2023.12.23NTTリーグワン2023-24 第3節 釜石SW vs 浦安DR-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第3節
2023年12月24日(日)12:00 ハワイアンズスタジアムいわき (福島県)
日本製鉄釜石シーウェイブス vs 浦安D-Rocks

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

前節まではフォワード、今節はバックス起用。
“二刀流”の石垣航平、悔しさを奮闘の糧に

フォワード、バックスの“二刀流”での活躍が期待されているという日本製鉄釜石シーウェイブスの石垣航平選手。12月10日の試合ではフランカー(写真)、今節はセンターでの出場となる

日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)は、12月24日に福島県の「ハワイアンズスタジアムいわき」で浦安D-Rocksと対戦。今季、唯一の県外開催となるホストゲームで初勝利を狙う。

フォワード陣の吐く息が白い。雪も降り、冷え込むグラウンドではスクラム練習に熱が入っていた。その中には、昨季までバックスでプレーしていた30歳の石垣航平の姿があった。「とにかくやりながら、聞きながら、勉強の日々です」と、初挑戦のセットピースは手探り状態だ。

石垣は身長183cm、体重98kgとがっしりした体格で、ウイングやセンターなどでプレーしていた時から力強いボールキャリーを見せ存在感を示してきた。今季は開幕から2戦連続、フランカーで先発起用されると、前節も終盤の大事な場面で鋭いランからトライを奪取。新たなポジションでも持ち味は健在だ。

「最初は冗談かと思った」というフランカー挑戦は、今年8月、石垣の体の強さへの評価はもちろん、膝への負担軽減や選手生命を考えた末に須田康夫ヘッドコーチが持ち掛けた提案だった。ただ、須田ヘッドコーチ、石垣ともにポジションの転向という意識ではなかった。今節、再びセンターで起用されているように、フォワード、バックスの“二刀流”での活躍が期待されている。石垣は「新たな挑戦でラグビーへの理解度も深まり幅も広がる。バックスはずっとやってきたので、またすぐにコミットできる。チームがうまく回るのであれば、求められたところで頑張るのが選手として一番」と、異例の挑戦にもどん欲な姿勢を見せる。

前節は石垣の再逆転トライもありながら、接戦の末、勝利をものにできなかった。そんな中、今季、試合終了後の円陣で須田ヘッドコーチが最も活躍した選手にトロフィーを手渡しているのだが、前節はコンタクトエリアで圧倒するプレーにトライ、そして、キツいスクラム練習などもやり切り、周りからの信頼を得てきた石垣に手渡された。

しかし、石垣は一言も発することができず、涙を流し、悔しさをにじませた。仲間のほとんどが、普段、何事にも淡々と取り組む石垣が感情を表に出す姿を初めて見た。「ガッキー(石垣)の熱さを感じた。みんなやっぱり『勝ちたい』んだ」と、キャプテンの小野航大も特別な思いでその姿を見つめていた。

「次戦もどれだけロースコアで接戦に持っていけるかが勝負のカギ。80分間、強度を高めて、全員で集中力を持ってやりたい」(石垣)

決して口数が多いほうではないが、今季、ひたむきに挑戦する姿と、内に秘めた熱い思いでチームを動かしている石垣。あと一歩で勝利を逃した悔しさは奮闘の糧になるに違いない。

今季初めてのセンター起用でどんなプレーを見せてくれるのか期待したい。

(佐々木成美)

浦安D-Rocks(D2)

ついに復帰。勝利のプレゼントを届ける“オテレサンタ”

浦安D-Rocksのオテレ・ブラック選手。けがから復帰、自身にとっての開幕戦を迎える(写真は昨シーズン、2023年2月26日 対豊田自動織機シャトルズ愛知戦)

前節のホストゲームで今季初勝利を飾った浦安D-Rocksは、24日に連勝を懸けて日本製鉄釜石シーウェイブスとビジターゲームで対戦する。クリスマス前日、年内最後のゲームを勝利で締めくくりたい。

万全な準備を整えて、オテレ・ブラックが今季初めてのピッチに立つ。

28歳のスタンドオフは開幕戦に照準を合わせ、プレシーズンを順調に過ごしてきたが、その直前に負傷。昨季は立っていた第1節のピッチに立つことはできなかった。それでも、メディカルチームとコミュニケーションを図りながら、負傷箇所を休ませつつ、コンディションを上げることに努め、最短距離で復帰の道のりを歩んできた。

「体の調子もよく意気込んでいたのでけがは残念だったけど、不幸中の幸い2試合の欠場ですみ、ターゲットにしてきたこの試合で復帰できた。もう100%でプレーできるし、チームメートと一緒にプレーできるのが楽しみだね」

ついに訪れた彼にとって2023-24シーズンの“開幕”に、はやる気持ちを抑えられない様子だ。

ラグビーの本場・ニュージーランド出身のオテレ・ブラックが、日本に戦いの場を移してすでに4シーズン目に突入。いまや、日本のラグビースタイルに魅了されている。「日本のラグビーはすごくテンポが速く、スキルが高い。フィールドを広く使い、ウイングやフルバックのスピードやフットワークは素晴らしい」と絶賛し、環境や気候についても目を細める。

「どの試合を観ていても、リーグワンの観客数は多いと思うし、何より日中の晴れた日に試合をやるのはいいことだね。ニュージーランドはいつも雨が降っていて、そうするとモールとスクラムの繰り返しになってしまうことが多いんだ(笑)」

日本でのプレーに好印象ばかりを抱くオテレ・ブラックは、クリスマスシーズンに試合を行うことにもすっかりと慣れたようである。

「ニュージーランドはクリスマスが祝日で、いまの時期はバーベキューをしたり、ビールを飲んだり、ビーチでのんびりしたりリラックスしているけど、自分は寒い気候でラグビーをしている」と、そのギャップを豪快に笑い、「日本に来るまではクリスマスに試合をする経験はなかったけど、日本に来て慣れたね。まあ、これが僕の仕事だから問題ないよ」と青い空と緑の芝生と白い楕円形のボールが待ち遠しそうであった。

舞台はハワイアンズスタジアムいわき。オテレ・ブラックがサンタクロースの如く、ビジターの地に駆け付けたファンに勝利という名のプレゼントを届ける。

(須賀大輔)


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