2023.12.25NTTリーグワン2023-24 D1 第3節レポート(S東京ベイ 19-23 静岡BR)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1 第3節 カンファレンスA
2023年12月24日(日)14:30 ヨドコウ桜スタジアム (大阪府)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 19-23 静岡ブルーレヴズ

決着はラストプレー。劇的な展開に、緊張と興奮が交錯

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのデイン・コールズ選手、ニュージーランド代表90キャップ

たとえるならば、それは勝敗の行方がまったく読めないオセロゲーム。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)にとっては、最後の1枚ですべてをひっくり返されてしまったかのような、そんな試合だった。

前半20分、バーナード・フォーリーが危険を顧みず、インゴールでこぼれたボールに食らい付いて捨て身のトライ。直後には、グラウンドに頭部を強く打ちつけ、KOされたボクサーのごとく横たわるバーナード・フォーリーの姿があった。後半22分には、イエローカードでJD・シカリングを欠きながらも、スクラムからトライを狙う静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)の猛攻を何とかしのぎ切ってみせた。勝てば、すべてのエピソードは物語にとって重要な、切なくも美しいクライマックスとなっていた。しかし、オセロの最後の1枚が最後の1マスに置かれた瞬間、それらは物語のハイライトとしての力を失った。

S東京ベイは序盤から、らしくない戦いを強いられた。規律が乱れてペースをつかめず、チャンスを得点につなげられない。後半は4点差で静岡BRを追う時間が長く続き、残り時間7分を切ったところでテアウパ シオネがトライを決め、ようやく逆転。そして残り時間2分、S東京ベイはリーグ優勝を決めたあのときのように、ラックを組んでボールを保持。今季2勝目が、決まったものかと思われた。

だが、残り時間1分のところで、クワッガ・スミスがジャッカルに成功。再び静岡BRに大きく流れが傾いた。緊張と興奮が交錯するスタジアム。ホーンが鳴らされてからもゴールライン際の全力の攻防が続く。どちらにとっても胸突き八丁。観る側の心臓がいくつあっても足りないような、スリリングな接戦に終止符を打ったのは、「ラック際に潜り込んだら行けるのではないか」と咄嗟に判断し、果敢に敵網に切り込んだ静岡BRの家村健太だった。

その一瞬とも永遠とも思える瞬間に、つかみかけた勝利が指先からこぼれ落ちた。この試合はS東京ベイが今季迎え入れた世界的名プレーヤー、デイン・コールズとリアム・ウィリアムズのデビュー戦。そのインパクトも、勝負の圧倒的な無常さの前に濃度を薄めた。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのリアム・ウィリアムズ選手、ウェールズ代表95キャップ

「負けて残念ですが、いい経験ができたと思います。試合もエンジョイできました。いまはまだシステムに慣らしている段階で、日本式のスクラムの組み方も私にとっては学びです。課題は常にあるものです。今後も学び続けていきたいと思います」(デイン・コールズ)

「望んでいた結果ではありませんでしたが、グラウンドに立つことができてすごくうれしいです。今日は試合の流れをつかめませんでした。私にもチームにも課題はあると思います。少し休んで、気持ちを切り替えて、また来年に向けて準備したいと思います」(リアム・ウィリアムズ)

混戦で競り負けた、悔しい敗北。しかし、これはいつか来た道。勝ち切れず、トップリーグでもがいていたあの時代。現状を悲観せず、前を向き続けたからこそいまがある。忘れかけていた悔し涙のしょっぱい味が、男たちの反骨精神をさらにかき立てる。

(藤本かずまさ)

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(左)、立川理道キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「自分たちの試合ができませんでした。ペナルティも私たちが21本も重ねてしまったのに対し相手は3本という中で、エリアも取れず、プレッシャーの掛かった試合でした。いい学びではあったと思います。ただ、イエローカードもあった中でスクラムでは一生懸命にやるべきことをやって勝つことができた場面もありました。そういったところは選手たちを褒め称えたいと思います。この学びを生かして、しっかりと次につなげていきたいと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「(フラン・ルディケ)ヘッドコーチが言ったように、なかなか自分たちにペースが来ない、最後のトライのところまで自分たちの戦い方ができないままずっと試合が進んでいたのですが、そうした中でもこうして戦えたことは、ポジティブなことだと思います。ただ、最後にしっかりと勝ち切れなかった部分は反省すべきところです。判断や一人ひとりの役割というところをしっかりと修正していきたいです。こういうタイトな試合で勝ち切ったチームは強くなっていくと思うので、この負けからしっかりと学びを得て、さらに強くなっていきたいと思います」

──後半、4点差で追っている局面で、自陣で相手がスクラムを組んでいたときにはどういったことを考えながらディフェンスしていたのでしょうか?

「スクラムを組む選手たちはスクラムにフォーカスしていたと思います。自分たちはディフェンスする中で、人数が一人少ない中、相手がやってくることを予想しながら、隣の選手が誰を見ているというところを話していきながら、かなり劣勢な状況でもトライをされずに守り切ったところはすごく良かったと思います」

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(右)、クワッガ・スミス キャプテン

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督

「これまでの2試合が、(勝利まで)なんとか手が届きそうなところまでいって負けていたので、今日は最後まで絶対にギブアップしないように(臨みました)。前半は本当にうまく運べていたのですが、 後半はなかなか(得点が)取れなくて。 最後のあの一瞬のためにみんな厳しい練習をしてきたので、今日は本当に勝つことができてよかったです」

──ラストの10分はどのような気持ちでいたのでしょうか?

「本当だったらあのスクラムで(得点を)取れている予定だったのですが、最後まで点数も微妙な状況が続いていたので、『いけるかな』という感じはずっとありました。最後の、最悪のシナリオ(リードを許した試合終了間際で相手ボールのラックが続いた際)の練習もしていました」

静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス キャプテン

「本当にたくさんのチャンスを作っていたところもあったのですが、 後半は5mスクラムのところで取り切れないなど、苦戦した部分がたくさんありました。でも、選手たちの闘争心、姿勢の部分は素晴らしかったと思います。 選手たちがしっかりと(自分を)信じて、お互いを信じてプレーすることで、50mの距離をゲインして最終的にトライにつなげることができたと思います。いまのこのチームを象徴しているかのようなプレーだったと思います。これからはしっかりとミスなどの細かいところを修正していく必要があると思っています」

──試合終了直前の最後のジャッカルは、どのようにしてボールを奪ったのでしょうか?

「それは秘密です(笑)。みんながプランをしっかりと信じ切って、それを遂行し切ったことが一番重要だと思います」

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