2025.04.12NTTリーグワン2024-25 D1 第15節レポート(三重H 33-53 埼玉WK)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第15節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年4月11日(金)19:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
三重ホンダヒート 33-53 埼玉パナソニックワイルドナイツ

絶対に良くなると信じて―。大事なのはチーム全員でつながり、戦うこと

マヌ・ヴニポラの復帰は、三重ホンダヒートにとってシーズン終盤の好材料のひとつだろう

三重ホンダヒート(以下、三重H)は、4月11日に秩父宮ラグビー場でホストゲームを開催。埼玉パナソニックワイルドナイツを相手に33対53と敗れたものの、前半は19対19と食らい付き、雨が降りしきる金曜ナイターの試合でありながらも駆け付けた14,896人の大観衆に粘りを見せた。

第5節の東京サントリーサンゴリアス戦での負傷離脱から前節、復帰を果たしたマヌ・ヴニポラは「負けましたが、試合が終わったときの感覚は良かったです。チームメートの努力を誇りに思います」と試合を振り返った。そのヴニポラは現在、本来の10番ではなく12番を任され、冷静かつ自信あふれるキックで多くの得点を挙げている。

前半31分には、それを象徴する場面があった。コンバージョンゴールのキッカーを務めたヴニポラは、ショットクロックが始まってもなかなか動かず、ボールをセットしたのは残り8秒のこと。その短い時間にも一切動揺せず、冷静にゴールへと蹴り込んだ。

「まずは息を整えたかったので、余裕をもって時間を使いました。何度もキックの練習を重ねてきましたし、プロセスと流れを信じて蹴れば絶対に入ると信じています。タイマーの数字でプレッシャーを受けてはいけないのです」

三重Hが「一貫性のある実行力」を課題としている中、彼が見せる自信と大胆さは非常に頼もしいものがある。連敗中のいま、何が大事になるのか。U20イングランド代表経験もある24歳はこう語った。

「チームのつながりが大事です。そして、パブロ(マテーラ)やフランコ(モスタート)、(トム)バンクスに頼り過ぎないようにしたい。全員で戦って、経験豊富な3人に任せるだけにしないことが重要です。確かにタフな状況にはありますが、絶対に良くなると信じています」

最後に「復帰おめでとうございます」と声を掛けると、ヴニポラは「ありがとうございます」と答えながら手を差し出した。そのガッチリした肉厚な右手からは、彼が積み重ねてきたプロセスに裏打ちされた自信が感じられた。

(籠信明)

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、小林亮太ゲームキャプテン

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「とても残念で、少しフラストレーションが溜まる試合でした。ハーフタイムまでは19対19でいけましたが、セカンドハーフに入ってから苦しめられてしまいました。自分たちがボールを持って得点につながった部分もありますが、イエローカードの影響で13人でのプレーを余儀なくされたところは非常に難しいものでした。ただ、それも結局は相手のプレーによって自分たちがカードを受けてしまってのことです。相手がとても良い戦いをしたと思います」

──前回の試合の後、ディフェンスが簡単に点を取られ過ぎたと語っていました。今回の試合での守備の評価はいかがでしょうか。

「少し変に聞こえてしまうかもしれませんが、昨季と比べればディフェンスは大きく向上していると感じています。今日は13人や14人になってしまった時間帯がありましたが、そのような状況では常に守備の力が試されるものです。そこでのディフェンスは良かったですが、大柄な選手がギリギリのところで勢いを作る部分が大きく影響しました。埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんのような強い相手と対峙したとき、ラインブレイクなどで抜かれてしまったら、こちらのディフェンスは偏りが生まれてしまいますし、そうすればまた別のところにピンチを作られてしまいます。そこは最終的にはわれわれのディフェンスの実行力が足りていない部分だと思いますが、全体的に言えば守備は改善していると考えています」

──ハーフタイム直前に決まったマヌ・ヴニポラ選手のコンバージョンゴールは素晴らしかったです。彼についての評価を教えてください。

「シーズン序盤でけがをしてしまったので、ここ最近まであまり試合には参加できていませんでしたが、彼はとてもいい選手です。本来は10番ですが、12番もできます。クロスキック(相手選手の少ないエリアにボールをキックすること)でトライにつなげたプレーなどにも、サラセンズでの経験が生きていると思います。いま彼を12番に置いている理由は、ファーストレシーバーを二枚作ることができるからです。もちろん、けがの影響を考慮している部分もありますが、彼はまだまだ成長できる選手ですし、プレーをすればするほど伸びていくと思います。ここから体調や調子を戻してほしいですし、今季の残りの試合のプレーだけでなく、次のシーズンも楽しみにしてほしいです」

──パブロ・マテーラ選手をはじめとして、現在離脱しているプレーヤーの復帰はいつになる予定ですか?

「マテーラは現在回復中です。今週は先週よりも状態が上がってきていて、かなり改善はしています。希望としては、バイウィークを挟んで最後の2試合に出ることができればと思っています。岡野(喬吾)はサスペンションが終わって、次の試合から参加できます。顎を骨折したレメキ(レメキ ロマノ ラヴァ)もワイヤーが取れた状況です。ワイマナ・カパもかなり治ってきているので、うまくいけば最後の2試合に出場できるかもしれません。ただ、北條(拓郎)や(ジョニー・)ファアウリについては、今季中の復帰は難しいです」

三重ホンダヒート
小林亮太ゲームキャプテン

「雨の中、秩父宮ラグビー場に15,000人近くの方々が来てくださいました。本当にありがたいことです。試合の運営に関わった方々にも、このような素晴らしい雰囲気でラグビーができたことを本当に感謝したいですし、いい経験になりました。とても気持ち良かったです。

試合のことに話を移せば、前半については同点までもっていくことができましたが、後半は実行力の点が課題になりました。ヘッドコーチがおっしゃったとおり、自分たちがやりたかった戦い方を相手にやられてしまった。それは反省点です。逆に言えば、それができていたら、自分たちの試合になっていたかなと思います。多くのお客さんの前でいい試合、勝つ試合を見せたかったですが、埼玉WKさんのゲーム運びなどの点は流石でした。ただ、われわれがボールを持っている時間帯は得点が取れていますし、プレッシャーの中でそれをどのように実行していくかという点について、残りの3試合に向けて突き詰めていきたいです。今日来てくださったファンのみなさん、そして試合に携わってくださったみなさんにはありがとうと言いたいです。素晴らしい環境でプレーさせていただきました」

──今日は同点で迎えた後半開始直後に失点したり、イエローカードで人数が少なくなったり、グラウンド内で解決しなければならない場面も多かったと思います。選手同士ではどのような話し合いがありましたか。

「イエローカードが出る状況は練習でも想定をして臨んでいます。スクラムの変化なども準備はしているので、混乱することはありませんでした。後半最初の失点についても、慌てずにプレーしようということが大事でした。まずは全員の気持ちを保たせて、次にどのようにするのかという確認を行いました。そこではフランコ(・モスタート)や10番の呉(洸汰)、ヴニポラなどが明確なプランを示してくれるのでやりやすかったですし、それがうまく実行できたときには得点につながりました。そのようなときには、自分たちのいい時間帯が作れていたのかなと思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督(左)、稲垣啓太ゲームキャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「まずはみなさん、ありがとうございます。このような形でバイウィークの1週間に入れたことを思うととてもうれしいです。自分たちの手でボーナスポイントを取って勝利することができて、これ以上求めることができないような日だったと思います。序盤は『自分たちで物事を難しくしてしまった』と思ったのですが、そのあとの選手たちの反応が良かったです。特にジャック・コーネルセン選手にとってはとてもいい週になったのではないかと思います。というのも、彼は昨日二人目のお子様が生まれたのです。それに加えてトライを取れたということは、彼にとってとてもいい1週間になっただろうと思います。

ただ、子供が生まれたからといって、メンバーの登録から外すことができるようなルールがなかったので、(出場が)どうなるかは最後まで分かりませんでした。今後、日本ラグビー協会さんにはそれを検討していただければと思っています。選手たちはバイウィークを過ごすに値する努力をしてきたので、休息の週が待っています。ラグビー(の内容)については、今回の新しいキャプテンの稲垣啓太選手にお任せしたいと思います」

──稲垣選手にキャプテンを任せた理由を教えてください。

「とてもシンプルです。チームの中で非常にリスペクトされています。多くの言葉を発するわけではないですが、喋るときにはその言葉がピンポイントで選手たちに刺さる部分があるのです。とても経験豊富ですし、私は彼の良いときも悪いときも見てきました。稲垣選手が喋るときは、必ず良い理由をもっているのです。実際にハドルの中で彼が話す姿を見ていると、選手たちとのアイコンタクトや関わり方がどれだけ素晴らしいのかが分かります。そのようなリスペクトをもっている方というのは、いろいろなものを達成できる人物だと思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
稲垣啓太ゲームキャプテン

「とても光栄でした。ただ、何か特別なことは考えていなかったです。自分が思ったことや自分がやってきたことしか出せないので、まずは自分の仕事を行う姿勢を見せることでした。ただ、コイントスは初めてでした。(ロビー・ディーンズ監督から『勝った?』と聞かれて)いや、負けました。でも、坂手(淳史)もいつも負けていると言っています。初体験だったので『ジャンケンで決めるんですか?』と言って笑われました。

今日は天候も含めてタフな試合になるだろうと思っていました。この状況で大事なのは、シンプルなラグビー。余計なことや危険なパスは絶対にしないこと。前半の入りが良かったぶん、少し油断が生まれました。無謀なパスをして、チャンスを2~3回失って、ミスから失点しました。試合中、技術的なことは何も言っていません。守備は(ベン・)ガンターが、攻撃は(山沢)京平が話してくれますので、僕はメンタルを説いてきただけです」

──キャプテンを務めたのは大学時代以来ですか。

「12~3年前が最後です。入団1年目にロビーさんに『キャプテンをやれと言ったらどうする?』と聞かれたことを思い出しました。キャプテンにはいい思い出がありませんでしたが『だからこそ、それをやることで成長できるんじゃないかと思います』と話しました。それから10年以上経ってからキャプテンを任されることになって、この年齢になっても勉強させてもらっているなと思います」

──試合から離れている間はどのようにチームを見ていましたか。

「スタンドで敗戦を見て、より大きな責任感を感じました。僕だけではなく、全員が一つの試合とチームに対していかにコミットしているかということを感じました。それは試合から離れていなければ分からない経験でしたし、あらためてこのチームの強さを考えさせられる時間でした。試合に出ない選手がいつも分析をしてくれるのですが、僕は12年目で初めてそちら側に入りました。最初は『僕がいろいろ教えることになるのかな』と思っていましたが、逆にとても勉強させてもらいました」

──メンタルに対しての取り組みとはなんでしょうか。

「僕は『試合を楽しもう』というのが好きではないです。結果を出せないと楽しくないから。ましてやバイウィークの前ですし、結果を出さなければクソみたいな2週間を迎えることになる。それを最初に話しました。シンプルなことを必死に、100%やればいい。与えられた仕事をして、それを80分間積み重ねる。それができたら結果が出て楽しめるんです」

試合詳細

見どころ・試合レポート一覧