2025.05.26NTTリーグワン2024-25 D2/D3入替戦[D2 8位 vs D3 1位]第1戦レポート(釜石SW 33-14 SA広島)

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
D2/D3入替戦[D2 8位 vs D3 1位]第1戦
2025年5月24日(土)12:00 いわぎんスタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス 33-14 マツダスカイアクティブズ広島


復帰戦で見せた“スーパーマン”ぶり。仲間へのリスペクトとチームに対する誇りが、勝利の原動力に

「粘り強いディフェンスができたのも彼のおかげ」と須田康夫ヘッドコーチが話すように、日本製鉄釜石シーウェイブスにとってサム・ヘンウッド選手の復帰は大きい

日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)の“WAVE RUGBY”が猛威を振るった。コンタクトの強さを維持しながらディフェンスでハイプレッシャーを掛け続け、チームとして波のようにつながり相手をのみ込む。後半14分までは無失点に抑え、ホストゲームで先勝した。

その中心にいたのが約2カ月ぶりの復帰となったサム・ヘンウッドだ。レギュラーシーズン第9節の花園近鉄ライナーズ戦で足首を傷めて負傷交替。4月下旬に復帰予定だったが、練習中に同じ箇所を再び負傷してしまい、入替戦のタイミングで戦列に戻ってきた。

「試合直前までは、『また同じところをけがしてしまったら……』という怖さも感じていた」というが、そこはやはり歴戦の猛者だ。試合開始のホイッスルが鳴ったあとは、「アドレナリンがどんどん出て、ゲームに集中できた」と、“スーパーマン”と形容されるいつもどおりの超人ぶりを披露。須田康夫ヘッドコーチが「粘り強いディフェンスができたのも彼のおかげ」と評価するワークレートの高いディフェンスに加え、アタックでは何度もキャリーで前に押し上げながら、この試合のファーストトライも記録した。

「立ち上がりから相手にショックを与えよう。打ちのめそう。そういう意識で試合に入ったことでああいう展開を実現できたと思います」

チームの強みであるフィジカリティーを前面に押し出し、立ち上がりからドミネートし続けた一方、チームとしての課題だったスコアを取り切るという部分でも、大きな収穫を得た試合だった。

抜群の存在感を放つナンバーエイトは常に「一人では試合には勝てない」と繰り返す。今季前半戦、個人ランキングで軒並み上位のスタッツを残していることについて聞いたときも、今日の活躍について質問したときも、いつでも枕詞として出るのは「仲間がいてくれるから」。仲間に対するリスペクト、チームに対する誇りをもち続けるリーダーの復帰は、釜石SWの勝利の大きなファクターとなった。

19点のリードをもって臨む第2戦。ヘンウッドは「今日勝てたのは良かったけど、19点差はまったく安全圏ではない。でも、もっと大差で勝って安心し切って次に臨むよりも、いい緊張感をもって臨めるということでもあります」と、追い上げられた後半の戦いを反省しながらも、いい精神状態で臨めることをポジティブに捉えている。

「試合中、息が切れてしまった」とフィットネスは向上の余地を残している様子。個人としてもチームとしてもまだまだ状態は上げられる。運命を決める第2戦での勝利。そこのみにフォーカスし、最後の1週間で最高の準備をしてビジターでの一戦に備える。

(髙橋拓磨)

日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)

日本製鉄釜石シーウェイブスの須田康夫ヘッドコーチ(右)、村上陽平キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ

「本日も素晴らしい天候の中、盛岡で入替戦第1戦のゲームができたことを非常に光栄に思っております。その中でまず勝利できたことを非常にうれしく思いますし、あと1戦しっかり勝ってディビジョン2に残留できるようにやりたいなと思います。

ゲームの中身としては、前節(レギュラーシーズン最終戦)同様、素晴らしいゲームへの入りができて、われわれのペースでゲームを進められていたと思いますが、後半メンバーを替えたところから自分たちでゲームを壊してしまって、スコアが動かないという、ちょっと煮え切らない部分はありました。ただ、結果として勝利できたことは非常に評価できますし、あと1戦しっかり勝って、D2に日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)を残して今季をフィニッシュしたいなと思っています。ありがとうございました」

──今日の勝因をどこに感じていますか。

「今季やってきたハイプレッシャーラグビー、“ウェーブラグビー”(というテーマが)ありますが、それをディフェンスの部分、特にコンタクトのところで体を当てられたのが、前半のいい入りにつながったと思っています。ただ、相手を分析している中でも明らかにフィジカリティーの差はあり、崩れるとすればわれわれの規律の部分かなとは感じていた中で、やはり最終的にはそうなってしまった部分もあるので、今後勝ち切るチームになるためには、こういった部分を改善していかないといけないのかなと感じたゲームでもありました」

──総括の中に「後半に入って自分たちから崩れてしまった」とありましたが、スコア的にも有利でしたし、内容的にも前半は完封したような試合の中、それでも崩れてしまった要因にはどのようなことが関係しているのでしょうか。

「完全にスクラムですね。フロントローの3枚を替えたときに、厳しいことを言いますと、本来は替わって入った経験値の高い選手たちがしっかり安定したスクラムを組まないといけない、セットピースもやらないといけないですが、はっきり言ってうまくいかなかった、崩れる要因になってしまった部分が大きいと思います。そのあとのイエローカードはそれが影響して出ただけで、根本的にはそこに問題があったかなと思っています」

──今日は約2カ月ぶりにサム・ヘンウッド選手がメンバーに戻ってきました。彼の存在感、そして今日のプレーの評価について教えてください。

「もともとリーダーシップグループとしてリーダーシップを発揮してくれていたので、そういった選手が帰ってきてくれたのは心強いですし、プレー面でもディフェンスのところのワークレートで彼がいるといないとでは大きく違うので、前半に粘り強いディフェンスがチームとしてできたことも彼のおかげかなと感じています」

日本製鉄釜石シーウェイブス
村上陽平キャプテン

「須田ヘッドコーチからあったとおり、前半はすごくいい立ち上がりで、相手にスコアされずに終えられたことは、すごくいい部分だったと思います。ただ後半、ペナルティのところ、規律のところをチームで守り切れずに、簡単に自陣に入られて、釘付けにされる状況が多くなりました。その冒したペナルティも、全部自分たちでコントロールできるもので、修正できるものだと思うので、『点差が開いても自分たちとしてはやることは変わらない』と言い続けていましたが、ほころびが生まれてしまったことは、次戦に向けての課題だと思います。また、現状、釜石SWが入替戦に回っていることも、そういうところが一つの大きな要因だと思っているので、もう1回引き締めて、来週頭からいい準備をして、必ず2戦目を勝利できるようにやっていきたいと思います。ありがとうございます」

──今日は相手陣内に入ったらスコアをして帰ってくるということが体現できていました。ペナルティゴールでの得点も多くありましたが、その判断や狙いについて教えてください。

「『相手陣内に入ったら絶対にスコアして帰ろう』と先週の練習でもずっと言い続けてきたので、それを試合でも実現できたことはすごくポジティブな部分かなと思います。入替戦だからこういった判断になったというよりは、シーズンをとおしてそういう戦い方をしてきたつもりではありましたが、なかなかチャンスでスコアを取り切れないことがレギュラーシーズンではありました。今日の試合ではできていたと思うので、一つ成長した部分かなと思います」

──レギュラーシーズンは連敗フィニッシュとなり、それから2週間空いての入替戦でしたが、この2週間で気持ちの切り替えのために心がけてきたこと、フォーカスしてきたことはどのようなことでしたか。

「レギュラーシーズン最終戦の九州電力キューデンヴォルテクス戦は、内容的には決して悪くなかったと思っていましたし、ディテールの部分をちゃんと修正して次の試合に臨めば何も問題ないと思っていました。特別なことをやる必要はなくて、シンプルなことをただひたすらやり続けようっていうところが、特に今日の前半はできていたと思うので、それがいい形で試合に現れたと思います」

マツダスカイアクティブズ広島(D3)

マツダスカイアクティブズ広島のダミアン・カラウナ ヘッドコーチ(右)、芦田朋輝キャプテン

マツダスカイアクティブズ広島
ダミアン・カラウナ ヘッドコーチ

「二つのチームのいい勝負でした。まずわれわれの規律が特に前半は良くなかったと思います。ディフェンスも良くなかったし、しっかりコンタクトできていなかったと思います。後半はいいファイトができましたが、全体として一貫性がなかったと思っています」

──ディフェンス、そして規律が良くなかった要因はどこにあると考えていますか。

「個人の少しのエラーで、ゲインラインを上げられてしまったことが影響したと思います。激しい試合になることは想定していましたが、本当にそのとおりで、強度が本当にすごかったと思います。ここから前に一歩出られるようにディフェンスをしないといけないなと思っています」

──今日の結果と内容を受けて、次戦で巻き返すためにどういった部分にフォーカスしていきたいですか。

「かなりシンプルに考えています。まずはセットピースを修正しないといけない。ラインアウト(の獲得率)は60%の確率しかなかったですし、スクラムは良かったのですが、そこももうちょっと止めないと、圧倒しないといけないなと思っています。そして、セットピースではバックスのディフェンスも良くなかったですし、規律のところも修正しないといけないなと思っています」

マツダスカイアクティブズ広島
芦田朋輝キャプテン

「本日はありがとうございました。やはり前半のところから、自分たちがディフェンスで試合を作っていかないといけないところでペナルティを重ねてしまったことが、こういった結果になってしまった要因だと思っております。ただ、後半は自分たちが用意してきたことが出たと思いますので、そこをしっかり修正して、次回の試合に臨みたいと思っています」

──前半、苦しい展開になりましたが、グラウンドの中ではどういったところの修正を図っていたのか、教えてください。

「私たちのディフェンスは、しっかり前に出て、相手のゲインラインを取っていくっていうところを目指していますが、釜石SWさんのフィジカルに押されたことでペナルティが出てしまったので、そこに対して、まずはレフリーの声を聞くことと、自分たちがどういったディフェンスをしているのかということにもう1回立ち返ってやっていこうっていうことをグラウンド内では話していました」

──次戦、どのように試合に臨みたいか、教えてください。

「下を向いている時間はまったくないと思っているので、先ほどヘッドコーチからあったように、シンプルなところを修正していって、そこをいかにキックオフから出せるかっていうところになりますので、そこを意識した声掛けや、チームに対してのアクションをしていきたいと思っています」

──後半の追い上げを見ると前半、ああいう展開になってしまったことがもったいなかったと感じますが、いま振り返ってどう感じていますか。

「まずゲームの最初から風向きのところも選んでいますので、後半ああいう展開になったことは準備してきた結果だと思っています。本当にペナルティなく自分たちがやりたいこと、やるべきことをすれば、ああいう(後半のような)ゲーム展開になるのは想定していたので、そこはうまくいったのかなと思っています」

──入替戦の初戦ということで、プレッシャーや緊張などはありましたか。

「もちろん、プレッシャーは感じていると思いますが、僕たちはD3でしっかり結果を残してきたこと、そこは自信をもってプレーしていこうというのは常に声を掛けていました」

──今日はD2の釜石SWとの対戦でした。D3とのフィジカルレベルの差を感じた部分もありましたか。

「当初から釜石SWさんはすごくフィジカルが強いチームと分かっていたので、そこに対してのギャップはなかったのかなと思っています。ただ、結果としてはフィジカルのところで少し上をいかれたので、次は修正してチームでしっかりディフェンスするというところに切り替えてやっていきたいと思います」

──今季強みにしてきたモールの部分は、今日はどう感じましたか。

「確かな手ごたえはありましたが、やっぱりスコアを取り切るところまではいけなかったことが課題だと思っていますので、あと少しのところをチームで話して修正していきたいと思っています」

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