2024.03.24NTTリーグワン2023-24 D2 第9節レポート(九州KV 6-7 浦安DR)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第9節
2024年3月23日(土)14:30 駅前不動産スタジアム (佐賀県)
九州電力キューデンヴォルテクス 6-7 浦安D-Rocks

雨中、逆転のキックを決めた
田村熙のブレない目線

決めれば逆転。重要なコンバージョンを成功させた浦安D-Rocksの田村熙選手

当日の朝から断続的に強い雨が降った佐賀県鳥栖市。駅前不動産スタジアムで繰り広げられた“雨中の激闘”は1点差での決着。首位の浦安D-Rocks(以下、浦安DR)が劇的な形での逆転勝利をつかみ取った。

九州電力キューデンヴォルテクスの好パフォーマンスの前に後半35分まで“ゼロの沈黙”を強いられた浦安DRだったが、同36分にラインアウトモールからフランコ・マレーがトライ。5対6と追い上げた状況でのコンバージョンキックを決めれば逆転というまさに勝負の分かれ目だった。

「決めれば逆転という状況だったので集中しました」。キッカーを務めた田村煕はそのときの心境を振り返る。蹴る直前に雨は強さを増したが、集中は乱れなかった。ボールは雨を切り裂くように力強く、ゴールポストの内側、クロスバーの上を通過した。

「今日は勝てたことだけがポジティブ」。勝利の立役者となった田村は試合後、そう総括した。しかし、昨季の入替戦で勝つことの重要さをどのチームよりも味わったのが浦安DRだった。今季加入の田村はその悔しさの当事者ではないが、雪辱を期すチームのマインドセットをひしひしと感じてきた。

「チームのみんなで大事なポイントについてはしっかりとレビューをする。そして、前に進みながら改善していく。みんなが一生懸命にやっているし、スタッフも選手も同じところを見ているチームだと思います」

昨季もチームはリーグ戦、順位決定戦で12戦12勝と圧倒的な強さを誇りながら入替戦では2連敗を喫した。だからこそ、浦安DRにとって大事なのはディビジョン2で勝つことではなく、ディビジョン1でも勝てるスタンダードを勝ちながら養うことだった。

リーグ戦の最終節となる次節は順位決定戦でも相まみえることになるNECグリーンロケッツ東葛との試合になる。

「すぐに(順位決定戦で)再戦になるので、お互いに隠すところも出てくると思いますが、みんなでまとまって勝ちたい」

昨季の悔しさは直接、味わってはいない。それでも、勝つことへのこだわりを見せるチームの一員として田村の目線がブレることはない。

(杉山文宣)

九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクスの今村友基ヘッドコーチ代行(左)、山添圭祐ゲームキャプテン

九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基 ヘッドコーチ代行

「雨の中、(試合開催のために)準備をしてくださった方々、ご尽力してくださったみなさんに感謝申し上げます。試合のほうはラスト3分での逆転負けということで、結果は本当に残念です。ただ、チームとしては『1年間、成長し続ける』ということを言っています。そして、今日のゲームはこのチームが大きく成長できたゲームだったと思いますので、これを次につなげて残りの試合に向けて良い準備をしていきたいと思います」

──今季ここまで出場機会が少なかった選手やあまり出場時間が長くなかった選手たちが先発に名を連ねました。メンバー構成の意図と評価を教えてください。

「けが人も出ていますし、今日選んだメンバーが今日の試合を戦う上でのベストメンバーだということで選んだつもりです。その中でこれまで出場時間が長くない選手もいましたが、いままで出ていた選手たちを上回るくらいの気持ちとパフォーマンスを見せてくれました。チーム力が上がっていることは感じられましたし、これを結果につなげられるようにやっていきたいと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス
山添圭祐ゲームキャプテン

「まずはこの素晴らしい環境を準備してくださった運営の方々に感謝申し上げます。今回の試合はチーム全体として『チャレンジ』をテーマにして臨みました。試合をとおして自分たちがチャレンジする場面が数多くあったんですが、やはりもう一歩、届かなかったなというのが印象です。ただ、自分たちが準備してきたことやこだわってきたことが出せた試合だったので、下を向くことなく、次の試合に向けて積み重ねていきたいと思います」

──加入1年目という立場ながらゲームキャプテンを務めました。試合前の心境と試合を終えての感想を教えてください。

「やっぱり、試合前はとても緊張しました。ただ、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)に長く在籍している選手やベテランの方々、今回のゲームメンバーの方々が僕のことをサポートしてくださいました。試合中でもやりやすい環境の中でゲームキャプテンとしてプレーすることができたのかなと思います。最初は緊張していたんですが、最後はやり切れて良かったなと思っています」

浦安D-Rocks

浦安D-Rocksのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ(左)、中島進護ゲームキャプテン

浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

「勝つことができてホッとした、安心できた試合でした。九州KVさんも良いパフォーマンスをしていましたが、自分たちも最後の最後でチャンスをモノにすることができました。試合中はセットピース、特にラインアウトで流れをうまくつかむことができませんでした。あとはコンタクトプレーの中でボールを失うことも多く、自分たちのパフォーマンスについて満足できるものではありませんでした。九州KVさんがすごく良いプレーをした試合だったという印象です。最終的には、苦しいながらもこうやって勝てたことはうれしく思っています」

──苦しいながらも勝ち切れるというのはチームとしての力もあったと思います。選手たちのメンタリティやパフォーマンスについてはどう評価していますか?

「もちろん、パフォーマンスとしては良くありませんでしたし、遂行力でも(普段より)劣る部分が多くありました。ただ、その中でも試合に勝つことができたのはディフェンスが良かったからだと思います。そこが今日の試合の中でのポジティブな部分でした。トライを許すことなく、3点差や6点差といった状況でトライをこちらが奪うことができれば、一気に挽回することができます。あとは試合をとおしてモールがうまく機能していなかったのですが、“ここぞ”というところ、取り切らなければいけないところで全員が仕事を果たしてトライを取ることができました。必要なとき、チャンスのときにしっかりとモールから(トライを)取り切れたことがポジティブな要素でした」

浦安D-Rocks
中島進護ゲームキャプテン

「まず、今日はこのような悪天候の中でしたが、(ヨハン・アッカーマン)ヘッドコーチも言ったように勝てたことが自分たちにとって一番、大きかったことだと思います。自分たちは(相手の勢いを)受けることはないんですが、ボールをロストすることや、セットピースがうまくいかないことがかなりありました。1週間、しっかり準備してきたことを、この天候を抜きにしても、出すことができませんでした。これを課題にして、次の試合に向けてしっかりと準備したいと思います」

──NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)の24日の試合結果次第ですが、次節の直接対決がリーグ戦の首位を懸けた一戦になる可能性が高い。その一戦に向けた心境を教えてください。

「次の1週間で何か新しいことをやることはありません。今までやってきたことの積み重ねを続けるだけです。次のGR東葛さんには(開幕戦で)負けているので、自分たちは必ず勝ちにいく。新しいことをやるのではなく、これまで積み上げてきたものを来週の試合で発揮できればいいかなと思っています」

──リーグ戦1位通過という点については、チームとして強いこだわりのようなものはあるのでしょうか?

「結果はあとで必ずついてくると思います。1位、2位といったところではなくて、まずはGR東葛戦にフォーカスして必ず勝つというメンタリティを大事にしていきたいと思います」

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