NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン3 第1節
2025年12月14日(日)12:00 アースケア敷島サッカー・ラグビー場 (群馬県)
ヤクルトレビンズ戸田 22-27 ルリーロ福岡
スタートラインに立ったルーキー。悔しさと感謝を胸にここから羽ばたく
後半25分、ピッチに足を踏み入れると同時に、沢村舜から「走るぞ」と声を掛けられ、ヤクルトレビンズ戸田の新野翼は力強く頷いた。
5点ビハインド、残り時間は15分。
河野嵩史ヘッドコーチが「一人で打開できる選手。苦しい場面でカウンターアタックを仕掛けられる」と期待を寄せるルーキー、新野のリーグワンデビュー戦だった。
専修大学4年次に続き、今年も男子7人制日本代表のデベロップメント・スコッド(SDS)に選ばれた実力者。開幕戦でいきなりメンバー入りした新野は「自分の持ち味を存分に発揮して流れを変えたい」と、虎視眈々とトライを狙っていた。
しかし、ルリーロ福岡の堅固なディフェンスは最後まで崩れず、あと一歩のところで壁に阻まれる。猛攻を続けたものの、無情にもノーサイドの笛が鳴り響いた。
「コンタクトの場面も少なく、ボールタッチはわずか数回。不甲斐ない結果です」
新野は肩を落としたが、それでも前を向く。「目標だったこの舞台に立てたこと。ピッチの雰囲気、観客席の熱気、自分の立場を実感できたのは大きい。これを残りの14試合につなげたい」。デビューを終えた瞬間、悔しさとともに感謝の気持ちが込み上げていた。
東京都出身の新野が、島根の強豪・石見智翠館高校へ進学したのは、トッププレーヤーになるためだった。日本代表の石田吉平(横浜キヤノンイーグルス)に憧れ、ひたすら上を目指した。
「両親には幼少期からラグビーを続けさせてもらい、金銭面でもずっと支えてもらっていました。その恩返しは、試合に出場する姿を見せること。両親はいつも『翼が試合に出ている姿が誇らしい』と言ってくれます」
試合後、観客席に駆け寄ると、両親から「まずはグラウンドに立ててよかった」と声を掛けられ、「次こそ勝つ姿を見せたい」と決意を新たにした。
「ここが本当のスタートラインです。目指すのは、一回のランでチームの流れを一変させる選手。両親をはじめ、観客のみなさんがどよめくような突破を見せたい」
レビンズの新たな“翼”が、大空への第一歩を踏み出した。
(鈴木康浩)
ヤクルトレビンズ戸田
ヤクルトレビンズ戸田の左から高安勇太朗監督・GM、河野嵩史ヘッドコーチ、土井將聖 共同キャプテンヤクルトレビンズ戸田
高安勇太朗監督・GM
「まずは、この試合の開催にあたり、さまざまなマッチオフィシャルの方々、ラグビー協会の方々、そして地元群馬の高校生やスクールの子供たちなど、多くの皆さまにご協力いただきました。本当に支えられて今日の試合を実現できたことを大変うれしく思います。ヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)はリーグワン参入2年目のシーズンを迎えて、少しずつラグビーの輪が広がっていると感じています。今後もさらに広げていきたいと思います。まずは今季の開幕戦を開催できたことをうれしく思いますし、良い初戦になったと考えています」
ヤクルトレビンズ戸田
河野嵩史ヘッドコーチ
「本日はありがとうございました。素晴らしいグラウンドとグレードアップしたロッカールームのおかげで、選手たちは戦いやすい環境だったと思います。また、ルリーロ福岡(以下、LR福岡)の皆さま、遠いアウェイまでお越しいただき、勝利おめでとうございます。
試合に関しては、この半年間、マイボールの時間を増やすことにフォーカスして準備してきました。しかし、自分たちで試合をコントロールできず、特にペナルティが多く、レフリングに対応しきれずマイボールを失う時間が多かったと思います。ここからは修正できる点ばかりですので、自分たちに矢印を向けて、次の1週間で改善し、次戦に臨みたいと思います」
──課題も多かったとは思いますが、一方で昨季の反省を踏まえた収穫面もあったと思います。いかがでしょうか。
「そうですね。長く取り組んできたクイックアタッキングラグビーの精度を上げるため、セットピースからのシークエンス(チームで決められたプレーを行う戦術)に注力してきました。マイボールにした場面や、その流れからトライまでつながったシーンでは、多くの収穫が見えました。速く寄せられているときはテンポを継続でき、得点につながっていますので、その点は良かったと思います。ただ、アタックもディフェンスも、できているのに最後をペナルティで終わらせてしまうことが一番の課題だと感じています」
ヤクルトレビンズ戸田
土井將聖 共同キャプテン
「まずは、このような素晴らしい会場でプレーさせていただき、ありがとうございます。また、LR福岡の皆さま、遠いアウェイまでお越しいただき、ありがとうございました。お互いに良いゲームができたと思います。試合の総括としては、ペナルティが多く自分たちの時間が短かったことと、アタックを継続できなかったことが敗因だと思います」
──自身が決めたトライシーンなど、攻撃面の感触を教えてください。
「あのシーンは、シンプルに自分の前が空いているのが見えたので、ボールを呼び込んでトライにつながりました。プレシーズンからチームで同じ絵を見てアタックしており、より速く寄ってクイックに展開できているときはスコアにつながっています。ただ、寄りが遅かったり、ボールキャリアーの責任を果たせなかったりしてペナルティを取られ、アタックを最後まで続けられなかった場面もありました。取り組んできたことが公式戦でも通用する部分があると感じましたが、それを80分間継続できない点は修正が必要です。率直に、今日の負けは悔しいです。次に向けて改善していきたいと思います」
ルリーロ福岡
ルリーロ福岡の豊田将万ヘッドコーチ(左)、三股久典キャプテンルリーロ福岡
豊田将万ヘッドコーチ
「本日はありがとうございました。LR福岡はリーグワン参入2年目のシーズンを迎え、昨季の課題であったセットピースとゲーム運びをプレシーズンに重点的に取り組んできました。選手たちが真摯に努力してくれた結果、タフな相手であるL戸田さんに対してギリギリながら勝利することができ、うれしく思います。シーズンはこれから14試合続きますので、一戦一戦勝利を重ね、良い結果を残せるよう頑張ります」
──プレシーズンから取り組んできたことに対する収穫と課題について教えてください。
「セットプレーのスクラムとラインアウトについては、昨季はペナルティやターンオーバーが多く課題でしたが、今日は互角以上に戦うことができました。プレシーズンの積み重ねがしっかり結果につながったと思います。また、後半に逆転できた点も収穫です。今季は敵陣でラグビーをすることを掲げており、選手たちがキックを効果的に使い、ボールを運んで自陣から敵陣へ移るシーンを多く作ってくれました。ゲーム運びの面でも、昨季とは異なる内容を見せられたと思います。一方で課題としては、対等に戦えているものの、ペナルティやミスで攻撃が終わってしまう場面がまだあります。この部分を修正できるよう、さらに詰めていきたいと思います。次の試合から改善を図ります」
ルリーロ福岡
三股久典キャプテン
「本日は開幕戦ということで、多くのLR福岡のファンの皆さまにご来場いただき、ありがとうございました。(豊田)ヘッドコーチもおっしゃったように、昨季の課題だったセットピースとゲームコントロールをプレシーズンに徹底的に取り組んできました。この開幕戦でその成果を出せたと思いますし、勝利できたことはとても良かったです。来週はホストゲームの初戦となりますので、今日の課題を修正し、良い形で臨みたいと思います。ありがとうございました」
──最後の時間帯は攻められる展開だったと思いますが、はね返せていました。あの時間帯の自分たちの姿勢についてどう見ていましたか。
「あの時間帯はベンチからヒヤヒヤしながら見ていましたが、80分間出し切ることを試合中も選手同士で声を掛け合っていたので、ディフェンスでしっかりプレッシャーを掛け、2番手の選手が素早くスティールで反応できていたと思います。この部分は今後も継続していきたいです。今日は開幕戦ということで、準備してきたことを出すだけの試合でした。相手のL戸田さんは、昨季最終戦で勝利した相手ということもあり、強い気持ちで臨んでくると思っていました。そうした相手に勝ち切れたことは良かったです」



























