2023.12.11NTTリーグワン2023-24 D2 第1節レポート(GR東葛 31-28 浦安DR)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2(リーグ戦) 第1節
2023年12月9日(土)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 31-28 浦安D-Rocks

新しい扉を開ける“ナミビアのゴールデンブーツ”。その右足が勝利への放物線を描いた

新しくNECグリーンロケッツ東葛に加入したティアン・スワネポール選手(スタンドオフ)は、27歳。「ナミビアでプレーする若い選手たちのロールモデルになれたらいいと思う」

12月9日、NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24が開幕した。今季、ディビジョン2の舞台で戦うNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)の初戦は、強敵の浦安D-Rocks(以下、浦安DR)。澄み渡った冬空の下、ホストスタジアム・柏の葉公園総合競技場にはリーグワン開催時の過去最多となる5,066人が詰めかけ、D1昇格を見据えた両チームの戦いに期待が高まる。試合は一進一退の攻防の末、GR東葛が3点差で浦安DRを下し、CREW(GR東葛のファンの呼称)たちの熱い声援に見事に結果で応えてみせた。

この試合で、最も大きな歓声と、最も大きなどよめきが起きたのは、二度のペナルティゴールを狙う場面だった。ゴールデンブーツ(素晴らしいキッカーの呼称)を履くのはGR東葛に今季加入したティアン・スワネポール。ラグビーワールドカップ2023フランス大会にナミビア代表として出場し、正確無比のロングキックで名を馳せたスタンドオフだ。

最初の歓声は後半20分のペナルティゴール。ハーフウェイラインよりも自陣側、ゴール正面から少し右。ゴールポストまではおよそ55m。「ドスッ」と、重たそうな音を立てて飛び出した(まさに、発射した!)ボールはポストの真ん中を悠々と越えていった。もちろん、このペナルティゴールは試合の流れを引き寄せる貴重な追加点だったわけだが、それよりもっと深いところで観客の心をつかんだ。そして、二度目のペナルティゴールのときは、会場全体からどよめきが起きた。またしてもハーフウェイより自陣側、ゴールまではおよそ55m。試合終了のホーンが鳴り終わると同時に、ボールが飛び出す。今度はわずかにショート。ボールはゴールポストの手前で落下した。終わってみれば、互いに4トライ4ゴール。勝敗を分けたのはペナルティゴール1本の差だった。ティアン・スワネポールのブーツがチームを勝利に導いたと言っていい。

リーグワンでプレーする唯一のナミビア出身選手は言う。「ナミビアでプレーする若い選手たちのロールモデルになれたらいいと思う。ナミビア国内だけでなく、海外でもプレーできるんだということ。フランスや南アフリカやアメリカだけでなく、日本でもね。ぼくの存在が、新しい扉を開けることになったらうれしい」。

ティアン・スワネポールのブーツから発射されたボールは、晴れた冬空に向かって、高く、高く吸い込まれていって、それからゆっくり落ちてくる――。また見たい、見てほしいと思わせてくれる選手が目の前にいる。なんと幸せなことだろう。

(平野有希/Rugby Cafe)

NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ(左)、レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ

「開幕戦、ホームでの試合で大勢の観客のサポートがあるなか、勝利でみなさんを喜ばせることができてうれしい。まだまだ改善していかなければいけないことはあるが、とはいえ、やはり初戦で勝てたことを素直に喜びたい」

──チームにどんなラグビースタイルを持ち込もうとしているのか。昨季から変えた部分はどんなところでしょうか。

「特にディフェンスシステムは大きく変えた。アタックでも新しいストラクチャーを取り入れた。セットピースの部分も含めて、ほかにもいろいろ変更したが、いずれも基本に忠実であること、着実に遂行することを大事にしている」

──選手たちに期待することはどんなところでしょうか。

「私のコーチングでは、まずは選手に喜んで、笑顔でプレーしてもらうことが最優先。テストラグビー(代表の試合)とクラブラグビーは少し違う。もちろん基本的なスキルがなければならないし、ラグビーは最終的にはフィジカルなスポーツだから、コンタクトエリアでのプレーを楽しむことも必要だ。今日はその部分で、いいチャレンジができたと思う。ここから成長あるのみだ」

NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

「パーフェクトな試合ではなかったけど、しっかり勝てたことがよかった。課題はたくさん出たが、最後にゴールラインのところで我慢強くディフェンスできたことは昨季より成長したところ。オフシーズンにレスリングや柔道を取り入れましたが、そのハードワークの成果だと思う。今までのNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)とは違う姿を見せられて、勝って、めちゃうれしい」

──後半開始早々にハイパントキャッチから独走してトライにつなげた場面で、特に意識していたことはありましたか。

「相手チームを分析して、キックのあとにブロッカーがいないことが分かっていた。あの場面は相手のミスキックだったと思うけど、いいところにボールが落ちてきたから、そのまま抜けた。いつでも行ける自信があった」

──ラグビーワールドカップ2023フランス大会からチームに戻って、どんな気持ちでプレーしているのでしょうか。

「コーチも代わって、システムも変わっているので、新人のような気持ちでいろんなことを学んでいる。自分のプレースタイルにも合っていて、自分が動けばボールが来る。(GR東葛に加入して)3年目になるけど、今季が一番楽しい」

浦安D-Rocks

浦安D-Rocksのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ(左)、飯沼蓮キャプテン

浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

「敗戦にはがっかりしているが、まだ初戦なので修正していく時間はある。試合をとおして見れば、チャンスは多く作れていたが、自分たちの簡単なミスで決め切れなかった。初戦ということで緊張もあったかもしれない。これから成長して強くなっていきたい」

──ブレイクダウンでのペナルティについて。どのように改善できると考えていますか。

「カウンターラックの部分では自分たちが圧倒していたように思うが、NECグリーンロケッツ東葛もブレイクダウンに勝負を懸けていたから、フィジカルは激しくなるものだ。ペナルティに関しては自分たちに有利にも不利にも転がるので、そこは受け入れて、成長していきたい」

──今季のテーマでもある「インテンシティー(強度)」について、どれくらい意識できたのでしょうか。

「そこについては、100%を見せられたとは思っていない。細かいところでのミスが目立ったし、スクラムでも少し慌てているように見えた。インテンシティーは80分とおして見せるべきものだが、練習では(公式戦のような)プレッシャーがないし、レフリーも違う観点で見ているので、チームとしての取り組みが試されている。どれだけインテンシティーを保ち続けられるかが大事だ」

浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン

「結果は結果。まだ初戦ですし、ここから成長するチャンスを与えてもらったと考えればいい。昨季は(レギュラーシーズンで)全勝して、最後に(入替戦で)負けたが、今回はいい経験をさせてもらいました。またチームが一つになって、前を向いて成長していきたい」

──相手のアタックを止め切れなかった点について。

「自分たちのペナルティで、相手に簡単にチャンスを与えてしまったが、いま、ここで課題が見つかったのはよかった。これが入替戦なら、終わりだった。そこはポジティブに捉えています」

──ゴール前のチャンスが何度かあった。そこでトライを取り切れなかった要因は何だったのでしょうか。

「ゴール前は相手も下がっていないのでアタックが難しいゾーンということもあるが、やっぱり一歩でも前に出るという意識やどれだけ我慢強くアタックし続けられるかが大事。やりたいことは悪くなかったと思う」

──今日の負けをどのように受け止めているか。

「僕はポジティブです。負けないと見つめ直せないし、負けないと自分たちの本質が見えないことがある。だからこそ、僕はポジティブです」

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