NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第18節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年5月11日(日)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
リコーブラックラムズ東京 67-22 三重ホンダヒート
100キャップの重みと、ファーストキャップの輝き。チームのいまと未来が交差した実りある最終戦
受け継ぐ者と、受け継がれる者。シーズンが幕を閉じるとき、そこには戦いを終えた者たちの多様な笑顔が咲く。
プレーオフトーナメント進出を逃し、第18節をもって今季の終了が決まっていたリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)。迎えた最終戦の相手は、開幕戦で黒星を喫した三重ホンダヒート。リベンジの舞台となった秩父宮ラグビー場で、チームは今季最多となる11トライを奪取。67対22という圧倒的なスコアで勝利をつかみ、有終の美を飾った。
BR東京では、ウォーミングアップを終えロッカールームへ戻るときに、隊列を形成することがならわし。この日、その先頭に立ったのはゲームキャプテンではなかった。務めたのは、これが記念すべきクラブ100キャップ目の出場となった山本昌太。節目の試合に、仲間たちは自然とその場を譲った。「TJ(ペレナラ)や松橋(周平)たちが『昌太さん、先頭で』って言ってくれたんです」。その言葉が、これまでの貢献度を物語っていた。
今季、第9節でベンチ入りしながらも出場機会がなかった。そのとき以来で再び巡ってきた最終戦でのメンバー入り。後半30分に満を持してピッチへ立つと、そのわずか5分後、右サイドを駆け上がったランナーに並走し、ボールを受け取りトライエリアへ一直線。歓喜のグラウンディングを果たした。
祝福に駆け寄ったのは、これまでともに汗を流してきた仲間たち。「みんなの顔が見えた。良いチームだな、って思いました」。山本昌太は、そう穏やかに笑った。
このトライにつながった“スクラムハーフのサポートコース”へのランは、マット・ルーカス アシスタントコーチから繰り返し指導を受けてきたプレーでもあった。試合当日、会場へ向かうバスの中でルーカス アシスタントコーチから届いたメッセージには、こう綴られていたという。「タフなシーズンだったけど、グラウンドで100%を出せるよう応援しているよ」。その言葉に心は軽くなった。「良い報告ができます」。そう話す声には、喜びと誇りがにじんでいた。
試合終了のホーンが鳴ったあとには、67点目となるコンバージョンゴールを山本昌太が蹴り込んだ。それは、人生初のプレースキック。背後からその瞬間を見守ったのは、先に100キャップを達成している柳川大樹。「先輩として、ちゃんと見届けましたよ」と優しく笑った。
一方で、この日が公式戦デビューだったのは高本とむ。抜群のスピードで2度の好機を演出し、先輩たちから惜しみない称賛を受けた。「認められた気がします。来季に絶対つなげたい」。輝く瞳の奥に、新たな闘志が灯った。
100キャップの重みと、ファーストキャップの輝き。その両方が交差したこの日、今季ホストゲーム最多となる12,396人の観客が、彼らのいまと未来に拍手を送った。
(原田友莉子)
リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「本当に楽しめました。自分たちのラグビーに一貫性をもたらしたかったのですが、それはできたかなと思います。プレーオフトーナメントに行くという目標には届きませんでしたが、7位で終わったことをベースに、来季もリードをしていきたいなと思っています。
僕たち(記者会見に登壇したマットソン ヘッドコーチとTJ・ペレナラ ゲームキャプテン)は二人とも、もっともっとラグビーを面白くしていきたいと思っています。日本でのシーズンは本当にすごく良い雰囲気で、スタジアムやファンの方々の素晴らしさも感じられて、とても楽しめました。ありがとうございました」
──リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)でのヘッドコーチ1年目を終え、今季の収穫と、来季伸ばしたいことを教えてください。
「今日の試合が、自分たちの1年を物語っていたかなと思います。チャンスはたくさん作りました。でもターンオーバーもあった。部分的にはすごく良いディフェンスを見せられるのですが、悪い時間帯もありました。そういったことは、トップチームを相手にやってはいけません。チャンスはつかまなければいけないです。そのためにも常に高いレベルでのディフェンスが必要です。まだもっと(課題は)あるのですが……(笑)このぐらいにしておきます」
── 一貫性という面で、シーズンをとおして貫けたことを教えてください。
「2試合、簡単に負けてしまった試合があったと思いますが、それ以外は競った試合ができていましたよね。負けたとしても勝ち点を一番取得してきましたし、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)で認められないトライも一番多かったんじゃないかな、と。トップチーム相手でも、勝つチャンスはあったと思います。
このリーグにおいては、9番が本当に大きな影響を与えると思います。私たちのチームに世界でもトップクラスの選手(ペレナラ)がいることはすごくラッキーなことですし、彼の一貫性や競争心もばっちりです。(ゲーム)キャプテンとして前でリードしてくれて、ときにはレフリーをいらつかせたこともあったかなと思いますが……(笑)すごく良い一貫性をもたらしてくれたのかなと思います」
リコーブラックラムズ東京
TJ・ペレナラ ゲームキャプテン
「まずは皆さま(記者の人たち)に感謝を伝えたいと思います。(ヘッドコーチとペレナラ選手)二人がこの記者会見でオープンに話せるような環境を作っていただき、自分たちやチームに対してのリスペクトもすごく感じられました。本当にハイレベルな素晴らしい雰囲気をありがとうございました。まずは記者の皆さまに、ありがとうと伝えたいです。
今日の試合については、本当にチームを誇りに思います。こういう1週間は難しくなりがちだと思います。結果が来週に影響しない、と分かった上で戦うことは簡単ではないですが、しっかりと週初めにみんなに話をして、タンバイさん(マットソン ヘッドコーチ)はじめみんなで一緒に高いレベルで過ごせたと思います。それも今日の結果につながった、一つの理由なのではないかと思っています。
今日も完璧ではなかったですし、ミスはありました。でもやり続けたし、止めなかったです。今季という意味でもチームのことを誇りに思います。
結果としては目指していたところに少し届かなかったですが、プレーオフトーナメントに進出したいと思っているので。ここまできたグループのことを誇りに思います。これからのことを考えると、とても楽しみです」
──確認ですが、来季もBR東京でプレーしますか? また来季に向けてこのチームをどのように高めていきたいでしょうか。
「はい、来季もいます。今季プラス2年で契約しています。
シーズン序盤と今日の試合を比較してもらうと、ちょっとチームとしても変わってきていると思います。オンフィールドだけでなく、毎週の準備や、みんながもつ『信じる力』『自信』も変わってきたと思います。
第2節で東京サントリーサンゴリアスに勝ったとき、ちょっと驚いた選手も何人かいたと思うのですが、先週敗れたときは本当に悔しいという気持ちが伝わってきました。言葉にするのは難しいのですが、そういった思いをもっともっと築いていきたいです。その前の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦も負けて、本気で悔しいという気持ちが感じられたので。第2節と比べて、変わった部分かなと思いました。やはり自分たちに対する信じる力を築き上げていきたいなと思います」
──オフシーズンの予定はどのようになっていますか。ANZAC XV(アンザック・フィフティーン:オーストラリア代表とニュージーランド代表の資格をもつ選手で構成された混合チーム。今夏ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズと対戦予定)には呼ばれているのでしょうか。
「来週ニュージーランドに帰ります。ANZAC XVとはちょっと話をしています。ですが僕自身、2022年にアキレス腱を断裂し、1年5カ月のリハビリを経て23年の後半にハリケーンズで復帰して以降、プレシーズンからずっとラグビーをしています。なので、ANZAC XVでやりたいなとは思いますが、家族との時間も大事にしなきゃいけないので。できたら素晴らしい経験かな、とは思っています」
──最近ハーフ団を組む機会が増えた伊藤耕太郎選手のパフォーマンス、また成長についてどのように感じていますか。
「すごく良いですね。コウタロウとイチゴ(中楠一期)を比較しがちですが、どちらのスタイルも違います。ここ2、3週間、コウタロウとプレーしていますが、チームジャージーを着て自分を表現するところは、本当にスムーズで良い選手だと思います。彼が10番のときに9番としてプレーすることはすごく楽しいです。だからといってイチゴとプレーするときはそうではない、ということではまったくないです」
三重ホンダヒート

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ
「正直、言葉がないです。ダメなパフォーマンスでしたし、早い段階でミスを重ねてしまって、バラバラになってしまいました。いくつか簡単にトライを与えてしまったことによって自分たちがゲームに戻れなくて、常に後手。常に相手が得点で上回っている状況を作ってしまいました」
──カテゴリCの3選手や土永雷選手など、今季ずっと出場していた選手が本日は欠場でした。どのような状態でしょうか。
「2週間後に入替戦があるというのが一つです。今日より前の段階で、すでにけが人が21人います。なので、今日出ていない選手については、これ以上リスクを冒すことができないという判断です。もちろんここまでけが人が多くなければ、違うメンバー構成になったのですが、今週の試合に関しては自分たちの順位が変わるわけではないので、2週間後の試合のほうを重視しました」
──結果次第では入替戦に向けて自信を失う可能性もあったと思いますが、どのように考えていましたか。
「もちろんチャレンジングな局面ではありますが、自分の判断に間違いはないと思っています。もちろん今日出場した選手たちへの出場機会にもなり、同じようなパフォーマンスを今日のメンバーでも出すことができていれば、チームとして深みがあるという確認もできます。自分の判断に後悔はないです」
──レメキ ロマノ ラヴァ選手は戻れそうですか。
「いまのところグラウンドを走ってはいます。今週また病院に行って、その結果次第で決まります」
三重ホンダヒート
藤井拓海キャプテン
「ヘッドコーチが言ったように、自分たちのパフォーマンスは100%ではなかったという印象です。前後半をとおして、敵陣でチャンスを作り出すことまではできたのですが、スコアに結び付ける点がうまくいかなかった。ディフェンスの部分では、何度か相手のモメンタムに対して僕たちが後手に回った点が、今日の試合展開かなと思っています」
──入替戦を考える上でも、今日は規律面の乱れが残念でした。どのように感じていますか。
「自分たちのペナルティが多くなった要因としては、相手のフィジカル、プレッシャーを受けた部分があると思います。今日の試合をとおしても、ペナルティで自分たちの首を締めた部分もあります。入替戦まで1週間あるので、もう1回チームにもち返って、しっかり規律を正していきたいと思います」
──難しい位置付けとなった試合でしたが、チームにはどのような声掛けをして、どのようにモチベーションを設定し、その結果今日は何がうまくいかなかったのでしょうか。
「自分たちとしてはシーズンをとおして、やることは変わりませんでした。自分たちのやりたいラグビーを実行していこうと話していました。メンバーが変わったからといってやることは変わらないですし、『自分たちがやってきたラグビーをやろう』と1週間をとおして言ってきました。
その中で出場機会があまりなかった選手だったり、久しぶりに先発した選手だったりもいましたが、ディフェンス面でちょっと相手のフィジカルを食らった点は何度か見受けられました。そういったところは、気持ち一つ。体を前に当てることは改善できる部分だと思います。1週間取り組んでいきます」
──藤井選手自身はこれが今季初先発となりました。キャプテン就任1年目の年でもあり、さまざまな難しさがあったと思いますが、どのような気持ちでレギュラーシーズン最終戦を戦ったのでしょうか。
「今季初先発ということで、自分自身ワクワクして、興奮して試合に臨めたかなと思っています。パフォーマンス自体もスクラムでも良い流れを作れた部分もあったので、プロップとして、役割としては良かったんじゃないかなと思っています」