2025.05.04NTTリーグワン2024-25 D2 第13節レポート(花園L 42-19 GR東葛)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第13節
2025年5月3日(土)12:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 42-19 NECグリーンロケッツ東葛

6連勝の陰にある花園Lの一体感。モチベーションになった、引退を発表した“鉄人”の存在

今季限りで引退となる、花園近鉄ライナーズの松岡勇選手

5連勝中の花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)が、7連勝中のNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)に42対19で快勝し、D1/D2入替戦進出の可能性を最終節までつないだ。

「『All Attack(今季のチームスローガン)』が非常にでき上がってきた」。向井昭吾ヘッドコーチが試合後に胸を張ったように、二つのトライを先に許す苦しい展開をひっくり返しての逆転勝利。敗れれば、D1/D2入替戦進出がなくなる崖っぷちの一戦だったことに加えて、花園Lには絶対に勝たなければいけないもう一つの理由が存在した。

3日前に今季限りでの現役引退を発表した松岡勇の存在である。

勝利のあと、サプライズで引退セレモニーが行われた。41歳の松岡は、「みなさんの応援が力になりました」とファンに向けて挨拶。この日はメンバー入りを果たせず、スタンドからの観戦になったが、チーム一筋18年の“鉄人”の存在は、グラウンドに立つ選手のモチベーションになっていた。

昨季までキャプテンを務めた野中翔平は、松岡というラガーマンをこう評した。「松岡勇という人自体がチームの文化みたいなところはあります。良いときのライナーズも、悪いときのライナーズも知っていますから」。

21対19の僅差で折り返した後半15分、試合の流れを決定付けたのが岡村晃司のラインブレイクをきっかけに奪った片岡涼亮のトライだった。

昨季はバイスキャプテンも務めた片岡は花園Lの生え抜きだが、「勇さんはレジェンドですし、僕も入ったときからずっとその背中を見てラグビーをしてきました。一番良いのはディビジョン1に昇格して、勇さんに『じゃあ、頼んだぞ』って終わってもらうことです」と試合前から、特別な思いを抱いていた。

岡村のラインブレイクをきっかけに左サイドからトライを決めた場面について、「みんながつないでくれたトライです」と謙遜したが、2022シーズンには11トライも決めているように、攻守両面で貢献できるウイングであることをあらためて証明した。

片岡ら後輩たちの踏ん張りを目の当たりにした松岡はキッパリと言い切った。「今日勝ってくれたので(D1/D2入替戦を含めて)あと3試合残っています。それまでは自分の役割を果たしたい」。

6連勝を飾った花園Lは、選手の一体感もいまのチームに武器になっている。

(下薗昌記)

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、ウィル・ゲニア ゲームキャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「今日はありがとうございました。一戦必勝で必ず勝ち点を取りたかったというゲームでした。思いどおりに(勝ち点)5点を取れて、終えられました。選手、コーチ、スタッフ、登録メンバーも含めて、(全員の)仕事ができたからその結果につながりました。掲げている『All Attack(今季のチームスローガン)』について、非常にでき上がってきたのかなと思います」

──次節の豊田自動織機シャトルズ愛知戦は、D1/D2入替戦進出が懸かる試合になります。特にフォーカスしていきたい部分を教えてください。

「ラグビーの原理原則からすると、セットピースの安定と、やっぱりブレイクダウンだと思うんですよね。今回のゲームでブレイクダウンについて、ちょっと言い方はおかしいですけど、『戦争ぐらいの戦いだよ』というようなことを言って、選手を送り出しました。後半においてはそこを厳しくやることができましたが、まだまだできなかったところもあります。反省を残しながら勝てたということについては、ウィル(・ゲニア)から言っていただいたとおり、まだまだ伸びるチャンスがあるチームだと思っています。そこをより尖らせて精度を上げて、目標としているところに向かっていければと思っています」

──「All Attack」のお話がありましたが、それは何%ぐらいの完成度になっているのでしょうか。

「今日は後半から出たメンバーについても、ブレイクダウンでのミスは少しありましたけれども、一つのパスがとおるかとおらないかのところで、“キワ”のボールを落とさなくなっています。ライナーズのプライドをもって、みんなの代表として出るという責任をもってプレーをしてくれるような選手が増えましたし、その選手をチョイスできるようなチームになって、底上げができています。これはチーム自体が強くなっているということだと思いますし、みんながゲームに対して厳しい(目線ができる)チームになりつつあります。60%、70%、80%と(完成度は)上がってきているんじゃないかと思います」

──今季限りでの引退が発表された松岡勇選手のセレモニーも行われましたが、メッセージをお願いします。

「私としては、『お疲れさんでした』と言うしかない感じです。よくここまで頑張ったな、というそれだけです」

──クウェイド・クーパー選手がこの試合に先立って、「われわれはこの試合のずっと前に重圧の掛かる試合を経験して、乗り越えてきている」と話をしていました。今日の試合も先手を取られながら逆転しましたが、難しい試合をずっと勝ち続けてきたチームのメンタル的な成長をどう感じていますか?

「メンタル的な成長というか、ハーフ団の彼らはそういうところばかりを経験してきている人たちなので、彼らに連れられて、自分たちのプレーをしっかりやれば、自分たちが勝てるという自信を徐々につかんできているんじゃないかと思います。(ハーフ団の)彼らが100%を常に出し切るという姿勢をみんなが見て、チーム全体が大きな渦になっていると思います」

──後半にフロントローの3人を一気に入れ替えた理由を教えてください。

「(途中から入った選手も)先発で出ても問題ない選手です。ラインアウトのところは、ジャンパーなのかリフターなのかスロワーなのか検証しないといけませんが、スクラムのところは絶対の信頼がありますし、どこで出しても問題ないと思っていましたし、先発のメンバーが少し疲れていたのもあります」

花園近鉄ライナーズ
ウィル・ゲニア ゲームキャプテン

「本当にチームのみんなを誇りに思います。コーチをはじめ、選手は本当にハードワークしてきました。シーズンの入りがあのような状態(3試合未勝利)だったので、こき下ろされていましたし、恐らくここまで盛り返してくるとは誰も信じていなかったでしょう。ただ、われわれはその時間を経てどんどんチームとしてタイトになってきました。日々、選手もスタッフもベストを尽くしています。

試合が始まる前に私がみんなに言ったのは『自分たちのやってきたことを信じよう』、『仲間を信じよう』ということでした。ゲームの中でも一時は0対12で負けていたと思います。それぐらい良くない時間帯はあったんですが、そこの場面でも『われわれのやってきたことを信じよう』、『仲間を信じよう』、『チームを信じよう』と言って、この結果です。なので、みんなを誇りに思います。われわれは本当にいいチームです。ここから先のチームの基盤作りをいま、やっています。そして、その基盤ができ上がってきました」

──個人的にも最近は素晴らしいパフォーマンスが続いています。その秘訣は何でしょうか。

「本当にラグビーが好きだからです。年齢は関係ないと思っています。ラグビーが大好きで、そこでベストを尽くしたいので、自分のやるべき準備をする。自分の体もそれに向けて、しっかり準備をする。(練習などでも)常にフィールドに出るのが一番(早い)ですし、何よりも準備を大切にしています。その準備さえやっていれば年齢なんて関係ないです。あともう一つは、やっぱりこのチームが大好きなんです。この花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)にいる選手が大好きですし、彼らと一緒にやっているとエナジーをもらえます。本当にこのチームにはいい人しかいないんですよ。この人たちのためならば、という思いで日々やっています」

──今季限りでの引退が発表された松岡勇選手のセレモニーも行われましたが、メッセージをお願いします。

「われわれにとっては、素晴らしい見本のような選手で、あれだけ激しいことができるような体の準備を日々重ねています。あのレベルで、あのスタンダードでできるベテラン選手がチームにいるというのは、すごく重要なことだと思います。あのような努力を続ける人が言うことは、みんなが聞きますし、私自身も勇さんが話せば耳を傾けます」

NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ(右)、リース・パッチェル選手

NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ

「本日、(ディビジョン2の)トップ2を確定させよう、それに伴う(D1/D2)入替戦進出を決めようと試合に臨みました。花園Lさん側はシーズンが(レギュラーシーズンで終わってしまうのかが)懸かっている試合ということも理解して挑みました。(前節の)豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)戦でファストスタートを切れなかったので、本日はファストスタートをしてほしいという話をチームにしていました。それをよく体現してくれて、最初の短い時間の間で2トライを決められたことは非常に良かったと思っています。

ディフェンスの観点ではタックルで仕留め切れずに、花園L側にチャンスを与えてしまう局面もあったのですが、前半は均衡した試合で良い仕事をできたと思っています。

ただ、後半でいろいろなことが見えてきました。チームの精度が悪くなっていた印象で、エラーに次ぐエラーがどんどん起こっていた印象です。ラインアウトからのスローフォワードや、ターンオーバーなどがありました。どれも花園L側がよくプレッシャーを掛けてきた結果だと思うのですが、それにしても試合に勝つためには、エラーが多過ぎた印象でした。

来週、まずはS愛知対花園Lの結果をドキドキしながら見る形になりました。S愛知側に勝ってほしいという応援の仕方をするしかなくなっています。S愛知が勝った上で、その翌日にレッドハリケーンズ大阪とのホストゲームが行われるので、そこで勝利することがいま、選手たちに設定した方程式となっています」

NECグリーンロケッツ東葛
リース・パッチェル選手

「ウェイン(・ピヴァック ヘッドコーチ)がすでにうまくまとめてくれたとは思うんですが、それに付け足して、個人的にも前半は今季の中でも、比較的いいラグビーのプレーをお見せすることができたと思っています。ただ後半がうまくいかなかった印象で、こちら側のエラーをすべて、花園Lがチャンスに変えていきました。かつフィールドポジションを取られた(エリアマネジメントをされた)という印象です」


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