NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン1 第11節(交流戦)
2026年3月14日(土)12:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 30-32 埼玉パナソニックワイルドナイツ
緊迫の首位攻防戦。勝者と敗者を分けた紙一重の差は「信じる力」
スポーツには、人の心を揺さぶる力がある。歓喜も、悔しさも、ほんの数秒の出来事によって形を変える。その残酷さと美しさが同居する瞬間に立ち会うことこそが、僕たちがスポーツを見つめ続ける理由なのかもしれない。
その日、秩父宮ラグビー場の空は晴れ渡っていた。詰めかけた観衆は1万6,647人。1位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)と、3位の埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)。勝ち点差3の首位攻防戦に、これ以上ない舞台だった。
楕円球が描く熱戦はスタジアムを揺らし続け、80分を過ぎてもボールはまだ生きていた。トライライン目前での攻防。スコアは30対25。S東京ベイが5点をリードしていた。
守るS東京ベイ。攻める埼玉WK。そのフェーズは、実に37を数えた。最後、同点のトライを決めたのは野口竜司。難しい位置からのコンバージョンゴールを山沢拓也が決め、S東京ベイの指先から、勝利がこぼれ落ちた。
それは、勝った側の執念と負けた側の我慢が、どちらも高いレベルでぶつかった末の決着だった。チームを機能させる知的なワークホース、デーヴィッド・ブルブリングは戦いをこう振り返った。
「最後の局面は本当に素晴らしいディフェンスの連続でした。ペナルティも与えませんでした。ただ、最後までボールを保持してスコアした埼玉WKが称えられるべきだと思います。私たちのゲームマネジメント自体はかなりうまくいっていましたし、取れるところで着実にポイントも重ねました。残念ながら今回は思いどおりの結果にはなりませんでしたが、私たちのミッションがここで止まることはありません」
“紙一重”の差が、勝者と敗者を生み出した。では、その勝敗を分けたものは何だったのか。チームの司令塔、バーナード・フォーリーはこのように分析する。
「それは“信じる力”だと思います。期待値を設定することはもちろん大切ですが、それ以上に重要なのは、試合の中にとどまり続けることです。不確実な状況も受け入れながら、お互いのために懸命に働き続ける。そして、結果を出し続けることです。われわれのスローガンである『グリット(不屈の精神)』を示すことですね。こういう大きな試合は、本当にわずかな差で決まります。ディテールや一瞬の判断が勝敗を分ける。だからこそ、80分間ずっと信じ続けることが大事なんです」
攻めながらも、一つでも不用意なプレーを選べばそこで終わる。守る側も、30フェーズ以上耐えながらペナルティを出さない。その極限のせめぎ合いの中で生まれた1プレーは、決して突然現れるものではない。積み重ねた我慢も、研ぎ澄まされた判断も、そのすべてが最後の一瞬に凝縮される。攻守ともに体を張り続けたタイラー・ポールは語った。
「悔しいですが、これがラグビーです」
(藤本かずまさ)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(右)、マキシ ファウルア キャプテンクボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「本当に素晴らしい、スペクタクルな、非常にレベルの高い試合だったと思います。こういったお互いに競い合う姿こそがラグビーであり、日本のラグビーファンのためにも良い試合を見せることができたと思っています。埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんに『おめでとう』と言いたいですし、本当に小さな差が勝敗を分けたと思っています。
前半に関しては、埼玉WKさんのほうがキックをうまく使っていて、プレッシャーを掛けられました。その中でハーフタイムにしっかり対応はできたと思っていて、特にこういう試合はそういう対応が大事になってきます。そうした中、リーダー陣、選手たちがしっかりやれることをやってくれました。それによって後半はチャンスを作って、プレッシャーを掛けることができました。スコアボードでもプレッシャーを掛けることができたと思っています。
最後のプレーに関しても、37フェーズも重ねる中で、埼玉WKさんが我慢してキープして、トライを取り切りました。本当に小さな差が勝敗を決めたと思っています。
ただ、私たちにもポジティブな要素はたくさんありました。しっかりレビューをして、学びを生かして、さらに向上していきたいと思っています」
──最後の逆転される前のシーンについて。5点リードで相手陣深く攻め込んだ場面で、最後にキックをして相手にボールが渡りました。あのプレー選択の意図を教えてください。
「通常、残り3〜4分という場面では、自分たちのエリアとプレッシャーのシステムを信じてプレーします。実際にそれは機能していました。だからこそ埼玉WKさんを称えたいのですが、彼らはラインブレイクを決め、われわれの背後に回り込み、わずかなコネクションの切れ目を突きました。それがラグビーであり、そうした小さな差が勝敗を分けました。
われわれはシステムを信頼していますが、それをどう改善できるかを考えます。アタックの意識が薄い状態で数分間ボールをキープし続けるのは難易度が高い。相手の守備をこじ開けようとしましたが、彼らのディフェンスは良く、止められました。だからこそプレッシャーを掛けるためにキックを選択したのです。あの瞬間により良くプレッシャーを掛け、どうやってボールを取り戻すか。それがわれわれの学びになります」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
マキシ ファウルア キャプテン
「結果は悔しいですが、今季をとおして自分たちはすごく良い方向に進んでいますし、ポジティブなところもたくさんあったと思います。
ヘッドコーチも言ったとおり、前半はキックバトルでプレッシャーを受けましたが、後半に修正できたので、自分たちでゲームコントロールもできたと感じています。
本当に最後の最後、勝ち切れなかった部分はありますが、ポジティブな面をしっかり次の試合に生かしたいです。反省点もちゃんとレビューして、来週の試合に向けてまた良い準備をしていきます。
毎回、埼玉WKさんとは本当にタフなゲームになると分かった上で自分たちも準備しています。その準備してきたものが今日はたくさん良い形で出た部分もあったと思うので、またチームとして見直して、次の試合に準備していきたいと思います」
──レギュラーシーズンで埼玉WKに勝てない状況が続いていますが、次勝つためには何が必要でしょうか。
「準備のところで自分たちをしっかり信じて、1週間しっかり良い準備をしてくれば、必ず勝てると思っているので、次はしっかり良い準備をしていきたい。今日はポジティブなところも多かったので、より精度を上げれば勝てると思います。準備は本当に良い準備をしてきたので、細かいところをしっかり直せば大丈夫だと思います」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツの金沢篤ヘッドコーチ(右)、坂手淳史キャプテン埼玉パナソニックワイルドナイツ
金沢篤ヘッドコーチ
「いいコンディションの中、ファンのみなさんもたくさん来ていただき、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)さんもそうですが、お互いにいいラグビーというのがお見せできたんじゃないかなと思っています。S東京ベイさんはフィジカルも強く、ボールも動くタフなゲームでしたが、選手が自分たちの"一貫性"をしっかり示せたことが、最後(の逆転)につながったのかなと思っています。レギュラーシーズンの中の1試合ですので、今日は喜びますが、また次に向かって動いていきたいと思います」
──「一貫性」というお話が出ましたが、これはプレシーズンからやってきたものが出たのか、それともこの1週間で集中してやってきたのでしょうか。
「この1週間、特別これにフォーカスしたわけではなくて、常に求めているものですし、勝つために必要なことだと思っています。それを今日、1位のチームを相手に、かなりタフな状況の中でできたというのは、選手にとってはすごくいい経験になったし、自信も付くと思います。
追い掛ける状況になっていましたので、その中で試合の途中から出た選手というのは、やっぱりスピードもそうですし、フィジカルのところもすごいエネルギーを持ってきてくれたなというふうには思っています」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「ヘッドコーチが言ったように、タフなゲームでした。S東京ベイさんとはタフなゲームになると想定した上でゲームに臨みました。これから改善していくべき部分はたくさんありますが、まずはこの最後の時間帯で、自分たちがミスせずにボールをキープしてトライをするというところは、本当に素晴らしかったと思います。
最後、"意思統一"というところは、今まで22mラインの内側でのアタックというところをフォーカスしてきた中で、すごくいいものがあの瞬間に見えたというのが自信になりました。今後とも、こういう形でゲームを終えられるように、またゲームの中で自分たちのミスが続かないようにするにはどうしたらいいのかというところをフォーカスしながら、チームとして強くなっていければと思っています」
──最後、逆転した場面では何が良かったのでしょうか。
「一人ひとりのプレーの選択が良かったです。ボールキャリーに行くときはしっかりと強いキャリーをしますし、パスをするときでも、キャリーしたから勝手にパスするんじゃなくて、もらう選手がしっかりと(顔を)出しに行っている。そういう基本的なことができていて、少しずつでもゲインができた。そこがすごくいいところだったと思います。
あとは、長くていいゲインなど、流れの中ではたくさんいいキャリーがありましたけど、ミスをしないでずっとアタックし続けるというところがすごく良かったかなと思います」



























