2023.12.24NTTリーグワン2023-24 D1 第3節レポート(トヨタV 54-40 相模原DB)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第3節 カンファレンスB
2023年12月23日(土)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 54-40 三菱重工相模原ダイナボアーズ

アーロン・スミスと姫野和樹。世界を知るトッププレーヤーの阿吽の呼吸

トヨタヴェルブリッツのアーロン・スミス選手(左)と姫野和樹選手

両チーム合わせて14トライが生まれた“乱打戦”は、ゲームのポイントとなる場面で得点を奪い切ったホストのトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)が、粘る三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)を振り切って勝利を収めた。

前半の終了間際にトライを奪われ、12点をリードしながらもイヤなムードでハーフタイムを迎えたトヨタV。もしも後半、先に相模原DBにトライを奪われれば、そのまま一気に流れを持っていかれてもおかしくない状況だった。

しかし、ここで世界を知るトッププレーヤーの阿吽の呼吸がピンチを救う。

後半5分、ゴール前のスクラムでアドバンテージを得ていたトヨタVは、レフリーのホイッスルが鳴った瞬間にニュージーランド代表で125キャップを誇るアーロン・スミスが素早くリスタート。パスを受けた日本代表キャプテンの姫野和樹が相手の間隙を縫って、なんなくトライを決めた。

「アーロン(スミス)は、僕のことをいいボールキャリアーだと認めてくれていますし、信頼してくれています。あの場面は二人とも同じ絵が描けていました。スクラムのあと、かなり押し込まれていましたけど、本当にいいタイミングで、そのままクイックスタートをすればチャンスがあると二人とも分かっていたと思います。だから『ナギー』(アーロン・スミスの愛称)と呼んだだけでボールが出てきました」(姫野)

相手にできた一瞬のスキを見逃さない百戦錬磨の経験値が生きた得点。2021年にスーパーラグビーのハイランダーズで一緒にプレーしていたことも、この貴重なトライを挙げることができた要因だろう。

ただ、この場面の振り返りでは笑顔を見せた姫野だったが、試合全般では反省の弁が口を突いた。

「ディフェンスに関しては改善が必要。本当に個人のタックルのところ。ディフェンスは結局そこの戦いなので」

気になったのは、試合の残り10分で二つのトライを奪われたこと。特に終了間際に奪われたことで、ボーナスポイントを得ることができなかった。勝って反省できるのは幸運なことだが、最後の最後まで集中して、一滴の水さえ漏らさぬ戦いをしていくことが必要だ。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツのベン・へリング ヘッドコーチ(右)、姫野和樹キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
ベン・ヘリング ヘッドコーチ

「相手は、非常に強いパフォーマンスを発揮していたと思います、試合をとおしてフィジカルの強さ、そして強いキャリーを見せてきて、粘り強く最後まで戦い続けました。こちらも非常にいいクオリティーのラグビーを展開できましたが、単純に勝ち逃げできるような試合ではありませんでした。ただ結果としては満足しています」

──今季最多失点となってしまったが?

「まだスタッツを確認していないのですが、過去の2試合に関してはタックルの成功率が85%でした。ただ今日のタックルは直線上の1対1のタックルで深くなってしまったり、もしくは滑ってしまったりするような状況がありました。われわれが目指しているところまでいっていないので改善が必要だと思います。これまでディフェンスでコネクトすること、タックルを成功させることは機能していたので、また振り返りたいと思います」

──前半は有利な風上だったが?

「このパロマ瑞穂ラグビー場は風の方向が変わるなどして読めない部分もありますが、私たちには非常にいいキッカーがいて、みんなが望んでいるいい位置にボールを落としてくれます。今日に関しては風を使って敵陣でプレーをするということを意識していましたが、風が(勝敗の)大きな要因になったとは思いません」

トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン

「まず、勝てて良かったというのが率直な感想です。ただ、もちろん満足いく試合ではありませんでした。ディフェンス面に関しては改善が必要だと思います。自分たちのターゲットとしているところには届いていないので、トップグループに入っていくためには、やはりディフェンスは非常に重要な要素になってきますし、安定して一貫性のあるディフェンスのシステム、そういったところでかなり改善点はあるのかなと。ただ、結果として勝って反省できることはすごくポジティブなので、今後も勝って反省し続けるところを意識していきたいと思います」

──今季最多失点となってしまったが?

「本当に個人のタックルのところ。ディフェンスは結局そこの戦いなので。そこでゲインを何mもとられてしまうと相手のペースになってしまいます。いくら素晴らしいシステムがあろうと、そこがうまく機能しなければ、結局そのシステムは機能しないので、そこが原点だなと思います」

──開幕から3試合を振り返って手ごたえは?

「この3試合はチームとしてやりたいことが明確になっていますし、チーム全員で同じ絵を見てプレーができています。だからこそ問題点が起きればすぐに改善できます。昨季は少し自分たちが迷ってしまい、カオスな状況もあったのですが、今季は本当に最初から明確でクリアになっていることで、この3試合すごくいい方向性でやれていると思います」

──昨季まで在籍した吉田杏選手との対戦は?

「吉田杏に関しては、昨季まで一緒にやっていて、帝京大学でも一緒にやっていた後輩です。対戦はすごく楽しみにしていましたし、ラインアウトで彼とマッチアップしそうなタイミングもありましたが、ラインアウトのミスもあって、実際にマッチアップはできませんでした。でもグラウンドで頑張っている彼の姿を見て、すごくいい刺激を受けましたし、(岩村)昂太もそうですけど、本当に伸び伸びとやっていて、僕はうれしく感じました」


三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(右)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「この試合はファンから見るとすごく楽しめたゲームだと思います。試合の入りはすごく満足していますが、私たちがしてしまったミスに対して、相手はキッチリと得点に変えてきたと感じました。相手が勝つべくして勝ったという試合内容だと思います」

──ラインアウトの対策は?

「相手には、アーロン・スミス選手とボーデン・バレット選手というワールドクラスの選手がいて、速いテンポでラインアウトを獲得して攻めてくるというのは分かっていました。対策として先にセットをして、相手にプレッシャーを掛けるということを予定していました。逆に自分たちのラインアウトでもプレッシャーを掛けられてしまいましたが、そこはいい勝負ができたと思います」

──キックが多いように感じたが?

「ボールキャリーがまっすぐに強くできたときはいいリズムを作り出すことができたと思います。ただ試合の状況の中で、キャプテンやプレーメーカーが判断してエリアを優先させたほうがいいという時は、裏に蹴るという判断があっただけだと思います」

──前半ルーズになってしまった要因は(キャプテンへの質問に補足コメント)

「キャプテンは常に自分に厳しい評価をする性格ですが、われわれはこの2シーズンを振り返ると、ディビジョン2から昇格し、いまはディビジョン1の上位チーム、強豪チームと対等に戦うというところにまできています。この成長過程には、それに伴う痛みというのが必ずあると思います。試合での判断ミスなどから学んで、さらに成長していくために、判断ミスも成長に必要な痛みだと考えています」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「僕たちのマインドセットがちょっとルーズになってしまった時間帯が前半の途中にあって、そこは本当に反省点だと思います。こういうレベルでそういう時間帯を作ってしまうと、今日みたいな結果になるとあらためて痛感させられた試合でした。みんなの前でも言ったんですけど、起こってしまったことはしょうがないので、これを学びとしてしっかり次に生かしていきたいと思います」

──今日のプランは?

「ボールキャリーをしっかりとしていくということで、裏にスペースがあればどんどんキックをして敵陣でプレーするという準備をしていて、実際にそれを遂行できた部分もありましたし、そこで自分がミスをしてしまった部分もありました。プランとしては遂行できたと思います」

──最後にトライを決めて相手にボーナスポイントを与えなかったが?

「みんながアタックするというマインドセットで、あとはボールキャリーやフィジカルというところで、実際にそのプロセスを遂行したことで、あのトライにつながったと思います。結果というよりもプロセスにしっかりと全員がフォーカスできたからだと思います」

──ビジターでも応援に来たファンも納得するような終盤だったが?

「そうですね。昨季と比べてアタックのところで相手にプレッシャーを掛けられていると、この数試合で実感していますし、自信になりつつあります」

──前半、ルーズになった原因は?

「スイッチが切れてしまったところがあったりとか、システムエラーだったりとか、そういった細かな一人ひとりのマインドセットのところが原因で、ルーズな時間帯になったと思います。ミスというよりも本当に一人ひとりのマインドセットだと思います」

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