2025.05.12NTTリーグワン2024-25 D3 第15節レポート(WG昭島 17-22 狭山RG)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第15節
2025年5月10日(土)12:00 厚木市荻野運動公園競技場 (神奈川県)
クリタウォーターガッシュ昭島 17-22 狭山セコムラガッツ

「すべてを出し切る気持ちで」臨んだ今季最終戦。同期と過ごした「本当に最高の時間」

2年2カ月ぶりの復帰。クリタウォーターガッシュ昭島の川瀬大輝選手はリザーブから後半26分に出場した

クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)が狭山セコムラガッツ(以下、狭山RG)を厚木市荻野運動公園競技場に迎えた今季ラストゲーム。試合は後半28分、狭山RGの飯田光紀がシンビンで10分間の一時退場となるまでは、0対22と狭山RGのペースだった。WG昭島は、それまで何度もあった好機を決められずにいたが、数的優位に立つと、中尾泰星の今季10本目のトライを皮切りに反撃を開始。その後、スコアは逆転可能な17対22まで迫った。スタンドからは大きな声援が飛び、迎えたラストワンプレー。ラインアウトモールから逆転を狙ったが、狭山RGの粘り強いディフェンスの前に力尽き、ノックフォワードのペナルティが起きてノーサイド。あと一歩届かず、WG昭島の2024-25シーズンは幕を下ろした。

今季、約2年2カ月ぶりに公式戦に復帰を果たした川瀬大輝は、ラストゲームでも途中出場ながらトライにつながる鋭いゲインでチームに勢いをもたらした。「得点に絡めたのは素直にうれしかった。やってやろうという気持ちでピッチに立ちました。これまでラグビーで学んできたすべてを出し切るつもりでした」と、試合後には安堵の表情を浮かべた。そんな川瀬の復帰を、誰よりも喜んでいたのが濱副慧悟だ。同期入社で、同じ会社。そして毎日一緒に昼食をとる、特別な存在だ。

「川瀬がいなかったら、自分はここまでラグビーを続けられていなかったと思います。今日はやり切ろうと話して、プレー中もお互いに目配せして、本当に最高の時間でした」

さらに濱副には、もう一つの思いがあった。同期入団のワイクリフ・パールーヘッドコーチに、最終戦の勝利を贈りたかったという。「クリフィー(パールー ヘッドコーチの愛称)を勝たせたかった。悔しいけど、自分らしくファンを沸かせるプレーは出せたと思います」と個人のプレーには納得しているようだった。そして最後に濱副は次の世代へと視線を向ける。

「ウイングには細元(亮)や、山本(快)が入ってきて、江本(洸志)が復帰すれば、さらに厚みのあるチームになる。誰が個人技で沸かせてくれるのか、これからが本当に楽しみです」

終わりがあれば、始まりもある。それぞれの場所で、また新たな物語が始まっていく

(匂坂俊之)

クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(右)、中尾泰星キャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「今日の試合に臨むにあたって、自分たちでテンポを作り、アタッキングマインドに集中する必要がありました。前半はセットピースを含めて難しい場面が多く、フィジカルの面でも相手に押されてしまいました。その影響で、良い流れに乗ることができませんでした。ただ、後半は交代で入った選手たちが良い働きをしてくれて、勝ちたいという気持ちがプレーに表れていたと思います。やり切ろうと話していたのですが、最後に勝利という結果にはつながりませんでした。この試合の内容は、今季の自分たちの姿を反映していると思います」

──今季の総括をお願いします。

「シーズン序盤はけがや出場停止の影響もあり、スロースタートとなりました。これは自分たちでコントロールできない部分でもありましたが、その後は少しずつ勢いを取り戻し、良い流れを作ることもできました。ただ、常にしっかりとした準備ができていたとは言えません。特に、ルリーロ福岡、ヤクルトレビンズ戸田戦の敗戦は自分たちにとって非常に痛かったです。これがマインドセットの問題なのか、別の要因なのかはまだはっきりしていませんが、自分たちのスタンダードを貫いていくことが大切だと感じています。また、ディビジョン3のレベルは確実に上がってきていて、どのチームが勝ってもおかしくない状況になっています。自分たちにとって今季は大きな学びのシーズンでした。クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)は若い選手も多く、ポテンシャルは非常に高いです。今後もチームとしてしっかりと成長していけば、必ず成功につながると信じています」

クリタウォーターガッシュ昭島
中尾泰星キャプテン

「今日の試合では、雨とグラウンドのぬかるみで非常に滑りやすい状況でした。その中で、両チームともにハンドリングエラーが多くなることは想定していました。シーズンをとおして大切にしてきたボールを継続してアタックし続けることが、できている時間帯は前に出ることができていたと思います。ただ、プレッシャーを受けた場面でのミスが、良い流れを自分たちで止めてしまっていたと感じています。ディフェンスについては、狭山セコムラガッツ(以下、狭山RG)の縦の圧力に対してもっとファイトできたはずです。前半は特に、自分たちがなかなか前に出られない状況でも、我慢して守ることができていました。最後にトライをもう1本取りたかったのですが、取り切れずとても悔しい結果となりました」

──チャンスは作っていましたが、あと一歩届かなかった理由はなんだと思いますか。

「狭山RGがキャリアーに対して、すごくプレッシャーを掛けてきていました。僕たちも真正面から当たるとボールをこぼすリスクが高くなるので、少しずらしてアタックしようと話していました。それでも、実際のプレーではプレッシャーが来てもそのまま当たりに行ってしまい、ボールを落としてしまう場面が数回あったと思います。そこが大きな課題だったと思います」

──今季の総括をお願いします。

「今季は、自分たちのラグビーができなかった試合が何度かありました。自分たちのミスによって、流れを悪くしてしまった試合が多かったと感じています。僕はリーグワンで4シーズン目になりますが、年々他のチームのレベルが確実に上がっていると実感しています。それに対して、僕たちの個々のレベルアップはもちろん、チーム全体のレベルアップも必要です。ここ数年、3位でD2/D3入替戦に進むような結果を残してきましたが、『どうせ入替戦には行けるだろう』といった意識がある選手がいるようでは、今後は勝てなくなると思います。僕自身ももっとレベルアップしたいと思っていますし、その思いをチーム全員に伝えました。来季に向けて、より高い意識で取り組んでいきたいと思います」

狭山セコムラガッツ

狭山セコムラガッツのスコット・ピアス ヘッドコーチ(右)、飯田光紀キャプテン

狭山セコムラガッツ
スコット・ピアス ヘッドコーチ

「両チームとも、ポジティブなラグビーをやろうという意図をもって試合に臨んでいました。最初の20分はエラーが多く、思うような展開になりませんでしたが、それでも両チームがレベルの高いラグビーを見せようとしていたと思います。実力が拮抗していたからこそ、非常に激しい試合になりました。後半に入り、われわれがイエローカードを受けてから試合の流れが大きく変わってしまいました。イエローカードの影響は非常に大きかったですし、けが人も出てしまったことで、パフォーマンスにも大きな影響が出ました。今日の試合は、選手のパフォーマンスとしてはベストとは言えませんでしたが、チームとしての意識は非常に良かったと思います」

──リーグワンで1シーズン戦ってみていかかですか。

「この1年をとおして、チームは確実に成長したと思います。まだ80分間をとおして安定したプレーができるチームとは言えませんが、試合の中で良いパフォーマンスが増えてきたのは事実です。D2/D3入替戦では、WG昭島以上の強度を持つチームと戦うことになりますが、規律面に課題があり、ペナルティが多いという現実もあります。また、メンタル面のスイッチを切り替える力、プレッシャーの中で集中を保ち続ける力が、まだ足りていません。80分間、こうしたプレッシャーに耐え切れなければ、勝機をつかむのは難しいと思います」

──D2/D3入替戦に向けてどういった準備をしていきたいですか。

「まずはチームをリフレッシュさせることが重要です。シーズンのスタートは悪くありませんでしたが、途中からパフォーマンスレベルが落ちてしまった時期がありました。その原因は、フィジカルというよりもメンタルにあると感じています。D2/D3入替戦では勝ちたいという気持ちだけでは足りません。それ以上のパフォーマンスが必要になります。勝ち負けだけに囚われず、プレッシャーの中でも80分間集中を維持できるかどうか。それが本当に大事になります」

狭山セコムラガッツ
飯田光紀キャプテン

「まず、グラウンドの準備をしてくださった関係者の皆さま、本当にありがとうございました。今日の試合についてですが、80分間をとおして、雨でグラウンドがぬかるんでいたこともあり、非常にフィジカルコンタクトの激しい試合だったと思います。そんな中でも、自分たちの強みであるディフェンスで前に出ていく部分はしっかり出せたと思います。アタックに関しても、シンプルにプレーしていこうという話をしていて、それが前半から後半の途中まではうまく遂行できていたと思います。ただ、僕がシンビンで一時退場になった時間帯で、チームが少し緩んでしまい、そこを突かれてWG昭島に点差を詰められる展開になってしまいました。最後は危うい場面もありましたが、なんとか勝ち切れたことは良かったと思います。D2/D3入替戦では、この気の緩みが一瞬でも出ると、相手に一気に流れをもっていかれると思うので、そこはしっかり修正して臨みたいです」

──リーグワンで1シーズン戦ってみていかかですか。

「試合に出るメンバーはもちろんですが、メンバー外の選手たちがどれだけハードワークして、同じパフォーマンスレベルを保てるかが、チームとして非常に重要だと感じました。全員が同じ意識で取り組んでこそ、チームとしての成長につながるという実感があります」

──D2/D3入替戦に向けてどういった準備をしていきたいですか。

「入替戦やD2のチームとの対戦に向けては、何よりメンタルが鍵になると思っています。むしろ、メンタルが試合の結果の大半を占めると言っても過言ではないかもしれません。試合の入りからしっかりメンタルを整えて臨めば、コンタクトの強度やフィジカルの圧力も全然違ってくると思います。逆に、そこで受けに回ってしまうと、そのままズルズルとやられてしまう。D2のチームはコンタクトの強度が本当に高いので、そこで受けてしまうと一気に押し込まれる危険があります。まずはもう一度メンタルを立て直して、そして実際に体を当てる部分では巻き込まれず、引かずに立ち向かうという意識をもっていきたいです。それができれば、必ず勝てるチャンスはあると思います」

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