2022.12.19NTTリーグワン2022-23 D2 第1節レポート(三重H 27-35 浦安DR)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第1節
2022年12月17日(土) 12:00 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 サッカー・ラグビー場 (三重県)
三重ホンダヒート 27-35 浦安D-Rocks

日本に魅せられたパブロ・マテーラが、世界基準のプレーで魅せる

リーグワン初戦フル出場、三重ホンダヒートのマテーラ選手

NTT ジャパンラグビー リーグワン2022-23ディビジョン2の覇権を争う2チームが激突した開幕戦。開始2分、浦安D-Rocksのトライから、いきなり試合は動いたが、前半は、互いに相手のミスから生まれたチャンスを得点に結びつけるシーソーゲームとなった。ホストである三重ホンダヒートは、シンビンで13人でのプレーを余儀なくされる時間帯があったものの、24対24の同点でハーフタイムを迎える。

しかし後半は、次第に浦安D-Rocksのペースへ。ワールドクラスのプレーヤーをそろえる三重ホンダヒートだが、攻守ともに浦安D-Rocksの圧力に押されて自陣でのプレー時間が増え、じりじりと点差をつけられていく。後半は1ペナルティーゴールのみでノートライに終わった三重ホンダヒートに対し、浦安D-Rocksは1トライ2ペナルティーゴール。35対27で浦安D-Rocksが新チームの初陣を勝利で飾った。

少雨の中での試合は、拮抗し「面白いゲーム展開」(ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ)となったが、光ったのは、やはり各国代表クラスのプレーヤーのテクニック。その中でも今季から三重ホンダヒートに加入したアルゼンチン代表、パブロ・マテーラのプレーにはスタンドから幾度も声が挙がった。

パブロ・マテーラは、速い展開のラグビーを標榜するチームの中で「自分には高いフィットネス、強いボールキャリー、ファストラグビーのアタックが要求されている」と話し、開幕から出し惜しむことなく、そのとおりの働きを見せた。前半17分には、自軍のパスを浦安D-Rocksがインターセプト。空いたサイドライン際を一気に走られるピンチを、タックル一発で外に押し出し、チームを助けた。また同36分には、相手オフェンスに素早く、かつ激しいタックルをしかけてボールロストを誘い、藤田慶和のトライへとつなげた。

ほかにもボールキャリーの強さ、コンタクトしてからの推進力、ディフェンスでの危機察知能力、いずれにおいても高い存在感を示していた。特に、浦安D-Rocksがエリア挽回のために蹴ったロングボールを、パブロ・マテーラがサッカー選手のように容易に左足でトラップしたシーンには、3,000人を超えた観客が最も湧いた。

パスのタイミングや、周囲との連係には精度を欠く場面もあり、パブロ・マテーラ自身も「もう少し目的を持って自分のプレーを果たしたい」と課題を口にした。チームとしても勝点を取ることなくゲームを落としたが、日本での初ゲームを楽しんだ様子で「プレーの改善は可能であるし、今日のゲームをとおして自信を得た」と手応えも話した。

2019年にラグビーワールドカップで訪日したことを契機に日本の文化に魅せられ、「異なるラグビー、異なる環境、異なる文化での新たなチャレンジを楽しみたい」と、鈴鹿へやってきた世界のナンバーエイト。今季、われわれが彼に魅了されることは間違いない。それを確信するデビュー戦となった。

(小崎仁久)

三重ホンダヒート

三重ホンダヒートの上田泰平ヘッドコーチ(左)、藤田慶和選手

三重ホンダヒート
上田泰平ヘッドコーチ

「初めに、天候が悪い中、寒くなっている中で三重県協会関係者の方々が素晴らしい準備でスタジアムを作ってくれ、プレーができたということは、三重ホンダヒートとしてもとてもうれしく思っています。
前半、(シンビンにより)13人で選手が少ない中で、24対24とうまくもっていけたというのは、本当に選手たちの努力が素晴らしかったと思います。ただ後半、自分たちの簡単なミス、自分たちがコントロールできなかった部分から相手に勢いを与えてしまい、最後は8点差のまま得点が取れませんでした。それでも、自分たちの練習のスタンダードを、どこに設けないといけないのかということが分かったことと、こういった接戦の試合、強度が高い試合をすることで、僕たちが目指している入替戦での強度に対して、チームがどれだけ足りないのかということがわかりました。また、このような強度の高い試合をすることで、ディビジョン2全体がレベルアップしていければいいなと思いました」

──前半は試合の流れが行ったり来たりしましたが、後半はターンオーバーがなかなかできなかったのはどのあたりに原因があったと考えていますか?

「前半から少し見えていたところはあったのですが、トランジションのタイミングで、全員がどうしてもポゼッションを優先的に考えて、ランニングを選んでいたというところで、自分たちの勢いを殺してしまった部分がすごくあるなと思っています。前をしっかりと向いて、スペースに対してアタックをしかけるというのが自分たちのスタイルなので、ここは練習からもう一回、いいクセをつける必要があるなと思います」

──試合全体を通してミスから相手にやられてしまったように見えましたが?

「自分たちのミスから勢いを減らしてしまったところがありました。ここは、やはりコンビネーションの部分がすごく大きくかかわってきていると思っています。シーズン開幕前に全選手がなかなかそろわない状況でやってきた中で、これからそのコンビネーションさえしっかりと合わせていけば、改善されることだと思っているので、そんなにそこに関しては焦っていません」

──今日は『地域共闘プロジェクト』があり、地元の方も大勢来ていました。残念な結果でしたが、残りホームゲーム4戦、どのように戦っていくのか、地元の方へのメッセージをお願いします。

「残りの4試合で1万2千人が来ていただけると思うので、そこに向けて三重ホンダヒートらしく、攻守の入れ替わりがとても多い、見ていてエキサイティングするようなゲームを展開するので、ぜひ応援をよろしくお願いします」


三重ホンダヒートの古田 凌キャプテン

三重ホンダヒート
古田凌キャプテン(フランカー)

「開幕戦は悔しい結果にはなりましたが、先ほど上田泰平ヘッドコーチも言ったように、前半、13人になった中でもドローで折り返せたというのは、チームにとってもポジティブなところではあったと思います。しかし、正しいことの積み重ねというのが、まだ少し甘いなというのは感じたので、そこは練習から、どれだけ自分たちが正しいこと、正しい判断ができるか、そこをしっかり考えながらやりたいと思います。まだまだ試合は続いていくので、しっかりチーム一体となって駆け上がっていきたいと思っています」

──前半、13人になった状況で、どういった意識、どういった声掛けなどされましたか?

「13人になったからといって焦っていても仕方ないと思うので、まずはチーム全体をしっかり落ち着かせて、もう一回、ディフェンス、アタックのポイントをしっかり明確にシンプルに伝えていました」


三重ホンダヒートのパブロ・マテーラ選手

三重ホンダヒート
パブロ・マテーラ(ナンバーエイト)

──攻守ともに存在感がとてもあるプレーが見られましたが、ご自身ではどう感じていますか?

「いまとてもハッピーだと感じていますが、それはすごく疲れているからです。自分が出し切ったと思うから疲れを感じている。それは本当にいいことだと自分では思っています。本当にたくさん、ポジティブな意味でゲームを改善できると思いますし、さらに次のゲームで、それをつなげていけることを自分としてもすごく楽しみにしています」

──母国アルゼンチンが、サッカーワールドカップで決勝へ進んでいますが、どう感じていますか?

「すごく緊張しています(笑)。最近、アルゼンチンのいいニュースが少ないので、もちろん決勝で勝ってほしいですし、優勝してアルゼンチンにいいニュースを届けてほしいと思います。そのことでわれわれアルゼンチン人のスピリットを見せることができると思うので、彼らには期待しています」

三重ホンダヒート
藤田慶和(ウイング)

──強いチームを相手にした敗戦に悔しさも手応えもあったと思いますが、いかがですか?

「やはり勝ち切らないといけないというのは事実ですが、全部がネガティブなところばかりではなかったと思うので、そのポジティブな部分はしっかりつなげていきたいです。今日、課題で挙がった部分は来週には克服できるように、一週間チームとして準備を進めていきたいです。それほどネガティブに捉えることではないですし、もう一度、浦安D-Rocksと試合しますが、いま8点、借金をしているので、それをひっくり返せるようにシーズンを通していい準備をしていきたいと思っています」

浦安D-Rocks

浦安D-Rocksのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

「本日はゲームにお越しいただきありがとうございます。あと、今日お越しくださった両チームのサポターさんのみなさんも、寒い中ありがとうございます。
まず、試合の序盤に素晴らしいトライでスタートをきることができました。そのあとセットピース、ラインアウトとブレイクダウンのところで苦しみ、特にラインアウトは相手チームのスコアにつながりかけるシーンもあり、そういったところで流れを少し失ってしまった部分がありました。そこからは点差が近いゲームで、ゲームとしては面白い展開になったと思いますが、自分たちのミスがけっこう多かったので、そこは課題にして、勝ちを大事にしつつも、勝ちの試合からしっかり学んで、新たなシーズンの基盤を作っていきたいと思います」

──会心の試合ではなかったと思いますが、それでも勝ち切れた理由はどこにあると考えていますか?

「カギとなる場面でチャンスを生かせたところが、勝因だったと思います。かなり良いトライをスコアできていましたし、そういった局面では、自分たちが、これからやっていけるだろうというアタックの可能性を感じました。
ハーフタイム間際、ボールをキャリーするのか、手放して回すのかというところで、もう少し精度の高い判断ができたら良かったと思います。あと、ラインアウトを2本失ってしまったところでのモメンタム(勢い)、試合の流れを相手に持っていかれてしまい、そこを起点に相手が自陣に攻め込んでくるようなこともありました。
総括としては、チャンスはたくさん作れているのですが、その中で決めきれるところと、決めきれないところがあったという試合でした」

──三重ホンダヒートの、試合前の印象と対戦後の印象を教えてください。

「もちろん、試合前に映像を通して、三重ホンダヒートの練習試合等の分析はしており、試合を見て、かなりいいチームだなという印象を受けました。例えば、コベルコ神戸スティーラーズを相手に素晴らしいプレーをしていました。そういった分析を踏まえて、対戦相手としてリスペクトをしていました。さらにワールドクラスの選手、トム・バンクスやパブロ・マテーラ、フランコ・モスタートという選手をそろえているので、自分たちには、大きなチャレンジが立ちはだかっている自覚はありました。特に自分たちは新しいチームとして、結成したばかりでしたので、その中で拮抗した試合が続き、三重ホンダヒートさんも、われわれのミスからチャンスを作り出し、生かしていった印象があります。とてもいいチームで、シーズンを通してかなり成長していくチームだと思うので、これからも侮れないですね」

──新しいチームをつくる上で、一番意識されたことはなんですか?

「まず、自分たちのアイデンティティーを確立するところから始めました。チームとしての団結力、あとはチームとしての文化を築いていく上で、お互いに気遣い合う気持ちが一番重要です。そういった気持ちを築く上では、もちろん楽しいこともたくさんいろいろと一緒にやらなければいけないですし、辛い練習、ハードワークをしていかないといけない。そこの両立は意識していました。8月22日に合流してから、短い期間での準備期間とはなったのですが、その中でお互いの文化とか、団結力というのを築いてきました」


浦安D-Rocksの飯沼蓮キャプテン


浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン(スクラムハーフ)

「浦安D-Rocksとして初めてのシーズンの初戦だったので、タフなゲームになることも、苦しいゲームになることも分かっていました。その中でタフなゲームを全員で楽しみながら試合できたのは、よかったことかなと思います。このゲームを通して、ブレイクダウンや、アタックとディフェンスで、自分たちはまだまだ伸びシロがあることを実感できたので、しっかり勝って、反省して、成長できるようなチームになっていけたらいいと思います」

──流れが行ったり来たりするゲームで、グラウンド内ではどう考えてプレーしていましたか?

「特に前半は、自分たちのペナルティからチャンスを作られるシーンと、ターンオーバーされた後のリアクションスピードが遅かったことで、相手にチャンスを作られていたので、まずはそこを修正しようとしたことができました。今週に向けて、アタックもディフェンスもブレイクダウンもフォーカスがあったので、しっかりそこに立ち返れたことが良かったのではないかなと思います」

──新しいチームとして初めて勝ったわけですが、これまでのチームとどこが変わったと感じていますか?

「自分たちに雪辱の自信があること。それに尽きると思います。本当にプレシーズンから、どのチームよりもしんどい練習をして、ただ、しんどい練習だけではなく、その中でアティチュード(態度)や、細かい部分にこだわってやってきました。そこまでした中で、自分たちにプライドが芽生えて、一人ひとりが責任あるプレーができるので、ピンチになっても、立ち帰れる部分がしっかり作られています。今日はタフな試合でしたけど、負ける気はしなかったです」


浦安D-Rocksの金正奎選手


浦安D-Rocks
金正奎(フッカー)

──フッカーに転向した理由をあらためて教えてください。

「フッカーというポジションには興味というのか、関心はずっとあり、それで昨季からスローイングの練習をする機会はありました。一番はやっぱり、『好きなラグビーを一日でも長くしたい』という気持ちです。このやりたいという気持ちを抑えたまま、キャリアを終えたくない気持ちもありました。それでヨハン(アッカーマンヘッドコーチ)と斉藤(展士)アシスタントコーチとしっかり相談しながら、チャレンジをする機会をもらえたので、今季からフッカーに挑戦をしています」


浦安D-Rocksのグレイグ・レイドロー選手


浦安D-Rocks
グレイグ・レイドロー(スクラムハーフ)

──拮抗した展開でゲームに入りました。

「拮抗した試合であったことは間違いなくて、シンプルなところをうまくやろうという意識でやりました。あとはエリアマネジメントに尽きますね。自分の入りたい陣地に入っていく。そのマネジメントがしっかり取れていたところがよかったと思います」

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