2026.06.06[記録が紡ぐ ジャパンラグビーリーグワン #10]決勝、神戸S vs S東京ベイ 28年間の対戦史

6月7日のプレーオフトーナメント決勝で対戦するコベルコ神戸スティーラーズ(左)とクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。写真はそれぞれブロディ・レタリック共同キャプテン、マキシ ファウルア キャプテン

(文:大友信彦)

ジャパンラグビー リーグワンがいよいよ2025-26シーズンのファイナルを迎える。NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26 プレーオフトーナメント決勝のカードはリーグ戦1位のコベルコ神戸スティーラーズvs3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。
神戸Sが勝てばジャパンラグビー トップリーグ(以降、TL)2018-2019以来7季ぶりでリーグワン初、TLから含めれば通算3度目の優勝。S東京ベイが勝てば3季ぶりリーグワン2度目の優勝だ。
当コラムでは決戦を前に、神戸製鋼vsクボタの時代から続く対戦史を振り返ってみようと思う。
両チームが初めて対戦したのは1998年12月27日、第51回全国社会人大会プール戦の1回戦、神戸ユニバでの対戦だった。神戸はV7が途切れ、王座奪回を目指してチーム再建を目指していた時期で、このシーズンは関西社会人リーグを6勝1分の2位(トヨタ自動車と11-11で引き分け)で終えていた。
一方のクボタは前年度の入替戦で東京ガスを破って東日本社会人リーグに昇格1年目。初めて臨んだ東日本リーグを3勝4敗の5位タイ(6位扱い)で終え、清水建設(現清水建設江東ブルーシャークス)との代表決定戦を経て2度目の全国大会出場を果たしていた。

記念すべきこの初試合は10トライを奪った神戸が77-22で大勝。この年加わったWTB大畑大介は欠場したが、同じくルーキーだった岩渕健輔・現在の日本ラグビーフットボール協会専務理事がFBで先発フル出場、トライもあげている(この年岩渕はケンブリッジ大に留学していて、英国と日本を往復しながらシンガポールで行われたラグビーワールドカップアジア予選にも参加。神戸での試合出場は関西リーグ初戦のヤマハ発動機戦以来3カ月ぶり、7試合ぶりだった)。神戸の主将はFL小村淳・現・環太平洋大学監督で、この試合チーム最多の3トライをあげた。一方、クボタの主将は赤塚隆(両チームの主将がともに明大OBだった)。クボタはトンガ代表のWTBシマナ・マフィリオが2トライをあげた。勝った神戸はこの年、準決勝でサントリーと16-16で引き分けたがトライ数で下回り、シーズンを終えた。

次は2000年度、第53回社会人大会の準々決勝。この年はラグビーワールドカップセブンズの前にシーズンを終えるため単純トーナメントで実施された。前年にV7以来の覇権奪回を果たした神戸は、秩父宮で行われたこの準々決勝でクボタに38-11で勝つと、準決勝でサントリーを、決勝ではトヨタ自動車を、ともに3点差で振り切り9度目の優勝、2連覇を飾った。神戸の主将は当時28歳の増保輝則、副将は同学年の伊藤剛臣だった。

続く2001年度はクボタが躍進。初めて全国社会人大会で4強入りを果たした。だがそこから先は壁が厚い。社会人大会準決勝ではサントリーに12-104の大敗。日本選手権の準決勝は神戸に挑戦するも10-38の完敗。神戸はこのクボタ戦でエース大畑大介が4トライの荒稼ぎで新興軍団を蹴散らしてみせた。

神戸製鋼でプレーしていた大畑大介氏(写真は2010年9月4日、ⓒNOBUHIKO OTOMO)

次の対戦はトップリーグが誕生した2003年だった。ここからは東西に分かれていたチームが毎年戦うフォーマットになったが、まだ構図は変わらず。トップリーグでの初対戦は花園で行われ神戸が40-12で勝利。神戸はこの年、リーグ戦を9勝2敗で終え、トップリーグ初代王座に名を刻む。クボタは4勝7敗で8位に終わったが、東日本社会人リーグ時代はなかなか勝てなかった東芝府中、サントリーを破るなど、殻を破り始めていた。

クボタが神戸からの初勝利をあげたのはトップリーグ3年目の2005年度。第2節、花園での対戦だったが、CTB吉田英之、河津賢太郎、WTB柴原英孝、そしてこのシーズントライ王を獲得するFBダミアン・マクイナリがトライをあげ、福岡サニックスから移籍してきたSO伊藤宏明が4コンバージョンを完璧に決めた。NO8はオーストラリア代表ワラビーズでラグビーワールドカップ1999に優勝、のちクボタ、トンガ代表、リーグワンでも釜石SWでHCを務めるトータイ・ケフだった。初めて「神戸の壁」を破ったクボタだったが、両者の立場が逆転するところまでは行かなかった。神戸は優勝にはなかなかたどり着かなかったが、プレーオフまでは何度も進み、2018年度には総監督にニュージーランドの知将ウェイン・スミスを、司令塔にニュージーランド代表オールブラックスの英雄ダン・カーターを迎え、トップリーグ元年以来15年ぶり2度目の王座を獲得。対して、クボタは2004、2008、2009年度の「6位」をなかなか超えられず、プレーオフには進めず、それどころか2011年度からの2シーズンは地域リーグに降格する憂き目にあった。

だが、変化は静かに進んでいた。トップリーグに再昇格したクボタには2016年にフラン・ルディケHCが着任。スーパーラグビーでブルズを王座に導いた名将は南アフリカから骨太の戦士たちを呼び寄せ、主将の立川理道とともにどんな相手にもハードワークを遂行するチームカルチャーをじわじわと築きあげた。コロナ禍で途中打ち切りとなった2020年を経て迎えたトップリーグの最後の年、2021シーズンに変化は起きた。5月9日、静岡エコパで行われた準々決勝、B組3位から勝ち上がったクボタは、A組で6勝1分、2位の神戸製鋼と対戦。司令塔のバーナード・フォーリーが前半にレッドカードを受け、試合の過半を14人で戦う厳しい状況に追い込まれながら23-21で勝利を飾る。神戸にとっては頂点を極めた2018年から続けてきた無敗記録が途切れた瞬間だった。

2021年5月9日、トップリーグのプレーオフトーナメント準々決勝ではクボタスピアーズが23-21で勝利。この試合は母の日に行われ、クボタは特別にピンクのストッキングを着用して試合に臨んだ。(ⓒNOBUHIKO OTOMO)

この戦いから両者の関係は逆転した。リーグワンが始まった2022年、ノエビアスタジアム神戸での初対戦こそ神戸が27-22で勝ったが、続く江戸川区陸上競技場(現スピアーズえどりくフィールド)では40-32でS東京ベイが勝利。これは1998年の初対戦以来、クボタ/S東京ベイ側から見たカード最多得点だった。

翌2022-23シーズンは江戸川区陸上競技場で25-21、花園ラグビー場で23-14とS東京ベイが連勝。このシーズン、S東京ベイはリーグ戦を2位で終えるとプレーオフトーナメント準決勝で東京SGを、決勝では前年リーグワン初代王座についた埼玉WKを破り、初優勝を飾る。旧全国社会人大会でもトップリーグでも、それどころか東日本社会人リーグでも優勝とは無縁だったチームが初の全国タイトルを獲得した。一方の神戸Sはこの年、5勝11敗と不振を極め、トップリーグ時代も一度もなかった9位まで後退。S東京ベイは22年第2戦から今季(25-26)第1戦まで、神戸S戦には7連勝を飾るのだ。

NTTリーグワン2022-23で初優勝に輝いたクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。胴上げは立川理道キャプテン

だが、神戸Sも復活への歩みを進めていた。2023年、オーストラリア代表ヘッドコーチの役割を終えたデイブ・レニーHCが着任すると、オールブラックス109キャップのLOブロディ・レタリック、81キャップのFLアーディ・サベア、15キャップのCTBナニ・ラウマペ(キャップ数は当時)、SOブリン・ガットランドのNZカルテットを軸に前年の9位から5位へ上昇。2024-25シーズンはリーグ戦5位から6位まで出場権が増枠されたプレーオフトーナメントで同4位の静岡BRを撃破。準決勝ではBL東京に敗れたものの3位決定戦では、TL元年の2003年以来一度も勝てなかった天敵埼玉WKから21季ぶりの勝利をもぎとった。そして迎えた2025-26シーズンは開幕から順調に白星を重ね、最後の第18節はS東京ベイを24-19で破り、リーグワン初年度の対戦以来の勝利をあげ、カード連敗を「7」でストップする。しかもこの勝利は、2019年からS東京ベイがえどりく(江戸川区陸上競技場)で続けてきた29戦連勝無敗の大記録にピリオドを打つ勝利だったのだ……。

今シーズンのリーグ戦を1位で終えたコベルコ神戸スティーラーズ。李 承信 共同キャプテンは6月7日の決勝でも10番で先発出場する

こうして振り返ると、S東京ベイと神戸Sは、それぞれの節目でターニングポイントとなる勝利をあげ、あるいは相手の大記録にピリオドを打ち、主役の座を勝ち取ってきたことがわかる。旧社会人大会からライバル物語を紡いできた神戸vs三洋、東芝vsサントリーなどの伝統対決に劣らないストーリーを持っていることがわかる。
両チームの通算対戦成績は、トップリーグ公式戦が神戸の7勝4敗、リーグワンの公式戦はスピアーズの7勝2敗。他にトップリーグ時代のカップ戦(トップリーグカップ、プレシーズンリーグ)で神戸が2勝1敗。トップリーグ発足前の全国社会人大会、日本選手権を加えた合計では神戸Sが15勝12敗と上回るが、トップリーグ以降に限るとS東京ベイがカップ戦を除くと11勝9敗とわずかに上回る。どの尺度で見ても、驚くほど競り合っている。まさしく角逐しているのだ。

神戸Sにはレタリック、サベア、S東京ベイにはマークスというワールドラグビー世界最優秀選手の経験者が並ぶ。CTBには神戸Sのタリ・イオアサとS東京ベイのリカス・プレトリアスというカテゴリBの注目選手。FBにはアーリーエントリーで大活躍を続ける神戸Sの上ノ坊駿介と、スーパープレーを連発するS東京ベイのショーン・スティーブンソンがマッチアップ……どのポジションの顔ぶれ、キャリアを見てもそれぞれの個性が光り、甲乙つけがたい。

真冬に始まり、全12チームが(D3まで含めれば26チームが)、半年にわたる戦いを繰り広げてきた末のファイナルは、凄い試合になるのは間違いない。絶対に生で見たい。キックオフが待ちきれない!


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