NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第1節 カンファレンスB
2022年12月18日(日) 14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 36-34 花園近鉄ライナーズ
徹底したタックル練習で手繰り寄せた1527日ぶりの勝利
序盤は風上に立ったNECグリーンロケッツ東葛が攻勢をしかけたが、時間の経過とともに花園近鉄ライナーズが盛り返していく。柏の葉公園総合競技場で行われた開幕戦は終始拮抗した攻防が繰り広げられ、最後は36対34という僅差でNECグリーンロケッツ東葛が逃げ切った。
昨季のNECグリーンロケッツ東葛は、入替戦を含めて7点差以内での敗戦が5試合あった。その原因について、レメキ ロマノ ラヴァは「昨季はリーグワンの平均で、ペナルティーの数が一番多かった。僅差の試合でもペナルティーを取られていた」と振り返った。また、ワラビーズ(オーストラリア代表)での代表キャップ72を誇るニック・フィップスは「全体的にペナルティー数を減らすことが勝利のカギになる」と提言。新シーズンに向けて徹底してきたのはペナルティーの数を減らすことだった。
「プレシーズンも最初の2カ月はほとんどボールに触っていない。タックル、タックル、タックル……。走り込みとタックルにフォーカスして練習をしてきた。試合では絶対にキツい時間帯が来る。その部分では準備ができていたので、タックルには自信を持っていた」(レメキ)
36対34と、NECグリーンロケッツ東葛のリードで迎えた試合終盤。22mラインを越えたエリアで花園近鉄ライナーズが怒とうのアタックをしかける。もしここでペナルティーを与え、ペナルティーゴールによって3点を奪われればスコアが逆転する緊迫したシチュエーションである。ただ、プレシーズンに特化してきたタックルの練習の成果と、「この1週間も、まずはペナルティーを減らすことに集中してきた」(ニック・フィップス)と、チーム内での意識共有が最後の局面で生かされた。NECグリーンロケッツ東葛は31フェーズに及んだ花園近鉄ライナーズの猛攻に対し、激しいタックルで応戦。ペナルティーを与えることなく耐え抜き、ジャパンラグビー トップリーグ時代からあわせ1527日ぶりの勝利を飾った。
「みんなが自分の仕事に自信を持っていた。それは全部タックルの練習をしてきたから。最後の4分間はよいディフェンスができて勝つことができた。新しいチームになって、これからもっと強くなると思う」(レメキ)
入替戦の末にディビジョン1残留を果たした昨季は確かに苦しいシーズンだった。はい上がるためにも、その経験を無駄にはしない。昨季の悔しさと学びを糧にしたNECグリーンロケッツ東葛は、今季の開幕戦で紙一重の勝利を手繰り寄せた。
(鈴木潤)
NECグリーンロケッツ東葛
NECグリーンロケッツ東葛
ロバート・テイラー ヘッドコーチ
「まず、みなさんにお会いできてうれしいです。ファン、サポートしてくださる人たちにNECグリーンロケッツ東葛の勝利を届けることができてとてもうれしく思っています。試合はいろいろな局面があった中で、一度逆転されたときには自分たちにすごくプレッシャーがのしかかりましたが、それを最後に乗り越えることができた、いまの状況を誇らしく思っていますし、最後には勝利に導くことができたので、その喜びを感じています」
──今日はホストゲームの開幕戦で、ホストエリアからたくさんの人が応援に来ていました。
「昨季と比べて、入っていたサポーターの人数が多く、まずそれがうれしかったです。しっかりとサポーターのみなさんに勝利を届けることができたのは良かったと思います」
──新井望友選手、菊田圭佑選手、クリスチャン ラウイ選手といった若い選手を起用しましたが、その意図を聞かせていただけますか?
「若い選手たちの起用については、まずプレシーズンの練習を通してその3人の選手は練習の中で良いものを見せてくれたということと、将来の構築として選手を育てるという意味でも期待をもって選びました。ラウイも大きな体で前に前にとチームを動かしてくれるので、そういう意味でも期待をしています」
──レギュラーシーズンでは勝てなかった期間が長かったですが、今日勝てた要因として昨季との変化はありますか?
「そもそも昨季の時点で、NECグリーンロケッツ東葛の中で変化がありました。それに加えてチームのカルチャー的な構築が、この6カ月の中でいろいろ見えてきたものがあったので、それをさらに伸ばすというやり方をしてきました」
NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノラヴァ キャプテン
「公式戦で久しぶりに勝って本当にうれしいです。試合ではイーブンの場面がたくさんありましたし、課題もたくさん出てきましたけど、最後の4分間は30フェーズ以上ずっとディフェンスを強いられた中で良いディフェンスができ、最後に勝つことができました。新しいチームになって、これからもっと強くなると思いますし、本当にうれしいです」
──後半は風下になりましたが、どのようにプレーすることがいいと思いましたか?
「風がかなり強かったので、キックをしても良いキックを蹴れないから、後半はなるべくキックを使わずに、できるだけボールをキープする。ディフェンスには自信がありますし、ボールをキープすればアタックもできるので、それを意識していました」
NECグリーンロケッツ東葛
ニック・フィップス選手(スクラムハーフ)
「まず、前半の最初には勢いがありましたが、途中からは花園近鉄ライナーズが上がってきました。後半に差し掛かったときに、どちらが最終的に勝利に対してハングリーになっているかが大切だと思っていましたが、私自身、NECグリーンロケッツ東葛が最後にそこをつかみ取ったということをすごくうれしく思うと同時に誇りに思っています」
──2点差という僅差での勝利については、どのような感想ですか?
「この試合はすごく拮抗した場面が続いていました。全体的にペナルティーの数を減らすことが勝利へのカギになるので、花園近鉄ライナーズ戦に向けた1週間の間にも、まずはペナルティーを減らすことに集中してきたことが勝利につながったと思います。また、フォワードのセットピースが安定していたからこそ、良いアタックもできたと思います」
NECグリーンロケッツ東葛
クリスチャン・ラウイ選手(センター)
「今日の試合は、前半ではアタックのときに、僕たちがやってきたことを出せていましたが、後半になってからは自分たちがアタックできていなかった部分もあったから、こういう試合展開になってしまったと思います。でも今日は最後まで全員で戦って勝てたので、良かったと思います」
──初キャップで初トライを、高校時代(日体大柏)を過ごした柏で決めたことについて、特別な感情はありますか?
「今日、トライを取れて本当に良かったと思います。4年間、ここで試合をするのを楽しみにしていました。ここには応援してくれるファンがたくさんいて、たくさんの人が応援に来ていたので、自分もトライを取れたらみんなにお返しができるかなと思っていました」
花園近鉄ライナーズ
花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ
「みなさん本日は寒い中お越しくださりありがとうございます。われわれとしてはファーストパンチをかまそうということだったんですけど、最初にダイレクトタッチになってしまい、スクラムも最初はうまくいかず、先手、先手を取られてしまいました。ただ、風下だったので余裕のある範囲で、15対19で折り返し、後半ここからというときに、また最初にひとつNECグリーンロケッツ東葛に息を吹き返される場面がありました。最後の最後まで見ている人には面白い試合だったと思いますが、フィニッシュのところでいろいろ選択肢があって迷ってしまい、勝ちを取れなかった。これを学びにして、まだまだ試合は続くので成長していきたいと思います」
──新加入のジャクソン・ガーデンバショップ選手と竹田祐将選手が結果を出しましたが、この二人の評価を聞かせてください。
「おっしゃるとおりで素晴らしいプレーをしてくれました。エリアマネジメントもそうですし、われわれがやるラグビーのスタイルを理解して実行してくれました。それでチャンスがあったら勝負をしかけることを、勇気を持ってやってくれたので良かったです」
──最後のシーンは「選択肢があって迷った」という話がありましたが、見ていてどのようにすれば良かったと思いますか?
「ジャクソン・ガーデンバショップに『どうだった?』と聞いたら、あの場面ではドロップゴールを狙うか、ペナルティーをもらって3点を取りにいくか、どうしようかと迷ったと。でも、試合後にウィリー(ウィル・ゲニア)と話して、『いや、攻めるやろ』と。外にスペースがあったので、俺たちのDNAは『アタックができるなら攻める』。ペナルティーを取りにいくのではなくて、とにかく攻める。それがわれわれのスタイルなので、この敗戦は、それを貫かせられなかった私の責任ですね」
──悔しい敗戦だったと思いますが、チームにはどのような言葉を伝えましたか?
「まだです。最後、バスに乗る前にチームが集まるので、そのときにメッセージを出します。長いシーズンなので、一戦一戦成長していくことですね。今日、チームのミーティングで言ったことは、とにかく大好きなラグビーを楽しもうと。それから最後まで出し切ろうと。終わったあとに何も残っていないぐらいに出し切ろうと、それができたかどうか。(野中)翔平も最後は足をつっていましたから」
花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン
「ほぼヘッドコーチと同じなんですけど、結果がどうであれ、勝っても負けても次の試合の日は決まっていますし、その次の試合の日も決まっているので、進むしかないと思います。負けをしっかり糧にして、しっかり自分たちのゴールに到達できるようにもう一度、何がダメだったのか、そしてどうなったら僕たちの力を発揮できるのかを考えて、次の試合に臨みたいと思います」
──ディビジョン1の舞台に立てたいまの心境は?
「個人の話になってしまうんですけど、僕は今年5年目で、ちょうど僕が入団するタイミングでトップチャレンジリーグになったので、あらためて戻ってきたというよりは、本来自分がいるべきというか、行きたかったところに立っている感覚です。ただ、トップチャレンジだから、ディビジョン1だから、2だからと特別なことはなく、自分たちのやることにフォーカスしてきました」
花園近鉄ライナーズ
ジャクソン・ガーデンバショップ選手(スタンドオフ)
「勝てる試合を落としたという印象です。残念です。試合の直後の感想としてはそういうものになりますが、プレシーズンから課題として取り組んできたことを改善できた部分もあったはずなので、おそらく今晩から明日にかけて、ゆっくり振り返るとポジティブな面もだんだん見えてくると思っています」
──初めてジャパンラグビー リーグワンの公式戦のグラウンドに立ちましたが、雰囲気はいかがでしたか?
「ウォーミングアップからすごくワクワクしました。観客の方々の声も聞こえましたし、流れている音楽でもどんどん気分が上がりました。選手同士の声が聞こえないぐらいの音が耳に入っていたので、そういう雰囲気に包まれてすごくワクワクしました」
花園近鉄ライナーズ
セミシ・マシレワ選手(フルバック)
「みんなよく頑張ったと思います。われわれもそうですし、NECグリーンロケッツ東葛さんもすごく良い試合ができていたと思います。実際、接戦でしたし、良い戦いでした」
──ケガからの復帰戦になりましたが、自身のパフォーマンスを振り返っていかがでしたか?
「自分自身は悪くなかったと思っています。久しぶりの公式戦で、9カ月ぶりの試合でしたが、タフな試合になると予想していました。実際、リハビリ期間は長かったですけど、その間はサイドラインからいろいろ考えていて、久しぶりに試合に出るならあまり考え過ぎないようにしようと思っていました。できるだけ楽しめたらいいと思っていたので、そのようなことはできたと思います」