NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第6節
2025年2月22日(土)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 50-23 清水建設江東ブルーシャークス
「意外なタイミング」で訪れたデビューの瞬間。若きプロップが勝利に貢献
NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)が柏の葉公園総合競技場に清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)を迎えたゲームはホストのGR東葛が粘る江東BSを振り切って快勝。ボーナスポイントを加えた勝ち点5を獲得した。
この試合では早稲田大学からアーリーエントリーでGR東葛の一員となった亀山昇太郎がリーグワンに初出場。ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチは試合後、「非常に良かったと思います」とプレーに賛辞を贈るなど、見事なデビューを果たした。
後半6分、右プロップの菊田圭佑にイエローカードが提示される。シンビンで一時退場となった菊田に代わって、亀山はリーグワン初の舞台を踏むこととなった。「あのタイミングで交代出場するとは僕自身も思っていなかったのでびっくりはしましたが、グラウンドに向かうときに観客席から届くクルー(ファン)の歓声を聞いて、非常に奮い立つものがありました」と亀山はその瞬間を振り返る。
「大学のとき以上にジャージーを着ることの重みを感じていたので、正直、芝生を踏んだ瞬間は緊張がありました。でも、ファーストプレーがスクラムだったので、(プロップである)自分の仕事から入れたのが良かった。その1プレーで一気に試合に集中できました」
味方が一人少ない状況でのデビュー戦とは思えない素晴らしいパフォーマンスを披露した。
亀山のデビューを後ろから見守っていたのが12番のオルビン・レジャーだ。昨季まで江東BSに所属していたレジャーはこの日が古巣との初対決。彼自身、期するものがあった試合だが、ピンチの場面で交代出場した亀山については「彼がGR東葛に加入してから練習を重ねてきたことを知っていたし、間違いなく良いプレーをしてくれると信じていた」と、活躍への確信があったという。
その後、試合は両者が得点を奪い合う展開となった。GR東葛は後半20分にマリティノ・ネマニのトライで22対18と逆転すると、その後は一気にトライを重ね突き放した。亀山もプロップとして奮闘。「GR東葛は勢いが付くと止められないチームなので、いかに勢いを付けさせるかという点を僕自身も考えてプレーしていました。最初はいくつかペナルティを取られるなど危ないシーンもありましたが、スクラムでは先輩方が呼吸を合わせてくれて、いい形でスクラムを組むことができました」と振り返った。その顔はいまの100%を出し切った充実感にあふれていた。
試合後のロッカールームでは、先輩たちから亀山に多くの祝福の言葉が送られ、非常にポジティブな雰囲気が広がっていたという。若い選手の頑張りとベテランの踏ん張りががっちりかみ合った内容で、GR東葛は再び上位進出へはずみを付けた試合となった。
(関谷智紀)
NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ
「今日は、まずはボーナスポイントを獲得することを目標として挑み、それを達成することができました。2戦連続して負けたあとの試合でしたので、勝ち点を積み上げるための非常に大事な試合だと捉えていました。ですので、まずは山極(大貴)をはじめとする選手たちがよくやってくれたと思っていて、50得点を取り切れたこと、さらにボーナスポイントを獲得することができたこと、ファンの前でそれを達成できたこと、それらを選手たちが本当によく頑張って達成してくれてうれしく思います。
その中で、まだまだ修正できる箇所は多くあると感じました。前半、ターンオーバーが15回ありましてペナルティが7回……。この先、よりビッグゲームになってくると、(勝利のためには)そういったことを減らしていかなければいけないものだと感じています。ただ、代わりにと言ったらあれですが、ディフェンスが非常に良かったと感じていて、とてもフィジカルな、とても強いディフェンスができたと思っています。フォワード陣が体を使ってダブルタックルで仕留めるところもたくさん見られましたし、主にポール・フィーニー コーチが尽力してきたところだったのでそこが達成されたことをうれしく思います。ボーナスポイントを含めた勝ち点5を獲得して、かつ来週以降の修正箇所がたくさんあるということは非常に良かったと思っています」
──後半途中まで拮抗した展開で耐える時間が長くありました。そこを踏ん張り切れた要因はどこにありますか?
「先ほどお話しした、ターンオーバー15回、ペナルティ7回というスタッツが示しているとおりなのですが、ボールを保持しているときに良いプレーができていなかったとまずは思っています。良くなかった要因のうちいくつかは、ディシジョンメイキング、つまり判断が良くなかったものもありましたし、いくつかは本当に基礎的なハンドリングエラーもありました。前半を終えたところでテリトリーが25%でポゼッションが40%というスタッツだったのですけれども、そこから盛り返すことができた要因はディフェンスだと間違いなく思っています。とても良いディフェンスを選手たちは見せてくれました。なのでコーチ陣は、勝ったからといって休まずに明日の日曜日も休みを返上して、どうやって判断をより良くできるか、どうやってポゼッション(の時間)を伸ばせるか、チャンスを相手に与えないようにいかに自分たちを変えられるか、というところをしっかりレビューし、改善していきたいと思っています。
それから付け加えさせていただきますと、アーリーエントリーで加入した亀山昇太郎、彼はプロップで交代出場しリーグワンのファーストキャップとなりましたが非常に良かったと思います。それから交代出場したヨシ(吉岡義喜)も、スクラムハーフで出場し非常に良いプレーをしてくれたこともその(踏ん張り切れた)要因だったとお伝えしたいと思います」
──今後の上位進出に向けて、この勝利のもつ意義はどのようなものになりますか?
「今日は特にタックルも良かったですし、ボールを手放さない限り、つまりフェーズを重ねられる限りどんどん良くなっていくことが分かった試合でしたので、チームが正しい方向に進めていると思います。先ほどもお伝えしたとおり、課題や修正点はあるのですが、チームが正しい方向に進んでいることが分かりました。なので、直さなければいけない部分はディシジョンメイキング、判断のところです。判断を間違えてエラーにつながるという局面が多かったので、週末と月曜日を使ってしっかりと分析し次の試合に備えたいと思います」
NECグリーンロケッツ東葛
山極大貴バイスキャプテン
「試合前に『ボーナスポイントを含めて勝ち点5を取ろう』というのはチームの共通認識でまとまっていました。前半になかなか風が強かったという状況もあり、僕らのアタックがうまくいきませんでしたが、ディフェンスから流れを作れたのかなと思っています。清水建設江東ブルーシャークスさんも僕らもラインアウトのミスが前半に多かった中で、僕らはそこを後半に修正できたのかなと思いました」
──後半19分まで相手にリードされる厳しい展開でしたが、逆転するまでどういう気持ちで戦っていましたか?
「僕らには焦りといった気持ちはまったくなくて、まず風上という部分とコンタクトプレーでは僕らが勝っているという自信がありました。僕らの自滅だけが怖かったので、本当にシンプルなプレーで臨み、ラインアウトでも前でいいから確実にキャッチできるというサインをみんなで共有して戦いました」
──ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチからも指摘のあったターンオーバーやペナルティの多さを修正できた要因について教えてください。
「前半を終えてロッカールームに戻って、ウェインから『相手にボールをあげる回数が多いよね』という話があって、そこからイージーなミスや、イージーなペナルティに対して選手の各々が気を付けるよう意識できたのではないかと思います」
──次の試合に向けての課題と収穫をそれぞれ教えてください。
「まず課題の面では、前半にあったようにペナルティから流れに乗り切れないところがもったいない部分であるのかなと思っています。収穫としては、やはり勝ち切れた部分が僕らにとって自信につながりましたし、『フィジカル面ではやっぱり僕らは強い』ということを再認識できたので、次の試合でもフィジカルの良さをどんどん出していければと思います」
清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕 監督兼チームディレクター
「本日はありがとうございました。この試合の開催にあたり、ご尽力いただきました千葉県協会の方々、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)の皆さま、本当にありがとうございました。素晴らしいピッチでした。
昔話をさせていただくと、われわれが強化を始めたころは、GR東葛さんは(ジャパンラグビー)トップリーグで活躍されているチームでした。(その相手との)公式戦初めての試合ということで、『ディビジョン2に上がってようやくこのレベルでプレーができたんだな』ということを強く実感させてもらいました。試合については負けてしまい厳しい内容だったのかなと思います。しかしながらポジティブな内容も多々あったと思います。2巡目でもう1回GR東葛さんと試合を行わせていただきますので、われわれのホストゲームではしっかり借りを返したいと思っています。本日はありがとうございました」
──後半19分までリードする展開でしたが、そこで逆転されてから崩れてしまった原因とこれからの対策について考えを聞かせてください。
「常々『先手必勝』ということは練習から言い続けていましたし、昨季からも言い続けてきました。D2に上がらせていただいて、(ボクシングに)例えるならばパンチされて、相手が強いか弱いかを見ている間に時間が経ってしまいますので、逆にそうできるほどわれわれは余裕があるチームではないとも思っています。行けるところまでしっかり行って、あとは気持ちで頑張ろうという考え方でしたけれども、やはりそこはGR東葛さんのほうが1枚も2枚も上手だったのかなというふうに思いました」
──今日の試合で見えた、ポジティブな部分はどこですか?
「メンバー変更が急きょあった中で、ポジションも含めて代わった選手がしっかりと自分の役割を理解してプレーしてくれた部分だと思います。これは本当にチーム力が上がってきた状況だと思いますし、今日も実は試合会場に来る前に試合に出ていないメンバーの練習も見に行きましたが、本当に良い雰囲気で練習をやってくれていました。そういった、全員が常に用意をしてくれているという点をまず一つポジティブなものとして捉えています。
ラインアウトの要であるトム・ロウが今日出場できなかったのが痛かったのですが、日髙(駿)を含めて代わった選手が気持ちを持って頑張ってくれましたし、モールでは相手にトライまで取られましたが、それ以降はしっかりと止めていたのでそこもポジティブに受け止めています」
──前の試合から引き続き、「チームとしてプロセスを守ることを大切にしていきたい」という言葉がありましたが、そのプロセスを守り切るには何が必要だと考えていますか?
「ラグビーは15人が出場するスポーツです。ほとんどのスポーツよりも試合に出ているメンバーが多いと思うのですが、ディフェンスが弱い選手もいればディフェンスが強い選手もいて、オフェンスでも同様です。この15人で、そういった弱いところをみんなで補うのがラグビーというスポーツだと思うので、われわれのチームは本当にみんなで声を掛け合ってそのプロセスに向かって勝利に向かってやってくれていると思いますし、おそらくチームワークといった部分に関してはどこにも負けていないと思っています。絶えず声を掛け合いながら大事にしていってほしいです。それがウチの強みだと思っています」
──アーリーエントリーで加入した藤岡竜也選手が交代出場しましたが、彼のプレーはどう評価されていますか?
「彼を初めて見たのは大学2年生のころでして、試合を見たときに実際に欲しいとすぐに思った選手でした。リクルーティングに関しても、大阪へ何回も何回も通わせてもらって本人と話をさせていただいて、ブルーシャークスを選んでいただきました。
今日は本当に期待どおりのプレーをしてくれましたし、彼がああやってアーリーエントリーで加わった中でトライまで決めてくれましたので、これは本当に今後にも絶対つながってくると思います。ポジションを取られた先輩選手も悔しい思いをしていると思いますし、逆に同じ時期にアーリーエントリーで入った選手も『やってやろう』という気持ちになってくれていると思います。彼がグラウンドに出てトライを奪ったことに対しては良い相乗効果しかないと思っています。まだまだ発展途上の選手ですしこれからだとは思いますが、上出来のリーグワンデビュー戦だったと思います」
──次の試合に向けて抱負をお願いします。
「後半15分ぐらいまでは本当にいいゲームができていたと思いますので、逆に私自身悔しいと思えることが収穫なのかなと思っています。ただ悔しいままで進んでも勝てないので、チーム全員でこの課題にしっかり向き合って乗り越えなければいけないし、誰か一人だけが頑張っても意味はないと思います。ラグビーですから。スタッフも含めてチームの全員でこの壁を乗り越えて、次戦は花園近鉄ライナーズさんという上位のチームですが、立ち向かっていきたいと思います」
清水建設江東ブルーシャークス
ジョシュア・バシャム ゲームキャプテン
「まずはグリーンロケッツ東葛のみなさんに『おめでとうございます』と言いたいです。勝利に値するようなパフォーマンスをしてきた相手だったと思いました。そんな試合でしたが、われわれにとっても自信がつく場面がたくさんありました。これまでも『プロセスを大事にしてプレーを一貫してやり切ろう』とわれわれブルーシャークスは取り組んで来ていますが、まだまだこのD2の高いレベルに慣れていっている段階なので、これからまたシーズンをとおして経験を積んで、そのプロセスをやり切るところにフォーカスしていきたいと思っています。
やはり80分間やり切るというところがまだ遂行できていなくて、そこにやはり一貫性のなさを感じています。まだまだです。GR東葛さんのような強いチームというのは、一瞬のスキをやはり突いてきます。どれだけプレッシャーを掛けられても、自分たちの強み、基本のところに立ち返るという点をもっともっと意識してプレーしていかなければならない、とあらためて思っています」