんでした。自分たちがやろうとしていることを出せるパーセンテージが増えた、というようなイメージですかね。これまで毎週、毎週、積み重ねてきたものが、これまでの試合と比べて、今週が一番出すことができた。ですので、相手がディビジョン1だから、ディビジョン2だからということではなくて、あくまでも自分たちが成長できたということだと思います」

──残留濃厚となりました。試合後のハドルで選手たちにはどのような言葉を掛けたのか。

「今日の結果としてはボーナスポイントも取れて、いい形だったのかもしれませんが、入替戦は2試合ありますから、次の試合でしっかり勝つことが大事。そこで負けたら入れ替わってしまうかもしれない。本当に喜ぶのは、来週、ホストに帰って、ファンのみなさん、そして『しまかぜ』メンバーのみんな、全員の前で、試合に勝って、部歌を歌おう、ということを伝えました」

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