2025.05.25NTTリーグワン2024-25 プレーオフトーナメント準決勝レポート(BL東京 31-3 神戸S)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
プレーオフトーナメント準決勝
2025年5月24日(土)14:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東芝ブレイブルーパス東京 31-3 コベルコ神戸スティーラーズ

秩父宮を沸かせた強烈なタックル。信頼厚きファイターは頂上決戦へ静かに闘志を燃やす

ラグビーは流れのゲームで、そこを意識してプレーしているという東芝ブレイブルーパス東京の眞野泰地選手。5月24日のプレーオフ準決勝では好タックルを連発した

東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は5月24日、秩父宮ラグビー場でコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)を31対3で破り、2シーズン連続のプレーオフトーナメント決勝進出を決めた。BL東京は6月1日の決勝戦で、クボタスピアーズ船橋・東京ベイと対戦する。

試合後の会見ではリーチ マイケルキャプテンが「タックルの質にこだわった」と胸を張り、トッド・ブラックアダー ヘッドコーチは「全員が素晴らしいディフェンスを見せてくれました」と満足げにうなずいた。BL東京に勝利をもたらした要因は、強固なディフェンスだった。

中でも観客を沸かせたのが眞野泰地だ。後半4分、スピードに乗ったブリン・ガットランドに後方から追いついて倒すと、直後に正面からぶつかってきたマイケル・リトルを5mほど押し返す強烈なタックル。さらにプレーが続き、神戸Sがクイックスローからパスをつなぐと、ラファエレ ティモシーの死角からタックルに入り、落球を誘った。

身長172cmの眞野が、身長180cmを超える好ランナーたちに次から次へと突き刺さる姿に、秩父宮ラグビー場は大いに沸いた。

「ディフェンスで隣の選手とコネクションが取れていたので、自分の強い姿勢で当たることができました。(ラグビーは)サイズではないと証明したい気持ちもあるので」

第12節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦で右手を骨折したが、「あらためてフットワークやパスを見直しました。シーズン中にこの経験ができたことは自分としてはすごくプラス」と、眞野は欠場期間を自身の成長につなげた。復帰後は攻守にハツラツとした動きを披露し、リーチは「信頼できる選手。自分のチームにいてくれると助かります」と絶賛した。

6月1日には連覇を懸けて決勝戦に臨む。タフな試合になることは間違いない。緊迫の一戦に向けて、眞野が重視するものは……。

「ラグビーは流れのゲームで、一つのペナルティや一つのプレーで流れが変わります。僕はそこを意識して、流れが悪ければ断ち切るように、流れが良ければさらに乗っていけるように、と思っています」

頂上決戦でも流れを変える一撃を。チームの信頼が厚いファイターが、静かに燃えている。

(安実剛士)

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、リーチ マイケル キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

──ロブ・トンプソン選手が積極的にプレッシャーを掛けていましたが、ゲームプランとしてプレッシャーを掛けていく狙いがあったのでしょうか。

「一人だけではなくて、全員が素晴らしいディフェンスを見せてくれました。トンプソンはディフェンスリーダーの一人なのですが、素晴らしい形でリードしていました。隣にいるリーチ マイケルもそうですが、彼らが先頭に立って『俺たちは今日こういうディフェンスをするんだ』というものを示してくれて、体を当てるのが好きな選手たちがそれを表現してくれました」

──大活躍だったリッチー・モウンガ選手の評価を教えてください。

「非常に経験もありますし、ワールドクラスの選手であることを見せてくれました。プレッシャーが掛かる試合でも、ブレることなく、あのようなプレーができるのが、彼がワールドクラスの選手たる所以なのかなと思います」

東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン

──スコア的に拮抗した時間帯が長かったですが、グラウンドではどのように感じていましたか?

「スコアが近くなればなるほど、プレッシャーが掛かるので、とにかくアタックして相手にプレッシャーを掛けることを意識しました。その間にスコアできて、点差が開くと自分たちも余裕をもってプレーできました。そして、相手がアタックしないとスコアできない状況を作ったので、ディフェンスとしてはすごくやりやすかったです」

──『相手がアタックしなくてはいけない状況を作った』というのは、具体的にどういうことでしょうか。

「あえて作ったというよりも、相手は時間帯と点数的に攻めなくてはいけなくなったということです。相手を自陣からアタックさせて、蹴ってきたら攻めてもいいし、神戸ボールならプレッシャーを掛ける、という形でやっていました」

──前半は自陣でもポゼッション重視だったように見えましたが、どうでしょうか。

「自分たちの中で『ターンオーバーしたらすぐ攻めよう』と思っていました。決勝の舞台で同じ状況だったら考え直すかもしれませんが、今日は相手に『いつでもアタックできる』という怖さを見せたかったです」

──今季最少失点に抑えられた要因は何だったのでしょうか?

「セットピースが安定していたのが大きかったです。また、試合前からタックルの質にこだわってやってきて、そこがハマりました。あとはディフェンスラインを上げるか、流すかの判断が良かったですし、抜かれたときの戻る速さも良かったです。真っ向勝負になったら東芝ブレイブルーパス東京は勝たないといけないというマインドがあります。

眞野泰地は今日だけではなくて、ずっと低いタックルに入って、ワークレートも高くて素晴らしい、信頼できる選手です。キックも左で蹴れるし、アタックも強いし、ジャッカル(スティール)もできる。チームにいてくれると助かります」

──レギュラーシーズンではほとんどペナルティーゴールを狙わなかったですが、今日は狙った理由を教えてください。

「前半はスクラムからスコアできる自信があったのでスクラムを選択しました。後半になってタッチキックからラインアウトでも良かったのですが、ここはスコアでプレッシャーを与えようと考えました」

──普段どおりにプレーするのが難しいプレーオフトーナメントでも実力を発揮するモウンガ選手について教えてください。

「彼がボールを持ったらすごいプレーが期待できます。足も速いし、横に動くのも速いし、体も強い。キックも蹴れて、判断もできる。試合中でも見ていてワクワクします(笑)」

──最後の時間帯まで何度もタックルしていましたが、自身のプレーについて振り返ってください。

「ディフェンスしかできないし、アタックはそんなに強くないので。

アタックは佐々木剛、伊藤鐘平、シャノン・フリゼル、ジェイコブ・ピアス、ワーナー・ディアンズがいるので、ディフェンスを頑張ろうと思っていました。今日はとにかく前へ、前へ、前へ、という感じで頑張りました」

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(右)、李 承信 共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

──BL東京とは、どこに差があったのでしょうか?

「BL東京さんは間違いなく、自分たちより丁寧だったと思います。ハーフタイムの時点で試合はタイトな展開でしたが、後半はペナルティを与え過ぎて、自分たちのミスも多過ぎました。残り7分の段階で2トライを取れば追いつけるような状況でしたが、スコアできるチャンスを仕留め切れず、追い掛ける展開の中で自分たちがミスをしてしまいました。チームとしての差がスコアほどあったとは思わないのですが、勝つためには最高のパフォーマンスが必要で、それを出すことができませんでした。

BL東京さんは素晴らしいチームです。ただ、自分たちもまだまだ(本来の力を発揮)できる部分があると思うので、今日の結果は非常に残念です。来週の決勝という大舞台でプレーできないのは残念ですが、3位決定戦に向けての準備をしていきたいと思います」

──ハーフタイムにどのような指示を与えましたか。

「まだまだ戦える状況だと思っていましたし、後半はもっと風があると思っていましたが、そこまで大きな影響はありませんでした。また、キックオフレシーブで3対1の場面を作れていても仕留め切れず、自分たちでプレッシャーを受ける立場になってしまっていました。

ディフェンスについては長い時間、良いディフェンスができたと思います。ディフェンスで相手に良いプレッシャーを掛けましたが、アタックではコンタクトの場面でボールを失い、ターンオーバーされてしまったのが残念です。BL東京さんは素晴らしいディフェンスで良いプレーをしていました。決勝で対戦するチームは簡単には勝てないと思います」

──後半にペナルティなどでうまくいかなかった要因は何だったのでしょうか。

「ディティールの部分もありますし、ボールキャリアーがどれだけ丁寧にボールを扱うか、という点も大事です。相手を排除するためのセカンドマンレースのスピードも速くし切れませんでした。自分たちが大事にしないといけないベーシックな部分があるのですが、大一番で勝つためにはそれをどれだけ高いレベルで遂行できるかがポイントです。

今日のような大一番ではプレッシャーを掛け続ける必要がありますし、自分たちが徹底できなかったことには不満が溜まる内容でした。『BL東京さんにベストを出させずに、自分たちのベストを出す』と話していましたが、やり切ることができませんでした」

──3位決定戦に向けて、どのようなことに注力しますか。

「もう一度振り返りますが、埼玉パナソニックワイルドナイツさん、クボタスピアーズ船橋・東京ベイさんについてプレビューはしています。競争のレベルを落としたくないので戦えるメンバーを選びますが、来季につながる内容にしたいとも思っています。今季は成長した部分もたくさんありましたが、この結果に終わって残念です」

コベルコ神戸スティーラーズ
李承信 共同キャプテン

──BL東京のモウンガ選手が「50-22キック」を狙ってきていましたが、どのように対応しましたか。

「後ろに二人いた際は守れていたのですが、モウンガ選手がコーナーを狙っているのか、真ん中に蹴ってくるのか、判断しづらかったです。彼はキックモーションが小さくて、低い弾道でも蹴ってきて、素晴らしいキックだったと思います。バックスでもっとコミュニケーションを取って、互いにカバーしなくてはいけませんでした」

──後半にペナルティなどでうまくいかなかった要因は何だったのでしょうか。

「後半になって二人目のサポートが遅れて、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)でプレッシャーを受けました。ボールキャリアーに対して周りの選手がもっとコミュニケーションを取っていくことが、自分たちのもっと成長していかないといけない部分だと思います。攻撃でチャンスを作れている中で最後にミスで終わってしまう場面が目立ったのですが、アタックが強みのチームなので、ノートライに終わったことを悔しく思います」

──BL東京との4月6日の対戦では73失点でしたが、今日の試合を受けて手ごたえを感じた部分や、差を感じた部分があれば教えてください。

「ディフェンスは長い時間で我慢できていましたし、ゴール前でも激しさを持ってコネクトして守り切るという意志は良かったと思います。準決勝というプレッシャーが掛かる場面でもBL東京さんは丁寧に、激しくプレッシャーを掛けてきました。自分たちはプレーオフトーナメントが初めてで、そこに差があったと思います。どれだけ精度高く、丁寧にプレーできるかというのは、チームとしても学ばないといけません。ただ、自分たちで自信を失うわけにはいかないので、来週の舞台で強さを証明できるように頑張ります」

──ボールキャリーでミスが出た要因は何だったのでしょうか。

「BL東京さんはフィジカルが強くて、コンタクトをしたあとのボールに対するファイトなどで僕らを上回っていたと思います。自分たちのサポートが遅くなったという理由もありますが、ブレイクダウンに対するマインドセットの違いだと思います」

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