NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第8節(交流戦)
2025年2月15日(土)14:30 岐阜メモリアルセンター 長良川競技場 (岐阜県)
トヨタヴェルブリッツ 23-33 静岡ブルーレヴズ
80分間、常に掛け続けた重圧 「立ち返る場所」であるスクラムが連勝をもたらす
最後までスクラムで優位に立った静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)が、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)に力の差を見せつけて33対23で快勝。ホストゲームだったトヨタVは4連敗となった。
先発メンバーを大きく変更したトヨタVに対し、静岡BRの日野剛志は「びっくりしましたけど、やるべきことは変わらないので」と淡々と答えた。そのやるべきこととは、自分たちの強みであり、原点であるスクラムの強さを出すこと。「相手に囚われずに自分たちにフォーカスをしたスクラムを組もうって、メンバー表を見て逆に切り替えができました」と語る。
静岡BRは、グラウンド上でも立ち上がりから自分たちのラグビー、そしてスクラムを展開する。圧巻だったのは前半14分の自陣トライライン前での相手ボールのスクラム。絶体絶命のピンチの中で、しっかりと相手に圧力を掛け、スクラムハーフにボールを入れることさえさせなかった。
そして、その強さはフロントローの全員が入れ替わっても変わらなかった。後半31分にも相手ボールのスクラムを押し切ってボールを奪いトライにつなげる。トヨタVが主力を投入しても力の天秤は、静岡BRに傾いたままだった。
「チームのテーマは80分間をとおしてプレッシャーを掛け続けること。それは相手にしたらすごくイヤだろうし、僕たち先発陣はあとから出てくる若手が頑張っているので、『もっと押さないと』ってプレッシャーになっています」と、日野はチーム内競争がより自分たちの特長を増強させていると笑った。
あらためて日野に静岡BRにとってスクラムとは何なのかを聞いた。
「うまくいかないときに立ち返れる強み。それがわれわれのスクラムやモールだと思っています。今日もうまくいかない場面がいっぱいあったんですけど、スクラムでずっとプレッシャーを掛け続けたことで、自分たちのリズムにできました。でももっと押せるし、もっとエラーをなくせば、もっと上を目指せる。もっと突き抜けて押していきたいと思います」
(斎藤孝一)
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ
「今回の試合に関しても、試合の大半の部分でいいプレー、そして相手チームとのいい競争ができたと思っていますが、残念ながら結果が付いてこない、そういう形になりました。とはいえ、選手の1週間をとおしての取り組み、選手の努力などに疑問はまったくありません。現在のチーム状況として、試合の中でうまくボールが(自分たちのほうに)転がってこなかったり、もしくはレフリーの判断だったり、けがなどさまざまな形で逆風が吹いていますが、それがスポーツだと考えています。以前にも伝えましたが、チームとしてはハードワークを続けるのみです。それを続ければトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)の番がくると信じています。フラストレーションが溜まる試合ではありますが、チームの努力に関しては誇りに思います。そして今日の試合に関しては、どれくらいの接戦だったのかというところが、スコアボードに反映されなかったと考えています。ポイントを獲得したいところでしたが、残念ながらそれはできませんでした。また来週の月曜日からハードワークしていきたいと思います」
──フロントローを始め、これまで出場時間の少ない選手が多く先発しました。彼らの評価について教えてください。
「まずフロントローに関しては、今日の試合を振り返って非常に誇りに思っています。そういう動きだったと思っています。彼らはリーグワンの経験が豊富ではない中で、スクラムが最も強いチームの一つである静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)に対してコミットし、高いレベルのパフォーマンスを見せてくれました。なので、パフォーマンスに関してはたくさんいい面があったと思います。ただ、相手チームが上手だった、その状況を受け入れるところもあります。とはいえ、チームとしてはより成長をしたいし、そういった意欲があるのでハードワークを続けていきたいです。若手メンバーの活躍には満足をしています」
──交代選手がパワーを上げ切れなかった要因はどこにありますか?
「試合の局面で静岡BRに勢いを与えてしまったと感じています。トヨタVとしてやりたいことができませんでした。そういった点に関しては、単純に静岡BRさんを称賛したいと思います。試合の中ではどうしてもやりたいことがうまくいかない、そういった局面があります。スクラムの中で引いてしまったことが理由でレフリーに笛を吹かれて(ペナルティを取られて)しまって、そのあとにラインアウト、そしてまた相手に勢いを与える形となり、ペナルティから悪い流れを積み重ねてしまいました。そういったところでわれわれがやりたいことができずに、相手に勢いを与えてしまったと感じています。とはいえ、最後の局面ではトライで終えることができました。試合の大半はいい面が多くありましたし、修正面もいくつかあるとチームとしては考えています」
──チームとして変えたいところ、変えるべきではないところはどこでしょうか?
「まず選手の姿勢というところは変える必要はないと思っています。選手の取り組みは素晴らしいですし、ハードワークを続けています。変えないといけない点としてはタックルのラップです。ファーストタックラーのドミネートが足りないと考えています。それ以外にも細かな部分があります。またいい面がある中で、そのあとにターンオーバーが起こってしまうところがあります。そういった点ではよりチームとしてボールを大事にしないといけないと考えていますが、実際の試合の中ではそういうことも起きてしまうと考えています。後半に関してはスクラムで苦戦を強いられる形となりました。そこの判断、レフリーへの対処法というところも考えていかないといけないと思っています」
トヨタヴェルブリッツ
松田力也ゲームキャプテン
「結果が付いてこなくて、すごく悔しさがありますし、フラストレーションが溜まっているところがあります。ただ、1週間をとおしてスティーブ(ハンセンヘッドコーチ)も言いましたが、チームとしては同じようにいい準備をしたという自信はあったし、ゲームの大半の時間で、僕たちがやろうとしているラグビーは見せることができたと思います。でも試合の入りや、勝負どころで相手のほうが少し上回っていました。本当にこの結果を受け入れるしかないし、こういうしんどいときはチームがすごく簡単にバラバラになりやすいので、どれだけまとまって一つの絵を見ることができるかだと思います。やってきたことに対して、自分たちは信じているし誇りも持っています、チーム全員、スタッフを含めた全員が強い気持ちで同じ絵を見てハードワークするしかないと思っているので、個の学びを必ず生かして、強いヴェルブリッツが戻ってくるように、僕自身も自分に矢印を向けてハードワークを続けたいと思っています」
──初のゲームキャプテンとして心がけていたことはどんなことですか?
「いつもと変わらないです。チームをどうやって同じ方向を向かせるか、コール1つで変わるので、そういうところでみんながシンプルに考えることができるように、常に周りとコミュニケーションを取ってやるのはいつものゲームと一緒です。キャプテンだからといって何かを変える必要はないと僕は思っていました。ドライブの仕方は周りを見ながら、替わった選手もいたので、そういう選手たちとコミュニケーションをよくとって明確にプレーしようと思っていました」
──ペナルティゴールを狙った判断について教えてください。
「ゲーム中の判断に関しては、取れるところでポイントを取っていこうと。そんなに簡単にモールを押し込んでスコアできるようなチームではなかったし、クロスゲームの展開だったので、ゲームをとおして判断していくことについては、クリアに迷いなくいけたと思います。ゴールキックの精度に関しては、自分のキックが前半は蹴れていなかった。どんどん蹴り急いでいたので外してしまったと思うし、そこを自分にしっかりフォーカスして、ゆっくり自分のキックのフォーカスポイントを意識してやれるようになってきているので、ショットクロックの60秒に対してもアジャストできてきていると思います」
静岡ブルーレヴズ
静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督
「試合前から、前節はトヨタVさんも負けていたので、この試合に懸けてくる気持ちがすごいだろうと僕たちも感じていました。前半は本当にすごいプレッシャーの中、選手がしっかりと我慢し、取らないといけないところでしっかり得点できました。最後はしっかりとポイントまで取れて、今日、選手は一段上がったと感じました」
──最後までスクラムで強さを発揮した点についてどう感じていますか?
「前半出た選手たちがしっかりとジャブを与え続けて、後半に出た選手たちがそれを続けてくれました。本当に試合ごとにスクラムは良くなっていると思います」
──一段上がったというのをどこで感じましたか?
「点を取られたり追いかけられたりすると、ちょっとパニックになる部分があったんですけど、今日はしっかりと落ち着いてディフェンスもできていましたし、自分たちのプランどおり前に進めていたので、そういう意味で少しずつ自信がついたとともに、自分たちが何をするべきかを理解して、全員が同じ方向を向いているなという気がしました」
静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス キャプテン
「今日はすごくタフな試合になると分かっていました。先週の結果から(トヨタVは)しっかりとクオリティーの高いラグビーをしてくると思っていたので、今日の試合は簡単にはいかないという気持ちで臨みました。試合に関しては本当に選手たちを誇りに思います。いくつかの場面で、ボールを落としてしまったり、ミスをしたりというところもあったんですけども、最終的に80分間のチームの頑張りというのはすごく良かったと感じています」
──最後までスクラムで強さを発揮しました。その点をどう捉えていますか?
「毎試合すごく成長していると思います。スクラムは特にですね。モールの部分ではもう少し改善できるところがあると思いますので、そこはもう1回しっかりと見つめ直していきたいと思います。フォワードが毎試合ステップアップしているのはすごくいいことだと思いますし、チャンスをしっかりと生かし切れていることを、すごくうれしく思います」