2025.05.05NTTリーグワン2024-25 D1 第17節レポート(三重H 30-38 トヨタV)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第17節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年5月4日(日)12:10 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)
三重ホンダヒート 30-38 トヨタヴェルブリッツ

“闘将”の帰還がもたらす影響力。確実に変わりつつあるチームのメンタリティー

三重ホンダヒートにとってパブロ・マテーラ選手の復帰は大きい

5月4日に行われたトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)戦で30対38と敗れた三重ホンダヒート(以下、三重H)。この結果、今季のレギュラーシーズンでの11位が確定し、D1/D2入替戦に臨むことが決まった。

ただ、この試合では5,437人ものファンが会場に訪れ、ジャパンラグビーリーグワン発足後、鈴鹿開催のホストゲームにおける歴代最多入場者数を更新した。三重Hでのプレーが5シーズン目となるフランコ・モスタートも「今日が一番素晴らしい雰囲気でした。応援はとても力になりました」と語った。

鈴鹿開催の歴代最多入場者数を更新した

さらに、今後に向けての好材料は、負傷で離脱していたパブロ・マテーラの復帰だ。前半のうちに途中出場したマテーラは、まるで鬼神が乗り移ったようなプレーを見せ、苦しい状況の三重Hに反撃のきっかけをもたらした。個人のプレーのみならず、チーム全体のモールやスクラムでも劇的な向上が見られた。

「彼のようにゲインラインを切ってくれると、あとのアタックやサポートもやりやすい」と振り返ったのは肥田晃季。「個の力であれほど変わるんだなと。勢いをもたらしてくれる選手は貴重だなと思いました」と、マテーラの影響力を強く感じていた。

また、モスタートも同じく「パブロのような代表クラス(アルゼンチン代表)の選手が戻ってきたことはチームに勢いをもたらしてくれます」と話す。ただ、「小林亮太やトニー・ハントも勢いを作れますが、代表クラスの選手はミスが起きたときにも自信を失わずに戦い続けられる。強いて言えば、それが違いなんです」と、メンタルの点も強調した。

そして、「入替戦に向けて、チームにプラスすべきなのはマインドセットだけです。試合の中でパフォーマンスに波があるのはそれが原因です」とモスタートは続けた。「今日の試合後、ロッカールームで全員のコメントを聞きました。マインドセットは間違いなく良くなっています。だから、私は今後にとても期待しているのです」。

フランコ・モスタート選手

闘将マテーラの復帰がもたらす影響力と、連敗の中でも確実に改善されてきたメンタル。レギュラーシーズン最終節と、その先に待つ入替戦に向け、三重Hは前向きに進む。

(籠信明)

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、小林亮太ゲームキャプテン

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「今日の試合結果については、もちろんガッカリしています。前半に4回ほど相手の22mライン内にまで入ったにもかかわらず、ターンオーバーやペナルティで得点につなげることができませんでした。後半に入って調子を取り戻しましたが、タイミングとして少し遅過ぎたため、追い付くことができなかったという印象です」

──敗戦はしましたが、今後につながるポイントはありますか。

「まず言いたいのは、選手をとても誇りに思うということです。火曜日にメンバーを発表したあと、水曜日にはけがの関係で変更を余儀なくされましたし、(マヌ・)ヴニポラもウォームアップの段階で負傷して出場することができなくなりました。いろいろなことが起こった週でしたが、選手たちはその中でもとてもよく頑張ってくれたと思います。前半の最後に点を取られた部分や、終盤に起こった敵陣からのスクラムによるトライなどがなければ、試合の展開はまったく違ったものになっていました。われわれは間違いなく戦うことができていますが、そのような部分は修正していかないといけないと感じています」

──前半からパブロ・マテーラ選手を投入し、後半は強烈な反撃を見せました。ハーフタイムの指示や後半の展開について教えてください。

「ヴニポラの負傷によってカテゴリの枠が空いたので、パブロを前半から出せるようになり、早い段階から起用することにしました。あとは審判のことです。彼らがどのようなレフリングをするのかは関係ありません。それは自分たちがコントロールできる部分ではないので、われわれがやれる部分に集中しようという話をしました」

──これでレギュラーシーズンのホストゲームは最後になりました。今季を振り返っての感想をお願いします。

「今季の試合に対して言えるのは、60分はとてもいいラグビーができているものの、残りの20分が上手くいかないことが多かったという点です。一貫性をもってプレーすることの重要性を学んだシーズンとなりました。もちろん、笛を吹いている人がとんでもないレフリングをするかもしれないですが、それはわれわれがコントロールできるものではありません」

──ヴニポラ選手の負傷は試合の直前、この会場に入ってからのものでしょうか。

「そうです。ふくらはぎの部分を負傷しました。今日のウォームアップ中に起こったものです」

──代わって出場した中尾隼太選手は昨日のトレーニングマッチでもプレーしていましたが、出さざるを得なかったということでしょうか。

「いつもバックアップメンバーが用意されており、中尾はそこに入っていました。本来バックアップが試合に出ることは少ないのですが、特別なことが起こったので、呉洸太とともに繰り上げる形になりました」

三重ホンダヒート
小林亮太ゲームキャプテン

「本日はありがとうございました。ヘッドコーチがおっしゃったとおり、前半で失点が多過ぎたために、自分たちで難しい状況にしてしまいました。トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんはしっかりボールを回してくるチームで、アタックの回数が多いということは分かっていましたが、それによって前半にやられてしまい、また、敵陣でのブレイクダウンで実行力が足りず、ペナルティを与えてしまいました。D1/D2入替戦に向けて、(レギュラー)シーズン残りの1試合をいい形で終われるようにハードワークしていきます」

──この試合から今後に生かせるものはありましたか。

「ヘッドコーチがおっしゃったように、自分たちが本来の力を出せばどのチームにも勝てますし、そのチャンスはあります。これはずっと言っていることですし、その戦える時間を伸ばせるように取り組みたいです」

──後半の反撃はとても勢いがありましたし、逆転もあり得たと思います。グラウンドの中ではどんな感覚がありましたか。

「風上に立てたことで、キックを使いながらエリアを取り、相手にプレッシャーを掛けていくというプランをもっていました。それは実行できましたが、自分たちがコントロールできない部分もありました。レフリングのことについては何もありません。それはわれわれが左右することができないものです。ただ、それによって自分たちがスクラムやディフェンスで勢いを失ってしまったところがありました」

──レギュラーシーズンは残り1試合になりました。これまでの戦いを振り返ってください。

「ヘッドコーチがおっしゃったとおり、戦える時間帯は多いですが、やはり80分をとおしていいパフォーマンスが出せるようにしなければ、このリーグでは勝てない。それは学ぶことができましたし、われわれはまだまだ成長できる余地があります。戦える力はあるということを確認できたと同時に、今季の残りと来季に向けて、その課題に取り組んでいかなければならないと思います」

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチ(左)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ

「今日の結果には非常に満足しています。特に前半は、チームのプランの実行力やディフェンス面で非常に良い内容でした。後半は相手の勢いがあり、非常に我慢を強いられる展開ではありましたが、われわれは数少ないチャンスを得点につなげることができました。それが本日の試合結果をもたらしたと思います。また、若手の小村真也も非常にいいキックを見せてくれましたし、今日のミスはおそらく1、2本しかありませんでした。その精度が7点差以上の勝利につながりましたし、来週以降のスケジュールを決めてくれるもの(※トヨタVは10位以上が確定し、D1/D2入替戦を回避)になりました。来週の試合も楽しみにしています」

──三重ホンダヒート(以下、三重H)と戦った前回の試合で「個人の勝ちたい思いが強過ぎて機能しなかった」と敗因を述べていました。今回も多くのことが懸かったビッグマッチでしたが、どのようなマネジメントをしましたか。

「前回の対戦から多くのゲームを経験し、その中でチームとして成長を遂げましたし、学ぶ機会もたくさんありました。チームスポーツというものは、個人ではなく集団として動かなければいけない。それが非常に重要であり、われわれはシーズンをとおしてそのような学びを得ることができました。今日の試合に関しては、姫野(和樹)も話していたように『チームとして動く』ことを意識してきましたし、前半にはそのような姿が見られたと思います。また後半に三重Hのプレッシャーが掛かった場面でも、チームとして一体感をもって厳しい局面を乗り越えることができました」

──先日の会見で「結果如何にかかわらず見直すところがある」とおっしゃっていました。今日の後半、チーム全体の勢いが鈍ったのはフィジカル面の影響もありましたか。

「後半の内容に関しては、このような状況のゲームだったということです。リードしている立場になれば、メンタルの点でさまざまな支障が出てしまう。プレーをやめてしまったり、勝ちにいくのではなく保守的になってしまったりすることもあります。また、試合全体をとおして、走る距離が非常に長かったので、足の疲労の影響もありました。だからこそ、フォワードがハードワークをすることを前提に、6人のスプリット(両サイドに同じ数のプレーヤーをそろえてどちらのサイドにキックするのか分からない状況を作り出すキックオフのこと)を採用しました。ですので、フィジカルとメンタル両方の面があると思っています。また、先日の私のコメントに関して言えば、チームとしてというよりは、プレーヤー個人としての成長を示しています。Aの選手とBの選手ではそれぞれ伸びシロや求めるものが異なります。そのようなところをプレシーズン、および来季に向けてのレビューなどで見ていきたいと考えています」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「まずは率直にホッとしているというのが個人の感想です。この1週間で本当にいい準備をして、自分たちのやるべきことを理解して、もっていたプランを実行できました。それが今回の勝利につながったと思います。また来週も試合があるので、そこにまた全力を注いで、自分たちのラグビーをしっかりとやりとおして、シーズンをいい形でフィニッシュしたいです」

──前半の最後、プレーを切らずにトライを取りにいった狙いについて教えてください。

「プレーを切ることも選択肢としてありましたが、モールがうまく機能していましたし、キャプテンとしては攻撃的な考え方をもって、自分たちのラグビーをするという強い意志でプレーしたかったです。それが試合のテーマでもあったので、小村真也とも話をして、トライを取りにいこうと。それで結果的に彦坂(圭克)の素晴らしい得点を見ることができました」

──後半、三重Hに押された場面は、相手のほうが上回ったのでしょうか、それとも気の緩みが出てしまったのでしょうか。

「僕たちが気を緩めてしまったというわけではないと思います。ただ、風がとても強くて、自分たちが風下にいるという状況がありました。相手はうまくそれを利用してきて、こちらはキックの処理で後手を踏んでしまったり、ペナルティを与えてしまったりして、相手に勢いを付けさせてしまいました。ただ、その中でも全員が連係を失わず、我慢強く戦って簡単に失点しないという意欲も感じました。それに関してはとても良かったと思います。また三重Hさんの粘り強さも素晴らしかったです」

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