2023.05.14NTTリーグワン2022-23 D1/D2入替戦 第2戦レポート(花園L 56-21 浦安DR)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン 1/ディビジョン 2 入替戦 第2戦
2023年5月13日(土)12:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 56-21 浦安D-Rocks

聖地に描かれたコントラスト。
花園Lは安堵し、浦安DRは悔しさにまみれる

ディビジョン1残留を喜び合うクウェイド・クーパー選手とウィル・ゲニア選手

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1/ディビジョン2 入替戦第2戦のノーサイドのホーンが鳴り響いた瞬間、ラグビーの“聖地”で非情なコントラストが描かれた。シーズン中は1勝しかできず、昇格組として悔しさを味わい続けてきた花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)が歓喜と安堵の表情を浮かべ、練習試合を含めて無敗ロードを突っ走ってきた浦安D-Rocks(以下、浦安DR)は運命の入替戦でまさかの2連敗で、ディビジョン1昇格の夢を断ち切られた。

「2戦やって、やはり彼らのほうがいいチームだった」と浦安DRのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチは素直に認めたが、異なるカテゴリーで積み上げてきたものの違いが56対21というスコアに現れた。

勝ち点5と得失点差22のアドバンテージを持つ花園Lに対して、序盤から攻勢に出たのは浦安DR。しかし、ディビジョン1の猛者に鍛えられてきた守備は粘り強く、ゴール前に押し込まれながらも花園Lはトライを許さなかった。

「最初の10分間は体を張っていいディフェンスができたのが勝利につながった」とキャプテンの野中翔平は胸を張ったが、劣勢を耐えると前半25分までに連続3トライで浦安DRを突き放す。

第1戦との得点差を考えれば圧倒的に優位に立ったはずの花園Lだが、気を抜くな、とばかりにクウェイド・クーパーが自らのプレーでチームに喝を入れた。

前半27分、石井魁が自慢のスピードで左サイドを抜け出したかに見えたが、クウェイド・クーパーが強烈なタックルで突破を許さない。「フォワードに比べたら体が小さい自分が体を張ることでフォワード陣にやる気を与えたいと思ってプレーしていました」(クウェイド・クーパー)。左アキレス腱断裂から復帰したばかりの世界的名手のプレーがチームに響かないはずがない。

後半に2トライの活躍を見せたシオサイア・フィフィタもその一人。「世界の10番で一番タックルするんじゃないですか。体があまり大きくない(クウェイド・)クーパーがあれだけ当たったら僕ももっと当たらないといけないと思いました」

もっとも、ディビジョン2を席巻した浦安DRもスタンドに駆けつけたファンの前で意地を見せる。前半終了間際の42分、2つ目のトライを決めて27対14と後半に望みをつないだが、サイドを切り裂いた、流れるようなパスワークは、チームの地力を示すものだった。

後半4分にペナルティトライを許し、6点差に迫られた花園Lだったが、後半18分に浦安DRはラリー・スルンガがシンビンとなり、後半21分にもフランコ・マレーがハイタックルで退場。数的有利を生かした花園Lがその後5トライの猛攻で浦安DRをねじ伏せた。

ノーサイドの瞬間から、もう次なる戦いは始まっていた。野中は「爆発的にうれしいかなと僕は思っていましたが、どちらかというとやっとスタートラインに戻ってきたような感覚」と来季への思いを口にした。

そして、浦安DRのキャプテン・飯沼蓮は「こんな悔しい経験をできている人も世の中にいないと思うので、それに感謝して、これよりさらに上に行きたい」と懸命に前を向いた。

勝者と敗者は決したが、それぞれのラグビーはこれからも続く。

(下薗昌記)

花園近鉄ライナーズ(D1)

花園近鉄ライナーズの水間良武ヘッドコーチ(左)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ

「今日は先制ができて、先に得点を重ねられて、苦しい時間帯も自分たちのシステムを守りながら、みんなでつながりながらディフェンスもできました。前半の最後、それから後半の最初に取られて苦しい時間帯もありましたけど、そこをみんなで乗り切ってラスト20分で本当に自分たちがやりたい、目指しているラグビー、ディフェンスからアタック、スペースのあるところにアタックするラグビーが最後にしてようやくできました。本当に選手たちの努力と挑戦を誇りに思います」

──苦しい時期を乗り越えて大舞台で自分たちがやりたいラグビーができた一番の要因を教えてください。

「自分たちを信じ続けたことですね。やはり練習してきたことしか試合に出ない。昨日も(全体練習が)終わってから、先週キックミスをした選手とか、みんなが最後まで自分がここまでやったら試合にしっかりと発揮できるんだというところまで練習する。それが出せたところですね」

──試合のレビューはこれからだと思いますが、1シーズンやってみて、来季さらに飛躍するために何が必要なのかを教えてください。

「今季をスタートするにあたって準備の段階が不十分だったので、来季はみんながどれだけ準備しないといけないかを分かっていると思います。その準備というのはフィジカルの部分ですね。このディビジョン1でのコンタクトやスピードを今季体感できたので、今日の試合でやったアタック、ディフェンスをこのディビジョン1のレベルでもやれるようにみんながイメージを持って、この数カ月、次のシーズンが始まるまで過ごして、そのイメージを持ったまま練習でしっかりとやれるようにスケジューリングをしていくことが大事になりますね」

──ディビジョン1で戦い続けて、体感した試合の強度はやはり重要だったのでしょうか。

「非常に大きいですね。やはり各国の代表クラスや日本を代表するような選手とコンタクトをする。ディビジョン2だったら、これまで簡単に抜けていた。簡単に止められていたところが簡単に抜けないし、ディフェンスでも1対1でやられる。2対1でもやられる場面があった。これを体感できたことはいまから自分が何をしないといけないかの指標になるので非常に大事な1シーズンでしたね」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「勝てたんですけど、まだ反省点が見えますし、本当に未来につながるというか、来季につながるいい試合になったんじゃないかなと思いました。ありがとうございました」

──苦しい時期を乗り越えて大舞台で自分たちがやりたいラグビーができた一番の要因を教えてください。

「本当に苦しい時間で一人にならないというか、練習のプロセスの中でチームで解決していく、組織で前を向いていくところが今日の試合で出たと思います」

──今日の試合は前半からディフェンスでフォワードを中心に近場で耐えたところが攻撃につながったと思いますが、手ごたえを教えてください。

「そうですね、試合もチームに出したメッセージも新しいことは何もないし、スペシャルなことも何もなく、ただひたすら泥臭く、特にフォワードがしんどいこと、痛いことを進んで自分たちからやっていこうと。その先に自分たちのスタイルがあるし、遂行したいスタイルがある。本当に仰るとおり、最初の10分間は体を張っていいディフェンスができたのが勝利につながったと思います」

──シーズンの最後の試合でそういうプレーが出せた要因を教えてください。

「自分一人で戦っているのではないと認識できたというか。ピッチに出ている15人が責任を果たす中で、自分たちにしかできないけど、自分たちだけの思いで戦っている訳ではなく、『しまかぜ』メンバーや水間さん(水間良武ヘッドコーチ)が率いるコーチ陣やマネジメントスタッフ、チームを多方面から支えてくれている方たちの思いを形にするのが僕たちの仕事だったので、そういうチームへの愛を形にしようとしたことが要因だったと思います」

──残留が決まったことへの率直な思いを聞かせてください。

「けっこう、そのあとのことをイメージするタイプで、爆発的にうれしいと思っていましたが、どちらかというとやっとスタートラインに戻ってきたような感覚です。勝ちに対してはすごくうれしいですが、自分たちが最初に目指していたのはトップ4で、それとは程遠い結果だというのは間違いないです。そのチームのキャプテンをやっていたので、しっかりと真摯に受け止めて、また次に進まないといけないと思っています」

──「関西のラグビーを盛り上げたい」と野中キャプテンはおっしゃっていましたが、関西のチームをディビジョン1に残留させられたことについてはいかがですか。

「関西のチームをそこまで背負っているつもりはないんですけど(笑)、すみません。いい答えが出せなくて。でも、関西というか、僕自身、この東大阪市に住んでいて自分の地元より気に入ってて、すごく住みやすい環境で周りの人が『頑張れ、頑張れ』と自転車に乗る度に言ってくれる。そういう人たちがまた、高いレベルでのラグビーを来季観に来てくださる、また一緒に戦えることはすごくうれしいです。その結果、関西のレベルアップにつながるのかなと思います」

──来季さらに飛躍するために何が必要なのかを教えてください。

「インディビジュアル(個々)のところですかね。チーム全体の練習の中で個々のハンドリングとかタックルをやる時間は、そんなに取れなくて、やっぱりシステムメインの時間になってしまうので、それまでに最低ラインに上げるというか、個々のレベルアップが大切になってくると思っています。また、それを一人でやるのではなくて、本当にいい人間関係が築けてきてますし、コロナも収まってきているのでインフィールド、オフフィールドでしっかりとつながって、みんなで自主練もしますし、コミュニケーションも取りますし、水間さんがおっしゃったようにもっといいスタートを切りたいと思います」

浦安D-Rocks(D2)

浦安D-Rocksのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ(左)、飯沼蓮キャプテン

浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

「いま、選手たちも辛い感情で失意の気持ちが強いと思いますが、まずは花園近鉄ライナーズさんの残留、おめでとうございます。2つのチームの中で二戦やって、やはり彼らのほうがいいチームだった、上手でした。(ウィル・)ゲニア、(クウェイド・)クーパーをはじめ、ゲームコントロールが上手くできていたという試合内容だったと思います。試合としては序盤、1戦目のように良いスタートを切れましたが、そこからは相手にエリアを取られてスコアを重ねられてしまい、それが自分たちにとって重圧となりました。後半、巻き返し始めたところはチームとしていい気概を見せられたと思います。ですが、そこで作り出したチャンスをイエローカード、レッドカードでつぶしてしまう厳しい試合になりました。全体的には2戦とも厳しい戦いを強いられた。自分たちはスコアボードの結果よりは絶対にいいチームだと思っていますが、この先、ディビジョン1に昇格するにはとてつもない努力が必要なんだと思い知らされた試合でした。この先自分は、このチームのリーダーとして自分を見つめ直し、反省し、次のシーズンに生かしたいと思います」

──今季は相当充実した戦力で臨まれたと思いますが、それでも昇格に届かなかったのは一番何が足りなかったのでしょうか。

「コーチ陣で見直すのはすごくあとになると思います。いま、現段階で、試合に負けたあとでいろいろな感情が交差している中で、自分が後悔するようなコメントは口にしたくないので言葉は気をつけないといけないですが、ここ2週間、セットピースの部分で苦しんだのでそこは向上できる点だと思います。スクラムとラインアウトでもポゼッションがあったのにそこを失っている部分がいくつかあり、あとは22mに入ってからのポゼッションを保つことはできるのですが、そこから決め切る精度が課題だと思います。しかし、コーチ陣で正式にそこのレビューを行い、シーズン後にこの先に生かしていきたいと思います」

浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン

「今日はありがとうございました。本当にシンプルに自分たちのやってきたことは間違っていなかったと思うのですが、質と量が足りなかったと思います。自分にとってもチームメートにとっても人生はそんなに簡単じゃないと思うし、こういう経験をできたことでさらに上に行けるかなと。昨季も同じことを言ったのですが、なかなかこんな悔しい経験をできている人も世の中にいないと思うので、それに感謝して、これよりさらに上に行きたいと思います」

──ペナルティの部分がかなり大きく響いたと思いますが、フィールドでプレーしていてどこに問題があったのか、あるいはどう改善していくべきでしょうか?

「前半はペナルティに気をつけていて、今までの試合と比べるとそんなに多くなかったですが、後半は点数と時間の焦りが見えて、ペナルティになってしまった。でもこの一年をとおしてやっぱりそこが一番、自分たちの首を絞めたところだと思います。それは来季改善していかないといけないし、ペナルティだけでなく、ほかのところも劣っていたので、いい学びとして前を向いてやっていくしかないと思います」

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