2025.04.03[LR福岡] チームを勝たせるスタンドオフへ。重圧と喜びを知る男が、初勝利の勢いのまま連勝へ

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第11節
2025年4月5日(土)12:00 海老名運動公園陸上競技場 (神奈川県)
狭山セコムラガッツ vs ルリーロ福岡

ルリーロ福岡(D3)

ルリーロ福岡のスタンドオフ、松尾将太郎選手。明治大学ではU20日本代表にも選ばれた

開幕から11試合目、ルリーロ福岡(以下、LR福岡)がようやくつかんだ歓喜の初勝利。その立役者の一人が、松尾将太郎だった。逆転トライを含む18得点を挙げ、指揮官の期待に応えた背番号10は、試合後「この一勝のためにすべてを懸けてきた」と感情をにじませた。

リーグワンでの初勝利にわいたルリーロ福岡ベンチ。3月30日の対中国電力レッドレグリオンズ戦で

松尾は福岡県出身。地元の名門・東福岡高校でラグビーの基礎を築き、明治大学ではU20日本代表にも選出された逸材である。卒業後はNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(当時)、浦安D-Rocksと歩み着実にキャリアを積んできた。しかし、昨季は出場機会を得られず、再起を期して故郷に戻ってきた。今季からLR福岡に加入し、新たな挑戦を始めている。

豊田将万ヘッドコーチが「今季、最も成長した選手の一人」と評すように、松尾は進化している。特にディフェンスの安定感。これまでは攻撃面に注目が集まっていたが、今季は泥臭く、体を張る場面が目立つ。指揮官の言葉を借りるなら「自信をもってプレーしている」姿が、フィールドの隅々に映っている。

ゲームメーク、キックパス、フォワードとの連係──。松尾の持ち味は「整理と選択」のうまさにある。風が強い中でも相手の弱点を読み、キックで流れを引き寄せる判断力は、まさに司令塔そのもの。前節、相手を敵陣に釘付けにした後半のプレーは、理詰めで組み立てられた戦略の結晶だった。

LR福岡には、松尾と同学年の選手が9人いる。「お互い癖も分かっていて、ストレスなくプレーできる」。実際、得点シーンにはそうしたあうんの呼吸が随所に見られた。

松尾の視線は、すでに先を見据えている。「この一勝に満足せず、残り4試合もこの勢いでいきたい」。重圧から解き放たれた表情には、安堵と覚悟が入り混じる。

スタンドオフとは、チームを「勝たせる」ためのポジションであるとの自負がある。単に自分が活躍すればいいわけではない。チーム全体を動かし、流れを読み、得点を取り切る。松尾はいま、その責任の重さと、喜びの大きさを知っている。「勝たせる10番」への道は、まだ始まったばかりだ。

(柚野真也)

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