THE CROSS-BORDER RUGBY 2024 第4戦
2024年2月10日(土)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 30-35 ギャラガー・チーフス
最後まで勝敗の行方が読めないスリリングな展開。
強豪相手に見せたたくましい姿
俺たちは、あくまで挑戦者。だが、胸を借りるつもりはさらさらない。そんな魂の叫びにも似たクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の信念が具象化されたかのような試合だった。
立川理道も、ピーター・ラピース・ラブスカフニも、バーナード・フォーリーも、そしてニュージーランドのラグビーを知るデイン・コールズもそこにはいない。S東京ベイは戦前、フラン・ルディケ ヘッドコーチが「若手選手に経験を積ませる」と語ったとおりの布陣でラグビー先進国の強豪、ギャラガー・チーフスと向き合った。メンバーが発表された際、ギャラガー・チーフスの圧勝を予期した者は決して少なくはなかったであろう。
しかしながら、試合開始からほどなくして、それはいささか乱暴な予想だったことに多くの者が気づかされることになる。素晴らしいハイパントキャッチも見せていた根塚洸雅選手は、前半25分にトライも取り切った。藤原忍がアクレッシブに躍動し、さらには岸岡智樹のパスワークが冴えわたる。後半には大型ルーキー、江良颯がスクラムで早速、そのポテンシャルの高さを発揮。この日はみんながたくましく、そして頼もしかった。
「海外の選手たちは体が大きいので、身長の低さを生かして相手に圧力を掛けることができました。この経験をしっかりと自分のモノにして、勝利に貢献できるように頑張っていきたいです」(江良)
そして残り時間5分、山﨑洋之が自身この日2本目のトライを決め、直後には島田悠平がコンバージョンキックを決め、ついに逆転を射程圏内に収めた。二人とも、プレシーズンマッチでは活躍を見せながらも、今季の公式戦ではまだ出場機会を得ていない選手たちである。
「今週、僕らはベーシックに立ち返り、基礎スキルを中心に取り組んできました。(ギャラガー)チーフスという強いチームを相手に自分たちのパフォーマンスを出せたことは、自信にもつながります。自分たちがやってきたことは間違いじゃなかった、ということを実感できました」(山﨑)
昨季王者の肩書とプライドを胸の小箱にしまい、純然たるチャレンジャーとして臨んだS東京ベイ。その生命感あふれるのびのびとしたファイトは、最後のワンプレーまで勝敗の行方が読めないスリリングで熱狂的な攻防を生み出した。結果だけを見れば5点差での惜敗ではあるが、この日のS東京ベイが得たものは「健闘」や「善戦」といった類の言葉で表現し切れるものではない。
「最後に勝ち切れなかったのは悔しい部分ではありますが、自分たちは今日いるメンバーで、やりたいプレーをやり切りました。これから成長していく上でのポイントになる試合だと思います。今季は開幕から勝ち切れない試合が続いた中で、クボタスピアーズらしさを取り戻してきたと感じました」(根塚)
緑の芝に描かれた明日への希望。チームの未来は、限りなく明るい。今季もいよいよ中盤戦に突入。原点に回帰した不撓の挑戦者たちの逆襲が始まる。
(藤本かずまさ)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「まずは、こうした機会を設けてくれた方々に感謝したいと思います。このような試合は選手を成長させ、またラグビーのファンを増やす機会としてすごく大切だと思います。この機会を得られたことをとてもポジティブに捉えています」
──今日の試合の印象は?
「試合ではとてもいいコンテストができたと思っています。お互いにアタッキングマインドを持って試合に臨みました。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)、ギャラガー・チーフスともにフルメンバーではない中で試合に挑みましたが、こうした試合を経験することも必要だったと思います。いろいろと学ぶことができ、リーグ戦に生かせる経験ができたと思います。スコアボードには反映されていませんが、最後まで勝負の行方が分からない試合ができたと思っています。ネガティブな面よりもポジティブな面のほうが多い試合でした」
──この試合で得ようとしていたものは何だったのでしょうか?
「この一戦は『クボタウェイ』を見せる試合だと思っていました。自分たちのラグビースタイルを信頼して挑んだ試合です。若い選手たちがしっかりと立ち上がってくれて、やるべきことをやってくれました」
──スーパーラグビー・パシフィックのチームとの交流を続けていくための課題は?
「日本のラグビーにはこうした試合は必要だと思っています。成長するためには必要なものです。日程も、問題だとは思っていません」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ ゲームキャプテン
──実際にギャラガー・チーフスと戦ってみて、リーグワンの試合との違いを感じた部分はありましたか?
「日本のラグビーは強くなっていると思っています。今季のシリーズを戦ってみて、ほかのチームも強いと感じます。フィジカルの部分も上がっていますし、スキルもそうです。日本のラグビーはレベルが上がってきています。だから、(違いは)特にはありませんでした」
ギャラガー・チーフス
ギャラガー・チーフス
クレイトン・マクミラン ヘッドコーチ
──日本での2試合の印象をお願いします。
「日本のラグビーのレベルには感銘を受けています。しっかりとした指導を受け、ハードワークをしているアスリートたちだと感じました。私たちにも試された部分がありました。これはまさにプレシーズンに求めていた機会で、スーパーラグビー・パシフィック開幕に向けてどういったところを改善しなければいけないのかというところが見えました。
今回の交流戦は、私たちにとってはシーズン開幕前、リーグワンのチームにとってはシーズン中の時期で、気候に関して私たちは暑い場所から寒い場所への移動になりました。いろいろな側面で実験的な部分があったものの、本当に楽しむことができました。スーパーラグビー・パシフィック開幕に向けて素晴らしい準備ができました」
ギャラガー・チーフス
アントン・レイナートブラウン ゲームキャプテン
──2週間後にスーパーラグビー・パシフィックが開幕するというところを踏まえて、今日のご自身のパフォーマンスとチームとしてのパフォーマンスはどのように捉えていますか?
「私たちはまだまだ積み重ねている段階です。国際試合や海外でのラグビーの経験がある選手もいますが、一緒に質の良い時間を過ごすという意味でも、このように日本に来て、若い選手たちがいろいろなことを学んでスーパーラグビー・パシフィックにつなげていくというところでも、チームとしていい学びができたと思います」
──多くのファンがギャラガー・チーフスの圧勝を予想していたと思います。このようなタフな試合になることは予想していたのでしょうか?
「まずお互いのチームのラインアップを見てみても、埼玉パナソニックワイルドナイツもS東京ベイも質の高い選手とコーチが集まっているチームです。そういう意味でも日本のラグビーは質の高いものになっていくと感じました。そして、両チームはスタイルの違うラグビーを展開し、私たちにしっかりとプレッシャーを掛けてきました。実際に私も戦ってみて、選手たちも良く、試合も素晴らしかったと感じました」