釜石シーウェイブスRFC(D2)
特別な日に、特別な場所で。「勇気を与えられるプレーを」
釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)は今節、浦安D-Rocks(以下、浦安DR)戦に臨む。東日本大震災の起こった3月11日の翌日に開催され、会場も津波に飲み込まれた旧鵜住居小学校、釜石東小学校の跡地に建てられた釜石鵜住居復興スタジアムとあって、釜石SWにとっては特別な意味を持った試合となる。
大学生のときに仙台で被災したという武者大輔は宮城県沿岸部に位置する亘理町の出身。その地元同様、大きな被害を受けた釜石という地に根差したクラブに今季加入し、特別な日、特別な場所でプレーすることに大きな意義を感じている一人でもある。
「今日(取材日)もチームで話をしました。『この試合はレギュラーシーズンのただの1試合ではない。勇気を与えられるプレーをしよう。そのためにトレーニングから震災のことを胸に刻んで取り組もう。被害を受けた場所に建ったスタジアムでプレーするということをしっかり意識して準備しよう』と伝えました」(武者)
32歳とベテランの域に入った武者は、チームをポジティブな方向に向かわせる発信力を持つ。前節も試合前のロッカーでチーム全体の士気を高める熱い言葉で鼓舞。結果は最終盤にペナルティから6点を失っての敗戦となり、上位3チームに入る可能性はついえたが、何度も食らいつき、一時は逆転に成功するなど、地元ファンを大いに沸かせたのは事実だ。
今節の対戦相手は全勝中の浦安DR。個の力が非常に強力なチームで約1カ月前の対戦でも64点を奪われた相手だが、自分たちがやることをしっかりと遂行できれば勝機は見えてくるはずだ。
「まずはラグビー選手として体を当てるという当たり前のことをもっとやらなければならない。そのためにも、トライされるたびに沈むのではなく、しっかりとメンタルを強く保って戦うことが大事。細かいところを突き詰めて準備しています」(武者)
そういった選手たちの前向きな思考に呼応するかのように、今週は気温が21度まで上昇するなど、釜石にも春らしい陽気が訪れた。桜より一足早く、今季のホストゲーム初勝利という花を咲かせられるか。ホストゲーム3連戦の第2ラウンドが幕を開ける。
(髙橋拓磨)
浦安D-Rocks(D2)
この7連勝は高い目標があってこそ。「ゴールは、スタッフも含めて全員がワークアウトすること」
破竹の勢いで連勝を7に伸ばした浦安D-Rocks(以下、浦安DR)。スコア的にはこれまでと変わらない圧勝だったが、前節は少し内容が違った。前半に大量リードを奪う試合が続いていた中で、清水建設江東ブルーシャークスのディフェンスに苦しみ、前半30分まで7対0というロースコアを強いられた。しかし、キャプテンの飯沼蓮は「楽しかったし、いい経験になった」とポジティブに捉えている。
大量リード後に失速する展開が続いていただけに、後半にかけて粘りのアタックで得点を重ねられた経験は大きい。今後の順位決定戦や入替戦に向けてもいい経験になっただろう。この試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されたトゥクフカ トネもチームの成長を実感している。
「序盤はミスが重なって流れがつかみ切れないところがありましたが、チーム一丸で集中しようと話して、基礎のところから修正して勝利を取り切った流れになりました」
ただ、もともと下馬評が高かったとはいえ、ここまでの快進撃を続けることはチームとして想定内だったのだろうか。しかしトゥクフカは逡巡なく「イエス」と答える。
「シーズン前にチームとして設定したゴールが、スタッフも含めて全員がワークアウトすることでした。みんながそれを全うできたからこその勝利だと思いますし、全勝していることに驚きはないです」
決して過信はしないが、必要以上に謙虚になることもない。浦安DRは高い目標に向かっておごらずに前進を続けている。そんな中、試合2日前の木曜日は、全体練習後にかなり長い時間のミーティングが行われた。ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチがどんな言葉を発したのか、トゥクフカに聞いてみる。
「修正点を見直そうという話もありましたが、一番のメッセージは、(対戦相手を想定した)ビブス組やノンメンバー練習の選手たちへの『しっかりハードワークしてくれてありがとう』という内容のものでした」
豊富な戦力を擁する浦安DRならではの強みでもあり、悩みでもある。全員が試合に出たい。実力的に大きな開きはなく、紙一重でメンバーに入れない選手も数多いる。
「ノンゲームメンバーがいるからこそ、いい(トレーニング)セッションが成り立ちます。(今節の)メンバーとしても感謝でいっぱいです」
高い目標があるからこそ、気持ちをチームへと向ける。浦安DRは今節も一丸となり、無敗の8連勝へ挑む。
(沖永雄一郎)