NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第1節 カンファレンスA
2022年12月17日(土) 14:30 豊田スタジアム (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 31-26 静岡ブルーレヴズ
勝利に導いたエックスファクター。ジョネ・ナベテレヴという新風
12,000人を超えるファンが集まった“東海ダービー”。序盤は静岡ブルーレヴズがキックチャージなどからトライを重ね12点を先行。ホストのトヨタヴェルブリッツがそれを追う展開となる。トヨタヴェルブリッツはティアーン・ファルコンのペナルティーキックなどで着実に点差を詰めると、後半に入って一気に逆転。終盤は追い上げられたものの5点差で逃げ切り、開幕戦を白星で飾った。
トヨタヴェルブリッツは、姫野和樹など日本代表メンバーの多くがベンチスタートとなる中、新加入のジョネ・ナベテレヴが先発で出場し、その特長を発揮した。
フィジー出身のジョネ・ナベテレヴ。昨季はディビジョン3のクリタウォーターガッシュ昭島でプレーした。そこでの活躍が認められ今季加入。「初めてこんなに大きなスタジアムでプレーできて感動した」という開幕戦では、ようやく逆転したその1分後に左サイドを疾走。トライを決めてチームの勢いを加速させると、追い上げられた76分には、抜け出してきた相手に対し、激しいタックルで失点を防いだ。
「あのタックルの瞬間は、自分が何をしなければいけないか分かっていたので、自分の限界を少し超えていきました。ちょっと足をつった感じもあってしんどかったですけど、自分だけが痛い思いをしているわけではないし、チームのみんなが痛い思いをして頑張っている。僕は少し努力しただけ。自分のためじゃなくて、フィールドにいるみんなのためにタックルしました」(ジョネ・ナベテレヴ)
トヨタヴェルブリッツに加入してから、ジョネ・ナベテレヴは「ブラザーフッド」という合言葉の下、仲間同士の信頼感を築き上げてきた。トライを決めたシーンも全員がやるべきことを遂行し、信頼し合ってつないだボールを自分がフィニッシュしただけだと謙遜する。
ベン・へリング ヘッドコーチは「彼はエックスファクター(特別な才能)を持っている。トヨタにうまくハマっている選手」だと新加入のウイングを高く評価し、期待を寄せる。
「自分は毎試合最大限の力を発揮し、結果を残して日本代表やフィジー代表に選ばれるように頑張りたい」と語るジョネ・ナベテレヴ。新しい風がトヨタヴェルブリッツに勝利をもたらした。
(斎藤孝一)
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ
「まず、こういった形でシーズンをスタートすることができて大変良かったと思います。今回の試合でチームはたくさんのハートを見せることができたと思っています。もちろんブルーレヴズ側もすごく激しい試合のスタートで、最後の後半10分もタフな試合になりましたが、われわれとしては冷静に試合を運ぶことができたと思っています」
──試合の最初はなかなかペースに乗れなかったと思うが、その要因は?
「もちろん、ブルーレヴズはすごくいいチームで、そういった強いスタートで来ることは当初から分かっていたことです。その中で、冷静さを保ったまま試合を折り返すことができたと思っています。メンタルゲームをうまくコントロールできたのではないでしょうか」
──新加入のジョネ・ナベテレヴ選手起用の意図と評価を。
「彼はエックスファクターを持っている、そういう選手であると認識しています。ハードにプレーし、そしてすごく足も速い選手です。プレシーズンに良いパフォーマンスを見せてくれたということもあり、もちろん継続して取り組んでいることもありますが、今日の試合でもスコアしたトライなど、すごく良いパフォーマンスを見せてくれました。彼は本当にスペシャルな何かを持っていて、トヨタVにもうまくハマっている選手だと思っていますし、今後も楽しみにしています。
そして、その中で付け加えると、やはり内なる努力ということで、あのトライにつながったタイトフォワードの努力だったり、ブレイクダウンだったり、そういったところが彼の最後の使命であるトライにつながったと思っています」
──あえて課題を挙げるとすると?
「ファーストゲームということで、勢いを意識する上で、やはり結果が大事です。もちろん試合のスタートとフィニッシュというところで改善の余地はあります。開幕としてはまず良いスタートが切れたと思うので、今後映像を確認して細かな修正を行っていきたいと思います。
ポジティブな観点としては、やはり信頼というところだと思っています。難しい中でも選手は冷静さを保った上で、仲間を信頼してプレーしてくれたと思います」
トヨタヴェルブリッツ
福田健太ゲームキャプテン(スクラムハーフ)
「まず、昨季コロナ禍によって開幕戦が行えなかったので、今日こうして開幕戦を豊田スタジアムで、あまり良くない天候にもかかわらず、たくさんのお客さんに足を運んでいただき、ゲームができたこと、本当にうれしく思います。僕たちとしても、長いプレシーズンを終えて、この開幕戦を一つのターゲットにしていたので、すごくみんな楽しんでできたこと、結果もしっかりついてきたこと、そこも本当にうれしく思います。でもまだまだ開幕戦を終えただけなので、今日はしっかり勝利を祝って、僕たちが大切にしているプロセスを、正しいプロセスを大切にしながら、今後長いシーズンを戦っていきたいと思います」
──序盤にいきなり12点リードされましたが、ゲームキャプテンとして、キックで得点を積み重ねる選択をしました。その意図を教えてください。
「一番は開幕戦というところで、どのチームもすごく難しい試合になると思いますけど、その中で得点を重ねるというのはすごく大事なことで、あとはシンプルにウチの10番のティアーン・ファルコンをすごく信頼していたので、彼のキック力が武器というのも分かっているし、そこは彼を信用して、正しい選択ができたのかなと思います」
──失点していても押し込む展開が多く、攻撃に自信もあったと感じたが?
「キックオフの笛が鳴ってから、80分後のノーサイドの笛が鳴るまでしっかりと得点を積み重ねること、それがやっぱり一番大事だと思う。その中でやっぱり自分たちの強みというところも分かっているし、ディフェンスで前に出るところが僕たちの強みでもあると思う。全員が全員を信用していいコネクトができているので、正しい選択ができるのかなと思います」
──大事なところのスクラムをフォワード陣が頑張ったことも勝因だと思うが、どう感じたか?
「昨季までだったら、ああいう流れはみんながヤバいと思うかもしれないですけど、僕たちはみんな本当に信頼し合っているので、フォワードの選手もあそこがターニングポイントだと感じたと思うし、僕もゲームキャプテンとして、スクラムハーフとして、まずはフォワードをしっかり信じてスクラムで、その後のもしボールが出た時のための、相手がどうアタックデザインしてきても、全部ディフェンスする、それを全員で細かいところまで話せたので、そこは本当にフォワードがよく頑張ってくれたと思います」
静岡ブルーレヴズ
静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ
「開幕戦、もちろん非常に難しいゲームになると考えていましたけど、前半、最初に12点ですか、良いチャージからアタッカー陣が自分たちのストラクチャーの中で、良いスタートが切れたんですけど、まあそのあとですね。トヨタヴェルブリッツさんのアタックのプレッシャーをディフェンスが受け続けた時間帯が非常に多かった。われわれはスクラムやラインアウトボールで、もっとプレッシャーを掛けたかったんですけど、ゲームの中盤でプレッシャーを掛けることができなかった。そこが一番このゲームの中で、われわれの力を発揮できなかった部分だと思いますし、敗因の一番大きな部分だと思います。
僕らは『レヴズスタイル』ということで、セットピースからのアタックを起点にしっかりと得点を取っていくというところで言うと、後半の後半ですけど、やはりマイボールになればしっかりスコアできる力はあるんですね。ラストで勝点1をゲットしたことを今日はプラスに捉えて、次はホストゲーム、ヤマハスタジアムで埼玉パナソニックワイルドナイツ戦ですけども、本当の自分たちの姿っていうのを見せられるように、しっかり1週間準備していきたいなと思います」
──先発起用したブリン・ホール選手の評価と選手交代の意図は?
「プリン・ホール選手が良い、悪いという展開ではなかったですが、自分たちがそのエリアでやるべきこと、キープすべきところ、回すところに関しては、彼は正しい判断でプレーしていたなと。まだまだ彼の力は、これから次戦以降もっともっと良くなっていくと思います。良いか悪いかという判断は、今日はまだできないかなと。
あとは、ああいう点差になってしまったので、やっぱりスコアしていかなきゃいけないということで、攻撃的な布陣にするために、メンバーをどんどん代えていったというところですね」
静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス共同キャプテン(ナンバーエイト)
「素晴らしい、自分たちにとってはしっかりと学びになったゲームだったと思います。トヨタヴェルブリッツさんはしっかりと好機を自分たちで作って、それを得点につなげていきました。自分たちにも好機はあったんですけど、私たちの場合はそれをしっかりと遂行していくことがなかなかできなかったということだと思います。しっかりここから学んで、次の試合につなげていきたいと考えています。
シーズンはまだこれから長く続いていきますので、しっかりとここで学びを得て、そこからまた立ち上がっていきたいと思っています。次はホームゲームですので楽しみにしています」
──ヘッドコーチがスクラムとラインアウトのところで力を出し切れなかったと言っていたが、選手としてはどう感じているのか?
「私たちに、しっかりと力はあると思っています。ただ遂行が足りなかったと考えています。ゲームは終盤のところでそれがしっかりと機能し出したんですけども、それではゲームが取れないということで、次からはしっかりそれが初めからできるように修正していきたいと思います」
──それはコミュニケーションの問題だったのか?
「コミュニケーションではなく、もう遂行の部分だけだったと思います。コミュニケーション自体は良かったと思います」