日本ラグビーの進化の象徴とも言えるのが、才能豊かな若手の躍動だ。
近い将来、日本代表の屋台骨となるであろう彼らのプレーに注目せよ!
田村一博=文
text by Kazuhiro Tamura
豊かな才能の持ち主は10代のうちにリーグワンへ。そんな声が大きくなる中、大学ラグビーも捨てたもんじゃない。2022−’23シーズンから導入されたアーリーエントリー制度で、大学ラグビーの活動を終えた選手が、すぐにリーグワンで活躍することも少なくない。
同制度導入から2季が経ち、若い世代の台頭が目立つ。制度導入前年に早大から埼玉パナソニックワイルドナイツに加わった長田智希(’22年春入社/CTB・WTB)は、日本代表に欠かせぬ存在となっている。
アーリーエントリー導入初年度に飛び出した選手のひとりが、コベルコ神戸スティーラーズのティエナン・コストリーだ(FL・NO8)。環太平洋大から初めてトップレベルに挑むニュージーランダー。エディー・ジョーンズHC率いる日本代表に選出され、国際経験を積み上げ始めた。走力◎。流暢な日本語にも耳を傾けてほしい。この国が好きだ。
コストリーと同じタイミングでリーグワンに活躍の舞台を移し、すぐに高い評価を受けたのが静岡ブルーレヴズの家村健太。京産大時代は10番、12番でプレーしていた若者は、静岡ではSOを任されてチームを動かしている。日本代表の候補にも入った動ける10番は昨シーズン終盤は怪我で欠場も、コンディションが整えば再び魅力的に動き出す。
東京サントリーサンゴリアスの髙本幹也(SO/帝京大卒)は加入後10カ月の準備期間を経てデビュー。昨季いきなりプレーオフも含む18戦すべてに10番を付けて出場した。左足のキックも巧く、170㎝と小柄ながら日本代表候補にも入った。
昨季のアーリーエントリー組には期待の才能が大勢いる。
ブルーレヴズではショーン・ヴェーテー(PR)、ヴェティ・トゥポウ(LO)がすぐにパンチ力あるプレーを見せた。それぞれ、環太平洋大、摂南大の出身だけに大学シーンで広く知られることはなかったが、2024−’25シーズンも相手チームにとって脅威となる実力の持ち主だ。特にゴールライン前での突破力は両選手とも高い。
最も大きな飛躍を見せているのはクボタスピアーズ船橋・東京ベイの為房慶次朗(PR)だろう。明大で大学選手権準優勝の成績を残した後スピアーズに加わり、シーズン終了までに5戦に出場。先発は1試合だけだったが、日本代表に選ばれた。
イングランド代表戦で初めてテストマッチに出場すると、日本代表が今季戦ったパシフィックネーションズカップまでの全9試合に出場(マオリ・オールブラックスとの2戦含む)。代表キャップ7を得た。フィジカリティーの強さをスクラム、タックルに生かすプレーで、スピアーズ2季目も存在感を示しそうだ。
スピアーズには同期加入の江良颯(HO)もいる。主将として帝京大を大学王者に導いたのが1月。2月にはスピアーズで、チーフス(スーパーラグビー)と戦ったクロスボーダーラグビーの試合に出場。リーグワンでは6戦を経験後に怪我で戦列を離れたが、順調に回復中と聞く。ピッチに戻れば活躍は固い。
三重ホンダヒートの北條拓郎(SH/天理大卒)も昨季デビューし、シーズン終盤に8戦出場(入替戦2戦含む)を果たした。9番を背負い、高速テンポでチームを動かしたパフォーマンスで、大型補強を施したチームを勢いにのせられるか。
横浜キヤノンイーグルスの武藤ゆらぎ(SO/東海大卒)も、アーリーエントリーから3試合だけの出場だったが、独特の間合いで抜くプレーとゲーム運びの楽しさで非凡さを感じさせた。
全身バネの埼玉パナソニックワイルドナイツの谷山隼大(NO8・CTB/筑波大卒)、トヨタヴェルブリッツの両FL、奥井章仁(帝京大卒)と三木皓正(京産大卒)が、それぞれ気の利くプレーとハードタックルを武器にデビューするのも待ち遠しい。
リーグワンが日本ラグビーの未来を映す鏡だとしたら、そこに映る未来は悪くない。 ■