三菱重工相模原ダイナボアーズ(D1)

それぞれの思いを胸に、ラストマッチも“全緑”で

昨シーズン三菱重工相模原ダイナボアーズのキャプテンとしてディビジョン1昇格に貢献したヘイデン ・ベッドウェル=カーティス選手にとっても、14日の入替戦がラストマッチとなる

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 D1/D2入替戦第2戦。三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)が海老名運動公園陸上競技場に豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)を迎える。

第1戦で勝ち点 5を先取した相模原DBだが、油断はできない。副キャプテンの鶴谷昌隆は「1戦目を勝っているがゆえに、一人ひとりが役割を遂行するためのマインドセットが課題になると、今週はチームで話をしています」と気を引き締める。

S愛知は、優位に立ったスクラムやモールで攻勢を掛けてくるだろう。プロップの石井智亮は「セットピースが第2戦のポイントになると考えています。準備をしてきたので、ホームでしっかりと勝利をつかみたい」と意気込む。

第1戦のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた坂本侑翼は自身のプレーに「満足感はない」と口にするが、プレー強度にカテゴリーの差を感じたと明かす。接点で強みを見せた相模原DBがセットピースでも相手を攻略できるかに注目したい。

試合後、相模原DBは今季をもって退団する選手とスタッフのお別れセレモニーを予定する。退団選手には、キャプテンとして2020年の1部初勝利を経験した土佐誠、昨季キャプテンとしてディビジョン1昇格に貢献したヘイデン・ベッドウェル=カーティス、15シーズン在籍した阿久田健策らベテランも多く名を連ねる。

今季序盤、相模原DBの躍進に大きく貢献したジェームス・シルコックも退団する。脳震盪の影響により、第14節以降のリーグ戦、そして入替戦第1戦も出場が叶わなかったが、給水係としてコミュニケーションに一役買った。17歳でプレミアリーグデビューし、U20イングランド代表にも選ばれるなど将来を嘱望されてきた25歳は、長らく所属したチームが財政破綻により解散し、厳しい状況の中で来日していた。「1年前、日本に来ることになるとは思いもしませんでした。不安もありましたが、チームメートに恵まれ、チームに貢献できる素晴らしい1年になりました。この国が好きになりました。いつか戻ってこれたらうれしいです」。来季はイングランドの名門チーム、レスター・タイガースに加入することが決まっている。

それぞれの選手が思いをもって臨む今季の最終戦をチームは“全緑”で戦い抜く。

(宮本隆介)


豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

「38点差」に挑む戦い。
熱きフィジー出身選手たちの思いとともに

豊田自動織機シャトルズ愛知のケレビ ジョシュア選手。「自分の立場でできることをやって、一人でもラグビー好きな人が増えるようにしたい」

第1戦を21対59で落とした豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)。あとがない状況だが、下を向く選手は一人もいない。徳野洋一ヘッドコーチは「準備したことを遂行しよう」と声を掛けた。これまで積み上げてきたものをパフォーマンスできれば、38点差をひっくり返せる。そう意気込んで海老名運動公園陸上競技場に乗り込む。

アーリーエントリーとして今季加入し、フランカーとして第1戦に出場したナイバルワガ セタは、第2戦も出場を予定。「ポテンシャル抜群」と指揮官も評するフィジー出身の22歳は、コーチ陣の大きな期待を受けている。フィジー代表選手であった父親が日本で指導者になることをきっかけに、12歳のときに来日した。約10年、日本に住んでいることもあり、日本語も達者。「社会人になると、周りの選手からあまりアドバイスをもらえないと思っていた。しかし、S愛知のチームメートやコーチは熱心にアドバイスをくれる」(ナイバルワガ セタ)。

そんな“セタ”の学生時代を知るチームメートが、ケレビ ジョシュアとジョネ・ケレビの兄弟。兄のジョシュアは秋田ノーザンブレッツでプレーしていたときに知り合い、弟のジョネは天理大学時代のルームメートとして3年間をともにした。同じフィジー出身ということもあり、家族ぐるみで仲が良い。

最近までセブンズ日本代表に合流していたケレビ ジョシュアは、第2戦はフルバックで出場予定。「セブンズは同じラグビーだけど練習からまったく違う。体重も10kgくらい落とした」(ケレビ ジョシュア)という。天理大学に入学することをきっかけに日本へ。「世界の大国の日本というイメージがあったから、日本人はみんな英語を喋れると思っていた(笑)。でも、逆に日本語しか聞かない環境だったからこそ、少しずつ上達していった」

ラグビーやS愛知に対する思いは人一倍強い。「ファンが楽しんでくれるようなプレーをS愛知でしたいし、日本にやってくるフィジー人のモデルにもなりたい。自分の立場でできることをやって、一人でもラグビー好きな人が増えるようにしたい」(ケレビ ジョシュア)。

いざ決戦。彼らの熱い思いがあれば、きっと歓喜を生む。

(斎藤弦)

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