NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第16節 カンファレンスA
2024年5月4日(土)12:10 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)
三重ホンダヒート vs コベルコ神戸スティーラーズ
三重ホンダヒート(D1 カンファレンスA)
成長を促すための新たな試み。
指揮官が選手たちに説いてきた“主体性”
初のディビジョン1の舞台に挑んだ三重ホンダヒート(以下、三重H)のリーグ戦もいよいよ最終節。三重交通G スポーツの杜 鈴鹿に5位・コベルコ神戸スティーラーズを迎える。
キアラン・クローリー ヘッドコーチは、「(D1/D2)入替戦でどのチームと対戦するのかが決まる大事な試合。今シーズンの最も重要な2試合に向けた準備の一環としてフォーカスしつつ、選手のコンディションなども考慮しながら戦いたい」と話す。
「今シーズンはD1に長く在籍しているチームとの戦いに苦戦してきましたが、チームは正しい方向に向かっていると信じています。選手もスタッフもハードワークしてきた結果、フィジカルや戦術面のレベルが上がってきました。一貫性という部分でも向上しつつあると感じています」
プロセスを重視する指揮官は、チームの成長を促すために新たな試みを導入してきた。
「私はイタリア代表チームの指揮をした経験があるので、コーチとして、まずはその国の文化を受け入れる必要があると理解しています。日本の選手は言われたことを遂行する能力は非常に高い。ただ、グラウンド上では決められたことに加えて、自分で適切な判断をする必要があります」
豊富な経験を持つ指揮官は、練習やミーティング、準備において「ownership(主体性)」を持つことの大切さを説く。選手自身が考える機会を増やすため、選手にプレゼンテーションをさせたこともある。ミーティングでは一方通行にならないよう、全選手の番号を箱に入れ、引いた番号の選手に「このミーティングで何を学んだか」などを答えさせている。
「日本人は間違ったらどうしようという不安から自分の意見を躊躇する傾向があります。発言することでチームに関与しているという意識を高め、選手たちを勇気づけることにつながります」
さまざまな方法でチームの強化と選手の成長を促してきたキアラン・クローリー ヘッドコーチ。「われわれの今シーズンがどうだったのかは最後の入替戦の2試合で評価されてしまいます。試合に出場する23人だけでなく、全選手が自分の役割を果たし、この1年間でそれぞれ成長してきました。残り3試合もプロセスを大切にして、そのプロセスをスコアボードへとつなげたいと考えています」。
(山田智子)
コベルコ神戸スティーラーズ(D1 カンファレンスA)
前人未踏の領域へと足を踏み入れる山下裕史。
今までも、これからも。自らを突き動かす気持ち
今季のホストゲーム最終戦だった前節・静岡ブルーレヴズ戦で快勝したコベルコ神戸スティーラーズ。5月4日12時10分から三重交通G スポーツの杜 鈴鹿で三重ホンダヒートと対戦する今節は、今季のラストマッチだ。ファンの期待も背負い、来季へつながる試合を実現したい。
前人未到の新記録へ。前節でジャパンラグビー トップリーグおよびジャパンラグビー リーグワン通算177試合出場に到達し、久富雄一氏の記録に並んだ山下裕史。2008年に前身の神戸製鋼コベルコスティーラーズに加入し、日本代表などでも活躍。“やんぶー”の愛称で親しまれる38歳の社員選手が金字塔に王手をかけている。
そんな彼は近年の日本ラグビー界の生き字引的存在。さまざまな思いや考えもある。試合の数やスケジュール、観客動員、ファンとの距離感など、進歩とともに直面する課題も実直に見つめる。プレーヤーとして長く日本のラグビー界で奮闘してきた彼の言葉は、その一つひとつに重みがある。
「後輩に何かを伝えたりするのか?」。そんな問いには「いまは時代が僕と合っていない」と豪快に笑った。それでも長く第一線で活躍し続ける熟練のプロップを慕う選手は多い。クラブハウスの室内練習場で定期的に行うキツいサーキットトレーニングに、積極的に参戦する門下生もいる。
「プロが増えているのはいいことだけど、プロ意識が減っていると感じるし、そこは各個人が頑張らないといけないところ。神戸にいる一人ひとりが向上して、その先の代表になることをマインドとして持っておかないといけない。15人で意思統一できたら2018、19年のように優勝はスッとできると思う」
愛嬌もあれば、厳しさもある。長いキャリアで深いところまで染み込んだのは、ラグビー愛であり、スティーラーズ愛だ。
「1試合も、178試合も変わらない。試合に出たい気持ち、勝ちたい気持ちが僕を動かしてくれている。出場するときは何も思わないけど、試合後に実感するのかな。来シーズンも引退しないので、一つずつ積み上げられたら。あとは僕が引退したあとに、神戸Sの選手が(出場記録を)塗り替えてくれたらうれしい。そのときにセレモニーに呼んでもらえたら。体だけ鍛えておきます(笑)」
山下裕史はいつもどおり、最前線で体を張る。
(小野慶太)