2024.04.01NTTリーグワン2023-24 D3 第11節レポート(中国RR 26-26 日野RD)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第11節
2024年3月31日(日)14:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 26-26 日野レッドドルフィンズ

強敵相手に示した覚悟。つかんだ自信と
高まった基準は残り3試合への確かな力に

中国電力レッドレグリオンズの西川太郎 共同キャプテン。「いい準備をして、いい気持ちでやれば、絶対に勝てるんだと、みんなも分かってきている」

1勝7敗で最下位の中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)が、8戦全勝で首位の日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)をホストゲームに迎えての対戦。試合前、格上との一戦に向けて、「これを言ったら鼻で笑う人もいるかもしれないですけど……」と岩戸博和ヘッドコーチは言いつつも「本気で勝ちにいきます」と強い決意を示していた。

中国RRは接戦で勝ち切れない試合が続き、1点差で惜敗した前節の数日後には岩戸ヘッドコーチがイレギュラーなミーティングを開催。そこで「残り4試合は全部勝ちにいこう」と全員で覚悟を決めて今節に臨んだ。西川太郎共同キャプテンは、「気持ちのところでワンチームになって、この試合に挑めていた」と明かす。

強敵を相手に引くことなく、試合の立ち上がりから気合いの入った激しいディフェンスで立ち向かった。アタックでは今季ペナルティゴールを13本決めている宮嵜隼人のキックという選択肢もあったが、「(モールを)組めばいける」と真っ向勝負で果敢にトライを狙った。

試合は点の取り合いになり、残り10分で19対19の同点。ここで日野RDの継続した攻撃に屈し、ラスト3分で7点差にされる。これまでの中国RRならば、このあと得点を取り切れずに終わっていたかもしれない。

だが、失点直後に「もうトライを取るしかないので、『取りにいくぞ!』とみんなで話し合った」(西川)と最後の意思統一をして前を向いた。全員で体を張って戦い、宮嵜が突破し、北山絢大が敵陣深くまでアタックラインを押し上げた。最後はゴールライン際でラインアウトからのモール。「ワントライを取り切ろう」(西川)という強い気持ちで押し込んでペナルティトライ。中国RRの得意な形から、大きな7点を取り切った。

土壇場でペナルティトライ。同点に追いつき勝点2をもぎとった

チームが踏ん張って一歩前進した瞬間だった。岩戸ヘッドコーチは、「前節の反省点だった『相手陣内の深くに入ったときにどうするのか』というところを今回はしっかりやってくれた」と得点を取り切ったチームを称え、西川は「いいマインドを持って80分間(集中を)切らさずに戦えたチームをすごく誇りに思う」と胸を張った。

ミーティングで明確にした覚悟を試合で見せられたが、引き分けという結果には満足していない。中国RRの視線はその先にある。西川は、「いい準備をして、いい気持ちでやれば、絶対に勝てるんだと、みんなも分かってきている。今日の試合も自信になったし、これを基準にして、あとは勝つだけ」と力を込めた。

強敵相手に価値ある勝ち点2を手にした中国RR。その覚悟を笑う者はいない。今季残り3試合、勝利を目指して進むだけだ。

(湊昂大)

中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズの岩戸博和ヘッドコーチ(右)、西川太郎 共同キャプテン

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ

「まずは日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)のみなさん、リーグ関係者のみなさん、本日はありがとうございました。日野RD戦まで3週間空いた中で、覚悟を決めて挑んだ試合でしたが、日野RDさんの勢いあるアタックと前に出てくるプレッシャーを受けて、うまくゲームを運べない時間帯がありました。ただ、今回、本気で勝ちにいくためにフォーカスした部分をしっかりと選手自身が出してくれましたし、本当に強い日野RDさんに対して、80分(集中を)切らさず、引かずに戦い続けてくれたので誇りに思いますし、選手たちにとっても自信になったと思います。とはいえ、やっぱり勝てなかったところは悔しさをもっていますし、選手自身も感じていると思います。ただ、本当に次につながるゲームでしたし、ラスト3試合は本気で全部勝ちにいくことにフォーカスして準備していきたいです」

──接戦になった要因についてはどう考えていますか?

「まずはディフェンスのところで、本当に勢いのあるプレーヤーがいる日野RDさんに対して、しっかり引かずに守り続けることができたこと。セットピースではラインアウトの高さやスクラムワークのところで劣勢な部分はありましたが、セットピース以外のフェーズでしっかり全員がディフェンスでファイトしてくれたのが、今回の引き分けに持ち込めた理由だと思います」

──残り3分で7点ビハインドになったときの選手たちのリアクションをどう見ていましたか?

「前節の反省ではないですけど、相手の深いところに入ったときにどうするのか、というところを今回はしっかり見せてくれたと思います。キックオフのところは相手ボールになりましたが、しっかりエドワード(・カーク)が競りに行ってくれて、あそこで切らさずにアタックのマインドを持ち続けたところは見ていてもすごく感じられました。そこで宮嵜(隼人)と北山(絢大)がしっかり前に出られたので、ルーキーに助けられたなと思いました」

中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン

「本日はありがとうございました。いい準備をして、いいマインドを持って戦えましたし、80分間(集中を)切らさずに戦えたチームをすごく誇りに思います。『本当に勝ちにいこう』という話を試合前からしていて、結果的に勝てなかったのですが、すごく価値のある試合になりましたし、また成長につながる試合になったと思います。残り3試合、絶対に勝ってシーズンを締めくくりたいですし、順位がどうなるか分からないですが、最後までやり切りたいと思います」

──接戦になった要因についてはどう考えていますか?

「ディフェンスでしっかりプレッシャーを掛け続けるところは本当に意識してできていました。あとは気持ちのところで、『本当に勝ちにいこう』と話してワンチームになってこの試合に挑めたのがすごく大きかったと思います。80分間、誰も集中を切らさずに『本当に勝とう』とみんなで言いながら、いい緊張感を持ってできたのは大きかったと思います」

──残り3分で7点ビハインドになったとき、次のプレーに向けてどんなことを考えていましたか?

「もうトライを取るしかなかったので、次のキックオフでしっかりマイボールにして『トライを取りにいくぞ』ということだけをしっかりみんなで話し合いました。時間的にトライを取ってまたもう一つ取るのは難しい時間だったと思いますが、まずは一つのトライをしっかり取りにいくというマインドをみんなで持ってできたと思います」

日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(左)、橋本法史バイスキャプテン

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ

「本日は素晴らしい環境を作っていただき、ご尽力いただいた関係者のみなさんに感謝申し上げます。われわれが分析していたとおり、中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さんは80分間ファイティングスピリットを持って、最後まであきらめない姿勢で戦っていました。われわれとしてもけが人が出たり、メンバーを代えないといけなかったりしたところで、初めてのコンビネーション(組み合わせ)で出るメンバーもいて、その中でうまく戦い切れなかった部分があったと思います。その部分に関してはしっかり受け止めて改善していきたいです。あとは随所にいいプレーが出ていましたし、われわれがいい形を作ることができれば、いいアタックやディフェンスができるので、またこの3週間でしっかり全員で準備をして次の試合に臨みたいと思います」

──「うまく戦い切れなかった部分」を教えてください。

「ブレイクダウンのところでプレッシャーを受けていて、われわれがボールを動かしたいタイミングでボールを動かすことができませんでしたし、ターンオーバーが5つぐらいあったと思いますが、そこでボールを取り返されたシーンもありました。後半になってボールを動かせるようになってきましたが、アタックの方向に関して少しオーガナイズできない部分もあったと思います。われわれのラグビーをするためにコリジョンのところは重要なので、そういった部分の改善と、われわれはどこに向けてアタックするのかという意思統一をもう一度しっかりして次の試合に臨みたいと思います」

──「いいプレー」を具体的に教えてください。

「自分たちがコネクションを持ってプレーしているときは非常にいいアタックができていたので、そこは今季のわれわれの非常にいい形だと思います。その中でときどきサポートが遅れたり、ボールキャリアーが簡単に倒れたり、ちょっとしたエラーが積み重なる場面がありました。そのエラーをどれだけ少なくして、われわれが相手のエラーにつけ込んでいけるかが大事になるので、そこをうまく戦えるようにしっかり準備していきたいと思います」

──全勝優勝も視野にあった中での引き分けをどう捉えていますか?

「負けていないので、(引き分けをはさんで)全勝(無敗)で優勝するチャンスは十分あると思います。次の試合でわれわれが最大限の力を発揮できるようにしっかり準備することが自分たちの成長につながると思います。残り3試合が終わったときに、われわれがシーズンスタートのときからどれだけ成長できたかが大事だと思いますので、しっかり突き詰めて練習していきたいと思います」

日野レッドドルフィンズ
橋本法史バイスキャプテン

「今日は勝ち切れなかったのが残念です。試合をとおして自分たちの時間が少なく、中国RRさんのブレイクダウンでのプレッシャーがすごくあったので、そこで戦い切れなかったのが勝てなかった原因だと思います。いいプレーもあったので、これから改善して次の試合に臨みたいです」

──「いいプレー」を具体的に教えてください。

「ディフェンスでは、相手にプレッシャーを掛けることができたいいタックルがありましたし、アタックでも一人ひとりのキャリーに強さが出ていて、1対1の強さでは戦えていたので、コンタクトの部分で勝てていたのが良かったと思います。ただ、全体的に二人目の寄りが遅くなってプレッシャーを掛けられていたので、そこは修正が必要だと思います」

──全勝優勝も視野にあった中での引き分けをどう捉えていますか?

「今日勝ち切れなかったことはすごく残念ですが、残りの3試合をどう戦っていくかがまた次のステップにつながると思うので、そこにフォーカスして戦っていきたいです」

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