NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第16節(リーグ戦)カンファレンスA
2025年4月26日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
コベルコ神戸スティーラーズ 59-33 三菱重工相模原ダイナボアーズ
「1」に凝縮される、積み上げてきた自信。強固なチームスタイルはさらなる進化を遂げる
コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は4月26日、東大阪市花園ラグビー場で三菱重工相模原ダイナボアーズと対戦し、9トライを奪う猛攻の末、59対33で勝利。リーグワン4シーズン目の今季、チームとして初のプレーオフトーナメント進出を決めた。
この日、神戸Sが目指したのは勝利ポイントの勝ち点4だけでない。勝ち点1が付与されるボーナスポイントの獲得だ。それを達成すれば他チームの結果に関係なくプレーオフトーナメント進出となる6位以内が確定する。日和佐篤は話す。
「(勝ち点)5点を取りたいと試合前からみんなが意識していた」
ボーナスポイント「1」の獲得条件は‟3トライ差以上の勝利”。神戸Sは前半のうちに「ボーナスポイントを取れればプレーオフトーナメント進出と分かっていた。貢献できたのは良かった」と話す北出卓也が3トライ差となるトライを決める。後半立ち上がりにトライを許して一度は未達の状況とはなったが、それでも後半11分に日和佐がトライして以降、‟3トライ差以上”を最後まで維持した。
これを実現した背景にあったものは何か。それは、‟神戸Sらしさ”だ。「自分たちにしっかりフォーカスして、『自分たちがどういうラグビーをしたいのか』を見せようという話をしていた」と日和佐が話すように、素早く展開する持ち前のラグビーを徹底的に体現。迫力あるアタックを80分間続けたからこそ生まれた‟3トライ差以上”だった。
共同キャプテンの李承信は、昨季のプレーオフトーナメント準決勝、埼玉パナソニックワイルドナイツと横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)の試合を解説の仕事で目撃。「レベルの高さを感じた」と率直に語ったが、「でも、自分たちと程遠いものではなかった」と受け止めてこう続けている。
「この1年間、自分たちはどういうゲームをするのか、1試合1試合フォーカスしてきたことが、この結果につながった」
昨季の‟いま”を起点に誰もが成長を求め、デイブ・レニー ヘッドコーチ指揮の下、強固なチームスタイルを醸成してきた。わずかに「1」、されど大きな「1」。自分たちのラグビーにこだわり、積み上げてきた‟自信”が、ボーナスポイントの「1」に凝縮されていた。
ただ、チームの誰もが達成感に浸っていないことも触れるべきだろう。東京サントリーサンゴリアス在籍時の2022シーズンにプレーオフトーナメントに出場している北出は「特別な試合だけど、結局はどれだけやってきたことを、自信をもってやれるか」と優勝へ向けて全員が一丸で戦う大切さを話す。

日和佐は「しっかり自分たちのラグビーをしつつ、いいディフェンスもできるようにレギュラーシーズンの残り2試合に臨みたい」と話し、李も「まだまだ完成ではない。残りの横浜E戦、静岡ブルーレヴズ戦でチームとして万全の準備をしてプレーオフトーナメントへ」と気を引き締める。
進化を止めない神戸Sの今季は、ここから熱量を増していく。
(小野慶太)
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ
「全体をとおして、結果に関してはハッピーです。今日、アタックの部分はいい内容が多かったと思いますし、この暑さの中でも耐えてプレーし続けて、トライキャンセルもありましたが、9トライ取ることができたので、そこの部分に関しては良かったと思います。ディフェンスに関しては、前半は良かったと思いますが、後半は時間によっては自分たちがコネクションを失ってしまうことがあり、リードが開いたタイミングで、リードが詰まっているときと同じような緊急性であるとか、コネクションをもち続けることができなかったのは良くなかったところだと思います。ただ、求めていた勝ち点5を取ることができ、プレーオフトーナメントに行くことも確定したので、そこに関しては自分たちが求めている結果を得られたので良かったと思います」
──前回対戦で敗れた三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)を相手にどういう準備をしてきたのでしょうか。特にどのあたりがうまくいったのか教えてください。
「前回、相模原DBさんと試合をしたときは、本当に自分たちのパフォーマンスが良くなかったと思います。試合の入りの部分も悪かったと思いますし、自分たちのミスから3トライほど取られてしまったスタートだったと思います。序盤にリードを与えてしまったら、相模原DBさんは勝つのがすごく難しい相手になります。そこの部分で痛め付け続ける力をもっているチームです。なので、今日の試合に関しては自分たちがどれだけいいスタートダッシュを切れるかが大事だとチームの中でも話をしていました。前回のときよりも自分たちのスキルセットの精度も良かったと思います」
──プレーオフトーナメントを見据えてどう戦っていこうと考えていますか。
「明日、サラマンダーズ(ノンメンバーの呼称)のメンバー、ノンメンバーがU-20日本代表と試合があるので、そこを終えたあとで自分たちのどこにフォーカスするのか、見ていきたいと思います。この2週間を使って、メンバーに関しても少しリフレッシュをしつつ、ただ、プレーオフトーナメントに向かう上で自分たちのモメンタム、流れはしっかりと作りながらいきたいと思っているので、そこの部分のバランスを見ながらしっかりと取り組んでいきたいです。ただ、自分たちにとって修正しないといけないところもあります。例を一つ挙げるなら、今日に関しては自分たちが与えてしまったターンオーバーが多かったと思います。本来であればそこでボールキープできていれば、トライまでもっていけるシチュエーションで自分たちがミスして(相模原DBが)ターンオーバーしている瞬間も多かったので、そこは修正しないといけない内容だと思います。そういう課題はまだあるものの、正しい方向に向かうことはできていると思います」
──今週の火曜日に「フルコンタクトに近い練習ができた」との話をうかがいましたが、その意図と効果について教えてください。
「シーズン終盤に向かう上で、自分たちの中で『インテンシティーのレベルをもう一段階上げよう』という話はしていました。サラマンダーズのメンバーもそこで高いインテンシティーをもち込んでくれたことでフィジカリティーのレベルは必然的に上がった形になります。ただ、練習を長い時間行ったわけではなく、短い時間の中で激しいインテンシティーを出せたと思います。今週、練習の中でフォーカスしたポイントでもあります。今日の試合を観ても分かるように、自分たちの力強いフォワードの選手が力強いキャリーをしてくれることによって、そのあとのミスマッチや、オーバーラップを作ることができる。クリーンアウトの動きもそこで激しさを出す、フィジカリティーを出すことによってそういったチャンスを作れていたと思うので、そこは今週の練習の意図にもあった内容ではあります」
コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック 共同キャプテン
「ヘッドコーチと同じで、アタックに関してはすごくハッピーです。特にボールキープをして、自分たちが丁寧なスキルセットを行いながらフェーズを重ねているときのアタックに関してはすごくいい内容が多かったです。あとはフォワードとしてセットピースのところもアタック、ディフェンス、両方の面でいいパフォーマンスを出せたと思います。ここから数週間、さらに精度を上げていってプレーオフトーナメントに向かいたいと思います」
──今週の火曜日に「フルコンタクトに近い練習ができた」との話をうかがいましたが、その意図と効果について教えてください。
「自分に関してはちょっと歳を取ってきているので、インテンシティーをどのタイミングで上げるかは練習の中でなるべく選べるのなら選ぼうとはしています(笑)。でも、ヘッドコーチが話すように、このシーズン終盤になってきたら、自分たちはマインドセットの部分では絶対そのレベルに向かわなければいけないと思っています。今日の試合のインテンシティーの中でも、正しい判断をすることができたところはそこにつながっていると思います。それができた理由というのも、火曜日にそういった意図、激しさをもった練習をしたことによって、より自分たちが正しい判断をプレッシャーの中でもできたのかなと思います」
──プレーオフトーナメント進出を決めたことについてどのような思いですか。
「シーズン序盤にも『自分たちは絶対にプレーオフトーナメントに向かうんだ』という気持ちでシーズンを始めているので、まず確定できたことは本当にハッピーです。残りのレギュラーシーズン2試合に関しても、ここで自分たちがさらにいい流れを積み上げていけるか、プレーオフトーナメントに向かう上でいいモメンタムを作れるかが重要になってくると思います。シーズンとおしてずっと見せてきたことだと思いますけど、どんなレベルの相手でも、自分たちは高いレベルで戦い合うことができるチームだと証明してきていると思います。それを80分間、大事な試合でやり切れるかというところが、自分たちにとって大事なところだと思っているので、今季をとおしても学びが多かった試合はたくさんありましたし、それをいまから出せるチャンスが来たことは自分にとってもエキサイティングな気持ちでいっぱいです」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「自分が大好きなこの花園のスタジアムでプレーできたことをすごくうれしく思います。コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)は本当に素晴らしいラグビーをして勝利を勝ち取りました。本当におめでとうございます。われわれも最後のほう、粘り強く後半はトライを取ることはできましたけど、相手がすごくいいテンポでいいラグビーをして、特にカウンターアタックのところが素晴らしかったと思います。われわれがトライをとっても相手が取り返したことで、なかなかコントロールを取り戻すことができなかったことが敗因だと思います」
──前回の神戸S戦では勝利しましたが、前回うまくいって、今回うまくいかなかったことを教えてください。
「前回戦ったときは、前半われわれが自分たちのフィジカリティーで支配できたところがあったと思うので、そこで流れをつかむことができましたが、今回はそれがうまくできませんでした。われわれも今週をとおしていろいろとけがに泣いて、チーム(メンバー)が変わったところもあったので、自分たちのつながりが前回ほど良くなかったところもありますけど、それがミスにつながったり、自分たちが普段起こさないところでミスをしたりして、相手がそれをモノにできていた、成功できていたと思います。前回の試合も今回も、前半(試合を)支配したチームが勝った、そこが今回、一番できなかったことかなと思います」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
吉田杏ゲームキャプテン
「80分間をとおして、神戸Sさんのフィジカルのゲームプランというか、そういった部分でこちらが受けてしまった部分が敗因の一つかなと思います。また、ペナルティで自陣に入られたことなどで、こっちも流れはつかみ切れなかったことが苦しい場面もありましたけど、そういうところを次の試合で修正できたらと思います」