NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第14節
2025年5月10日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 21-22 日野レッドドルフィンズ
またも紙一重の結果に。逆転に導く狼煙を上げた反撃のトライ
清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)が、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)を迎えたディビジョン2最終節は、22対21で日野RDに軍配が上がった。この勝利により、日野RDは自力でD2/D3入替戦を回避。一方で江東BSは、その翌日に行われた他会場の結果により、その入替戦に臨むこととなった。
命運を分けたのは何だったのか。両チームとも、昨季はD3を戦った昇格組で、昨季は最終戦を、今季は開幕戦と最終節で対戦している。さらに、今季の開幕戦では江東BSが25対24で、そして今回の最終節では日野RDが22対21と、いずれも1点差で勝利するという接戦が続いており、まさに好ライバルの関係を築いている。
この日も。江東BSが前半4分と同26分にトライを奪い、12対0とリードを広げる展開になるも、日野RDのジョシュ・フェナーには「この試合、勝てる。全然負けていない」という実感があった。そして江東BSのトライからわずか3分後、自身がトライを奪って反撃の狼煙を上げた。「開幕戦よりも2回目の(対戦となった)今回は、勢いを作ったときにそれ(反撃)が実行できました。また、今回はディフェンスを粘り強くできました」と、フェナーは進化を実感していた。一方で、ライバルチームへのリスペクトも忘れない。「ただ、ウチの問題は規律の継続です。江東BSの15番、(コンラッド・)バンワイク選手もすごく指示を入れるのがうまくて、相変わらず江東BSにチャンスをあげる時間も多くあったと思います」。
自身、今季は14試合中13試合に出場。日野RDに加入した1年目を振り返って、「前半は勝ち切れなくてつらい場面も多かったが、でもみんなが『あともうちょっと、あと少しで勝てるかな』という気持ちをもっていました。後半は結果も出て楽しかったです」と語った。充実したシーズンを過ごしたようだ。
そして、ファンへの気持ちを語ってくれた。「1年間とおしてサポートいただきありがとうございます。今日のファンのみなさん、江東BS側でも日野RD側でも素晴らしい応援をしてくれて、自分自身もこの試合をやっていて本当に楽しかったし、見ているみなさんも楽しかったらいいなと思っています」。両者が繰り広げた熱戦で、ラグビー熱が上がったファンも多かっただろう。
紙一重の戦いを繰り広げるこの2チームが、来シーズン以降もまた相まみえる日が来ることを願いたい。
(奥田明日美)
清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕 監督兼チームディレクター
「本日試合を開催するにあたり、ご尽力をいただきまして本当にありがとうございました。前回の開幕戦では1点差で勝たせていただき、今回は1点差で敗れました。勝てば(ディビジョン2)残留が決まる状況でしたが、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)のアタックに対応し切れず、最後に受けに回ってしまったことが敗因だと思っています。ただ、ポジティブに捉えるならば、この(D2/D3)入替戦の2試合という壁(※この時点では入替戦に回るかは未定)をチーム全員で乗り越えることができれば、得るものは大きく、来季につながると考えています。ネガティブに受け止めても意味がないですし、ラグビーは本当に気持ちのスポーツですから、無理やりにでもポジティブに受け止めようと思っています。本日はありがとうございました」
──今季全体をどのように振り返りますか。
「今季はD3から昇格し、最下位からのスタートでした。2位の花園近鉄ライナーズにも勝つことができましたし、今回日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)さんにも勝利することができました。前回D2にいたときには、おそらくとなりにいる立川(直道)も含め、なかなか歯が立たなかったという印象があったと思いますが、今回はD2に来て、できることがかなり増えたと実感しています。この良い流れを来季もD2で生かしていきたいと思っています。釜石SWの結果次第ではありますが、他チームの敗戦を願うようなことはしたくありません。今日からしっかり準備し、現実を受け止めて進んでいきたいと思っています」
──「できることが増えた」というのは、どういった要因があったのでしょうか。
「まずセットピースは非常に安定していたと思っています。この分野で負けた試合は1試合もなかったと感じています。そしてモールでの失点も、多少はありましたが基本的にはなかったと認識しています。ここも戦えていたと感じています。また、仕事とラグビーの両立を選手たちがしっかりと行っており、その結果が現在の順位に表れていると思います。努力の質や時間の使い方の質を、最後まで突き詰めていきたいですし、それがレベルアップにつながると信じています」
──チームとしての成長、また個人として大きく伸びた選手がいれば教えてください。
「全員、と言うと答えにならないかもしれませんが、試合に出ている23人はもちろん、出場していないメンバーもいろいろな感情があったと思いますが、全員が本当にチームファーストの姿勢で体を張ってくれました。その点でチームとして成長していると感じています。個人に関しても全員が成長しており、順位をつけるのは難しいですが、立川選手は特に頑張ってくれていると思います。年齢を重ねても若手を引っ張り、自身も成長しようと意欲的に練習してくれています。その姿勢がブルーシャークスの若い選手たちの模範となっていて、確実にチーム文化として根付いてきていると感じています。チームが成長する上では、ベテランがチームを引っ張ってくれるのは、本当にありがたいことです」
──今日は雨のあとということで、グラウンドの状態など大変だったと思いますが、芝生や管理面、スタッフのみなさんについて、今季を通じてどのような思いがありますか。
「夢の島(江東区夢の島競技場)の芝生は、おそらく日本で一番良いのではないかと感じています。今日も水が残っているのではと思いましたが、実際に手で触ってもまったく残っていませんでした。これは夢の島の関係者のみなさんの努力の賜物であり、こうしたピッチを用意していただけることに対しては感謝しかありません。この素晴らしいピッチでなかなか勝てていないのは本当に申し訳ないと感じています。ただ、今回の敗戦で降格が決まったわけではありませんし、もう1試合このピッチで試合をできる可能性をいただけたと思っています。そういった方々への感謝を示すためにも、(入替戦に回った場合は)一つ二つしっかり勝って、D2に残留したいと考えています」
──本日の試合は、前節に引き続き終盤での点の取り合いが勝敗を分けたと思います。改善点として、得点を取り切る部分にフォーカスするのか、あるいは最後の5分間の戦い方を重視するのか、次の試合に向けてどのような戦い方を目指しますか。
「難しいですね。どちらか一方というより、両方だと思います。前半のキックオフで取られてしまった場面は、今季を通じての課題としてずっと残っていました。あの5点、7点がなければ勝てたのではないかと、“たられば”ですが、思います。ただ、選手たちは必死に、一生懸命プレーしています。ミスもラグビーの一部です。大切なのは、そうしたミスを補い合うことができるかどうかであり、これもまたラグビーの精神だと思っています。いろいろな反省点はありますし、選手にいろいろな後悔ももちろんあると思いますが、前に1歩踏み出すしかないと思っていますし、課題というよりは学びとして受け止めています。前半も取り切らなければならないところは、取り切らなければいけないですし、後半の最後5分のところもそうですね。九州電力キューデンヴォルテクスの試合からもそうですが、そこは徹底して常々言い続けなければいけないかなと思います」
清水建設江東ブルーシャークス
立川直道ゲームキャプテン
「まずは、試合開催にあたりご尽力いただいた関係者の皆さま、本当にありがとうございました。今日の試合は、“これぞラグビー”というような内容だったと思います。お互いが準備してきたプランをしっかり出し合って、ミスもありながら、80分間ずっと膠着状態が続くようなタフな試合でした。最後は、いろいろな要素が重なって日野RDさんに勝利の女神が微笑んだかな、というような試合でした。ただ、負けたとはいえ、こういった試合を経験できたことはチームの成長につながると思います。そういう意味でも、非常に良い経験ができたと思った試合でした。ありがとうございました」
──ご自身がチームで果たせる役割、果たすべき役割については、どうお考えですか。
「僕はプレーヤーなので、何よりもまず、常に良い準備をして、常に良いパフォーマンスを出す。それを愚直にやり続けることだけです。若い選手たちが、それを見て何かを感じ取ってくれたら、それはそれでうれしいです。僕は“アドバイスして変わる”というより、“姿を見せて感じてもらう”ことが大事だと思っていて、そういう意識で日々の練習にも取り組んでいます」
──今季で6名の選手が引退されます。どんなチームメートでしたか。
「今回引退する選手たちは、自分自身で引退を決断したメンバーです。そういう意味で、自分の意見や軸をしっかりもっている選手たちだと思いますし、練習でも手を抜くような姿は一度も見たことがありません。僕自身、仲良くしていたメンバーばかりなので寂しい気持ちはありますが、自分で決断してラグビーのキャリアを終えることができるというのは素晴らしいことだと思います」
──今季は、チームとしてプロセスを大事にすることや、ハードワークすることを大切にされてきたと思います。そのなかなか勝てない期間もあった中で、そうした大変な作業を遂行する上で、チームメートっていうのは、立川選手にとってどんな存在でしたか。
「負けが続くと、いろいろなことを疑い出すことがあります。誰かのせいにしたくなったり、疑心暗鬼になったりすることもあります。“プランが悪い”、“あの選手が良くない”、“起用した人のせい”……そういう方向に気持ちが向かいがちなんですが、今季のチームはそうなりませんでした。自分たちがコントロールできることに集中しようと、選手同士が本音で向き合って、外に矢印を向けずに、話し合いを続けてこられたのは大きかったと思います。ちゃんと本音で矢印を相手に向けずに話し合えた、チームと話し合えたというのは大きかったかなと思います」
日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ
「まずは、素晴らしい環境で試合ができたことに感謝しています。ゲームに関しては、そんなにきれいなラグビーではなかったですが、今日の試合に出るメンバー、出ないメンバーが1年間本当に献身的にチームのために、仲間のために努力し続けた結果で、今日はその代表の23名のプレーヤーが仲間のために献身的にプレーし続けたことによって、自分の仕事、役割を遂行し、勝利することができたと思います。本当にこの1年間献身的に努力してくれた選手たちのことを誇りに思っています」
──もともとのゲームプランと、うまくいったポイント、うまくいかなかったポイントを教えてください。
「今週の天気予報を見たときに雨の予報というのは分かっていました。われわれの火曜日の練習のときに、雨が非常に降っている中で練習することができて、試合を想定しながら起こりうることをコントロールする準備ができました。さらに、風が強いことも分かっていたので、例えばキックの弾道をどうするのかというのもイメージをして準備できました。われわれがコントロールできることに関してはしっかり準備した上で、今日臨もうと思っていました。素晴らしいグラウンド状況だったのですが、芝生を触ってみるととてもスリッピーな状況だったので、今日はきれいなラグビーはお互いできないなと思いました。派手なプレーはできないかもしれませんが、どちらが泥臭く一つひとつのクリーンアウト、一つのタックルをどれだけ精度高く繰り返し、相手よりも上回っていけるかというところが勝負だったと思います。そういうところを想定していたので、うまくアタックできなかった面はあったと思うのですが、最終的に点数を上回れて勝ち点を取れたこと、それを想定して非常にこの1週間よく準備してくれた選手のことを誇りに思っています」
──開幕戦も1点差で、今日も1点差でした。そういった相手に対して今回勝ち切れたのは、どういうポイントがありますか。
「開幕戦、昨季の最終戦と、われわれは江東BSに負けて、シーズンが終わり、また今季のスタートを切りました。そこから出た学びというのを選手たちが本当に真摯に受け止めて、それを一つずつ改善して成長したことによって今回は上回れたと思っています。」
──堀江恭佑選手のトップリーグ・リーグワン通算100キャップ、そして笠原雄太キャプテンが引退を発表した中での試合でした。あらためてこの二人の選手はチームにとってどのような存在でしたか。
「今季、そして昨季も素晴らしい1年を過ごすことができました。そして新たなメンバーで今季もスタートしました。その中で、笠原と堀江に関しては、プレーだけではなく、プライベートというか、ラグビーの練習ではないときも含めて、チームのために献身的に、どうしたらチームが良くなるかというのを常に考えてくれて、それをしっかり仲間とコミュニケーションを取って、チームがよりいい文化を作って成長するために、献身的に動いてくれた選手たちです。彼ら含めて今季でチームを去る選手もいる中で、今季のチームも本当に最高に素晴らしいチームだったので、みんなで最後に勝って終われたことが何よりもうれしく思います」
──試合前には、『80分間、とにかく出し切ったほうが勝つ』とおっしゃっていました。実際に試合の80分間を見ていかがでしたか。
「われわれが望んでいた形にならない場面もたくさんありましたし、前半は風下でうまくキックも使えないぐらいの風があってピンチになった場面もありました。しかし、本当にみんながトライラインを割らせないという強い気持ちをもってプレーし続けていました。珍しくイージーなゴールキックを外したりすることもありましたが、その献身的な動きがあり、残り4分、5分、のところでまだ2点リードされている場面で、頭を下げることなく、みんなが80分間勇気をもってチャレンジし続ける、献身的に動き続けることをやり続けられました。そこで、われわれにチャンスが転んできたと思っています。しっかりチャンスを生かして勝ち切れたということ、その勝ち切れた選手たちのことを誇りに思っています。ありがとうございます」
日野レッドドルフィンズ
ノア・トビオ バイスキャプテン
「まず、江東BSとファンのみなさんに対して、ホストゲームをしてくれたことを感謝したいです。そして、江東BSは素晴らしいチームなので絶対に今日は厳しい戦いになると分かっていました。次に天気です。雨が昼前ぐらいまで降っていて、やっぱり芝がスリッピーな状態で、苑田ヘッドコーチがおっしゃったようにきれいなラグビーにならなかったかもしれませんが、しっかりタイトにしようと思って、前に出る意識をもってプレーしました」
──江東BSとは開幕戦でも1点差で、今日も1点差でした。そういった相手に対して今回勝ち切れたのは、どういうポイントがありますか。
「以前、負けたときの課題から改善しました。また負けたくなかったので、最後まで戦う気持ちでみんなが意志をもっていました。みんなが素晴らしい努力をして、結果もそのままついてきたので、みんなが喜んでいます」
──堀江恭佑選手のトップリーグ・リーグワン通算100キャップ、そして笠原雄太キャプテンが引退を発表した中での試合でした。あらためてこの二人の選手はチームにとってどのような存在でしたか。
「二人ともなのですが、特に笠原さんは非常に経験が深い選手で、すごい能力をたくさんもっています。いつもチームを新しい方向に引っ張ってくれています。体を張って前向きなリーダーのスタイルをやって、必ず毎日良いエネルギーでグラウンドで練習をしてくれています。堀江さんは簡単に言うとビーストです。コンタクトプレーの中でキャリーなのかスティールなのか、強いタックルなのかを全部決めてくれる選手です。『100キャップおめでとうございます』とみんなの前で伝えたいです」
──今日、残留を決めることになる勝利を挙げましたが、チームでどのように祝いますか。
「80分までしっかり戦ったことで勝利したと思っています。うまくいかなかったシーンが本当に多かったですが、そんなときも粘り強く、誰も顔を下げずに80分までみんなで一緒に戦うことができました」