NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第9節
2025年3月23日(日)12:00 太田市運動公園陸上競技場 (群馬県)
日野レッドドルフィンズ 21-45 NECグリーンロケッツ東葛
強風の中、冴えわたるキックと判断。世界レベルのスタンドオフが見せた極上のパフォーマンス
日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)とNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)が太田市運動公園陸上競技場で対戦。前半を終えて19対14とリードしたGR東葛が風上に立った後半に4トライを奪う猛攻を見せて快勝。ボーナスポイントも加えた勝ち点5を獲得した。
GR東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチが「風が強い試合で、まずはコイントスに勝つことが必要だと思っていまして、そこで山極(大貴)ゲームキャプテンがしっかりコイントスに勝ってくれた」と試合後会見の最初に満面の笑顔を見せた。常時、強風が吹き続けている中、コイントスに勝ったGR東葛は前半にあえて風下の陣地を選択。後半勝負を仕掛けたのはウェールズ代表のスタンドオフ、リース・パッチェルの経験とゲームコントロールに絶対の信頼があったからだろう。パッチェル自身も「ここ1、2週でわれわれのキッキングチェイスが非常に良くなってきているのは感じていたので、競り合えるボールを蹴って、そこからの良いディフェンスでターンオーバーやカウンターアタックにつなげることを狙っていた」とチームの意図を理解し、風上に立った後半は強風を利して変幻自在に楕円のボールを操った。
キック合戦となったとき、パッチェルの仕掛けは見事だった。彼が蹴ったボールはピンポイントに日野RDの陣形を崩す位置に落ちてきた。さらに日野RDバックスの布陣を認知し、誰もいないところにボールをバウンドさせて時間を作ると、そこに緑のユニフォームが殺到して一気にプレッシャーを掛ける。その連続に日野RDのディシプリンが徐々に崩れてペナルティへとつながり、そこからまたパッチェルのキックでGR東葛は相手陣深くに何度も侵入することができた。
「ラインアウトモールから多くのトライを取れたことは自分自身もすごく満足している。フォワードは素晴らしい仕事をしてくれていて、試合前、『スマートに攻めよう』という話をしていたとおりになったし、ラインアウトモールを獲得できたのもキッキングゲームがうまくいったからこそで、相手にしっかりプレッシャーを掛けることができたと思う」
強風のコンディションで、より輝きを見せた精密なキックとプレー判断。世界レベルのスタンドオフが極上のパフォーマンスでラグビーファンをうならせた。
(関谷智紀)
日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ
「本日は久しぶりのホストゲームで、なおかつたいへん多くのファンの方々に来場いただいて非常に素晴らしい環境でラグビーをプレーさせていただいたことに感謝を申し上げます。試合のほうは、入りは非常に良かったですけど、ゲームを途切らせてしまうようなエラーが多くあって相手にチャンスを数多く与えてしまう展開となってしまいました。中盤のエリアでの攻防が試合のキーポイントになると思っていましたが、そこで相手に多くのチャンスを与えてしまったことが、今日われわれがうまくゲームを運べなかった理由の一つだったと思っています。ショートウィークで次は花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)さんと対戦しますので、もう一度自分たちのやるべきことにしっかりフォーカスして、1日1日チームが成長できるように取り組んでいきたいと思います。本日はありがとうございました」
──攻撃に移ってリズムが良くなってきたところでのノックフォワードなど、ミスが多かった印象ですが、その原因はどこだったとお考えですか。
「NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)さんは非常に大きな選手が多いので、対峙したときにプレッシャーを感じていたのかもしれません。そこでプレッシャーを受けていたのかなという部分もあるのですが、もう一度自分たちがアタックしていく上で早くセットをしてうまく調節をしていくということが必要です。今日のゲームでは、良いアタックをできた場面もあったし、簡単にエラーをする場面もありました。その部分で精度を高めていければもっとわれわれらしいアタックができると思うので、そういうところを次の試合に向けて良い準備をして臨みたいと思います」
──後半5分で、相手のトライラインぎりぎりまで攻め込み、シンビンでの一時退場者が相手に出るなど非常に押していたシーンがありました。その場面でトライを取り切れなかったことについてはどう分析されていますか。
「後半のスタートのときにペナルティをもらってハーフウェイでのマイボールラインアウトからスタートして、そこからエラーをしてしまい右サイドのスクラムから破られてトライを取られた。そして、また記者さんが言われたとおり、相手のトライラインまで5mまで攻め込んでシンビンももらったが、そこでも勢いが途切れるようなプレーをしてしまった。そこに関してはジャッジの部分でどうなのかという部分はありましたけど、今日はわれわれがボールを保持してアタックをすることができない場面が多かったので相手にチャンスを与えることになったと思います。そこをもう一度理解して修正して次の試合に臨みたいと思います」
──GR東葛の攻撃で一番脅威だった部分はどこですか。
「事前の分析では相手の多くがトライライン22m内のペナルティからのラインアウトでモールを組んでトライするパターン、もしくはそのモールが崩れてからの展開でトライするパターンが3分の2を占めていました。そういう場面をわれわれが作らないようにゲームを運べればもう少し相手にチャンスを与えず、もっとクロスゲームに、どっちに勝負が転ぶか分からないゲームになっていたと思います。われわれがチャンスを手放すことが多かったのでそこは改善していかなければならないと思います」
──今後に向けてどうチームを修正していきますか。
「プレーの精度が高まればもっとわれわれのプレーが継続してできるようになると思いますので、早くポジションをセットして(ラインの)深さを調整し、精度高くつながりをもってアタックできるような内容を求めていきます。それが保てれば一貫性をもったアタックができると思います。今日の試合では風の強さがあったり相手のプレッシャーがあったりといろいろな要因でエラーが出ましたけれども、われわれのチームは個人技で相手のディフェンスラインを突破していくという選手は少ないので、15人全体で攻撃して、ボールをつないで、15本の矢がどこから飛び出してくるか分からないようなアタックをできるような展開を目指して、ディテールのところを大事にしてもう一度練習からしっかりとチームを成長させたいと思います」
──敗戦ではありますが、今日の試合で見えたポジティブな部分はどこですか。
「攻撃面でボールをしっかりと継続させられた場面では相手のディフェンスもすごくイヤだったと思います。GR東葛さんがキックオフのところでペナルティを冒さずにディフェンスを頑張ったところは今日の勝敗を左右する上でキーポイントとなったと思いますが、われわれもああいう展開にもち込んで相手のペナルティを誘い、マイボールラインアウトから得点を重ねていけるように、さらにもう一度やるべきことを明確にしてそれを遂行できるように、目の前の一つひとつのプレーを積み重ねて良いプロセスを経て良いフィニッシュができるように取り組んでいきたいと思います」
日野レッドドルフィンズ
髙野恭二バイスキャプテン
「ありがとうございました。本日は久しぶりのホストゲームということで、自分たちもワクワクしながら、この1週間、この試合に勝つためにしっかりと準備してきました。ゲーム内容としましては、苑田ヘッドコーチの言葉どおり、前半の入りというのは自分たちでも意識してきた部分でそこをしっかりとプレーできたことは良かったと思うのですが、その内容を80分間やりとおすことができなかったということと、風が強かったのでなかなか自分たちのボールを前に出すことができずに、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)のラグビーをうまく80分間できなかったということが多かったと思います。また、ペナルティを重ねてしまってGR東葛さんの強みを出させてしまったことも今回の敗因かなと思います。来週、ショートウィークで花園Lさんとの試合なのでしっかりリカバリーして、前半戦は引き分けた相手なので後半戦での対戦ではきっちりと勝利をできるように、またしっかり準備をしていきたいと思います」
──GR東葛のゲームメークにはどんな脅威がありましたか。
「GR東葛さんは、やはり強いセンター陣がいる中でミドルのところでしっかり体を当ててくるということと、スタンドオフのリース・パッチェル選手は長いキックが持ち味でうまくプレーされました。そこをしっかりカバーしないといけないのでやはりディフェンスする立場からしたらとてもやりづらい相手でした」
──ハンドリングエラーが多く出てしまったことについて、実際にグラウンドに立つ中で要因をどう感じていましたか。
「風がとても強く舞っていてパスがシュート回転になってしまい、それでハンドリングエラーが起こったということ。それから、本来はラインの深さを保ってアタックしていきたかったのですが、フェーズを重ねていくに連れてそれが浅くなってしまって、そのためにパスされたボールが(体の)真ん中に来ないためにいろいろな場面でノックフォワードをしてしまったこと、そういったことが原因だったように思います」
──後半ラストにトライを奪い切ったことについてどう捉えていますか。
「あれこそが僕たち日野RDのやりたいラグビーで、ボールをいろいろなところに運んでトライにつなげるという自分たちの持ち味が出せたプレーだったと思います。自分たち日野RDの自信の源でもあるスタイルなので、試合終盤の体力的にキツい時間帯にトライまでもっていったという結果が出たということは今後に向けてチームにすごくプラスになったトライだったと思います」
NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ
「ここ数週間の傾向ですが風が強い試合が多いため、まずはコイントスに勝つことが必要だと思っていまして、そこで山極(大貴)ゲームキャプテンがしっかりコイントスに勝ってくれ、前半はあえて風下の陣地を得ることができました(山極ゲームキャプテンの肩に手を置き笑顔)。ハーフタイムでは選手に『前半のワーク(出来)について完全に満足はいかなかった、まだまだいける』と伝えました。ディフェンスに関しては『少し受け身な要素が見られたし、コリジョン(接点)でもドミネート(圧倒)するべきところまではできなかった』とも伝え選手たちを後半へと送り出しました。そのハーフタイムで私が話したことに対して選手たちがしっかり呼応してくれたと思っていて、ディフェンスでもエナジーをより出してくれましたし、アドバンテージライン(ゲインライン)を越えて日野RDにしっかりプレッシャーを掛けるということを後半は風上もうまく利用してしっかり遂行してくれたと思っています。5点のボーナスポイントを取り切って帰るというアティチュード(気持ち)で臨んでいたため、最終的にボーナスポイントとなるトライ数プラスワンで試合を勝ち切ることができうれしく思います。コーナーからのドライブ(マイボールラインアウトからのモール)を選ぶという判断を選手たちが良く決断してくれたと思っていて、4トライをそのモールで獲得することができた。そこはフォワード陣とボリス・スタンコビッチ コーチの尽力に感謝を伝えたいです。リザーブの選手たちも自分たちがフィールドに出たときにしっかりと実力を発揮してくれました。ボーナスポイントを取り切るためにリザーブのメンバーもちゃんと貢献してくれたと感じています」
──コイントスで勝ったことに価値があるとも話されましたが、山極ゲームキャプテンのリーダーシップについての評価を教えてください。
「今季のはじめに山極にはラインアウトリーダーを任せました。それが彼にとって最初のリーダーということになります。ラインアウトリーダーとして非常に良い仕事をしてくれて、フォワードリーダーとしてバイスキャプテンに任命することで、より一層責任を彼に渡す形になりました。ニック(・フィップス)のけがもあって最終的にゲームキャプテンになったのが今週ということです。私が個人的にキャプテン、リーダーに必要だと感じている要素なのですが、まず常時メンバーに入る選手だということ。それから、しっかりとロールモデルになれる選手だという資質です。発言がなくてもしっかりと行動で示せる人物だということが重要だと感じています。かつ、スタッフ陣と選手たちからしっかりとリスペクトを得ている選手であることも大事です。なのでこういった形で山極にキャプテンシーを与えるという判断は、ある意味非常に簡単なことでした。なぜなら彼は先ほど私が挙げたリーダーの要素をすべて兼ね備えているからです。山極が発言するとほかの選手はみんなその声に耳を傾ける、そんな選手だと思っています。すごく大事なことです。リーダーシップを与えられることによって自分のプレーに悪い影響が出ることもない選手なので、ポジティブな任命ができたと私自身も満足しています」
NECグリーンロケッツ東葛
山極大貴バイスキャプテン
「ヘッドコーチからも話があったように、今週はボーナスを含めた5ポイントを取ろうとみんなで話をしていて、その中で5ポイントを実際に取れたというのは選手としてもホッとしています。試合のターニングポイントだったのは前半最後のプレーで、ペナルティゴールを狙っても良い状況のノータイムの中で、ラインアウトモールのプレーを選択してそこでトライを取り切れたというのはチームとしても自信につながったし、後半も絶対にイケるという流れにつながったので、そこは良い判断をしたと思っています。後半はハーフタイムにヘッドコーチから指示があったように、しっかりと体を当てて前に出ることができて、相手にプレッシャーを掛けることができ、僕らのラグビーができたと思います」
──後半に1トライを奪った直後、日野RDの反撃でトライラインぎりぎりまで押し込まれましたがそのピンチを守りきれた要因はどこにありますか。
「前半の終了間際もそうでしたけど、やはり押し込まれるケースが多かった中でしっかりとわれわれが体を当てられたというのが大きいと思っています。ここ数試合はディフェンスにも自信をもっているのでそこに怖さというものはあまりなくて、スクラムもラインアウトでも優位に立てていたというのもあったので、そんなにプレー自体も焦ってはいませんでした。風下の中でわれわれが得点をリードして前半を終えられたということが後半につながりましたし、その流れがあってこそピンチもしっかり守り切れたと思っています」
──ゲームキャプテンとして今日の自分のリーダーシップについてはどう評価しますか。
「本当に役職で人柄も変わるんだなと自分自身感じています。昨季までは自分がリーダーの役目をするというのはまったく想像もしていませんでしたし、まさか僕だとは、という風に思っていたのですが、いざリーダーになると自覚が芽生えてきて、1週間の準備とかそういう部分での意識といいますか、自分にできることは何かというのを考えるようになりました。次の試合もどうなるか分からないですが、ウェイン(・ピヴァック)ヘッドコーチから良い機会をいただいたので、これでまた(コーチ陣に)任せきりになったらその意味がないと思いますので、自分自身の成長の機会とも捉えてしっかりと役割を果たしていきたいと思います」