2024.05.19NTTリーグワン2023-24 D1/D2入替戦 第1戦レポート(S愛知 39-57 三重H)
NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1/D2入替戦 D1 11位 vs D2 2位 第1戦
2024年5月18日(土)12:00 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 39-57 三重ホンダヒート
今季最多動員の一戦でクラブも見せる集大成。
信じる力が逆転昇格への後押しとなる
厳しい日差しが降り注いだパロマ瑞穂ラグビー場。豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)と三重ホンダヒート(以下、三重H)の入替戦第1戦は、39対57で三重Hが勝利を収めた。
S愛知にとっても三重Hにとっても、今季の集大成を発揮する舞台だった。前者は昇格を目標に、1年を掛けてあらゆる面で逞しさを増した。前半19分に齊藤大朗が負傷でグラウンドをあとにすると、スクランブル的なポジション配置を強いられたが、焦ることなく対応。その後もけがで交代を余儀なくされるなどアクシデントが続いたが、後半には一時4点差に迫るなど、勝利を予感させるほどの地力を見せた。
後者は、ディビジョン1昇格組として迎えたシーズンだった。序盤の戦いではD1の洗礼を受けた試合も多かったが、課題を明確にし、着実な成長を遂げた。終盤にパブロ・マテーラというラストピースが戻ってくると、上位チームにも引けを取らない戦いを見せた。それを今節の自信に変え、そのパブロ・マテーラが「人生初となる(1試合での)4トライ」を奪うなど大暴れ。重要な1戦目を勝ち切った。
昨季はD2でしのぎを削っていた両者。同じ東海地方のチームということもあり、三重Hのファンもパロマ瑞穂ラグビー場に多く駆けつけた。スタンドは青と赤に染まり、S愛知のホストゲームでは今季最多となる2,771人が来場した。
「S愛知はほかのチームより数は少ないかもしれないけど、素晴らしいサポーターがいます。三重Hのサポーターの方も多く来てくださって、良い雰囲気の中で試合ができました」とはフレディー・バーンズの言葉だ。
集大成を見せたのは選手だけではない。S愛知もクラブとして、この試合に向けてさまざまな施策を実施。メンバー外となった選手も、試合運営の面やファン対応で貢献した。敗れはしたものの、この試合を機にS愛知へ興味を抱いた人が一人でもいれば、クラブを大きく成長させることになるはず。そして、その信じるパワーが第2戦での逆転勝利、そして昇格への手助けとなる。
(齋藤弦)
豊田自動織機シャトルズ愛知
豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「本日は今季ホストゲーム最終戦ということで、たくさんの観客の方々に来ていただいて、また、本当に素晴らしい環境作りをしていただいた関係者のみなさんと、サポートいただいている方々にこの場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
内容につきましては、結果のとおり、勝点を取れずに負けたということで、後半20分ぐらいまでは射程圏内に捉えながら、というところでは、想定内ではあったのかなと思いますが、振り返ると試合の序盤から追いかける展開になってしまったということと、ラスト20分でわれわれ自身が少し崩れてしまったのがこういった結果になってしまった要因だと思います。ただ、入替戦は2戦合計での勝点、得失点差で勝敗が決まりますので、われわれ自身は来週に向けてやるべきことをやっていきます。その先の勝利と昇格ということも、まだまだ可能性はあると思っています。本日はありがとうございました」
──後半20分ごろから崩れてしまった要因はどのように考えていますか?
「もちろん暑さというタイトなシチュエーションだったというところと、勝負どころで三重ホンダヒート(以下、三重H)さんはしっかりギアを上げたのに対して、われわれは少しスイッチを切ってしまったと思います。勝負どころをどう捉えるかというところの感度の問題だとか、そういったところかなと思っています。ただ、今日良い学びにもなったので、次に向けて自分たちが成長できるポイントになったかなと思います」
──試合中にけが人が出てスクランブル気味に戦うこととなりました。
「けが人が早々に出たり、交代した選手がすぐにけがをしてしまったり、そういったアクシデントに選手が迅速な対応をしてくれました。今季は一貫した姿勢でやってくれていますので、選手のことを誇りに思っていますし、頼もしく成長していってくれていると思います」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル 共同キャプテン
「徳野(洋一)ヘッドコーチがすでにおっしゃってくださったように、今日のような素晴らしい日に携わってくださった、サポートしてくださったみなさまに感謝の気持ちを申し上げたいと思っております。そして、スタジアムまで足を運んでくださったサポーターのみなさま、三重Hさんの多くのサポーターの方々がスタジアムまで足を運んでくださったことによって、私自身、ラグビーをさらに楽しむことができたのかなと感じています。
この試合の流れを決めてしまったところとしては、32対36でのシチュエーションで、敵陣5m前のラインアウトから一気に自陣のゴールラインのところまで運ばれてしまったところやそのあとに簡単に2本トライを与えてしまったところが、試合の流れを決めてしまった要因だったのかなと思っています。ただ、選手の取り組む姿勢やインテンシティーというのはとても素晴らしいもので、今日の試合に出た選手のすべてを誇りに思っています。なので、しっかり自分たちが今日やったことをまた来週につなげていけるように、今日のプレーに自信を持って、また来週にむかっていきたいなと思っています」
──来日して、シーズン中にこれほどの暑さで試合をしたのは初めての経験だったと思います。
「そうですね。実のところを言うと、前半は特に問題ないと感じていました。しかし、後半に入って15分から20分ぐらいのところで正直、悪夢のような感覚を感じながらプレーをしていたぐらい暑かったです」
──それでも、ホストゲームとしては今季最多のファンの前でプレーしました。
「本当に感謝の気持ちでいっぱいです。来週は三重Hさんのホストゲームとなりますが、今日と同じぐらいサポーターの方々にお越しいただいて、自分たちの後押しとなるような声援をいただければと感じています」
三重ホンダヒート
三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ
「まず、勝てたことをすごくうれしく思います。今日この勝利を得たというのは、プレーした選手だけではなくて、プレーしなかった選手たちもこの1週間しっかりといい準備をして、23人をスタートさせてくれたというところ、そこでの貢献がものすごく大きかったと思っています。
ゲームに関しては、もちろん今日のゲームから修正しないといけないポイントはたくさんあります。相手にたくさんトライを与えてしまったこともありますし、われわれのイグジットのプレー、自陣の深いところからのプレーに関しても、うまくいかなかったところがあったと感じています。あとは単純なミスが多かったところもあるので、次のゲームに向けてしっかり修正をしていかないといけないと思っています。今日ポイントを取れたことに関してはすごく良いと思っていますが、しっかりといま挙げた問題を修正した上で、次のゲームに向かっていく必要があると思います」
──次戦はリードを得た上での戦いですが、どういったことを意識されますか?
「一つ大きく言えることは、自陣深いところからどう脱出するかというところが、フォーカスをしないといけないポイントだと思っています。われわれにプレッシャーが掛かってしまった中でも、若い選手たちがこの教訓をしっかり糧にして、学びとして次のゲームにぜひ生かしてほしいと考えています。来週のゲームに関しては、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)さんは失うものがない状況で、われわれに襲いかかってくると思っていますので、そこはわれわれも受け止めて、しっかり準備をして戦いたいです」
三重ホンダヒート
古田凌キャプテン
「まず、しっかりと勝ち切ることができて良かったと思っています。S愛知さんも良いプレッシャーを掛けてきた中で、難しい時間帯もありましたが、しっかり準備してきたことを発揮できた部分があったので、そこは良かったと思います。(キアラン・クローリー)ヘッドコーチもおっしゃったように、少しミスの部分であったりとか、ペナルティの部分があったりしたので、そこはもう一度、1週間準備をして、次もしっかり勝ちたいと思っています」
──昨季はディビジョン2から入替戦に臨まれましたが、今季はD1のチームとしてチャレンジを受ける立場となりました。
「立場は昨季と違いましたが、逆に言うと僕らもそのS愛知さんの気持ちは十分に分かっていて、この試合に懸けてくるということは、もちろん分かっていました。そこで自分たちがそれに付き合うのではなくて、しっかり自分たちのやってきたことをやること。80分間全員がハードワークするというのを全員が意識して、今日は試合に臨みました」
──過酷なコンディションから後半にペースアップできました。その要因はどうお考えですか?
「1週間準備してきたこと、メンバー、メンバー外問わずに全員がこの試合に向けて準備したことをしっかり出せたのかなと思っています。あとは、しっかり出てきたメンバーが集中を切らさずに80分間自分たちのラグビーをやり続けたこと。必死にハードワークすることができたからこその勝ちだと思っています」