2025.05.29[釜石SW] 15年分の思いとともに。クラブと東北のラグビーの未来につながる80分が、いまはじまる
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
D2/D3入替戦[D2 8位 vs D3 1位]第2戦
2025年5月31日(土)12:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
マツダスカイアクティブズ広島 vs 日本製鉄釜石シーウェイブス
日本製鉄釜石シーウェイブス(D2)
両チームの未来を決めるD2/D3入替戦第2戦。この試合を最後に、日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)という“一家の長”が退任する。須田康夫ヘッドコーチは2010年に釜石シーウェイブスRFC(当時)に加入。現役引退後、母校である仙台育英高校のコーチを経て、2020年にフォワードコーチとしてクラブに戻ると、翌年からはヘッドコーチに就任。足掛け15年、釜石SWに魂を捧げ続けてきた。
「『このクラブにすべてを捧げよう』。そう誓ったのは震災直後に行ったヤマハ発動機ジュビロ(現在の静岡ブルーレヴズ)との練習試合でした」
ラグビーなんてやっている場合じゃない。そんな状況にもかかわらず、会場には2,000人以上が詰め掛け声援を送る。この得も言われぬ光景が揺るぎない決意の原点となった。
もう一つ、須田ヘッドコーチには確固たる信念がある。それは「東北のラグビーの可能性を高める」ことだ。自身も宮城県の出身であり、生まれ育った地のラグビーは紛れもないルーツとなっている。「東北の子供たちには大きな可能性がある。彼らが上を目指すために、釜石SWがインパクトを与える存在でいなければならない」。言葉に熱がこもる須田ヘッドコーチはクラブの存在意義を説く。
「ヤスさん(須田ヘッドコーチ)がディビジョン2で勝つ、競り合えるところまでチームを押し上げてくれた」(サム・ヘンウッド)という言葉どおり、釜石SWの競争力はこの4年間で格段に増した。今季も結果には結び付かなかったが、チームには公式記録やスコアからは読み解くことのできない、確かな強さが宿っている。
「一番はカルチャー。就任当初は個人練習をする選手はいませんでしたが、取り組む意識の部分はずっと選手に言い続けてきて、いまはほとんどが個人練習をするようになりましたし、成長につながっています。そういったプロセスがないと選手として成長はないですし、チームとしても同じです」
昨季まではなかなか太刀打ちできない試合もあったが、今季はクロスゲームやあと一歩で勝利に届くという試合が多くなった。その背景にある文化の構築と積み重ねは、クラブとして一つ先のフェーズに進めたファクターでもある。上位チーム相手でも十分に戦える土台を築き上げたこと。これが4年間の結晶であり、須田ヘッドコーチの大きな功績でもあるだろう。
D2で戦い続けてきたことはクラブの大きなレガシーであり、今後もその座を譲る気は一切ない。第1戦は19点差での勝利となったが「すぐにひっくり返されるスコア。第1戦の内容には危機感をもっています」と、アドバンテージはないものとし、イーブンな状態からの一発勝負で勝ち切る。そのために第1戦同様、自分たちにフォーカスして試合に臨む。
築き上げてきた土台を第2戦でも体現し、クラブの未来、東北のラグビーの未来につなげる。須田ヘッドコーチのラストゲームが、まもなくキックオフのときを迎える。
(髙橋拓磨)