2024.03.15NTTリーグワン2023-24 第10節 花園L vs 三重H-見どころ

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第10節
2024年3月17日(日)12:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ vs 三重ホンダヒート

花園近鉄ライナーズ(D1 カンファレンスB)

意地と地力を見せるときがきた
花園Lには気負いも焦りもない

花園近鉄ライナーズの野中翔平キャプテン。「いい意味でいつもどおりやります。いま積み上げているものを出したい」

強豪との3連戦で勝ち点を得られず、前節も東京サントリーサンゴリアスに14対34で敗れた花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)だが、歩んでいる道のりが間違いでないことにチームは手ごたえを感じている。

花園Lが3月17日のNTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1 第10節 交流戦でホストゲームに迎えるのは三重ホンダヒート(以下、三重H)。どちらもD1で今季未勝利、11位の花園Lと12位の三重Hによる“ブービー対決”である。

負ければ最下位転落となるため、昇格組相手に必勝が義務付けられる大一番だが、13日の公開練習でも積極的に声を出し、居残り練習にも汗を流したキャプテンの野中翔平に、気負いはなかった。

「いい意味でいつもどおりやります。いま積み上げているものを出したい」。ピッチを離れると常に優しい笑顔を浮かべる野中が「いつもどおり」と口にするのは積み上げてきた自信からくるものだ。

昨季はリーグ戦で最下位に終わり、入替戦で残留を決めた花園Lにとって、三重Hを上回る点はチーム全体で積み上げた経験値と、1勝を挙げる喜びを知っていることである。

攻守両面で、まだ甘さも露呈している花園Lにおいて、キャプテンを務める野中に託されるのは統率力。「試合中に修正していけるチームになりたい」と練習中に仲間に呼び掛けたという。

“動”のリーダーシップを見せる野中とは対照的に“静“のリーダーがバイスキャプテンの片岡涼亮である。

昨季は負傷の影響もあって出場時間はゼロ。花園Lがリーグ戦で唯一手にしたコベルコ神戸スティーラーズ戦の勝利もスタンドで見守るだけだった片岡は、今季、まだ1トライにとどまっている。それでも随所でキレのあるプレーを披露してきた。

「僕はリーダーとして言葉でチームをまとめるのは得意じゃないんです。プレーでスタンダードを示すことは意識しています。プレーで引っ張っていきたいですね」

百戦錬磨の指揮官、向井昭吾ヘッドコーチは日々見つめるチームの確かな変化を感じ取っている。「相手も当然、ウチに勝とうと思ってやってくるでしょう。ただ、選手たちには『“勝たねば”などと思わずに今までやってきたことを普通にやってくれ』と言っただけです」(向井ヘッドコーチ)。

気負いもなければ、焦りもない──。花園Lがパッセンジャー(花園Lファン)の前で意地と地力を見せるときが来た。

(下薗昌記)

三重ホンダヒート(D1 カンファレンスA)

初勝利のために120%で走る。その姿は
まるでスポーツカーの加速性能。

三重ホンダヒートの渡邉弐貴選手。「スタミナは(チームメートから)イジられるくらいないです」

三重ホンダヒート(以下、三重H)は今節、待望のディビジョン1初勝利を懸けて、東大阪市花園ラグビー場に乗り込む。

前節のリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)戦では勝利こそ得られなかったものの、後半だけを見れば7対0と三重Hが主導権を握ったことは選手たちの自信につながっている。

「いい形でボールキープができて、敵陣にボールを持って行けた部分は良かった。次は敵陣まで行ったらしっかりスコアするという共通認識を全員で持ってレベルアップしていきたい。個人的には(BR東京戦の)最後の時間帯は本来のポジションであるセンターをやらせてもらったので、自分のセンターとしての持ち味を出すことができたと思います」

そう話すのは、ゲインラインを突破する場面を多く作り、後半34分の當眞慶のトライの突破口にもなった渡邉弐貴だ。前々節の横浜キヤノンイーグルス戦でも、後半10分に中央付近から抜け出した呉洸太に並走。パスを受けると、スピードに乗ってゴールへ走り切って、トライを奪っている。

後半の足が止まる時間帯に、キレのあるランで相手の脅威になる。そのスタミナはどのように養われたのかと問うと、「逆ですね。スタミナは(チームメートから)イジられるくらいないです」と苦笑い。「持久力、体力系の数字はチームで真ん中くらいですが、『いまだ』という場面、トライにつながるシチュエーションやチャンスのときに自分の持っている力を出し切ることを意識しています。トライやビッグキャリーにつながればチームが勢い付くので、そういう場面では120%の力で走ります」と言葉に力を込める。

今節対戦する花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)とは昨年の11月にプレシーズンマッチを行い、36対26で三重Hが勝利している。この試合に先発した渡邉は、プレシーズンマッチとリーグ戦は違うとした上で「花園Lさんにはいいランナーとゲームメーカーがそろっていて、上位チームからも得点を奪えるアタックができるチーム。そういう選手にいい状態でボールを持って走らせないよう、全員で前に出てプレッシャーを掛け続けたい。一方でディフェンスのコネクションが切れて穴になっているところをしっかりと突いてスコアを取り切りたい」と分析する。

「『自分たちのやってきていることは間違っていない。それを全員が信じて、全員がハードワークすることが大事になってくる』と(キャプテンの古田)凌さんも言っていました。ビジターゲームなのでやりにくい環境にはなるのですが、“ヒートの熱い戦い、激しいプレー”で花園Lを倒して初勝利したい。個人的にもスコアしてチームの勝利に貢献したいです」

ここぞという場面で、渡邉がホンダのスポーツカーのような加速性能で走り出す。そんな瞬間が増えれば、初勝利は自ずと近づいてくる。

(山田智子)


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