NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第13節
2025年5月3日(土)12:00 森エンジニアリング桐生スタジアム (群馬県)
日野レッドドルフィンズ 24-61 豊田自動織機シャトルズ愛知
ディビジョン2優勝を決めたS愛知。流れを引き寄せたのは世界レベルの右足
日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)が豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)を迎えたホストゲームは、S愛知が9本のトライを挙げる猛攻で得点を重ね、ボーナスポイントを含めた勝ち点5を獲得。見事にディビジョン2の優勝を決めた。一方、日野RDのD2残留は最終節に持ち越された。
S愛知のD2優勝が懸かったこの試合、序盤は日野RDペース。日野RDはスクラムでペナルティを奪い、S愛知陣の深くに何度も侵入していく。そしてペナルティゴールで先制点を奪い、良いリズムで試合を展開できているように思われた。
しかし、ここで一気に流れを変えたのがS愛知のフレディー・バーンズの右足だった。「キックについては自分の求めていたところが出なかった部分もあったが、日野RDの攻めにかなりのプレッシャーを受けていたので、そこでうまく切り替えて自分たちの攻めの形を作れたのは良かった」とバーンズはさらりと振り返ったが、これもイングランド代表として世界で戦った経験がもたらした視野の広さと落ち着きか。ペナルティゴールで先制された直後、スキを見逃さず、クイックでキックオフを行い、相手陣深くに蹴り込んで日野RDのバックス陣を大いに慌てさせ、勢いを削いだ判断は見事だった。そこからS愛知のプレーがテンポアップ。バーンズのゲームコントロールが流れをS愛知に一気に引き寄せた。
「日野RDさんはどのチームにとっても危険なチームになってくるとは感じていた。最初の10分は日野RDの流れという中で、自分たちがしっかりコントロールして、流れを取り戻せたのは本当に良かった」と語るバーンズ。そんな彼の圧巻のプレーが前半31分に生まれる。
右タッチライン近くのスクラムからボールを受けるとバーンズは右足を一閃。そのキックパスは左タッチライン際を駆け上がってきた中野豪の胸へピンポイントで収まる。すぐさま中野が空いた中央のスペースへショートパント気味に蹴ったボールをジェームズ・モレンツェが拾い、そのまま駆け抜けてトライ。まさに世界レベルの右足がトライを生み出した。
「NECグリーンロケッツ東葛戦の敗戦があり、そこからしっかりと結果を出さなければいけない試合でこうやって勝利できたのはとてもうれしい。メンタルの部分でみんながシーズンをとおして成長できたし、そんな選手たちをとても誇りに思う。今夜はメンバーと優勝の喜びを分かち合って、楽しんで、また月曜になってからはしっかりと花園近鉄ライナーズ戦を見据えて準備していきたい」と試合後に笑顔で語ったバーンズ。D2優勝を果たしたが、バーンズを筆頭にS愛知の選手たちは一切気を抜くことなく、より上を目指して戦い続ける。
(関谷智紀)
日野レッドドルフィンズ
日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ
「本日は桐生市でホストゲームができたことをうれしく思っています。今週の試合に向けてインテンシティー、強度のところをさらに上げて、フィジカルが強い相手に対してわれわれのラグビーで80分間プレッシャーを掛けていこうというところにフォーカスして取り組んできましたが、今日はエラーもあり、われわれのラグビーがうまくできなかったことが豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)さんの勝利につながったと思います。次は最終戦になりますけども、今日、最後まで試合をあきらめずにトライを取ったことが次の最終節、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)戦への勢いにつながると思いますので、その勢いを切らさずにしっかりと準備をして次の試合に臨みたいと思います。ありがとうございました」
──今日の試合は非常にミスが多く出ましたが、その理由をどう捉えていますか。
「スタートが非常に良く、いい入りができて、チャンスがあったんですけどもスコアにつなげることができず、そこで奪われたボールを簡単にトライまでつなげられて、段々と勢いが削がれていたところも一つの原因だと思っています。後半の入りでもわれわれが良いチャンスを作ったんですけども、その中でミスが出て、トライラインまで10m、5mのところまでボールを運べていたのにそこで一つのミスからスコアにつなげられてしまいました。自分たちが勢いに乗れる場面でちょっとしたミスが重なって相手にスコアされていて、気が付けばスコアが離されていったような状況になりました。ただ、そういった状況はあったのですけれども最後まであきらめず、最後にわれわれがトライを取ったところは次のゲームに向けて良い勢いを取り戻せたと思っています」
──最終節の江東BS戦はディビジョン2残留が懸かる重要な試合になりました。最終戦に向けてどんな準備をしていきたいですか。
「江東BSさんとは昨季も3試合を戦って、今季も開幕戦、またトレーニングマッチでも戦っていますので相手がどういうラグビーをするか、という点についてはある程度分かっています。本当にわれわれが献身的に最後まで自分たちのやるべきことを遂行することが大事だと思いますので、そのやるべきことを、この1週間でしっかりリーダー陣を中心にチームに落とし込んで、それを江東BS戦の当日に良いパフォーマンスで良い(シーズンの)フィニッシュになるようにつなげていきたいと思います」
──群馬県桐生市でのリーグワン開催は初めてでした。今日初めてラグビーを生観戦したファンの皆さまにメッセージをお願いします。
「非常に素晴らしい天候の中、ゴールデンウィーク中にもかかわらず、大勢のファンの方に来ていただきました。われわれ日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)のエキサイティングなラグビーを観てラグビーの面白さを知っていただいてこれから日野RDのファンになっていただける方が一人でもいてもらえれば本当にうれしく思います。今後もここ桐生で開催することがあれば、より素晴らしいラグビーをわれわれが見せることで、みなさんにより楽しんでもらえるように頑張りたいと思います」
日野レッドドルフィンズ
ノア・トビオ ゲームキャプテン
「試合は納得できる結果ではなかったんですけれども、今週はインテンシティー、強度という言葉をテーマに掲げて1位のS愛知さんとの戦いに臨みました。絶対に厳しい対戦相手になることは分かっていました。ゲームの入り、前半20分くらいまでは良い勢いで戦えたと思うのですが、前半、時間が経過するにつれてインテンシティーが落ちてしまい、相手に優位を与え過ぎてしまいました。一点、良かったことを話させていただくと、最後の80分を過ぎた時間帯で、しっかり戦えて最後の1本のトライを取れたこと。最後の最後まで戦う気持ちがチーム全体にあったことはとても誇りに思っています」
──前半20分でインテンシティーが落ちてしまったとのことですが、その原因をどう捉えていますか。
「細かいスキルのところです。不要なオフロードパスを投げてしまったり、ボールを丁寧にラックから出すことができなかったり、それでS愛知さんに勢いを与え過ぎてしまったと感じています」
──最後、80分のホーンが鳴ってからトライを取り切ったところ、どんな思いでプレーされていましたか。
「最後のトライのときは『何も残さない、すべてを出す』という気持ちで、気持ちを一つにして臨めたと思っています。80分を過ぎてもあきらめずにプレーする気持ちをみんながもっていて、それをトライという形でファンのみなさんに表現できたことは本当に良かったです」
豊田自動織機シャトルズ愛知
豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ
「本日は素晴らしい天気に恵まれて、日野RDさんと多くのファンの方々、運営のみなさんに支えられて本当に素晴らしい環境の中でラグビーができたことをまず本当にうれしく思っております。そして、日野RDのみなさんに対しては本当に感謝申し上げたいと思っております。ありがとうございました。
試合としましては、しっかり勝ち点5を獲得できたということ、現時点でこのD2を1位通過できたということは本当にうれしく思っていますし、ここに来るまでに選手、特にキャプテンをはじめ、素晴らしい努力があったということで、本当に選手たちの努力を称賛してあげたいと思っています。ありがとうございました」
──勝てばD2優勝を決められる試合、どんな思いで今日は臨まれましたか。
「今日の試合は(D1/D2)入替戦の出場権を得られるということ、そこはもちろんこの試合でしっかりと権利を勝ち取る、ということを目標にしていました。
ただ、われわれは、前節のNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)戦も含めて、(D1/D2)入替戦に向かう過程でどうしても乗り越えていかなければならない目の前の課題が明確にあって、そういったところをクリアにすることが、まずわれわれが一番やるべきことだったのかなと思っています。結果的に(D1/D2)入替戦の出場権を取れたということはうれしいですけれども、何よりも前節のGR東葛戦までに見えていた課題に対して、今日80分間をとおして選手が課題をクリアできたことが本当に大きかったと思っています」
──具体的にはどのような課題だったのでしょうか。
「今日の試合でもミスが多く、ペナルティも多く、非常にそこは改善すべき問題ではあったんですが……。ここまでで自分たちが一番大きな課題としていたものは、うまくいかないときに自分たち自身で首を絞めて苦しんでしまうということ。そこが一番大きな課題だと思っていたので今日の試合の中でも多くのミスやペナルティがあったのですが、そのときに選手自身がチームから離れてしまうのではなく、やるべきことに全員がまい進してくれたところ、その姿勢がチームを進めるために一番重要な部分だと思っていましたので、今日そこをクリアできたということは本当に選手のグルーヴ(一体感)が素晴らしかったと思います」
──D2優勝は決めましたが、最終節も花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)との重要な試合があります。どのような試合にしたいですか。
「二つ選択肢はあるかなと思っています。まずはD2での優勝が決まった中で花園L戦を一つ(D1/D2)入替戦に向けた調整試合として位置付けるのか。それとも、花園Lさんという強いチームからのプレッシャーに対してまず自分たちが向き合うのか、というところです。
この二通りがある中で、私はやはり(D1/D2)入替戦を見据えたときに、この花園Lという非常に強いプレッシャーを掛けてくるチームに対して、逃げてとおってもD1との入替戦では良い結果が出ないと思っていますので、まずわれわれは今日帰ってからしっかりリカバリーをして、花園Lさんというプレッシャーに向き合ってそこを乗り越えていくという、そのプロセスがD1との入替戦(での勝利)につながると思っていますので、しっかり向き合って勝ちにいきたいと思っています」
──D1/D2入替戦に向けてはどのようにチーム強化を進めていきますか?
「花園L戦は来週ですし、(D1/D2)入替戦に向けてもあと3週間しかないので、われわれがやるべきことを大きく変える必要はないかなと思っていますし、変える時間もないのかなとも思っています。そのためには、やはり自分たちがとおった道を信じて恐れずにもう一度レベルアップしていくこと。それからやはり自分たち自身がこの大きなチャレンジに対して本当にエキサイティングになれるかどうか。そこにチーム全員でコミットできるかどうかというところが最後の最後に底上げできる部分だと思っていますので、ここから5月末までの期間はチーム全員で本当にエキサイトしながら、楽しみつつ、チーム力を上げていきたいと思っています」
豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン
「まずは徳野ヘッドコーチも話されたように、試合開催に協力をいただいた皆さま、ありがとうございました。本当にいま、チームの現状というところで、コーチ陣、メンバー、さらにはバックアップで支えてくれたみんなには心から感謝しています。グループとしても(D2優勝という)この位置に立てたということはすごく誇りに思います。ありがとうございました」
──試合開始直後は日野RDに押されていましたが、そこから流れを変えられた要因はどこにありますか。
「試合前にも、日野RDさんは彼らの強みをもっているのでわれわれもしっかりとやるべきことをやっていかないといけないといったことを話していたので、そこは試合に出すことができたかなと思っています。まずディシプリン(規律)の部分、ペナルティに気を付けようというところは課題にしていたのでそこには気を付けながらも、スコアできるところはしっかりとスコアを取り切ることができたことが早めに流れを変えられた部分だと思います」
──最終的に61得点、9トライを奪いました。この大事な試合で素晴らしい攻撃ができた理由について教えてください。
「セットピースからのトライを重ねられたのは本当に良かったです。良いセットピースをやり切るという部分にはチーム全体でとてもこだわりをもって取り組んできたので、そこからしっかりトライを取り切ることができたのがこの結果につながったと思っています」
──今季全体を見てのチームの成長具合についてどう捉えていますか。
「コンシスタンシー(一貫性)という言葉、一貫してプレーに取り組んでいくという点を本当に大事にしてきたチームですので、最初から最後までしっかりコンシスタンシーをもってやり切れたというところが、この結果につながったと思っています」