トヨタヴェルブリッツ(D1 カンファレンスA)
待望のホストゲーム開幕戦。
10番は笑ってルーティンに入る
愛知県豊田市などをホストエリアとするトヨタヴェルブリッツが、豊田スタジアムに迎えるのは静岡ブルーレヴズ。昨季の開幕戦と同じ東海ダービーだ。
しかし昨季のそれは新型コロナウイルス感染症の影響で中止となってしまった。そのぶん、今季は両チームにとって思い入れの強い、熱い試合になるだろう。
その開幕戦に向けたチームの準備はすこぶる順調だ。7戦行った練習試合は、日本代表の活動で主力が抜けていても6勝1分と負けなし。今季から指揮を執るベン・へリングヘッドコーチは「チームには本当に素晴らしい若い選手がいて、フィールド内外で毎週成長し続けている。開幕戦が楽しみだ」と目を細める。若手選手の躍動する姿に注目だ。
ラグビーにおいて血湧き肉躍るシーンといえば、やはりトライを決める場面。だが、それに加えて勝利をつかみ取る上で大事になるのは、トライ後のコンバージョンやペナルティなどのキックだ。
強くそれを感じさせたのは、コベルコ神戸スティーラーズと行った最後の練習試合だった。前半に24点のビハインドを負ったが、後半に入ると猛攻を仕掛け、終盤になんとか31対31と同点に追いついた。そして最後に残されたコンバージョンキック。練習試合とはいえしびれる場面で、ティアーン・ファルコンは何事もないように大逆転のキックを決め、勝利を告げるノーサイドの笛が鳴った。
「ラグビーのポストのサイズは全部同じなんだ。あのキックの前に、僕が笑っているところを見たと思うけど、僕はキックに自信を持っているし、毎回リラックスをして、蹴るまでのプロセスを同じようにすることを意識しただけ。仲間たちがハードワークしているぶん、リーグワンでもしっかりとキックで得点を重ねたいね」とティアーン・ファルコン。常に平常心でチームの得点源となる10番のキックにも注目したい。
この開幕戦限定グッズの販売や、選手が考案した特別CMなど、イベントも盛りだくさんに予定されている。待望のホストゲーム開幕戦。この特別な一日をぜひ豊田スタジアムで楽しんでほしい。
(斎藤孝一)
静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)
昨季からの因縁。どうしても勝ちたい開幕戦
静岡ブルーレヴズが12月17日に臨む、豊田スタジアムで行われるトヨタヴェルブリッツとの開幕戦。静岡ブルーレヴズには、その試合に懸ける特別な思いがある。
昨季も同じトヨタヴェルブリッツとの開幕戦が組まれていたが、現地まで行きながら前日のPCR検査で新型コロナウイルス陽性者が複数人出たため、試合が中止になってしまった。もちろん感染対策には万全を期していたが、続く2試合も中止となり、開幕から大きく出遅れたことが最終成績にも影響した。
大卒2年目ながら今季のキャプテンに抜擢された奥村翔は、「ノンメンバーも含めてしっかりと準備していたのに、試合ができなくなってしまって本当に悔しかったです」と振り返る。
プレーオフトーナメントに出場できる4枠入りからの優勝を狙う今季は、昨季のぶんも含めて自分たちの思いをぶつけ、「始まりもトヨタが相手で、終わり(最終節)もトヨタ。必ず勝って開幕ダッシュにつなげたいです」(奥村)と闘志を燃やしている。
開幕戦に向けての準備も万全だ。堀川隆延ヘッドコーチは次のように語る。
「24週間のプレシーズンで、革新的にいろいろなことにチャレンジしながら“レヴズスタイル”を作り上げてきました。それをこの表舞台に出せることが非常に楽しみですし、開幕戦に向けて今できる最善の準備はできていると思います」
さらに堀川ヘッドコーチは「相手と比べると僕らあまり大きくない。小さい集団がどうやって大きい選手に勝っていくか。たとえばスクラムでも、われわれは小さくコンパクトにまとまってプレッシャーを掛けていく。局面の人数で勝つとか、運動量を増やすとか、そういうところが伝わるゲームをしたいです」と見どころを語った。
奥村キャプテンも「僕らは、レヴズスタイルを遂行して勝つことに意味があると思っています。相手の体は大きいですが、自分たちにしかできないラグビーがありますし、それを武器にしてひたむきに立ち向かっていきたいです」と力を込める。
スタイルを貫き通すこと、そして勝利を手にすること。それに向けて静岡ブルーレヴズは、まさにチーム一丸となっている。
(前島芳雄)