NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第13節
2025年5月3日(土)13:00 KUROKIRI STADIUM (宮崎県)
九州電力キューデンヴォルテクス 34-34 清水建設江東ブルーシャークス
真面目に、そして泥臭く。プレーに思いを乗せ、迎えた節目の100キャップ

九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)が、KUROKIRI STADIUMに清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)を迎えての一戦。この日は、宮崎県内で初めてとなるリーグワン開催であり、今年4月に完成したばかりの新しいスタジアム、さらにはエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチの来場などもあって、九州KVのリーグワンホストゲーム最多となる4,689人の観客が詰めかけ、にぎやかな雰囲気の中で試合が行われた。
試合は江東BSがリードしたまま80分を告げるホーンが鳴り、このまま試合終了かと思われたが、そこからのラストプレーで九州KVが起死回生のトライをもぎとり、コンバージョンゴールも成功させると、スタンドのボルテージは最高潮に。ディビジョン3との入替戦をなんとしても回避したい両チームの気迫がぶつかる好ゲームは両者譲らず、34対34のドロー決着となった。
「泥臭いプレーですかね、自分にできるのは」
九州KVの中靏憲章は、この試合でチーム100キャップとなったお祝いか、この日に誕生日を迎えたお祝いか、片手に小さな花束を持ちながら、「泥臭いプレー」と言った。東京サントリーサンゴリアスに所属する弟の隆彰も、まったく同じ言葉を口にしたことがある。中靏家の家訓かと問えば、「二人とも口が上手ではないからですね(笑)。背中で見せることしかできないだけです」。
中靏が身上とする泥臭さの源泉に話が及ぶと、こんなことを言った。
「自分が100試合出ているということは、誰かが100試合出られてないということですし、100試合を開催するために準備してくれた人たちがいる。100試合の節目に、そういう人たちの思いとか、ピッチに立つ責任とか、あらためてそのことに気付けたのは、良かったかなと思います」
中靏の頭に浮かんだのは、島拓也氏の顔だった。いまは事業運営マネージャーとしてチームに関わっている島だが、5年前まで中靏と同じポジションを争う仲間だった。島に中靏の言葉を伝えると、照れたような顔をしてから、かみしめるように言った。
「アイツはバカがつくほどの真面目なんです。グレーゾーンのプレーは絶対しない。まっすぐ走って、当たって、タックルする。そのひたむきなところが、みんなを惹き付けるんでしょうね。本当におめでとう」
ルーズボールに飛び込む、バックアップに走る。中靏にとっては、当たり前の、いつものことだ。だが、そのひたむきで泥臭いプレーはチーム全体の熱となり、試合を動かし、観る者の胸を打つ。
「これからも、そういう思いを乗せてプレーし続けるつもりですし、そういうことも後輩たちに伝えていければなと思います」
次の目標は150キャップかと問われて、即座に答えた。
「101です」
中靏憲章、36歳。さらにキャップを重ねて、記録にも、記憶にも残る選手になってほしい。
(平野有希/Rugby Cafe)
九州電力キューデンヴォルテクス

九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ
「本日は素晴らしいグラウンドを準備してくださった関係者の方々、本当にありがとうございました。KUROKIRI STADIUM(クロキリスタジアム)での初開催のホストゲームということで、本当に選手たちはすべてを出し切ってくれました。最終的に勝利という結果は得られませんでしたが、引き分けで勝ち点2を取れたことで、次につながるゲームはできたかなと思います。勝てなかった原因をしっかり反省して、来週の試合にすべてをぶつけていきたいです」
──今日の試合は、勝ち切るまでには至りませんでしたが、最後にモメンタムを生み出し、同点に持ち込みました。そのあたりのチームの成長について、どんな手ごたえを感じていますか。
「今日の試合前に選手たちに伝えていたのは、自信をもって試合に挑むこと、お互いをしっかり信頼し合って80分間戦い切ることでした。それをグラウンドで体現してくれた選手たちを誇りに思います。ラグビーの内容についても、前節の反省点から、ボールを大きく動かすというところを、選手たちが練習からすごくいいチャレンジをして、いい準備ができていました。後半のキツい状況の中で、思い切ってボールを動かすのを見て、本当にワクワクするようなラグビーをしてくれたと感じましたし、最後まであきらめない姿勢は、多くの方に伝わったのではないかと思います。来週はさらに成長した姿を見せられるように頑張ります」
──昨季の会見で、「もう3%の努力をしよう」とおっしゃっていました。その努力は、今季どれくらいまで積みあがりましたか。
「あのときから、技術的な部分も精神的な部分も、選手たちは本当に成長しています。とはいえ、まだまだ、もっと成長できると思っていますので、まだ5%ぐらいですかね」
九州電力キューデンヴォルテクス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン
「このような素晴らしいグラウンドでラグビーをするにあたって、ご尽力いただきました関係者の皆さま、本当にありがとうございました。ヘッドコーチからもあったように、勝利という結果は出せませんでしたが、最後に同点に持ち込むトライを取って、自分たちのラグビーを見せられたのかなと思います。もちろん反省することはいっぱいありますが、レギュラーシーズン残り1試合、みんなでワンチームになって、頑張っていきたいと思います」
──今日は宮崎県で初めて開催されたリーグワンの試合でした。施設や会場の雰囲気はいかがでしたか。
「このグラウンドに入った瞬間に、すごくきれいだなと思いました。施設もレベルが高くて、本当にやっていて楽しいスタジアムでした。今日は多くの方が駆け付けてくださって、試合中も応援の声が大きく聞こえて、選手としても元気をもらえました」
──今日の試合は日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチが来場したということで、自分の中のモチベーションにはプラスになりましたか。
「試合中はもちろんそういう意識はなかったですが、試合前にそういう情報があって、頑張りたいと思う選手はいたと思いますし、もちろん僕もですね、まあ、頑張ろうとは思いました(笑)」
清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕監督兼チームディレクター
「本日の試合開催にご尽力いただきました宮崎県協会の方、九州協会の方、素晴らしいグラウンドを用意していただきまして、ありがとうございました。われわれは九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんを見習い、追い越したいという思いで、この1年やってきました。2年前にディビジョン3に降格したのも九州KVさんに負けたからですし、今季は2勝して壁を越えたかったのですが、今日は引き分けということで、そうはさせていただけなかった。来週の試合に勝てばD2残留が決まりますので、ヒリヒリする1週間になると思いますが、この1週間をチーム全員で乗り越えて、さらにチーム力をアップさせたいと思います」
──今日は宮崎県で初めて開催されたリーグワンの試合でした。新スタジアムも含めて、会場の雰囲気はいかがでしたか。
「KUROKIRI STADIUMは当社(清水建設)が施行させていただいたスタジアムでして、九州電力さんがわざわざこの日の試合のために、この舞台を用意してくださったのかと思うくらいです(笑)。当社の九州支店からも大挙して会場に駆け付けてくれましたが、今日は九州電力さん、宮崎県のラグビーの力、意地みたいなものを感じながら、采配させていただきました」
──最後のトライを奪われたシーンで規律が足りていなかったのは、精神的な面が大きかったのでしょうか。
「そこの規律というよりは、その前のスクラムがすべてかなと。あのスクラムの途中でホーンが鳴って、ボールを出せば試合が終わり、勝つ、というところで、もっと集中しなければいけなかった。かなりハードな試合展開でしたし、どちらに転ぶか分からない場面で、たぶん、あのホーンで気持ちが抜けてしまったのかなと思います。これは選手だけでなく、スタッフも同じような気持ちになってしまった。そこは大きな反省点です」
──次の試合に向けての意気込みをお願いします。
「勝てば残留が決まりますし、負ければ(D2/D3)入替戦に行くということで、今後清水建設江東ブルーシャークスが上を狙っていくという意思表示を、みなさんに見てもらうためにも、必ず残留しなければいけないですし、やはり勝つことでステージが上がると思いますので、全員で団結して勝ちを取りに行きたいと思います」
清水建設江東ブルーシャークス
ジョシュア・バシャム ゲームキャプテン
「本当にタフな試合でした。九州KVのフィジカルが脅威だということは試合前から認識していたので、そこにフォーカスして、うまく適応できたと思います。ただ、大事なところで規律が欠けて、流れを失ってしまったところが、最後の最後で取りこぼした結果につながったのかなと思います。九州KVの最後の取り切る、引き分けに持ちこむという覚悟は称えたいと思います」
──次の試合に向けての意気込みをお願いします。
「日野レッドドルフィンズはD3のときからよく知っているチームですし、毎回難しい試合になるので、いい準備をして戦い抜くだけです。来週の試合の重みは、どちらのチームにとっても同じです。どれだけいい準備ができるか、それに懸かっていると思います」