2023.05.14NTTリーグワン2022-23 D1/D2入替戦 第2戦レポート(GR東葛 12-13 三重H)
NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン 1/ディビジョン 2 入替戦 第2戦
2023年5月13日(土)12:00 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 12-13 三重ホンダヒート
歓喜のD1昇格も「通過点」。
三重Hは、まだまだ上を目指す
ルーズボールを拾った根塚聖冴が、タッチラインの外へボールを蹴り出した瞬間、ノーサイドを告げるホイッスルが鳴り響いた。柏の葉公園総合競技場で行われたNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1/ディビジョン2 入替戦第2戦は、終始、見ごたえのある攻防が繰り広げられ、13対12で激闘を制した三重ホンダヒート(以下、三重H)がディビジョン1昇格を手にした。
NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)が立ち上がりから圧力を掛けてくることは「想定内だった」と三重Hの古田凌キャプテンは自分たちの試合の入りをこう話した。
「『入りの20分で相手を圧倒しよう、ドミネートしよう』とは言っていました。それはシーズンをとおしてやっていたことなので、焦らずに自分たちのやることやって、力強くディフェンスできて立ち向かえたと思います」
さらに序盤の狙いに置いていたのは、相手の圧力を受けるだけではなく「先手、先手を打って先制していこう」(古田)ということだった。風上の状況を生かし、前半13分にはケイレブ・トラスクのペナルティゴールが決まった。攻守両面において最高の滑り出しを見せた。
それでも、上田泰平ヘッドコーチが「GR東葛さんの底力を最初から感じた。テリトリーやフィジカルバトルで前に進むことができなくて苦戦した」と振り返るとおり、ラクな試合展開になった訳ではない。むしろ、トム・バンクスが前半の早い時間で退き、後半はケイレブ・トラスクがシンビンになるなどのアクシデントがあり、苦しい時間帯も長かった。そこで崩れることなく、冷静に試合を進められた要因に、古田は第1戦の経験を挙げた。
「第1戦では13人になったり、ノーコンテストスクラムになったりしました。そういうことは、あまりないことだと思うんです。その中でも、みんながハードワークをして最後勝ち切れたので、あの経験がこの試合に生きたと思います」
上田ヘッドコーチは、今季の戦いを通じて「全員がユーティリティー化している自信はありました」という。コーチ陣の要求以上のものに普段から選手たちがチャレンジし、それをグラウンドで表現していた。「ポジションが入れ替わったとしても対応できる力が付いていった」と、上田ヘッドコーチは選手たちの取り組みの成果を称えた。昇格の懸かる大一番で集大成とも言うべきパフォーマンスを発揮し、さらに第1戦の経験も生かした三重Hが、拮抗した紙一重の勝負を手繰り寄せた。
「ディビジョン1昇格という今季の目標を達成できたのはチームとして素直に喜ばしいことですが、これは一つの通過点。僕たちはどんどん上を目指して、ディビジョン1でも三重Hのラグビーを見せていきたいと思います」
チームを引っ張ったキャプテンの古田は、充実した表情で昇格の喜びを語りながらも、彼の視線はすでに来季のディビジョン1へ向けられていた。
(鈴木潤)
NECグリーンロケッツ東葛(D1)
NECグリーンロケッツ東葛
ロバート・テイラー ヘッドコーチ
「まずは三重ホンダヒート(以下、三重H)に、『勝利おめでとうございます』と言いたいです。今日、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)はすべてを出し切ったと思います。また、サポーターに対しては、こういう結果になってしまって申し訳ないと思っています。GR東葛、今季、ポジティブな成長があったと思いますが、最後にこういう結果になったのは残念です。私はプレーヤーを誇りに思います。最後まであきらめない気持ちやチームに対する思いは誠実なものだと感じていますし、ここだけは偽りないことだと思います。先週の試合の結果もあって、GR東葛は追いかける形になったんですが、そういう場面でも三重Hはリードをしている優位なところからスタートして、最後まであきらめずに戦ったチームだと思っています。マノ(レメキ ロマノ ラヴァ)もこのチームを引っ張ってくれて、チーム全体に高いスタンダードを設けてくれたことを感じています。結果としては後退することになりましたが、この先、このチームがまた3歩進むことを信じています」
NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン
「本当に結果は残念でした。また、キャプテンとして、今日の結果をつかみ切れなかったところに責任を感じています。これがプロフェッショナルスポーツの厳しい世界での結果なので、来季以降はイチから作り直すつもりで、さらに良いチームを作り上げたいと思っています。しっかりと作り上げて、もっともっと強いNECグリーンロケッツ東葛になって帰ってきます」
三重ホンダヒート(D2)
三重ホンダヒート
上田泰平ヘッドコーチ
「みなさんお疲れさまです。三重ホンダヒート(以下、三重H)、ヘッドコーチの上田泰平です。今日は入替戦の2試合目ということで、最初からNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)さんの勢いあるプレーに、拮抗しながらでも戦えた試合だったのかなと感じました。ただ、GR東葛さんの底力を一番最初から感じたというのは、GR東葛さんの準備の仕方は勉強になることがたくさんありました。三重Hとしてはこの間の続きではなく、もう一回ゼロから、イチから準備をやっていこうと準備をしてきたんですけど、なかなかテリトリーやフィジカルバトルで前に進むことができなくて、苦戦した印象があります。その中で古田凌を始め、リーダー陣がしっかり落ち着きながらプレッシャーを掛け切ることができたのは本当に誇らしいと思いますし、特に最後のフォワードの頑張りには敬意を表したいと思います。あとはパブロ(・マテーラ)のキックにも敬意を表したいと思います」
──第1戦と同じようにアクシデントがありましたが、最後までタフに戦えたことは今季どのような努力を積み重ねてきた結果でしょうか?
「あらゆることを想定しながら、コーチ陣としては準備をしているんですけど、それにどうやって慣れさせてトレーニングをさせていくかという話だと思います。基本的には練習自体が15対15の激しめの練習をシーズンの最初からやっていました。強度が高く、ずっと特定の選手をグラウンドに出せないので、その中で複数の選手がいろいろなポジションをこなしながら、コンディションを整えながらやっているので、ある程度全員がユーティリティー化している自信はありました。その中で練習中には選手自身がコミュニケーションを取って、自分たちが入れ替わったりして、『あいつがあのポジションに入って何をしているんだ』と思いながらも、そういうことが良い結果に結び付いた。むしろそういうことを経験したことで、コーチだとどうしても特定のポジションを練習させたがるとか、選手に対しての成長の機会をある意味奪ってしまうときがあるとは思うんですけど、そういうのを選手自身からこじ開けながらやってくれたところで、このようにポジションが入れ替わったとしても対応できる力が付いていったと思います」
三重ホンダヒート
古田凌キャプテン
「お疲れさまです、キャプテンの古田凌です。今日の試合は雨ということで、ロースコアになることは予想していて、NECグリーンロケッツ東葛さんは素晴らしいアタック、ディフェンス、フィジカルバトルをしかけてきて、難しい時間帯、タイトな時間帯も今季で一番多かったと感じています。三重ホンダヒート(以下、三重H)としては、しっかり今までやってきたことを信じて80分間戦い続ける。結果だけを見るのではなくて、目の前のバトルに挑戦しながら、楽しみながら80分間ラグビーができたと思います。その結果が、1点差で勝ち切れた結果だと思っています。目標としていたディビジョン1昇格を達成することができて、すごく自分自身もうれしいですし、チームとしてもすごくうれしく思っています。でもこれを喜んで、来季はディビジョン1で戦うので、またさらにレベルアップした三重Hを表現できればいいと思っています」
──トム・バンクス選手が早々に交代し、後半はケイレブ・トラスク選手がシンビンになりました。予想外のトラブルが起きましたが、チームを落ち着かせるためにキャプテンとして、ハドルではどのような話をして、そして80分戦い続けることができたのでしょうか?
「そこまでハドルを組んだときに、そんなに焦っていなくて、みんなの顔を見ても焦っていなくて、『イケるな』という感触はありました。でも、一旦落ち着かせるためにも深呼吸をしたり、もう一回僕たちの強みに立ち返ったりと、そんなに難しいことは言っていないので、アタック、ディフェンスはシンプルにやっていこうとは伝えてありました。みんなを信じてやっているので、そこは全員が一人ひとりの役割を果たそうと言いました」