2025.05.12NTTリーグワン2024-25 D3 第15節レポート(L戸田 15-27 LR福岡)

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン3 第15節
2025年5月11日(日)12:00 AGFフィールド (東京都)
ヤクルトレビンズ戸田 15-27 ルリーロ福岡

クラブ通算100キャップを刻み、現役を引退。18年の歳月を10分に凝縮させた“ミスターレビンズ”

最初で最後のリーグワン出場をもって、18年のキャリアを終えたヤクルトレビンズ戸田の西條正隆選手

今季からリーグワンに参入したチーム同士のレギュラーシーズン最終戦。試合の立ち上がりは、ヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)が流れをつかんだように見えた。しかし、前半終盤からルリーロ福岡が流れを引き寄せると、後半は激しいアタックを武器に得点を重ね、無失点に抑えて勝利を飾った。L戸田は勝利していれば、4位浮上の可能性もあっただけに悔しい黒星。この日、先制のトライを決めた古川拓実は、「絶対に勝ちにいくという気持ちで臨み、いい形で先制ができた。しかし、徐々にミスが目立ちはじめ、崩れてしまった」と悔やんだ。

“勝ちにいく”という気持ちは、毎試合同じこと。しかし、この日のL戸田にとっては特別な意味があった。それはチームを18年間支えてきた西條正隆の引退試合であったからだ。“ミスターレビンズ”と称される西條とともに戦う最後の試合で勝利し、最高の形で送り出す。それがチーム全体の共通認識でもあったが、その目標を達成することはできなかった。後半30分からグラウンドに立ち、今までのすべてを約10分間のプレーで見せた西條は「勝って終わりたかった。チームで作り上げてきたものも出ましたし、これから改善しなきゃいけないことも出た試合」と口にしたが、すぐに「僕自身はすごく楽しめました」と笑顔を見せた。

この試合でL戸田での通算100キャップも達成した西條。「自分はチームを引っ張るタイプではない。『大好きなラグビーをプレーして、応援してくれるみなさんに良い結果を届けたい』という思いだけで、ここまでやってきた。気付いたら、18歳下の後輩もできて、その子たちと一緒にラグビーができたのも幸せ。そんな後輩たちが僕を見て、『おじさんも頑張っているんだから、自分たちも頑張らなきゃ』って思ってもらえるような環境も作りたかった」

引退セレモニーでは家族から花束や記念品を受け取り、熱い抱擁を交わした。「家族にリーグワンの舞台でプレーしている姿を見せられたのが本当に良かった」と言い、ラグビーを始めているという次男に向けては、「もっとラグビーを好きになってくれればいいんですけどね」と笑顔を見せた。

勝利という形で終わることはできなかったが、大好きなラグビーを心の底から楽しんでプレーしたことは、西條にとって最高の時間だったに違いない。「レビンズは面白いチームですし、伸びシロもたくさんある。これからも大きな声援を送っていただき、もっとレビンズを好きになってください」。ファンの心に深く刻まれるであろう言葉を残し、西條は現役生活にピリオドを打った。

(松野友克)

ヤクルトレビンズ戸田

ヤクルトレビンズ戸田の河野嵩史ヘッドコーチ(右)、多田潤平 共同キャプテン

ヤクルトレビンズ戸田
河野嵩史ヘッドコーチ

「まずは多くのファンの方々に来ていただき本当にありがとうございました。また、ルリーロ福岡(以下、LR福岡)の皆さま、遠い中ありがとうございました。試合に関しては、前半の最初、われわれが準備してきたプレーがしっかりできて、トライに結び付けられたところはすごく良かったなと思っています。ただ、そのあと、自分たちのミス、またペナルティからリズムを崩し、得点を重ねられてしまったところで、最終的にこのような結果になってしまったかなというふうに感じています」

──今日でリーグワン参入後、最初のシーズンが終わりました。来季以降、上のカテゴリでプレーするためには、何が必要なのか。見えてきた部分があれば教えてください。

「われわれは、リーグワンに上がる前から、“クイックアタッキングラグビー”ということを掲げてやっていますので、そこに関してはだいぶ精度も上がってきて、自分たちのやりたいことができればこのリーグでもしっかり得点できるということが分かってきました。なので、ここに関しては、来季もより一層仕上げていきたいなというふうに思っています」

──今日は西條正隆選手の引退試合ということもあり、勝って送り出したいという気持ちも強かったと思います。長きにわたりチームを支えた西條選手が残したものを、来季も戦う選手たちにどう生かしてほしいと思われますか。

「西條に限らず、引退していく選手たちが、試合に出る、出ないに関係なく、常にハードワークをしてチームのためにやり続けてくれたことは、レビンズのすごくいい文化だと思います。なので、そこに関してはスタッフも、選手も、お互い継続し、文化を継承していけるようにやっていきたいなと思います」

──来季へ向けて、どのようなチーム作りをしていきたいと考えていますか。

「選手、スタッフ全員がフルタイムで仕事をしているという環境は変わりませんので、取捨選択じゃないですけど、ここに力を入れて、ここはいまは切り捨てようぐらいの判断もしていかないといけないですし、そういったところではチームとして強くなっていかないといけないかなと思っています。その中で、通用したもの、通用しなかったものがあるので、そこを修正していければまだまだ価値を積み上げていけると思っています」

ヤクルトレビンズ戸田
多田潤平 共同キャプテン

「本当に多くのファンの皆さま、応援に来ていただきましてありがとうございました。ヘッドコーチからあったとおり、自分たちのミス、ゴール前に行ったあとのラインアウトのミスや、ペナルティのところでトライを取り切れなかったことが敗因かなと。自分たちの悪いところが出てしまったところがあったので、来季に向けてそこはしっかりと修正していけば、前半の序盤のようなトライを重ねることができているので、そういったところを積み重ねていかないといけないなと感じた試合でした」

──前節の狭山セコムラガッツとの試合が良かっただけに、もったいなさを感じる部分もありました。ミスが重なったことで、流れを取り戻せなかった部分は大きかったのでしょうか。

「相手は、個々に強みがあることは分かっていましたし、その中で自分たちが判定に対してもアジャストできなかったところが最後まで続いたかなと思っています」

──今日でリーグワン最初のシーズンが終わりました。来季以降、上のカテゴリでプレーするためには、何が必要なのか。見えてきた部分があれば教えてください。

「個々のレベルをしっかり上げていかないと、いま河野ヘッドコーチからもあったように、自分たちが目指しているラグビーも実現できない。なので、来季に向けては、もう一度個々のレベルアップにしっかりフォーカスして、しっかりと個でも戦えるという部分をチームとして自分たちのラグビーをするために還元していくことで、また勝ちにつなげていきたいなと思っています」

──今日は西條選手の引退試合ということもあり、勝って送り出したいという気持ちも強かったと思います。長きにわたりチームを支えた西條選手が残したものを、来季も戦う選手たちはどう生かしていきたいと思っていますか。

「本当に厳しい環境の中で戦い抜いてきた選手ですので、そういったところを自分たちも継続してやっていけるように、レビンズスタイルを貫いてやっていきたいなと思っています」

ルリーロ福岡

ルリーロ福岡の豊田将万ヘッドコーチ(右)、三股久典キャプテン

ルリーロ福岡
豊田将万ヘッドコーチ

「今日はありがとうございました。最終節で順位が変わらない消化試合的な見方もありましたが、私たちにとっては、無駄にできる試合は一つもない。ここで成長を止めないためにも、しっかりとやっていこうということで、準備を進めてきました。ヤクルトレビンズ戸田さんもいい選手がそろっていて、流れをもっていかれそうな感じだったんですけど、選手たちがハードワークをして流れを引き戻してくれました。ウチはいつも後半風上になれば、いい雰囲気ができるのですが、今日はちょっと風が動かなかったので、どうかなという部分もありましたが、テンションを上げて戦ってくれたと思います。初のリーグワンでのシーズンでしたが、成長できたこと、来季につなげていくことをしっかり整理して、次のシーズンへ向けて準備していきたいと思います」

──3巡目の戦いを切り取ると3勝2敗という成績でした。1巡目、2巡目の苦しい経験が、3巡目から生かされた印象が強いのですが、成長できた部分で一番大きなポイントはどこになりますでしょうか。

「規律のところ。意図的に減らせるペナルティの部分や、こちらがコントロールできることをしっかりできるようなったことが、リーグが始まったときと比べて違う点だと思います。プレッシャーを受けてのエラーは、まだ改善しなきゃいけないことだと思いますが、そこは選手たちと一緒に取り組んでいくことが大事かなと思います」

──来季はLR福岡の強さをどのような面で見せつけたいと考えていますか。

「ゲームを作るところ、局面を打開する力というものは、個々で見ていくとまだ弱いところがあるので、それをチームとしてどうやっていくかが、来季のキーになっていくと思います。やっぱり追い掛ける展開は避けたいですし、体力も使ってしまうので。今季、自分たちが成長できたところ、規律を守るという点をプラスに、さらなる強みを作って、挑んでいければと思います」

ルリーロ福岡
三股久典キャプテン

「今日は暑い中、たくさんの応援に来ていただき、ありがとうございました。今日の試合としましては、最終節ということもあり、絶対に勝ちにいきたいという思いがありました。自分たちがトップチャレンジリーグのときから、なかなか勝てない相手だったので、絶対勝ちたいという気持ちをすごく強くもって挑んだのですが、前半からキツい時間が続いて、プレーの完結の部分の課題や、ペナルティしてしまう場面が多い状況でした。でもそれ以上にメンバーは80分間ハードワークをして耐え続けた結果が今日の勝利につながったのかなと思います。今季は終わってしまいましたが、また来季、成長したLR福岡を皆さまにお届けできるように頑張っていきたいと思います」

──3巡目の戦いを切り取ると3勝2敗という成績でした。1巡目、2巡目の苦しい経験が、3巡目から生かされた印象が強いのですが、成長できた部分で一番大きなポイントはどこになりますでしょうか。

「豊田ヘッドコーチも言っていましたが、開幕戦から、規律のところで自滅することがすごく多かったんですけれども、そこを自分たちでコントロールできるところはして、ペナルティを減らすことで、自分たちのペースにもっていくところ。それから最初のころは気持ちが80分間もたず、気持ちが入っていない試合も多かったと思うんですが、(第12節)中国電力レッドレグリオンズ戦で初勝利を挙げてからは、チームの雰囲気も変わって、80分間タフに戦えるチームになったところが、成長としてすごく見られたかと思います」

──来季はLR福岡の強さをどのような面で見せつけたいと考えていますか。

「今季は3巡目に入ってから自分たちのスタイル、トライを取り切るという形にうまく適応してきたのかなと思います。それを踏まえて、次のシーズンは、自分たちの強みを準備期間でしっかり作って、開幕戦からしっかりLR福岡らしいスタイルで準備していきたいなと思います」

試合詳細

見どころ・試合レポート一覧