2024.02.11クロスボーダーラグビー2024レポート(横浜E 22-57 ブルーズ)

THE CROSS-BORDER RUGBY 2024 第3戦
2024年2月10日(土)12:10 ニッパツ三ツ沢球技場 (神奈川県)
横浜キヤノンイーグルス 22-57 ブルーズ

世界の強豪との一戦でスタンドを沸かせた男。
指揮官の誉め言葉にも、崩さなかった謙虚な姿勢

たびたび相手ディフェンスを突破してみせた、横浜キヤノンイーグルスの竹澤正祥選手

昨季、リーグワン3位の横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)が世界屈指の強豪・ブルーズに挑んだ「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」は、横浜Eの挑戦を退けたブルーズが57対22で貫禄勝ち。地力の差を結果で示した。

自分たちが掲げる“アタッキング・ラグビー”で真っ向勝負を挑んだ横浜E。しかし、フィジカルの差は歴然としていた。コンタクトプレーの増加とともに「体力を削られた」(岡部崇人)横浜Eは次第に劣勢を強いられると、ブルーズの畳み掛けるアタックに失点を重ねた。前半38分にはヴィリアメ・タカヤワが意地のチーム初トライを奪ったものの、得点直後に突き放されるトライをブルーズに取られたため、前半を5対31で折り返した。

大量得点差を追いかける後半の立ち上がりは、互いにトライを奪い合う展開で推移。しかし、ブルーズの背中は遠く、後半22分の段階でスコアは12対50に広がっていた。

そんな矢先の後半23分。初トライを奪ったヴィリアメ・タカヤワに代わってピッチに立った竹澤正祥が、ニッパツ三ツ沢球技場の空気を変えた。

「いいぞ! タケ(竹澤)の粘り腰!!」

果敢なボールキャリーで左の大外のスペースを突いた竹澤に向かって、スタンドで見守るライザーズ(ノンメンバーの総称)からエールの声が飛んできた。そんな竹澤の勇気あふれるプレーにニッパツ三ツ沢球技場のスタンドも大いに沸いた。

“竹澤がボールを持てば突破口が開ける”。ライザーズや観衆からの期待が竹澤に注がれる中、待望の瞬間がやってきた。後半39分、「短いパスをつないでいくイーグルスらしい形」(嶋田直人)からつながったパスが大外の竹澤の手元へ届くと、竹澤がトライを奪取。ニッパツ三ツ沢球技場のボルテージが最高潮に達した。竹澤がトライのシーンをこう振り返る。

「外側にスペースができるように、内側の選手がフリーな状況を作ってくれた。スペースがなかったら、また違った結果になったと思う」

試合後の会見で沢木敬介監督は竹澤を名指しで称賛。さらに指揮官は「ビリー(ヴィリアメ・タカヤワ)と竹澤がウイングのスターティングメンバーの一番手」と言葉を続けた。なお沢木監督からの“褒め言葉”を伝え聞いた本人は「どこで違いを出せるかを考えている」と話し、謙虚な姿勢を崩さなかった。

(郡司聡)

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(左)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「現状はこれくらいのレベルの差があるのでは。もちろんいい経験になったと思うし、スーパーラグビー・パシフィックのレベルは今日の試合がノーマルだと思います。こういった試合の中で自分たちのパフォーマンスを出せないと、なかなか勝つことは難しいです。前半は準備をしてきたことがまあまあハマっていましたが、その中で作ったチャンスを仕留められなかったですし、粘り強さが足りなかったことが相手との違いです。そのほかにはラインブレイクをしたあとにトライまで持ち込めなかったことがありましたが、何度も言うように、これがスーパーラグビー・パシフィックのチームのノーマルです。自分たちのレベルを上げていかないと、日本のラグビーのレベルも上がっていきません。確かに力の差はありましたが、通用する部分もありました。例えばアタックの際のボールの動かし方やラインブレイクできる場面もあったので、とてもいい経験ができました。この経験を次につなげていきたいです」

──この試合を受けて翌週以降、トレーニングで取り組んでいくことはなんでしょうか?

「次節は東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦なので、今日のレベルを知って、どういう準備をするべきかを学べたし、通用しないことの詳細も分かったので、インターナショナルのスタンダードを基準にして練習していかないといけません」

──前節のコベルコ神戸スティーラーズ戦(以下、神戸S)の敗戦から、この試合に向けてのテーマ設定はどうだったのでしょうか。

「この時期に開催するリスクもありますし、勝ち点もつきませんが、やるからには真剣勝負でやらないと。その中で得られるものもあります。幸い、大きいけが人が出なかったですし、この試合の価値をしっかりと選手たちも理解してプレーできました。何度も言いますが、いい経験になりました」

──この大会がどう発展してほしいか。要望はありますか?

「それは僕らがコントロールはできないので、ベストな方法を考えてやってほしいです。やり方は分かりませんが、この試合で勝つことの価値をリーグ戦に反映させるとか、そういうレギュレーションにしていくと、『THE CROSS-BORDER RUGBY』に出るためにレギュラーシーズンで絶対に4強に入ろうとか、そういう目標になっていくと思います。しっかりとした仕組みがあれば、もっと発展していくのではないでしょうか」

──ブルーズの試合をどう分析して、チームに落とし込んだのでしょうか?

「前半は戦略がハマっていました。ラグビーはコンタクトプレーを避けられないので、前半に関しては継続的に(相手のコンタクトプレーを)止められなかったことがまだまだ自分たちにとって、足りない部分だと思います。準備してきたことを表現して、チャンスに仕留め切らないと、このレベルでは戦えないことが分かったので、次につなげていきたいです」

──この試合をとおして、評価が上がった選手はいますか?

「今日良かった選手は竹澤(正祥)です。現状のウイングはビリー(ヴィリアメ・タカヤワ)、ノックス(イノケ・ブルア)、松井(千士)、竹澤の4人ですが、僕の中ではビリーと竹澤がスターティングメンバーの一番手です。これは書いておいてくださいね。本人へのプレッシャーになるから(笑)」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

──前節の神戸S戦の敗戦から、この試合に向けてのテーマ設定はどのようなものだったのでしょうか?

「個人的にはとてもモチベーションがありましたし、この強度のチームと対戦する機会はなかなかないので、スーパーラグビー・パシフィックのチームに対して、チームとしても個人としてもどこまでチャレンジできるか、ワクワクしていました。試合がしたくて仕方がなかったです」

──次のBL東京戦に向けて、この試合で次に生かせることはなんでしょうか?

「ここ数試合は淡白なディフェンスが課題として出ています。今日の試合でもその課題は出ましたし、実際に失点につながりました。そういった点を改善しないと、BL東京さんもフィジカルがあって、コンタクトプレーでノってくるチームなので、今日の強度を基準に準備をしていきたいです。今日の試合はアタックで相手のディフェンスを崩すことができましたし、アタックは自分たちの強みであることを再確認できたので、いい部分はさらに伸ばしていきたいです」

ブルーズ

ブルーズのバーン・コッター ヘッドコーチ(左)、サム・ダリー ゲームキャプテン

ブルーズ
バーン・コッター ヘッドコーチ

──横浜キヤノンイーグルスと戦ってみての印象はいかがでしょうか?

「先週の東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)戦とは試合の入りが違いました。プレッシャーを感じながらもスコアを重ねることができたのが勝因になりました。横浜Eと東京SGの違いは、横浜Eは革新的なチームという印象を受けましたし、ラインアウトからのプレーも印象的でした。またウイングプレーヤーも印象に残っています」

──日本での2試合は若い選手がたくさん出ました。彼らはどんな経験を積めたのでしょうか?

「28人の選手を起用できましたが、オールブラックス(ニュージーランド代表)の選手は一人だけでした。若手選手がチャンスを得られた試合です。特に成長を感じた選手はメイハナ・グラインドレーやルーカス・キャシュモア選手です。またタウファ・フナキ選手も経験を積めたと思います。特にタウファ・フナキ選手はシンプルなことを非常によくやってくれました」

──ケイレブ・クラーク選手はニュージーランド代表から合流しました。3トライを取りましたが、そこまで活躍できる理由は何でしょうか?

「代表から戻ってきてうれしいです。彼はハードな練習を積んできました。体つきも良くなっています。ハードワークをすれば3つのトライを取れるというお手本を示してくれました」

──「THE CROSS-BORDER RUGBY」が今後どうなってほしいと思っていますか?

「われわれは今大会をエンジョイしました。今後は4チームの順位を決めるようなレギュレーションにしてほしいですし、その大会でわれわれは優勝したいと思います。来シーズンからも続けてほしいです。時期を言うならば、われわれとしてはプレシーズンかシーズン後がいい。1試合は日本でもう1試合はニュージーランドでと、交代で試合をするようなレギュレーションになることが望ましいです。繰り返しになりますが、これからも続けていきたいですし、試合のカレンダーをどうするか。レギュレーションを決定して続けてほしいです」

──横浜Eがトライを取ればすぐにトライを取り返し、突き放していました。それはもともとのチームの特長なのか。それとも今日の試合は結果的にうまくいったのでしょうか?

「ラグビーというスポーツはどちらが主導権を握るか、ということに尽きると思っています。相手にトライを取られたらトライを取り返すことは必要です。今日の試合は選手たちの反応がとても良かったです。相手にトライを取られればすぐに取り返すこともできました。またトライを取るために短い時間でどう自分たちの力を生かすのか。またチャンスで精度を上げてトライをするのか。選手たちはその点を学んでくれたと思います」

ブルーズ
サム・ダリー ゲームキャプテン

──違う国のチームと対戦して経験できたことについて、どんな価値がありますか?

「われわれは今回の遠征を楽しみにしていました。日本で大きな経験もできました。東京SGと横浜Eはスピーディーなラグビーを展開するチームでしたし、われわれはこの2週間で成長できました。2週間後にスーパーラグビー・パシフィックの初戦を迎えますが、自分たちの戦い方を整えるための経験を日本でできたと思っています」

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