2025.01.19NTTリーグワン2024-25 D2 第4節レポート(日野RD 25-30 九州KV)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第4節
2025年1月18日(土)13:00 AGFフィールド (東京都)
日野レッドドルフィンズ 25-30 九州電力キューデンヴォルテクス

差を分けたのはキックの差。強風の試合に勝ち、新たに吹き始めた“風”

前節は2本あったコンバージョンがどちらも不成功。そこから修正し今節は見事なパフォーマンス。九州電力キューデンヴォルテクスの萩原蓮選手

好天に恵まれた試合だったが、それでもAGFフィールドには80分に渡って強い風が吹き抜けていた。前半は日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)、後半は九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)と、風上に立ったほうが優位に試合を進めていく展開になった。

風は味方につければ大きな力になる反面、ゴールキックでは風上・風下に関係なく、キックの軌道に影響を及ぼす。

後半15分、加藤誠央のトライで21対22と1点差に詰め寄った九州KVに大きな局面が訪れた。タッチライン付近でのコンバージョンキック。決めれば逆転というプレッシャーの掛かるシチュエーションであり、しかも角度と風を考えれば、極めて難しいキックだった。萩原蓮はこのキックを成功させ、九州KVがスコアをひっくり返した。

拮抗した紙一重の勝負を分けた要因の一つは、コンバージョンゴールとペナルティゴールを合わせて、6本のゴールキックをすべて成功させた萩原のキックにある。日野RDも九州KVも、トライ数は同数の3。つまり最終スコア30対25の5点差はトライの差ではなく、コンバージョンゴールとペナルティゴールの差だった。

日野RD戦に向けた1週間の練習の中で、萩原は自分自身のキックを徹底的に見直したという。

「これまではショットクロックの時間を気にし過ぎて、肩が開き、上体が起きて、自分のフォームが崩れていることに気づきませんでした。そこで一旦時間を気にせず、今日は風が強かったので、少し右や左に蹴ろうというのはありましたけど、第一に意識していたのは、自分のフォームで蹴れるかということでした。それが結果につながったと思います」

九州KVが挙げた30得点のうち、半数にあたる15得点をキックで叩き出した萩原はプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。

もちろん開幕戦以来3試合ぶりの勝利に課題がなかったわけではない。それでも、日野RDの猛攻に耐えた終盤の粘り強いディフェンスや、大けがから復帰した齊藤剛希が攻守において新たなパワーをもたらしたことをも含めて、連敗を断ち切った九州KVにはポジティブな風が吹き始めていた。

(鈴木潤)


日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(左)、髙野恭二バイスキャプテン

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ

「本日は素晴らしい天気の中、少し風が強かったですけど良い環境でラグビーができたことに感謝申し上げます。前半は風上で、うまく風を使いながら戦っていたんですが、規律のところでうまくコントロールができない場面もあったので、そのあたりをもう一度修正して、次の日本製鉄釜石シーウェイブス戦ではさらにわれわれの良いところを前面に押し出せるように準備していきたいと思います。この4戦、悔しい引き分けと敗戦が続いていますが、それを大きなエネルギーに変えて次の試合に臨めるように、全員で前を向いて、チームが一つになって前に進んでいきたいと思います」

──サイモン・ヒッキー選手が復帰して10番に入りました。彼の復帰で何が変わったでしょうか。

「ゲームを80分間とおして、どういうふうに自分たちがフィニッシュするのかというイメージを彼はもっています。それをうまくオーガナイズしながらチームをドライブさせるところが彼の良いところだと思います。前半は風上で、後半は風下だったのですが、そういうときでも前半と後半でどういうキックを蹴っていくかを含めて、彼の頭に入っているので、状況にアジャストする能力は随所に見られていたと思います」

日野レッドドルフィンズ
髙野恭二バイスキャプテン

「今日は4試合目ということで、ここ3試合は勝てていない試合が続き、結果が出ない状況だったので、まずは今日の1試合に勝ち切ることをターゲットに臨みました。前半は多少自分たちのペナルティがありながらもリードして終えることができましたが、後半は自分たちのミスやペナルティで苦しくなって、徐々にスコアを取られる展開になってしまいました。自分たちの強みである敵陣でアタックをする時間帯が少なかったことが今回の敗因だったと思います」

──アタックではボールが動いて、ある程度思いどおりにできたと思いますが、それが勝利に結び付かなかった原因はどこにあると思いますか。

「フェーズを重ねて、自分たちのアタックが続いていけば、スコアにつながる自信は自分たちの強みとしてもっていますが、九州電力キューデンヴォルテクスさんの激しいディフェンスや、前に出るディフェンスで、思いどおりにいかないことがけっこうありました。その中でちょっとしたペナルティやミスを重ねてしまって、スコアできない状況が続いてしまったと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクスの今村友基ヘッドコーチ(右)、ウォーカー アレックス拓也キャプテン

九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ

「今日、開催にあたってご尽力いただいた関係者の皆さまに感謝申し上げます。素晴らしい天候と素晴らしいグラウンドコンディションの中で勝利できたことを素直にチームとして喜びたいと思います。連敗して、ちょっとチームが沈みかけていたところで、ゲームに出ないメンバーがしっかりとトレーニングからエナジーを与えてくれて、それによって責任をもって出た23人がしっかりプレーしてくれたかなと思います。課題はたくさんあるので、勝って、反省して、次につなげたいと思います」

──齊藤剛希選手がジャパンラグビー トップリーグカップ2019以来となる久しぶりの出場になりました。彼の評価と、ここまでどのような準備をしてきたかを教えてください。

「彼の持ち味をしっかり出してくれたと思いますし、ボールを持てばゲインラインを引っ張って、チームを勢い付けてくれるボールキャリーと、ディフェンスではハードワークできる選手なので、それを80分やってくれたのかなと思います。私が九州KVに入る前からけがを繰り返していましたが、出場した試合ではしっかり彼の良さが出ていましたし、私が入ってからもそれを見ることができたので、今日も自信をもって送り出せましたし、期待に応えてくれたと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン

「まずは、今日試合をするにあたりまして、ご尽力していただいた関係者の皆さま、ありがとうございます。先ほど今村ヘッドコーチから話がありましたとおり、まずは勝つことができて良かったと思います。最後、相手が勢いよくアタックをしてくる中で、しっかり守り切れたことは次につながる点だと思いますし、今日出た反省点を次からの練習で修正して、次の試合に向けて頑張っていきたいと思います」

──自分たちが準備してきたことで、多く出せたものはありますか?

「今週はやり切ることを目標にしていて、ボールキャリーやディフェンスのフィジカルのところで、特に後半は体を当てていこうと、それをしっかりチーム全員で遂行できたと思いますし、そこは準備してきたことができたと思います」

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